羽ばたき飛行機製作工房

小型羽ばたき機(オーニソプター、Ornithopter、Flapping Wing)専門の研究開発サイトです

我が家に3Dプリンターがやってきました

2014-02-16 22:00:00 | 関連情報(その他技術関係)

この1年間、3D CADと3Dプリンターを利用することで、羽ばたき飛行機の開発スタイルは大きく変わりました。自分の活動をパーソナルファブリケーションという大きな文脈の中に位置づける中で見えてきたことも多々あります。

プリンターは、メンバーになっているファブラボ北加賀屋の機材を使わせてもらったり、Shapewaysなどの出力サービスを利用したりしていますが、ファブラボのメンバーの中には、ネットで情報を集めて3Dプリンターを自作してしまうすごい方もいます。そんなプリンターの1台を、来週名古屋市内で開催予定のワークショップでのデモ用に、一時お借りしてきました。

プリンターはRepRapと呼ばれるオープンソース系の技術を利用して作られています。プリンター側の制御ボードはPrintrboard、PC側の制御にはRepetier-Hostという、RepRapの世界では定番のソフトを使っています。

特筆すべきは、プリンターヘッドのXY方向の制御に、CoreXYというシステムを採用していることです。左右に配置されたモータが協調し、ベルト駆動により、高精度でヘッドを動かすことができます。とはいえ、今回お借りしてきた自作機はまだチューンナップの途中とのことで、なかなか難しい面もあるようです。

下の画像は、馴らしを兼ねて試しに出力してみたミニチュアの折りたたみ椅子です。長さは6センチほどです。データはAutodesk社のクラウド3D CADであるFusion 360を使って作成しました。

今年は、内外各社からさまざまなタイプの3Dプリンターが発売されるようです。1年後には、自分専用の3Dプリンターが当たり前になっているかも知れませんね。


Replicator 2X 成形精度チェック

2013-06-01 08:50:00 | 関連情報(その他技術関係)

昨日の超小型飛行体研究所のブログで、Shapewaysに発注した0.2モジュールギアボックスの紹介があったので、比較の意味で、こちらでも別デザインで試してみました。そのご報告。

出力に使用したのはファブラボ北加賀屋にある最新型3Dプリンター、MakerBot Replicator 2X。出力方式はShapewaysの場合はSLS(粉体レーザ焼結)ですが、Replicator 2XではFDM(溶融押し出し)となります。

データはこちら。フリーソフトAutodesk 123D Designで作成してSTL形式にエクスポート:

Replicator用のユーティリティMakerWareを使用し、x3g形式に変換:

SDカードを介してReplicator本体にデータを読み込み、成形実行。

完成直後の様子。ベースの網戸のようなものはラフトといって、パーツの形状に合わせて最初に出力され、パーツがずれないようベースに固定する役目があります:

ロッキングアームのパーツを切り出し、カーボンロッドと組み合わせてみたところ。基本的な寸法は出ており、カーボンロッドがぴったり設計通りにスリットにはまります:

残念なのはこのパーツ。肝心のギアボックスですが、細かすぎてギアのシャフト穴などがうまく出力できていません。

設計を見直して再トライするとともに、Shapewaysでも同じパーツを出力してみて、比較してみようと思います。


ファブラボ北加賀屋に新型3Dプリンターが入荷しました

2013-05-11 13:30:00 | 関連情報(その他技術関係)

当方がメンバーになっている市民工房ファブラボ北加賀屋に、待望の3Dプリンター、makerBot Replicator 2Xが入荷しました。

さっそく、試運転を兼ねてFlying Crawler Mk.2のパーツを出力してみました。材質はABSをセレクト。
出力が進むにつれてLED照明の色が切り替わるところは、なかなか凝った演出です。

5センチ四方ほどのパーツが約15分で出力完了。成形精度はまずまず、重量は2.3グラムと、海外の出力サービスを利用したナイロン製の成形品と比べて15%ほども軽く仕上がりました。

これは使えそうです。近々フルパーツを出力して、メードイン・北加賀屋の羽ばたき飛行機を進空させようと思います。


3Dプリントパーツ 成形方法による比較(続き)

2013-03-27 22:01:15 | 関連情報(その他技術関係)

前の記事で、細いパーツの強度について質問があったので、少し補足。

質問対象は、前の記事では紹介しなかったこのパーツ:

ロッキング・アームにあたる部品です。画像右側の細い部分は、幅1.5ミリ、厚さ1ミリほど。SLS方式で成形したナイロン12製のパーツは柔軟で、折り曲げてもすぐに元に戻り、折れることはありません。
SLS方式では、チャンバーに充填された粉末の中にパーツが成形されるため、ほぼどんな形状でも出力が可能です。

いっぽう、FDM方式の3Dプリンターでは、パーツはこのように出力されます:

ワークプレート(Dimensionシリーズでは使い捨て)の上に、パーツを溶融押し出し成形していきます。ロッキング・アームは上記画像の赤丸の部分に成形されています。Dimensionシリーズの場合は、まず灰色のサポート材といわれる樹脂が出力され、次に黒いABS樹脂が出力されます。成形が完了すると、サポート材に埋まったABSパーツをバリバリと引きはがして取り出します。実をいうと今回の試作では、ABSパーツを取り出す際に無理に力をかけたため、パーツが粉々に割れてしまいました。サポート材は溶剤で溶かして除去するなど、正しい方法を用いれば、成形品を破損させずに取り出せるはずです。とはいえ、SLS/ナイロン12パーツに比べて、FDM/ABSパーツがやや脆いことは否めないようです。

形状をくふうすることで、それぞれの成形方式にあったパーツをデザインすることができると思われます。以前なら高額な金型を起こさないとわからなかったことが、大きな費用をかけずに確認できるのは、3Dプリントの大きな利点といえます。


 


3Dプリントパーツ 成形方法による比較

2013-03-27 07:00:00 | 関連情報(その他技術関係)

これまで何度か書いたように、開発中の「空飛ぶパンツ2」のパーツは、海外の3Dプリント出力サービスShapewaysに発注しています。このサービスは、成形方式や出力材質をいろいろ選択できるのが特長ですが、当方では、いつも一番安価な「Strong & Flexible White」で出力しています。サイトを読んでいくと、このタイプは、レーザー粉末焼結(SLS:Selective Laser Sintering)方式で成形され、材質はナイロン12というエンジニアリングプラスチックの一種であることがわかります。ナイロン12は比重1.02と、エンプラとしては比重が小さいこともあり、軽量な成形品が作成できます。

SLSで出力したメインパーツ(初期ロット)の重量: 1.36グラム

形状の再現性は良好です。成形品の表面はSLS方式独特のざらざらした感じです。物性的には、靭性があり、強く折り曲げても折れません。

SLS方式の3Dプリンターは、金属を成形することもでき、自動車や航空機の部品の試作や少量生産にも使えるほど高性能ですが、プリンターの価格は数千万円クラスと、とても個人には手が出ません。SLS方式の成形品を手軽に、比較的安価に個人が発注できるShapewaysのサービスはたいへん貴重です。

このほど、Fablab Kitakagayaのメンバーの好意で、某研究室秘蔵のハイエンド3Dプリンターを使用して同じパーツを比較試作していただきました。使用したプリンターはDimensionシリーズ、成形方式は熱溶解積層方式(FDM:Fusion Deposition Modeling)、材質はABSです。

FDMで出力したメインパーツ(2ndロット)の重量: 1.32グラム

2ndロットは初期ロットからデザインを変更して軽量化されているためもあり、SLS方式の初期ロットよりも軽量に仕上がりました(ちなみにABSの比重は1.05と、ナイロン12に近い)。形状の再現性は良好ですが、成形品の表面には積層痕が目立ちます。物性的には、ナイロン12より硬い感じで、細い部分は強く折り曲げるとポキリと折れてしまいます。

最後に、再びSLS方式の3rdロットです。デザインをさらに見直して大幅な軽量化をはかっています。

SLSで出力したメインパーツ(3rdロット)の重量: 1.00グラム

各部の肉厚を下げたり、軽め穴をあけることで、3割近い軽量化が達成され、1グラムをきるかどうかというところまできました。実用強度はまったく問題ありません。

手軽に使えることもあり、今後もパーツ生産にはShapewaysを利用していく予定ですが、Fablab Kitakagayaに配備予定の3DプリンターはFDM方式なので、FDM方式に適したパーツデザインも考えていこうと思います。

 


特報!2013:Flapping Wing Factory goes to digital 3D!

2012-12-06 23:19:02 | 関連情報(その他技術関係)

Maker Faire Tokyo 2012で行ったプレゼンにおいてすでに発表済みですが(発表資料)、いよいよ2013年より、当工房はデジタル3Dによるパーツ製作に移行します。

最近話題のMaker Movementについての解説(たとえばこんなの)の中で、デジタル3Dによるものづくりのメリットは繰り返し熱く語られていますが、企業ではなく一個人が、複雑な形状の高精度のパーツを容易に作成することができるようになったのは画期的なことです。当工房でも、さっそくこの技術をとりいれます。代表的な機体の主要パーツをデジタル・データ化してダウンロード可能にするほか、3Dプリントサービスを利用して、成形パーツの頒布も行っていく計画です。

以下はプレゼン資料からの抜粋:

そして最新の状況:
MFT当日には間に合わなかったのですが、3Dプリントサービス大手の米Shapeways, Inc.に発注していたパーツの第一便がこのほど到着しました。

きっちり梱包されたカートンを開けると、パーツが緩衝材にくるまれてこんな感じで入っています:

個々のパーツアップ。これは超小型飛行体研究所のTB30用のギアハウジング:

こちらはフライング・クローラ用の基本パーツ一式:

以上のパーツはおそらく粉末焼結法で作成されていると思われますが、下の画像は同じパーツをあえて光造形法を指定して作成してみたもの:

粉末焼結法で作ったパーツは表面がざらざらしており、また材質的にはABSライクな感触ですが、光造形法で作ったパーツは表面が滑らかで、POMなどのエンプラに近い硬質な感触です。

プレゼン発表では、米国からの輸送となり納期がかかると説明しましたが、(装置の空き具合にもよるかと思われますが)今回のパーツの中には、発注のわずか3日後に届いたものもあります(UPSによる配送)。費用も、送料(日本向けは19.9US$)を別とすればかなり廉価で、気軽に使えるサービスと感じました。

この週末には、これらのパーツを実際に使用して機体を組み上げ、飛ばしてみる予定です。お楽しみに!