羽ばたき飛行機製作工房

小型羽ばたき機(オーニソプター、Ornithopter、Flapping Wing)専門の研究開発サイトです

独Festo社の新作飛行ロボットBionicFlyingFox

2018-03-30 17:30:00 | 関連情報(羽ばたき機技術関係)

生物の動きを巧妙に再現したロボットを毎年発表しているドイツのFAメーカーFesto社が、今年はオオコウモリ型の飛行ロボットBionicFlyingFoxを公開しました。

今回の新作は、これまで発表された飛行ロボットの集大成ともいえる内容で素晴らしいです。複雑な機構を組み込んでいるため、翼幅2.3メートル、自重580グラムとサイズと重量がかさむのは致し方ないところ。実物のコウモリのうちでも小型のものは自重わずか5-9グラムであることを考えると、こと小型化に関してはまだまだ研究の余地があります。

Festo社発表資料はこちら

これまでに発表された飛行ロボットの数々:
精密な鳥型の羽ばたき機SmartBird
トンボの飛翔を完全再現したBionicOpter
自律飛行するロボット蝶々eMotionButterflies


自律飛行するロボット蝶々eMotionButterflies

2015-03-28 12:00:00 | 関連情報(羽ばたき機技術関係)

数年前から、精密な鳥型の羽ばたき機SmartBirdや、トンボの飛翔を完全再現したBionicOpterなどを発表してきたドイツのFAメーカーFesto社が、今年は自律飛行するロボット蝶々eMotionButterfliesを発表しました。これまでと同様ハノーバーメッセで公開される模様。

今回の新作は、蝶の飛翔を生き生きと再現しているだけでなく、自重30グラム足らずの機体にGPSを内蔵し、周囲の監視カメラからのデータとも連携して、複数の機体の群れが人間による操縦なしに室内を自律飛行するという、昆虫型飛行ロボットと呼ぶにふさわしいスペックになっています。

大企業がここまで本気を出してくると当方のようなアマチュアは立つ瀬がないのですが、小型羽ばたき飛行機というテーマに継続的に取り組み続ける姿勢には敬服です。当方も今年は自律飛行の技術的可能性を探求しようと思っていた矢先でもあり、おおいに刺激になります。

Festo社発表資料はこちら


トンボの飛行を完全再現した飛行ロボット BionicOpter

2013-03-30 09:08:13 | 関連情報(羽ばたき機技術関係)

2年前に、素晴らしい鳥型の飛行ロボットSmartBirdを発表したドイツのFAメーカーFesto社が、前回と同じハノーバーメッセで、これまた空前の完成度でトンボの飛行を再現した飛行ロボットBionicOpterを公開することがわかりました。

プレスリリースやサイトの記事によると、この機体はトンボの翅の複雑な羽ばたきの仕組みを史上初めて完全再現した、と豪語。空中で全方向への移動、空中停止、滑空などを自由自在に行え、それでいて操縦も容易とのこと。さらなる詳細については、メーカーサイトのPDFを参照(英文)。また、YSFCブログで、栗田さんがいちはやく日本語で紹介されています(記事)。

当方としては、大企業の「本気」に脱帽するしかありませんが、画像・映像を子細に観察すると、採用されている羽ばたきメカニズムなどは当方で以前試作していたデザインと通ずるものもあり、考えることは同じだなーと、少しうれしくもあります。
資料では、メカニズムやボディーには、アルミニウムとポリアミド(ナイロン)、ABSを使用と記載されています。このうちポリアミドは、当方でも最近利用している3Dプリント技術(SLS)で成形されているようです。3Dプリントは、出力サービスを利用することで、大企業が使う技術を個人でも使えるようになっており、画期的な状況が到来していると思います。
何にせよ、また一つ、開発史に残る羽ばたき飛行機が完成したことに祝意を表したいと思います。

栗田さん最新情報ありがとうございます。


マイクロ羽ばたき機開発:海外での取り組み

2012-11-08 09:58:26 | 関連情報(羽ばたき機技術関係)

小型羽ばたき飛行機の開発に関して、当工房では、思いつくまま楽しみながらを旨としてマイペースで取り組んでいるが、海外、とくに北米では、政府の支援も得ながら、大学等の研究機関で組織的な取り組みが進んでいる。とくに目に付くプロジェクトを紹介:

その1:Harvard Microrobotics Lab

ハーバード大学ではさまざまな形状のマイクロロボットが研究されているが、数年前から、RoboBeesと称する昆虫型の極小羽ばたき機の開発が続けられている。
これまでのところは、外部給電によるテザード・フライトのステージにとどまっているようだが、最終的には、数ミリメータサイズの機体に各種センサ・プロセッサを搭載して自律飛行可能な機体を実現しようとしている模様。
Harvard Microrobotics LabのYouTubeチャンネル

その2:Robot Dragonfly by TechJect Inc.

今週のgizmagの記事で詳しく紹介されている、筆者的には目下一番注目のプロジェクト。その名の通りトンボのような4枚翅を自在に羽ばたかせ、空中停止や宙返りなどの機動を行える、手のひらに載るサイズのハイテク飛行ロボット。ジョージア工科大学のメンバーにより、米空軍からの百万ドルの資金援助も得ながら4年間にわたって開発が進められてきた。すでに開発と量産化のためのベンチャー企業TechJect Inc.が設立されており、今流行りのクラウド・ファンディングによって量産化資金も確保したうえで、各種の量産型機体を2013年中に発売予定とのこと!(予約受付中^^)

実は当工房でも、ほぼ同様のデザインの機体の開発に着手しようとしていた矢先のことで、完全に先を越された感じ。脱帽!


スーパー鳥形ロボット日本にあらわる

2012-06-10 11:44:19 | 関連情報(羽ばたき機技術関係)

このところデルタ・ツイスター系の記事ばかりでいささか食傷気味と思われるので、ちょっと気分を変えて別の話題、といってもやっぱり羽ばたき機関係。
しばらく前に、「カモメの飛翔を再現した大型飛行ロボットが開発される」というタイトルで、ドイツFesto社が開発したカモメ型飛行ロボットSmartBird記事をアップした。記事では「実際の鳥の飛翔メカニズムをおそらくこれまでで最高のレベルで再現している」と興奮気味に紹介したのだが、それからわずか一年ほどで、ほぼ同様の機体が日本にも出現した。それも、企業ではなく、個人で独力で製作されたということで、さらに驚きである。

その機体を製作されたのは、自作工房というサイトを運営されているhiroさん。hiroさんは別に自作PC大図鑑というサイトも運営されており、こちらはタイトル通り自作PC関係の話題を扱っている。自作工房はそのスピンオフで、周辺機器のレビューなどをブログ形式で扱っているとのこと。その中で、つい最近登場したのが以下の記事

鳥形羽ばたきラジコン 試作

地上テストおよびフライトテスト動画

SmartBirdを参考にしたとのことだが、「youtubeの動画くらいしか参考資料がないので手探りで」製作されたとのこと、また、「機体の設計、加工はもちろん、サーボのミキシング回路まで自作」とのことである。すごい!
製作には、本家同様CAD/CAMが駆使されており、なんとギアまでNC加工で削りだされている(それも高価なPEEK材!)。CFRPの軽量リブ構造は、ほれぼれする出来である。
ここまで複雑な構成をもった機体を設計・製作し、実際に飛行できるように仕上げるのは、並大抵の技術レベルではない(飛行体の場合は尚更)。大企業であるFesto社の開発チームにも何ら引けをとらないといってもいいのではないだろうか。

これほどの機体が開発されているという情報を、当工房では不勉強にして全くキャッチできていなかったが、このほどhiroさんから直接連絡をいただき、知るに及んだ次第。紹介・転載許可も含め、hiroさんありがとうございます。

今回は試作1号機に過ぎず(それでこの完成度)、これからまだまだ改良を続けていくとのこと。今後が本当に楽しみ。当工房もがんばらないと!


カモメの飛翔を再現した大型飛行ロボットが開発される

2011-03-27 15:13:40 | 関連情報(羽ばたき機技術関係)

自分のところの開発が滞っている間に、海外でまたしても新しい羽ばたき機が登場した模様。

前回紹介したハチドリ型ロボットもすごかったが、今度のカモメ型飛行ロボットは、実際の鳥の飛翔メカニズムをおそらくこれまでで最高のレベルで再現している。

開発したのはドイツ・シュツットガルトに本拠を構えるエンジニアリング企業Festo社。元々空気圧機器の世界的メーカらしいが、ここ数年は、Bionic Learning Network というプロジェクトの一環で、AirRayAirPenguinなどのユニークな飛行ロボット達を毎年発表して注目を集めている。その最新作がこのSmartBirdだ。

SmartBirdはCFRP製の軽量なフレームに23Wの出力をもつ小型のブラシレスモータと450mAhのLi-poバッテリ、通信システムとマイクロコントローラ、4基のマイクロサーボを内蔵している。左右の羽ばたき翼は単に一体で上下動するのでなく、内翼と外翼が分割されており、胴体からのリンケージにより本物の鳥のようななめらかな羽ばたきシークエンスを実現している。また、マイクロサーボのうち2基は外翼に内蔵されており、羽ばたきの1サイクルの間に外翼の迎え角を能動的に変化させて(言い換えれば、翼にひねりを与えて)、羽ばたき効率を大きく高めている。残りのマイクロサーボは胴体内に配置され、リンケージを通じて胴体の頭部と尾部を本物の鳥のように左右に振ることで、機体に高い機動性を与えている。2.4GHzの通信システムは双方向で、飛行中の機体の状況をリアルタイムでモニターして、機体制御に反映することができる。2mにおよぶ主翼スパンに対し全備重量は500g以下と軽量に抑えられているので、スローモーション映像のように緩やかな羽ばたきで非常にゆっくりと飛行する。全くもってすばらしい完成度で、同社のテクノロジーデモンストレータとして今後内外の展示会等に出品され、大きな注目を浴びるのは間違いない。



ここまでやられるともうホントに脱帽モノで、対抗意欲も失せてしまうが・・・もうすぐ春でもあるし、冬眠から覚めたらがんばってみようかと。

Festo社ホームページ

同上SmartBird紹介ページ

YouTube映像

最後に:としちゃん情報ありがとうございます。さっそく記事アップしました。

追記:当記事アップ時点では気づいていませんでしたが、すでに一日早くYSFCの栗田さんが詳しく紹介されていました。内容がカブってしまいましたがあしからずご容赦ください

2011/04/03追記:再びYSFCの栗田さんがSmartBirdプロジェクトのアップデート情報を提供してくださいました。ありがとうございます。紹介いただいた新しい動画では、開発陣がプロジェクトに注いだ情熱と苦心、成果が鮮やかに描き出されていますね。すばらしい!

YouTube映像(新)


ハチドリ型の偵察ロボットが開発される

2011-02-20 11:32:05 | 関連情報(羽ばたき機技術関係)

たいへん久しぶりの更新になってしまったが、このニュースは外せないだろうということで紹介。

AeroVironment Develops World’s First Fully Operational Life-Size Hummingbird-Like Unmanned Aircraft for DARPA
米国AeroVironment社、 DARPAの支援で世界初のハチドリ型飛行ロボットを開発

 

この試作羽ばたき機のサイズは、上右の写真で手のひらとの比較でわかるとおり、実物のハチドリに近く、翼幅16センチ、飛行重量19グラム(バッテリ含む)。超小型の無線ビデオカメラを搭載しており、リアルタイムに送信される映像を確認しながら操縦できる。ホバリングやすばやい移動、垂直離着陸、はては宙返りまで可能で、滞空時間は10分を超えるとのこと。
まあここまでなら同クラスのマイクロ飛行体でもすでに行われているが、当ブログで注目しないわけにはいかないこの試作機の大きな特徴は、このような機動性能を、補助翼などを使用することなく、2枚の羽ばたき翼の制御だけで実現しているところである。おそらくは小型ジャイロの助けも借りて、翼の付け根でピッチコントロールのようなことを行っていると思われるが、詳細は不明であり、このあたりを解明した続報が待たれる。



現地ではさっそく主要メディアがニュースとしてとりあげている(動画付き):
Bird's Eye View - ABC News
It's a bird! It's a spy! It's both - Los Angeles Times
World’s first hummingbird-like unmanned aircraft system takes flight - AERO GIZMO

ナレーションによると、このプロジェクトにはDARPAが4百万ドルの資金を援助したとか。人知れず窓際に留まってこっそり偵察を行うロボットなどとしての実用化が期待されている模様。軍事目的もさることながら、スパイとか浮気調査とかのニーズにぴったり来そうである(怖い怖い)。

AeroVironment社ホームページ


巨大翼竜の長距離飛行

2010-11-21 09:33:51 | 関連情報(羽ばたき機技術関係)

久しぶりのブログ更新(実は1ヶ月前に書いてあった記事をアップし忘れていた)。

ナショナルジオグラフィックニュース(日本語版)に、2010年10月19日付で、生物の羽ばたき飛行に関する興味深い記事が掲載されている:

大陸間を休まず飛行できた巨大翼竜

記事によると、ピッツバーグにあるチャタム大学の古生物学者マイケル・ハビブ氏が、最新の研究において、何千万年前に生きていた古代生物である巨大翼竜の羽ばたき飛行の実態に、新しい角度から光をあてているとのこと。
巨大翼竜は、最大のものは翼長10m超、体重200kgを超えるものもいたと考えられている。現存する飛行生物の観察にもとづく推論では、そのように巨大な生物が地上から自力で飛び立ったり、空中を自在に飛び回ったりするのは不可能だったのではないかといわれている。
ところがハビブ氏と彼の賛同者たちは、「翼竜は現代の鳥とは異なる方法で飛行していた可能性がある」と考えているらしい。たとえば、「巨大翼竜は現代のコウモリの仲間と同じように4本の脚をすべて使って空中に飛び上がり、それから羽ばたいていたのかも知れない」とハビブ氏達は考えている。
巨大翼竜達は、10,000マイル(16,000km)もの連続飛行距離を誇り、大陸間を頻繁に飛行して、地球全域を住処にしていたのかもしれないと記事は結んでいる。実に壮大な古代世界の情景ではないか。

この記事を当ブログで紹介したのは、体重200kgの翼竜が自在に空を飛べたのなら、有人羽ばたき飛行機による長距離飛行も不可能な話ではないと思えたからである。翼竜の身体構造や機能にはまだ解明されていない謎が多いらしい。それはいわば失われたスーパーテクノロジーであり、有人羽ばたき飛行実現への鍵ではないだろうか、早く解き明かされるのを待ち望みたい。

ちなみに英文のオリジナル記事はこちら→ Giant Pterosaurs Could Fly 10,000 Miles Nonstop


(画像は同じくナショナルジオグラフィックニュースの2009年1月7日記事より引用)


カナダの人力羽ばたき飛行機がフライト成功

2010-09-23 21:38:28 | 関連情報(羽ばたき機技術関係)

先月アップした記事で、有人羽ばたき飛行機開発の歴史を振り返ったが、くしくもほぼ同じ時期に、カナダのトロント大学のチームが、最新型の人力羽ばたき飛行機でフライトに成功していたという、大ニュースがもたらされた。

2010/09/22付gizmag記事→ “Snowbird” claims record for sustained flight of a human-powered ornithopter




記事によると、チームには、2006年に同じトロント大学で推進補助用のジェットエンジンを備えた動力羽ばたき機UTIAS Ornithopter No.1を開発したメンバーや、自律飛行可能なマイクロ羽ばたき機DelFlyで有名なオランダのデルフト大学から参加したメンバーもいるとのこと。最先端スタッフ大結集の様相である。

動画を見ると、発進は自動車に牽引されてのトウ・ランチであり、地上から自力で離陸、上昇飛行したといえるのか微妙なところもあるが、今後さらにテストを重ねて記録向上が期待される。

それにしても、ファンタジーとも受け取られがちな人力羽ばたき飛行機開発にこれだけの組織的な努力が続けられているのは素晴らしいことであり、同じ道を歩もうと志す者にとっては心強い道しるべである。こちらもがんばろう!


有人羽ばたき飛行探求の歴史

2010-08-14 09:27:32 | 関連情報(羽ばたき機技術関係)

先日金沢21世紀美術館で行われたワークショップで、参加者に「羽ばたき飛行の歴史」についてかんたんな説明をしたのだが、その中で「有人羽ばたき飛行の試みはまだ成功していない」と話してしまった。実はこれは正しくない。実用化されたり広く認知されていないだけで、人力/動力とも、有人飛行に成功した記録がある。インターネット上では最も充実した羽ばたき飛行機の専門サイトであるThe Ornithopter ZoneのWhat's Been Doneセクション、Manned Ornithopter Flights の項で、これまでに成功した有人羽ばたき飛行の記録について詳しく紹介されている(英文)。ここではその要約を掲載する。

Alexander Lippischの人力羽ばたき機

 Alexander Lippischは、20世紀前半に活躍したドイツの高名な航空工学者で、第二次大戦中に世界初の実用ロケット機Me-163の機体デザインを行ったことなどで知られている。
 戦前、Lippischはエンジンなどの動力に拠らない人間の筋力による飛行(人力飛行機)の可能性に関心をもち、数々の実験を行った。彼が、人力を効果的に飛行のための推力に変換する方法として選んだのが羽ばたき翼であった。
 1929年、Lippischは、彼の製作した実験機(グライダーのような大きな固定翼と、プロペラ代わりの小さな羽ばたき翼をもったハイブリッド・デザインだったとされる)に、若く体力のあるテストパイロットを乗せて、トウ・ランチ(牽引による発進)による飛行テストを行った。テストでは実験機は300メートル近くの距離を飛んだとされるが、当時の詳しい記録が残されていないため、これが真の羽ばたき飛行だったのか、それとも滑空の延長に過ぎなかったのか、判定が分かれて決着していない。



 その後も、現代に至るまで人力による羽ばたき飛行の試みは散発的に行われているものの、じゅうぶんに成功したといえる例はまだない模様である。
 戦後、人力飛行機の開発は大きく進展し、CADや新素材の活用により、数十キロメートルもの航続距離をもつ機体も出現しているが、これらは推進装置として羽ばたき翼ではなく、大型のプロペラを使用している。

Adalbert Schmidの動力羽ばたき機

 Adalbert Schmidは、前述のLippischと同時期に活動したドイツの航空エンジニア。Lippisch同様の人力羽ばたき飛行から始めたが、次のステップとして、機体に小さなオートバイ用の内燃エンジンを取り付けて動力源とすることで、十数分に及ぶ定常飛行を成功させた(1942年)。彼の機体は、やはりLippisch同様、大きな固定翼と、小さな羽ばたき翼をもったハイブリッド・デザインだった。



 戦争による中断の後、Schmidは1947年にも、市販のグライダーを改造した羽ばたき飛行機を製作したが、資金難のためその後の開発は途絶してしまった。



Vladimir Toporovの人力羽ばたき機

 ロシアのVladimir Toporovと彼の研究グループは、1990年代中盤に、独自のデザインによる人力羽ばたき機の実験を行った。彼らの羽ばたき機もじゅうぶんな飛行距離を達成することはできなかったが、2枚ではなく4枚の翼を駆動することで、2枚翼の羽ばたき機にみられる振動の問題を改善していた。今後の有人機開発の参考になる成果である。



Yves Rousseauの人力羽ばたき機

 フランスのYves Rousseauは、ウルトラライトプレーンの分野で数多くの世界記録をもち、自ら機体のの開発も行って成功したが、1995年以降、人力による羽ばたき飛行に取り組んだ。市販のウルトラライトプレーンを改造した機体で、2006年には64メートルの距離を飛行するに至ったが、不幸なことにRousseauはテスト中の事故で重傷を負い、その後の取り組みは中断してしまった。



トロント大学の動力羽ばたき機

 カナダのトロント大学の航空工学研究所(UTIAS)のJames DeLaurier教授に率いられた研究チームは、2006年、推進補助用のジェットエンジンを備えた動力羽ばたき機UTIAS Ornithopter No.1を初飛行させた。機体は横風にあおられて大破してしまったが、飛行距離は約300メートル、滞空時間は14秒だった(YouTubeに動画あり)。



日本の人力羽ばたき機

 鳥人間コンテストへの度々の出場で有名な京都大学鳥人間チームShooting StarsのOBが中心となり1993年に設立されたSilver Shooting Starsが製作した人力羽ばたき機「迦楼羅(かるら)」。残念ながら本格的な飛行テストを開始する前に開発が中断している(関連ホームページ)。



 以上の例から、ライト兄弟による固定翼機による動力飛行成功後は、有人羽ばたき飛行の試みはそれほど多くはなく、また必ずしも大きな成功を収めていないことがわかる。大量・高速輸送などの商業的な応用が見込めず、財政的なサポートが得られにくいことも背景にあると思われる。一方、スポーツ航空の分野ではまだ見込みがありそうなので、今後あらたな取り組みが期待される。

 また、上記の例のうち最も成功したと思われるAdalbert Schmidの機体は、大きな固定翼を兼ね備えたハイブリッド・デザインであり、純粋な羽ばたき機といえるのかという議論もある。これに対しては、自然界には鞘翅目の昆虫(いわゆる甲虫類)のように、飛行中、湾曲した甲羅のような前翅(鞘翅)を拡げ、あたかも固定翼のように使用している例もあるという事実が、反例としてあげられるかと思う。



 ひとことで羽ばたき飛行といっても、さまざまなバリエーションがあり、有人飛行のためにはどの方式が最適なのか、まだまだ研究が必要かと思われる。

参考:
The Ornithopter Zone 「Manned Ornithopter Flights」(http://www.ornithopter.org/manned.shtml
Wikipedia「Ornithopter」
http://en.wikipedia.org/wiki/Ornithopter
Academic dictionaries and encyclopedias「Ornithopter」
http://en.academic.ru/dic.nsf/enwiki/197131