龍の尾亭<survivalではなくlive>版

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買うべし読むべし!『わがままに生きる哲学』多世代文化工房

2016年05月03日 11時38分37秒 | メディア日記
全く意見の合わない友人がいる。彼とは、カントを読んだりヴァレリーを読んだりスピノザを読んだりアーレントを読んだりするのだが、ほぼ立ち位置の一致を見ない。

私は文学好きで、スピノザをこよなく愛し、しかし書く文章はいつもグダグダ。

彼は文学フラグが立った瞬間に興味を失うし、スピノザなんて全く興味がなさそうだし、真っすぐやろうとすることに向き合って邁進する。やっていることは狂気的だが、文章は論理的だ。
 
私は何も出来ずにただ脇でうろうろしているばかり。

こう書いてくると、彼と私は本当に友人なのかどうかすら怪しくなってくる。

つまり、私と彼はほとんど関心に重なりがない。

それでも、私は勝手に友人だと思っている。

なぜなら、意見や立場、興味を異にするお互いを、どこか存在としては認めて話ができるからだ。

そんな友人が本を出した。
 
「わがままに生きる哲学」

友人にこれほどふさわしい題名もない、というぐらいわがままな友人なのだが、だからこそ、どこを開いても
面白いのだ。

この本は、一応、 「お悩み相談」の枠組みを取っている。

この世界を生きていくときに生じるさまざまな疑問について、あらゆる世代の執筆者(6人)がアドバイスを書くという形式で、各々のわがままっぷりを開陳するという内容になっている。

もちろん、彼が書いている部分はやっぱり納得できないことも多い。
「まったくぅ、らしいけどさぁ」
と思うところだらけだ。

だがこの本の醍醐味は、一つの質問に複数の世代のわがまま回答者が、てんでに己のわがままな視点で極めて無責任でかつ誠実な回答を並べている転だ。

題名の 「わがままに生きる哲学」が単に質問者に向けられたものではなく、まずなによりも回答者自身の答え方に向けられたものなのだ。

わがままは生きるに係っているが、哲学は誠実で複数的で普遍的で実践的で肯定的なものだ、ということがどのページを開いても実感できる。

つまり、この本を読むことは、もしかすると友人の彼と改めて出会い直しているのかもしれない、と思えてくる。さらにうれしいのは、そんな全く意見の合わない友人が一人だけではなく、一度に6人も、寄ってたかって 「回答」しだすのだから、これは面白くないはずがない。
回答はけっして収斂しない。新たな問いを誘ったり、全く別の答えを招き寄せたりし始める。

そんなライブ感覚は、読者にいつのまにか 「哲学の実践」をさせてしまう…………そんな 「ぞわぞわ」する本、ですらあるのだ。

もちろんごく普通のお悩み相談Q&Aとしても読めるのだが、それだけじゃもったいない。

佐藤和夫先生のゼミの超楽しい成果ってことなんだろうか?
他のメンバーのことはよく知らないけれど。

とにかくこんな玩具箱のような楽しい本は手にしたことがありません。

今すぐ注文しましょう!
気持ちとしては私が本代を持ってあげたいぐらいです(笑)。