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羽ばたき飛行機製作工房

小型羽ばたき機(オーニソプター、Ornithopter、Flapping Wing)専門の研究開発サイトです

デルタ・ホッパー(大人の科学マガジン未掲載作例)

2012-06-02 18:05:40 | 製作記事(羽ばたき機)

製作タイミングの関係で、本誌への掲載は実現しなかったが、デルタ・ツイスター、デルタ・フラッパーと並び、デルタ3兄弟の末弟ともいうべき機体。
デルタ・フラッパー同様、デルタ・ツイスターの平面形と大部分のパーツを共有しつつ、異なる羽ばたき機構で飛行する。デルタ・ツイスターと同形の前翼を左右に分割し、左右対称の羽ばたき運動を行って推進する。後翼は、前翼によって作られる空気流を受け止め、整流して、揚力を生み出す固定翼として機能する。いわば羽ばたき翼と固定翼のハイブリッド機。

初号機
昨年版のパーツを流用して製作したプロトタイプ。最初の画像では、デルタ・フラッパー同様、デルタ・ツイスターと外形の区別がほとんどつかない。

前翼が左右に分割されており、クランクの回転に合わせて羽ばたき運動を行う。

胴体がバルサで軽量のため、飛行性能は良好。

       機体スペック
全幅                 370mm
全長                 370mm
飛行重量               4.3g
(動力用ゴム含む)
  製作年月  2012年05月

二号機
ふろくパーツを利用して製作した機体。

羽ばたきキークエンス

二号機のテストフライトの様子(画像クリックで動画にジャンプ)

       機体スペック
全幅                 400mm
全長                 400mm
飛行重量               5.8g
(動力用ゴム含む)
  製作年月  2012年05月

電動RCバージョン1
キット付属の電動ヘッドに換装。赤外線受信機搭載。操舵機構は未搭載だが、軽快に飛行する。

       機体スペック
全幅                 400mm
全長                 400mm
飛行重量               9.5g
(50mAhLi-po電池含む)
  製作年月  2012年05月

電動RCバージョン2
機体を大型化したバージョンも製作。実はデルタ・フラッパー電動RC版のヘッドを換装したもの。すでに屋外でのテストを行っており、よい感じで飛行する。


オール・フライング・テールというか、後翼全体を超小型サーボで機軸に沿って回転させ、前翼とのアラインメントを変化させることで操向する。操舵特性は良好。


       機体スペック
全幅                 540mm
全長                 500mm
飛行重量             12.8g
(50mAhLi-po電池含む)
  製作年月  2012年05月

電動バージョンのフライト動画は近々アップ予定。


デルタ・フラッパー(大人の科学マガジン掲載作例)

2012-06-01 08:20:34 | 製作記事(羽ばたき機)

これから数回に分けて、大人の科学マガジンVol.34に掲載された改造作例を中心に、最近の作品を個別に紹介していく。
これまで連載してきた開発史でもふれたが、デルタ・ツイスターの平面形と大部分のパーツを共有しつつ、異なる羽ばたき機構で飛行できる機体をいくつか製作している。最初に取り上げるのは、掲載作例のデルタ・フラッパー。本誌では、「前代未聞!首振り羽ばたき機」というコピーで取り上げられている。
デルタ・ツイスターと同形の前翼が、ツイスターのような左右ひねりではなく、上下に首振り運動を行い、後ろ向きにうちわをあおぐようにして推力を生み出し飛行する。
後翼は、ツイスターの場合は前翼の動きの反作用で左右ひねり運動を行うが、本機の場合は前翼の上下動を大きな翼面で受け止めて姿勢を安定させると共に、揚力を生み出す固定翼として機能する。

初号機
昨年版のパーツを流用して最初に製作したプロトタイプ。最初の画像では、一見デルタ・ツイスターと外形の区別がつかない。

しかし、前翼がクランクの回転に合わせて首振り運動をするよう、横向きのヒンジで支持されている。

前翼部のアップ。

胴体がバルサで軽量のため、飛行性能は良好。バルサ部をブラックアウトして見た目が引き締まった。

       機体スペック
全幅                 370mm
全長                 370mm
飛行重量               4.8g
(動力用ゴム含む)
  製作年月  2012年04月

二号機
ふろくパーツを利用して製作した機体。こちらが本誌に掲載された。

羽ばたきキークエンス

二号機のテストフライトの様子(画像クリックで動画にジャンプ)

       機体スペック
全幅                 400mm
全長                 400mm
飛行重量               5.5g
(動力用ゴム含む)
  製作年月  2012年04月

電動RCバージョン
機体を大型化し、電動RC化したバージョンも製作した。本格的なフライトテストはこれから。



 


デルタ・ツイスター開発史(第六部 派生型および特別仕様)

2012-05-30 23:44:29 | 製作記事(羽ばたき機)

これまで、デルタ・ツイスターの誕生からキット化までの経緯をまとめてきたが、キット開発の過程では、いくつもの派生型や、特別仕様の機体も製作されている。今回はこれらの機体を紹介する。

10. 各種派生型
編集部からのリクエストもあり、小型化、大型化などサイズを変更したバージョンや、キットの羽ばたき機構を利用しつつ外形を大きく変更したバージョン、逆に外形はそのままに推進方式を変更した実験機など、さまざまな派生型が製作された。
それぞれの機体については、いずれ個別記事で詳しく紹介するつもり。

小型化
改造作例として本誌にも掲載された機体。ふろくツイスターの1/3サイズ。重量はわずか0.76g。極細のカーボン・ロッドで構成している。ゴム動力。

大型化
上の作例と反対に、サイズを拡大した機体。大型化というと、昨年すでに主翼スパン70cmのIKAROSを製作しているが、この作例は主翼スパン54cm。ふろくキットと比べ約150%サイズとなっている(画像左がふろくツイスター)。電動RC仕様。

プッシャー
ゴム動力版についてはすでに紹介しているが、電動化バージョンが改造作例として本誌に掲載された。このタイプは、今回のキット開発の中で生まれた新しいアイディアを実証したもの。小型の後翼をツイストさせてプッシャー方式で推進する。主翼スパン50cm。


ウェーブ・ライダー
こちらも本誌に掲載された改造作例。オリジナル版の製作は4年前にさかのぼる。1枚の大きな翼面の後半分を波打たせることで推進する。電動RC仕様。

4年前にテストを行っていたオリジナル版。メカの配置など細部が今回の機体と異なる。

デルタ・フラッパー
本誌掲載の改造作例。新しいアイディアを形にしてみたもの。外形はデルタ・ツイスターとほとんど変わらず、パーツもほとんど共用しているが、前翼が左右ツイストではなく上下に首振り運動を行い、後ろ向きにうちわをあおぐようにして推力を生み出し飛行する。後翼は固定翼として機能する。ゴム動力仕様。

デルタ・ホッパー
デルタ・フラッパー同様、外形はデルタ・ツイスターとほとんど変わらないが、前翼が左右対称にふつうの羽ばたき運動を行うことで推進する。後翼は大型の固定翼として機能する。ゴム動力仕様。

11. 特別仕様
編集部からの依頼により、風洞実験用の特別仕様の機体も製作した。

風洞内で、実際の飛行時と同様のツイスト運動ができるよう、機体を保持するジンバルを製作。

実験計画に合わせ、サイズや形状の異なる前翼を製作。

初期プロトタイプから始まって、今回紹介したようなバリエーションを含め、キット開発の過程で製作した機体の総数は20機を超えた。
発売記念として、リビングの壁一面にディスプレイ中。

以上、長くなってしまったが、デルタ・ツイスター開発史はひとまずこれで筆をおくことにする。
この記事を読んで興味をもっていただき、この機体がふろくキットとして付属する大人の科学マガジンVol.34「デルタ・ツイスター」を手にとっていただければ幸いである。


デルタ・ツイスター開発史(第五部 デルタ・ツイスターキット開発秘話)

2012-05-30 00:35:32 | 製作記事(羽ばたき機)

2011年、大人の科学マガジンの記事上で復活したデルタ・ツイスターだが、翌2012年には、ついに正式にキット化が実現した。その経緯は以下の通り:

7. キット化決定
2011年12月のMTM07では、再会した編集部の方々と、また何か面白いことをやりたいですねという立ち話をしていたが、早くもその月のうちに編集部より連絡があった。準備中の次号で、前年の羽ばたき機キットに続き、再び飛びモノを取り上げるとのこと。一も二もなく引き受け、年明けに、前年の改造作例を元にしたふろく開発案を提出した。編集部では、ふろく開発を担当されている小美濃さんを中心に、アドバイザーである超小型飛行体研究所のとしちゃんも交えて様々な案が検討されたようだが、けっきょく、「ふろくから生まれたふろく」というコンセプトで、"デルタ・ツイスターそのもの"をキット化することが決まった。ゴム動力版と電動版のコンバーチブルとし、電動版の動力源にはスーパーキャパシタを使用する案がまとまり、キット化に向けた開発作業が1月中旬からスタートした。

ふろくから生まれたふろく」というキャッチコピーをもつ発売予告

初出は2012年2月発売の同誌Vol.33「卓上ロボット掃除機」の表3

8. キット開発経緯
オリジナルデザインが存在するといっても、いざ組み立てキットとして量産するとなると、さまざまな障害に直面する。その最たるものは生産コストだが、飛びモノにおいては、負けず劣らず重要なファクターがある。それは重量である。わずか数%の重量増が、ただちに飛行特性に大きく影響する。キット開発の過程は、コストアップをできるだけ避けつつ重量増を抑えるための、増加試作とテスト飛行の繰り返しに明け暮れる日々だった。

初期プロトタイプ
キット開発協力依頼を受けて後、最初期の試作。前年の機体の構造を継承しつつ、パーツ状態で標準サイズのふろくの箱に収まるよう、サイズをわずかに縮小した。この段階で、すでに機体の折りたたみを提案している(この機構は量産バージョンに採用された)。ゴム動力版の飛行重量は約4.6g。

初期プロトタイプ(電動版)
キットはゴム動力版と電動版のコンバーチブルとすることになっていたため、ヘッド部を組み替えた電動版も試作。

電動版プロトタイプの胴体。ゴム動力版から胴体ごと組み換えができるようになっている。この段階では、4mmモータをスパーギア3枚で減速して使用する設計となっていた。ふだん使い慣れているリチウム・ポリマー電池の場合、充放電電圧は約4.2Vで、このモータ/ギア構成で十分なトルクを発生することができる。ところが今回のキットでは、本誌でも触れられているように充放電電圧が2.7Vに制限されるスーパーキャパシタの使用が条件であり、4mmモータでは上昇飛行に必要なトルクを発生することができなかった。そこで、中期プロトタイプ以降では、重量は増えてしまうが、より低い回転数で大きなトルクを発生できる6mmモータと、1枚減らして2枚構成のスパーギアを組み合わせてトルクを確保した。

中期プロトタイプ
初期プロトタイプでは、胴体に前年のふろく同様バルサ材を使用していたが、編集部によると、バルサは天然素材のため重量や強度のバラツキが大きく、前年もキット量産時に苦労したとのこと。小美濃さんより、胴体を軽量中空パイプ(いいかえるとプラ製のストロー^^)で作ってはどうかという提案があり、さっそく製作したのがこちら。仕上がってみると、心配した重量増も少なく、これで行くことになった。結果的に、動力ゴムが外部に露出せず、スタイリッシュなデザインになった。ゴム動力版の飛行重量は約4.4g。
コストダウンのため、ロッキング・アーム(前部動翼を駆動する腕)の材質はカーボンからプラに変更。

プッシャータイプ
プッシャータイプは、本誌では改造作例として登場しているが、実は初期~中期プロトタイプを開発していた時期に、すでに原型を製作していた。パーツを追加して、キットの組み換えで作れるようにする提案も行っていたが、この案は残念ながら採用されなかった。

初期バージョン:

パイプ胴を採用した中期バージョン:

木型試作
3月初め、それまでのプロトタイプにもとづいて作成されたプラパーツの図面をもとに、CADCAMによる切削加工で、一品ものの試作パーツが製作された。CADCAMによるパーツ試作は、最近では3-Dプリンティングと呼ばれる光造型や積層造型などがポピュラーになっているが、この場合、材質は制約される。切削加工はコストは張るが、量産品に近い材質を使用でき、加工精度も高いので、量産品同様に実働するパーツを作成することができる。今回、主なパーツの材質はABS樹脂、減速ギアはPOM樹脂という豪華版。なお、この段階の試作品は、材質がプラであっても、伝統的に木型と呼ぶらしい。図面と木型をもとに、金型が製作される。

試作パーツ一式:

組み上げた試作機。パーツは量産版とほとんど変わらない形状だが、嵌合はゆるく、組み上げるのは一苦労。このあたりの精度を追い込むのも木型の役目。ゴム動力版の飛行重量は約6g、電動版は約9gと、量産品と変わらない重量となった。

テストショットを組み上げたサンプル
4月に入ってひとまず金型が仕上がり、いわゆるファーストテストショットが少量ながら生産された。テストショットパーツを組み上げた試作機はこちら。すでに量産品と変わらない外観・重量となっている(嵌合部などの細部は、量産開始までにさらに追い込んでいく):

ニコニコ超会議への出展
電動版の充電器兼発射装置のパーツのテストショットはさらに遅れて4月下旬に到着。ゴム動力版・電動版各1機と共に、連休前ぎりぎりのタイミングで組み上げ、4月28~29日に開催されたニコニコ超会議に出品した。会場では、SF作家の尻Pこと野尻抱介先生のブースの一部をお借りして展示。野尻先生が出品した自作バンデグラーフ起電機が来場者の人気を集めたこともあり、ちゃっかりその隣にディスプレーして多くの方に見ていただくことができた。

9. 開発完了→発売へ
5月に入り、いよいよ製品版パーツの量産が始まった。キット開発と並行して準備が進んでいた周辺部品や外箱、組み立て説明書なども仕上がり、ついに量産版ふろくが姿を現わした:

ふろくキット「デルタ・ツイスター」の開発経緯は以上の通り。読んでいただくとわかる通り、デルタ・ツイスターの基本デザインは筆者によるものだが、キット開発の過程では編集部からのアイディアも反映して数々のリファインが行われたこともあり、ふろくキットは編集部との共同開発の産物であるといえる。
なお、キット開発と並行して、改造作例や、風洞実験用模型の製作も行ったが、これらについては次回以降で紹介していく予定。


デルタ・ツイスター開発史(第四部続き デルタ・ツイスター復活その後)

2012-05-26 18:48:04 | 製作記事(羽ばたき機)

デルタ・ツイスター開発史の第四部の続き。大人の科学マガジン誌上でのデルタ・ツイスター復活に続く、2011年中の展開。

6. デルタ・ツイスター(復活版)の展開
2011年、デルタ・ツイスターは、大人の科学マガジン Vol.31 羽ばたき飛行機セットの誌上で改造作例として復活したが、本誌発売を受けた連携企画として、各種フライト映像の公開や、電動RC化・大型化などのさらなる改造、Make: Tokyo Meeting 07(MTM07)への出展などを行った。

まずは掲載作例各種のインドア・フライト映像(初出記事)。2011年8月28日、IAC-ASO例会での撮影。

デルタ・ツイスター(画像クリックで動画にジャンプ):

ダブル・トライアングル(同上):

フライング・ロッド(同上):

デルタ・ツイスター電動RCバージョン
続いて、電動RC化バージョン。トイラジから取り出した4ミリ×10オームモータ(重量0.7グラム)を使用し、減速比は約100:1。操舵は、1.5グラム超軽量サーボを使用して、ツイスティング・ロッド方式により行う。飛行重量はバッテリー込みで7.5グラム。

電動RCバージョンのフライト映像(画像クリックで動画にジャンプ):

上記の各種インドア・フライト映像公開の翌月には、デルタ・ツイスターの屋外での飛行テストを行い、その模様を公開した。翼面荷重が小さいため、屋外では少しの風にもよく乗って、より高く、長い時間を飛んでいるのが見て取れる(画像クリックで動画にジャンプ)。

さらに、大型化へのトライ。

Delta Twister 2X(RCデルタ・ツイスターの200%スケールアップ版):
RCデルタ・ツイスターを寸法比で200%に拡大したバージョンを製作。
下の写真は、通常サイズバージョンと並べて大きさを比較したところ。主翼スパンは約1メートルに達し、これまで製作してきた羽ばたき機の中で最大。

平面形:

IKAROS:
フライトテストの結果、Delta Twister 2Xは、飛行中、後翼の翼端変形による推力ロスが大きいことがわかったため、翼端をカット。その結果、平面形が正方形に近くなったため、同様の平面形をもつ史上初の宇宙帆船にちなんで、IKAROSと改名した。

IKAROSのフライト・テストの様子。2011年11月28日、IAC-ASO例会での撮影:

画像1:

画像2(クリックで動画にジャンプ):

なかなか快調なフライトを見せてくれた。

2011年12月に開催されたMake: Tokyo Meeting 07(MTM07)にも出展(参加報告):

ブースでは、デルタ・ツイスターをはじめとする 大人の科学マガジン掲載作例や、同誌ふろくパーツを利用して製作した大型羽ばたき機群などを展示した。会期中は、多くの来場者に展示を楽しんでいただいたが、とりわけ、同じく出展されていたマガジン編集部の方々と久しぶりに再会し、改造作例の飛びっぷりや、ギャラリーに受ける様子を実際に見ていただけたことは、翌年のデルタ・ツイスターふろくキット化の一つのきっかけになったと考えている。

というわけで、長くなったが第四部はこれでおしまい。次の第五部で、いよいよデルタ・ツイスターのふろくキット化決定のくだりと、キット開発秘話を紹介する。


デルタ・ツイスター開発史(第四部 デルタ・ツイスター復活)

2012-05-22 05:05:40 | 製作記事(羽ばたき機)

デルタ・ツイスター開発史の第四部は、大人の科学マガジン誌上でのデルタ・ツイスターの復活と、それに続くキット化について。

5. デルタツイスター復活
2010年は、春先に参加した空フェス!がきっかけとなって、MTM05、OpenSkyプロジェクトなど数々のイベントへの出展が連鎖的に続いた時期だった。そして、最終的に大人の科学マガジンに起用いただいたことで、デルタ・ツイスターの3年ぶりの復活につながった。
各イベントの詳細、および大人の科学マガジン掲載号については以下を参照:

空フェス! 開催概要 参加報告
MTM05(Make: Tokyo Meeting 05) 開催概要 参加報告
OpenSkyプロジェクト 開催概要 参加報告

大人の科学マガジン Vol.31 羽ばたき飛行機セット

大人の科学マガジン編集部では、以前から羽ばたき飛行機のキット化を検討していたそうだが、上記の空フェス!で、SF作家の野尻抱介さんの指導による「空飛ぶパンツ」作ってみた/飛ばしてみたイベントが大成功を収めたことなどが、企画決定の決め手になったのではないかと思われる(想像^^)。
筆者の長年の盟友であり、上記の各イベントにも共同で参加してきた超小型飛行体研究所のとしちゃんが、アドバイザーとして編集部に企画協力しており、推薦していただいたこともあって、編集部よりふろくキット改造作例記事の依頼をいただくことになった。
同号のふろくは「鳥形羽ばたき機(オーニソプター)」と「虫型羽ばたき機(エントモプター)」の2機セット。第一部でも触れたが、エントモプターは、筆者がかねて取り組んできたツイスターシリーズと同根の兄弟にあたる。懐かしい思いでエントモプターの方をセレクトし、改造作例を何機か製作した。そのうち本誌掲載にいたったのが以下の3機:

デルタ・ツイスター(復活版)紹介記事):
初代デルタ・ツイスターは特殊な制御機構を組み込んだRC実験機だったが、復活版はキット仕様に合わせてシンプルにゴム動力で製作。その結果大幅に軽量化され、ふわふわひらひらと歩く速さで飛ぶ、独特のキャラクターが生まれた。


フライング・ロッド紹介記事):
ツイスターシリーズのバリエーションだが、雑誌掲載を意識し、ビジュアル重視で左右非対称の主翼平面形を採用。


ダブル・トライアングル紹介記事):
こちらも広義にはツイスターシリーズに含まれるが、あらたな試みとして、逆三角形の動翼とV字形の固定翼という組み合わせにトライ。


その他、いわばボツメカだがこんな機体も。

ミニ・ツイスター紹介記事):


フライング・モビル紹介記事):


ここからまた新しい展開につながっていくわけだが、その話はまた続きで(所用で数日間留守にするため、次回更新は週末の予定)。


デルタ・ツイスター開発史(第三部 デルタ・ツイスター復活までの3年間)

2012-05-22 00:11:16 | 製作記事(羽ばたき機)

デルタ・ツイスター開発史、第三部は、デルタ・ツイスター復活までの3年間について。

4. 初代デルタツイスター登場以降の3年間
2008年春に、仕事の都合で関西に引っ越した後も、羽ばたき機の製作は続けていたが、開発の方向はいったんツイスター系を離れ、以下の3系統にシフトした:

a. 超小型軽量機
2008年中は、超小型軽量化への精力的なチャレンジが行われた。
それまでの製作ノウハウを結集して段階的な小型軽量化を進め、最終的には主翼スパンわずか60mm/飛行重量1.5gの機体(おそらくその時点では世界最小のRC羽ばたき機)が完成し、飛行に成功した。

60mmスパン極小羽ばたき機紹介記事):



初飛行成功時の様子(画像クリックで動画にジャンプ):

付記:本機の飛行成功の数ヶ月後に、北米在住のインドア・スペシャリストAngry_Monk氏が、重量0.92gの羽ばたき機を完成させ飛行に成功したことが発表された。機体フォーマットや約60mmの主翼スパンは当方の機体とほぼ同様。(当ブログでの報告記事)。氏は当方のブログや動画もウォッチしており、参考にしていただいたとのこと。光栄である。

より安定した飛行が可能だった80mmスパン機紹介記事):

複葉タイプ:

単葉タイプ:


80mmスパン機の飛行の様子(画像クリックで動画にジャンプ):


b. 複葉無尾翼機
いわゆるX-Wingへの回帰だが、サイド・スラスターを組み合わせることで、操縦翼面を使わずにスムーズな操向を可能にしたもの。
大型軽量化が追求され、最も成功したMeganeura(下記)では、Q-SKY用の4mmショートモータで620mmスパンの主翼を駆動していた。飛行重量は3.3gに過ぎず、ふわふわと浮かぶように飛行できた。

Meganeura紹介記事):
この頃の代表的機体。当初は通常タイプの尾翼をもっていたが、水平尾翼、垂直尾翼と順番に取り除いていき、最終的にはサイド・スラスター装備の無尾翼機として完成した。
都内で行われた空フェス!や、Make: Tokyo Meeting05、金沢21世紀美術館でのOpenSkyプロジェクトなど外部のイベントにも積極的に出展し、各方面からの注目を集めた:




各種ネットメディアや、地上波でも繰り返し取り上げられた:
空フェスでの様子。GIGAZINE記事(クリックで記事動画にジャンプ)
同上。ASCII.jp記事(クリックで記事動画にジャンプ)
Make: Tokyo Meeting 05での様子。TOKYO MXテレビ 東京ITニュース(クリックで動画にジャンプ)
同上。ASCII.jp記事(クリックで記事にジャンプ)

c. 単葉全翼機
デルタ・ツイスターの祖型ともなったロガロ・ウイング風後退翼機からの発展形。2009年春以降、盛んに製作。当初は飛行姿勢安定のため主翼コード(機体の奥行き)を長くとっていたが、徐々に奥行きより主翼スパン(機体の幅)を大きく、細長いデザインへと進化させていった。左右の操向も、当初はラダーを使用したが、その後サイド・スラスターやスイング・ロッドを装備するようになり、見かけは主翼だけがひらひらと羽ばたいて飛んでいるような、あるいは夕暮れにコウモリが飛んでいるような不思議な機体になっていった。外形のシンプルさと、良好な飛行性能があいまって、一番気に入っているシリーズ。

Pterodactyl紹介記事):
サイド・スラスタ装備の機体。主翼スパン560mm、飛行重量3.5g

Megabat初期型紹介記事):
スマート・サーボで駆動する大型のラダー・フィンを装備。主翼スパン700mm、飛行重量6.9g

Megabat後期型(紹介記事):
操向機構を独自考案のスイング・ロッド式に換装したことで、外形がよりシンプルに。良好な旋回特性も得られた。


Meganeura、Pterodactyl、Megabatの飛行テストシーンをまとめた動画
英文キャプション付きで海外向けにYouTubeに発表したものだが、これまでに19,000近い再生数を記録している(画像クリックで動画にジャンプ):

Megabatの動画続き(画像クリックで動画にジャンプ):

さらに続き(画像クリックで動画にジャンプ):


これら以外にも、さまざまな羽ばたき機構や主翼配置・形状のテストが行われたが、発表に至らなかったものも少なくなく、ここでは割愛する。
2010年中を通じて数々の外部イベントに出展したことで、大人の科学マガジン編集部からの注目を受けることになり、翌年の寄稿につながったといえる。

というわけで第四部は、大人の科学マガジン誌上での、デルタ・ツイスターの3年ぶりの復活についてまとめる。


デルタ・ツイスター開発史(第二部 初代デルタ・ツイスター誕生編)

2012-05-20 17:19:50 | 製作記事(羽ばたき機)

デルタ・ツイスター開発史、第一部に続く第二部は、もう一つの祖型、ロガロ・ウイング風後退翼機と、両祖型が融合して生まれた初代デルタ・ツイスターについて。

2. ロガロ・ウイング風後退翼機
2007年末から2008年初にかけての冬休み中に製作した機体(初出記事)。正月だから凧、というわけでもないが、ロガロ・ウイング=よりわかりやすい表現をするとゲ〇ラカイト=に似た、前縁に大きな後退角をつけた羽ばたき翼をもった機体。
最初期型は独立した尾翼をもっていたが、すぐに尾翼を廃止し、当時入れ込んでいた全翼型に改修した。翼面を機体後方に延長することで、ピッチ方向の安定を確保し、尾翼が不要となった。またこの時点で、平面形がすでに後のデルタ・ツイスターに近いものになっている。
操向機構としては、この頃開発中だった「スイング・ロッド(もしくはスイング・ウィップ)」方式を採用。羽ばたき翼自体を受動的に変形させることで、エルロン、ラダーやサイド・スラスターなどの空力機構を使用せずに、急激な方向転換を可能にしている。

無尾翼化改修の直後:


その後各部を改良したバージョン:


飛行会でのフライトの様子(画像クリックで動画にジャンプ):


当時の飛行会では、メンバーの間で羽ばたき機が盛んに製作されており、上の動画を先頭から再生すると、会場内で羽ばたき機が何機も飛んでいるのを見ることができる。

3. 初代デルタ・ツイスター
ロガロ・ウイング型無尾翼羽ばたき機の飛行に成功したのと同じ月、2008年1月の末には、すでに初代デルタ・ツイスターが飛行している(初出記事)。




実をいうと、この初代デルタ・ツイスターは、単に羽ばたき機の形状的なバリエーションを増やすために作ったものではない。
オリジナル・ツイスターの飛行試験を繰り返す間に気がついた、ツイスター型羽ばたき機の特性(a)と、同様にロガロ・ウイング型の飛行試験を通じて観察された特性(b)を組み合わせ、さらに特殊な電子制御機構(c)を加えることで、操縦舵面やスイング・ロッドなど重量のかさむ物理的な操舵機構を使わず、見かけスロットル・オンリーの1チャンネル機のような構造の機体で、スムーズな操向を実現するために開発した、意欲的な実験機だった。
以下は、上記a~cについての簡単な説明:

a. ツイスター型羽ばたき機の操向特性:
ツイスター型羽ばたき機は、飛行中、前後主翼間のジオメトリー(相対的位置関係)が極端に大きく変動する。滑空させた場合、前後主翼が平行になっているときだけは直進するが、それ以外の(前後主翼が相対的に斜めにねじれている)場合は、ほとんどキリもみに近い状態で急旋回する特性がある。

b. ロガロ・ウイング型羽ばたき機の操向特性:
実機の飛行の様子の観察から得られた知見として、大きな後退角をもったロガロ・ウイング型羽ばたき機は、何らかのきっかけを与えると、巻き込むように容易に左右に飛行方向を変える特性がある。

c. ホール素子を用いた回転体の停止角制御:
ホール素子は、周囲の磁気の強さに反応して電気抵抗が大きく変動する特性をもった素子で、可動部を有する電子機器の電源オンオフや、回転体の停止角制御などに広く用いられている。広島のスペシャリストFujinawaさんが、自作の超小型ヘリのメインロータのピッチ制御に利用されているのを拝見し、氏に特別にお願いして、PICを使った超軽量赤外線受信機のエルロンチャンネルに連動するプログラムを書いていただいた。

a~cを組み合わせ、ロガロ・ウイングのような平面形でありながら翼面が途中で前後に分かれた、ツイスター型の羽ばたき機構をもつ機体を作り上げた。
リンク・ロッドを通じて羽ばたき翼を駆動するクランクの端部には、小型のネオジウム・マグネット(クランクに合わせて回転する)とホール素子(機体に固定)を配置した。
送信機でエルロンスティックをきると、PICに書き込んだプログラムにより、前翼が、スティックを倒したのと同じ向きに傾いた状態でごく短時間停止するようになっていた。

ホール素子に通電しない状態での飛行テストに続いて、2月にはいよいよ前翼の停止位置制御を伴うテストを開始、当初はセッティングに手間取ったものの、プログラム改良についてFujinawaさんの多大なご協力もあり、3月になって、うまく左右の操縦ができるようになった。

以下は3月の飛行会でのテストフライトの様子(画像クリックで動画にジャンプ):


と、大掛かりな開発の末に当初のアイディアの有効性が実証されたことで、安心してテストは終了。その後、何回かの飛行会でデモフライトを行ったものの、それ以上開発が発展することもなく、機体はお蔵入りとなった。デルタ・ツイスターが再び注目を浴びるのは、これから3年の後のこととなる。

第三部は、その後、デルタ・ツイスター復活までの3年間の研究開発の経過についてまとめる予定。


デルタ・ツイスター開発史(第一部 オリジナル・ツイスター編)

2012-05-20 13:53:55 | 製作記事(羽ばたき機)

学研大人の科学マガジンVol.34のふろくとしてキット化されて日の目を見た「デルタ・ツイスター」、その誕生から現在に至るまでの道のりをまとめ。第一部はオリジナル・ツイスターについて。

前史(2007年~2008年)
2007年から2008年にかけては、定期的な飛行会でインドア・プレーンを楽しんできた我々にとってにとって活発で実り多い時期で、雑誌への寄稿や大きなイベントへの出展、地方遠征、TV番組出演などが続きました。羽ばたき機開発を専門とする当工房にとっても例外ではなく、現在ブログにラインナップしている主要な機体系列が、短期間に次々に作り出されました。このブログの公開が始まったのもこの時期です。そんな中で、デルタ・ツイスターも、この頃に初めて出現したのです。

デルタ・ツイスターの前身
デルタ・ツイスターは、以下の2系統の羽ばたき機を祖型とし、融合させて生まれた機体です。

1. オリジナル・ツイスター(もしくはエントモプター、フライング・ロッドとも)
学研大人の科学マガジンVol.31でも紹介されている、Robert Michelson教授の火星探査用MAV コンセプト"Entomopter"にヒントを得て製作した機体。前後タンデム形式で配置された2組の主翼が、機軸に沿って逆位相でロールを繰り返すことで(ツイスト運動)、推力を生み出し飛行する。その動きは互い違いに上下する2組のシーソーにも似ている。初号機の飛行は2007年3月。その後、操舵機構の追加大型化VG翼化超小型版など、様々なバリエーションが製作された。
ネットで確認できる限りでは、 "Entomopter"コンセプトを、遠隔制御できる電動機として実際に飛行させたのは当工房が初めてと思われる。
上掲の大人の科学マガジンVol.31にふろくとして収録された「虫型羽ばたき機(エントモプター)」は、"Entomopter"を、同マガジン編集部がゴム動力機として独自にキット化したもの。

初号機(Li-po電池駆動):


操舵機構を追加したバージョン:


主翼スパン30インチ(76センチ)の大型機:


VG翼バージョン(後翼全体を左右にスイングさせて操向する。TVで紹介された):


超小型版(主翼スパン120mm):


今年、大人の科学マガジンの記事用に初号機を復元した機体(スーパーキャパシタ駆動):


2. ロガロ・ウイング風後退翼機
オリジナル・ツイスターと並ぶデルタ・ツイスターのもう一つの祖型であるロガロ・ウイング風後退翼機と、初代デルタ・ツイスター誕生のエピソードについては、第二部で紹介。


デルタ・ツイスターの展翅標本?

2012-05-03 13:06:38 | 製作記事(羽ばたき機)

学研大人の科学マガジンVol.34のふろくキット「デルタ・ツイスター」の開発過程で製作した試作機や、テストショットパーツを使った組み立てサンプル、改造作例などを、壁面に並べてみたところ。展翅して台紙の上にピン留めされた昆虫標本のように見えるが、実際は3.6m×2.4mの壁面をいっぱいに使った巨大展示。



右端の一列のみ、昨年のふろくキットをもとにした改造作例だが、それ以外は全て今年1月以降に製作したもの。その数約20機!デルタ・ツイスターとは平面形の異なる機体も混じっているが、あらたな改造作例として本誌に掲載予定なのでお楽しみに。