羽ばたき飛行機製作工房

小型羽ばたき機(オーニソプター、Ornithopter、Flapping Wing)専門の研究開発サイトです

トンボの飛行を完全再現した飛行ロボット BionicOpter

2013-03-30 09:08:13 | 関連情報(羽ばたき機技術関係)

2年前に、素晴らしい鳥型の飛行ロボットSmartBirdを発表したドイツのFAメーカーFesto社が、前回と同じハノーバーメッセで、これまた空前の完成度でトンボの飛行を再現した飛行ロボットBionicOpterを公開することがわかりました。

プレスリリースやサイトの記事によると、この機体はトンボの翅の複雑な羽ばたきの仕組みを史上初めて完全再現した、と豪語。空中で全方向への移動、空中停止、滑空などを自由自在に行え、それでいて操縦も容易とのこと。さらなる詳細については、メーカーサイトのPDFを参照(英文)。また、YSFCブログで、栗田さんがいちはやく日本語で紹介されています(記事)。

当方としては、大企業の「本気」に脱帽するしかありませんが、画像・映像を子細に観察すると、採用されている羽ばたきメカニズムなどは当方で以前試作していたデザインと通ずるものもあり、考えることは同じだなーと、少しうれしくもあります。
資料では、メカニズムやボディーには、アルミニウムとポリアミド(ナイロン)、ABSを使用と記載されています。このうちポリアミドは、当方でも最近利用している3Dプリント技術(SLS)で成形されているようです。3Dプリントは、出力サービスを利用することで、大企業が使う技術を個人でも使えるようになっており、画期的な状況が到来していると思います。
何にせよ、また一つ、開発史に残る羽ばたき飛行機が完成したことに祝意を表したいと思います。

栗田さん最新情報ありがとうございます。


3Dプリントパーツ 成形方法による比較(続き)

2013-03-27 22:01:15 | 関連情報(その他技術関係)

前の記事で、細いパーツの強度について質問があったので、少し補足。

質問対象は、前の記事では紹介しなかったこのパーツ:

ロッキング・アームにあたる部品です。画像右側の細い部分は、幅1.5ミリ、厚さ1ミリほど。SLS方式で成形したナイロン12製のパーツは柔軟で、折り曲げてもすぐに元に戻り、折れることはありません。
SLS方式では、チャンバーに充填された粉末の中にパーツが成形されるため、ほぼどんな形状でも出力が可能です。

いっぽう、FDM方式の3Dプリンターでは、パーツはこのように出力されます:

ワークプレート(Dimensionシリーズでは使い捨て)の上に、パーツを溶融押し出し成形していきます。ロッキング・アームは上記画像の赤丸の部分に成形されています。Dimensionシリーズの場合は、まず灰色のサポート材といわれる樹脂が出力され、次に黒いABS樹脂が出力されます。成形が完了すると、サポート材に埋まったABSパーツをバリバリと引きはがして取り出します。実をいうと今回の試作では、ABSパーツを取り出す際に無理に力をかけたため、パーツが粉々に割れてしまいました。サポート材は溶剤で溶かして除去するなど、正しい方法を用いれば、成形品を破損させずに取り出せるはずです。とはいえ、SLS/ナイロン12パーツに比べて、FDM/ABSパーツがやや脆いことは否めないようです。

形状をくふうすることで、それぞれの成形方式にあったパーツをデザインすることができると思われます。以前なら高額な金型を起こさないとわからなかったことが、大きな費用をかけずに確認できるのは、3Dプリントの大きな利点といえます。


 


3Dプリントパーツ 成形方法による比較

2013-03-27 07:00:00 | 関連情報(その他技術関係)

これまで何度か書いたように、開発中の「空飛ぶパンツ2」のパーツは、海外の3Dプリント出力サービスShapewaysに発注しています。このサービスは、成形方式や出力材質をいろいろ選択できるのが特長ですが、当方では、いつも一番安価な「Strong & Flexible White」で出力しています。サイトを読んでいくと、このタイプは、レーザー粉末焼結(SLS:Selective Laser Sintering)方式で成形され、材質はナイロン12というエンジニアリングプラスチックの一種であることがわかります。ナイロン12は比重1.02と、エンプラとしては比重が小さいこともあり、軽量な成形品が作成できます。

SLSで出力したメインパーツ(初期ロット)の重量: 1.36グラム

形状の再現性は良好です。成形品の表面はSLS方式独特のざらざらした感じです。物性的には、靭性があり、強く折り曲げても折れません。

SLS方式の3Dプリンターは、金属を成形することもでき、自動車や航空機の部品の試作や少量生産にも使えるほど高性能ですが、プリンターの価格は数千万円クラスと、とても個人には手が出ません。SLS方式の成形品を手軽に、比較的安価に個人が発注できるShapewaysのサービスはたいへん貴重です。

このほど、Fablab Kitakagayaのメンバーの好意で、某研究室秘蔵のハイエンド3Dプリンターを使用して同じパーツを比較試作していただきました。使用したプリンターはDimensionシリーズ、成形方式は熱溶解積層方式(FDM:Fusion Deposition Modeling)、材質はABSです。

FDMで出力したメインパーツ(2ndロット)の重量: 1.32グラム

2ndロットは初期ロットからデザインを変更して軽量化されているためもあり、SLS方式の初期ロットよりも軽量に仕上がりました(ちなみにABSの比重は1.05と、ナイロン12に近い)。形状の再現性は良好ですが、成形品の表面には積層痕が目立ちます。物性的には、ナイロン12より硬い感じで、細い部分は強く折り曲げるとポキリと折れてしまいます。

最後に、再びSLS方式の3rdロットです。デザインをさらに見直して大幅な軽量化をはかっています。

SLSで出力したメインパーツ(3rdロット)の重量: 1.00グラム

各部の肉厚を下げたり、軽め穴をあけることで、3割近い軽量化が達成され、1グラムをきるかどうかというところまできました。実用強度はまったく問題ありません。

手軽に使えることもあり、今後もパーツ生産にはShapewaysを利用していく予定ですが、Fablab Kitakagayaに配備予定の3DプリンターはFDM方式なので、FDM方式に適したパーツデザインも考えていこうと思います。

 


空飛ぶパンツ2改良型パーツ到着→さっそく組み立て

2013-03-23 01:36:41 | 製作記事(羽ばたき機)

先週Shapewaysに発注していた空飛ぶパンツ2改良型のパーツが、発注後ちょうど1週間で到着しました。

さっそくパーツ重量を計測したところ、従来品に比べ10%以上の軽量化が実現しており、うれしい限りです。パーツの嵌合も改善され、後加工なしでもスムーズに可動するようになりました。

いつものバッグに入って到着:

改良型パーツの重量:

改良前のパーツ:

さっそく組んでみました:

総重量は、輪ゴム2本装着時で2.1gと、以前より2割近く軽量化。輪ゴムを1本に減らした場合は、なんと1.9gと、ついに2gをきりました。その分、飛びもさらに軽やかになり、いよいよワークショップ本番に使える完成度に達しました。

というわけで、これから、本格的にワークショップ開催準備に入ります。お楽しみに!


Fablab Kitakagaya始動

2013-03-21 12:00:00 | イントロダクション

Fablabは、市民に広く開かれたものづくりの拠点として、Maker movementの盛り上がりともあいまって、世界中で準備や開設が進んでいます(Fablabとは:Fablab Japan Webサイトより)。

日本では、Fablab KamakuraFablab TsukubaFablab Shibuya、またネーミングは少し違いますが、大垣のf.Laboなどが先行して活動を開始しています。それぞれ地域の特色を活かした独自の展開を見せており、今後が注目されます。

そして2013年4月、関西でもFablab Kitakagayaがいよいよ本格的に始動します。

これまで2年近くにわたって、コアメンバーや多くのサポーターにより準備が進められてきており、年明けからは、大阪市住之江区北加賀屋に正式にスペースを借り受け、目下、室内の改装や設備の導入などが急ピッチで進んでいます。ロケーションが当工房からすぐ近くということもあり、筆者も昨年末からお手伝いに通わせていただいています。

Fablab Kitakagayaは、4月中旬の正式オープン後、毎週末を中心に講習会やワークショップ、イベントなどさまざまな活動を行っていきます。当工房も、5月下旬に羽ばたき飛行機製作ワークショップを開催させていただく予定です(3Dプリント羽ばたき機「空飛ぶパンツ2」はこのために開発を進めている機体です)。

また、Fablab Kitakagayaは、地域に根ざしながら、世界中のFablabに集うMaker達とのネットワークを形成し、ノウハウの蓄積や共有、コラボレーションを進めていきます。

お楽しみに!


新作3Dプリント羽ばたき機 空飛ぶパンツ2X

2013-03-17 19:00:00 | 製作記事(羽ばたき機)

「空飛ぶパンツ2X」はメインパーツを3Dプリントで作成したゴム動力の小型羽ばたき飛行機です。羽ばたき翼は4枚あります。前作「空飛ぶパンツ2」を少しだけ改造して作りました。

「空飛ぶパンツ2」同様、尾翼をもたないデザインですが、飛行中は羽ばたき運動によって機体姿勢が動的に安定します。

「空飛ぶパンツ2」との比較:

飛行テストの様子(画像クリックで動画にジャンプ):

http://youtu.be/rri8BGHtdfw

日本語キャプション付き動画

飛行テストの結果が良好だったので、パーツの3D-CADデータを作成し、出力サービスに3Dプリントを発注予定です。

機体スペック
全幅                 300mm
全長                 155mm
飛行重量              2.56g
(動力用輪ゴム2本含む)

  製作年月 2013年03月

 

 


空飛ぶパンツ2改良型パーツ発注完了

2013-03-16 00:00:00 | 製作記事(羽ばたき機)

ワンオフの軽量化改造が良好な結果だったので、いつもの123D Designを使って3D-CADデータに反映しました。重量は当初に比べて約8%程度削減されています。改良型パーツをShapewaysに発注済です。発注数量は4月末のニコニコ超会議2超技術部飛びものワークショップで使用する分(+試作用、予備パーツ若干)。本格的に金型を製作して量産する場合と異なり、必要なだけ少しずつ生産できるのは、3Dプリント方式の大きな特長といえます。入荷が楽しみです。


空飛ぶパンツ2を軽量化しました

2013-03-10 10:00:00 | 製作記事(羽ばたき機)

空飛ぶパンツ2は、ニコニコ超会議2ほかで開催予定のワークショップ用キットとして開発中の機体です。メインパーツは3Dプリンターで出力していますが、さらなる軽量化のため、試験的にパーツに軽め穴を開けてみました。結果は、総重量2.38グラムと、現状に比べて10%近い軽量化に成功。強度的にもまったく問題ありませんでした。次回ロットはこのデザインで発注しようと思います。
ちなみに発注先はここ。現在、旧デザインのCADデータを試験的にダウンロード可能にしてありますので、CADソフトや3Dプリンターをお持ちの方はどうぞ。ただし、ShapewaysのSLS成形向けに特化したデザインなので、普及版のFFF(溶融積層成形)方式のプリンターでは厳しいかもですあしからず。新デザインのデータも近日中に公開予定です。

機体スペック
全幅                 400mm
全長                 155mm
飛行重量              2.38g
(動力用ゴム含む)

  製作年月 2013年03月

 


「ドコモとコドモとオトナの科学 #2」来週放送です

2013-03-09 10:00:00 | 案内(TV放映)

筆者が原型デザインを担当した羽ばたき飛行機「未体験飛行物体デルタ・ツイスター」を、全編で取り上げたTV番組が、いよいよ来週放送されます:

ドコモとコドモとオトナの科学 #2

放送局: スマホ向け放送局nottv (ノッティーヴィー)
放送日時: 2013年3月12日(火)22:45〜23:00

以下は番組情報からの引用:

番組内容

学研「大人の科学マガジン」の付録を、豪華ゲストがコドモゴゴロに戻って作って遊びたおします。出演:メディアアーティスト八谷和彦

番組詳細

第二回目は「未体験飛行物体デルタ・ツイスター」。羽ばたきながら、ゆっくりと空を飛ぶこの飛行機を、メディアアーティストの八谷和彦さんと一緒に作って遊びます。今回のテーマは「みんなでつくる。」コドモとオトナが一緒につくる、オトナがコドモに還ってつくる、ワークショップの様子をご紹介。出来上がった飛行機をみんなで一緒に飛ばしたり、ゲストの羽ばたき飛行機の専門家(注)による、不思議な羽ばたき機の数々もご覧いただけます。誰もが持っている「空を飛ぶ夢」に近づける、羽ばたき飛行機の世界をお楽しみください。

(注:「ゲストの羽ばたき飛行機の専門家」との触れ込みで、筆者も出演しています^^)

主演の八谷和彦さん:

ワークショップの様子(画面奥中央が筆者):

テストフライトの様子:

飛行中のデルタ・ツイスター:

 なお、この番組の視聴は無料で、nottv対応機種のdocomoのスマートフォンをお持ちの方であればどなたでもご覧いただけます(対応機種はこちらを参照)。
視聴者にはプレゼントキャンペーンも用意されているそうです。視聴可能な方はぜひご覧になってみてください!