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ミーシャ・ダムジャン作
ヨゼフ・ウィルコン絵
いずみ ちほこ 訳
私はサーカスを楽しんで見ることができないまま大人になってしまいました。
幼い頃に読んだ本のためか、それとも、誰かに聞いたからなのか、例えば、動物たちはきっと無理に芸を覚えさせられるのだろうなどという勝手な思い込みが邪魔をしていたのです。
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この本は強いられた芸を披露するのをボイコットしたピエロや動物たちが、団長のもとを逃げ出し、自分が本来やりたかったことをするために自らサーカスを立ち上げ、夢を実現させるというストーリーです。
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サーカスの幕があがり、「はじめるんだ!」とムチを鳴らして叫ぶ団長に、「いやです」と答えるピエロのペトロニウス。いっしょに登場したロバのテオドールも長い耳をふって「いやだ」というジェスチャーをしています。
困った団長が再びムチを鳴らしてせかせると、ピエロは答えます。
「いやです。ぼくはもう かなしくもないのに ないたり、おかしくもないのに わらったりしたくない。くたびれました」と。
「なにがやりたいんだ」と問われて、「みんなにおはなしをしてあげたい。それが ぼくのゆめでした」と答えるピエロ。
団長がロバにも尋ねると
「ぼくは ペトロニウスのおはなしを きいていたいな。もう ごうじょっぱりのふりなんかしたくない。ごうじょっぱりじゃないもの。団長、あなたがやらせたがっているだけでしょう」
業を煮やした団長がプログラムを進め、2番手にワルツを踊ることになっていたポニーのフェルデナンドが登場しますが、何もせずにじっとしています。
「フェルデナンド! どうした!」と叫ぶ団長に、「もう いやなんですよ。おしえこまれた芸だけやっているのがー」とポニー。
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誰しも(動物も含めて)、誰かに無理強いさせられることは不本意で不愉快なものです。自分の本心に従って「いやだ」と言ったピエロと動物たちは、その瞬間に束縛から解き放たれて、自由を引き寄せたといえるでしょう。
自由を手に入れ、それぞれの夢を叶えたこのサーカスは子どもたちにも大人たちにも大好評でした。
その結果、「みんな とっても しあわせでした。でも いちばんしあわせだったのは もちろん ペトロニウスと そのなかまたちでした。」となったのです。
出場者がみんな幸せなサーカスなら見ている側も幸せになるでしょう。幸せの連鎖なら限りなく続いてほしいものですね。