とんねるず主義+

クラシック喜劇研究家/バディ映画愛好家/ライターの いいをじゅんこのブログ 

コンビはセックスを語れ

2013年08月12日 01時52分49秒 | ワンフー日記



ワンフー日記、ひっさびさの更新です。


最近、スーパーカップルという言葉をおぼえました。


スーパーカップルとはポップカルチャーの用語で、主にドラマや映画のフィクションに登場する人気の高いカップルのことです。単に人気者というだけでなく、メディアや文化に大きなインパクトをあたえるほどの強力な相性で結ばれたカップルのこと。文学でいえばロミオとジュリエット、映画なら『俺たちに明日はない』のボニーとクライド、『タイタニック』のジャックとローズなど。


この用語を知るきっかけとなったのは、最近すっかりハマってるアメリカの昼メロAs The World Turns。いわゆる《ソープ・オペラ》とよばれるメロドラマで、日本の昼メロと同じくドロドロした人間関係と、あえりえねーほどの極端な物語展開が特徴。

ソープ・オペラというジャンルは何となく知ってたし、興味はまったくなかったのですが・・・As The World Turns(以下ATWT)に登場したこのスーパーカップルに、やられてしまった。





ルークとノア。


ネットサーフィンてやつは、おそろしいもんですね。どうやってルークとノアにたどりついたのか、今じゃまったく思い出せませんけども・・・ハマりました(ルークとノアの物語だけを編集してつないだものが、YouTubeにアップされています。「luke noah story」で検索)。


ふたりが初めてATWTに登場したのは2007年。大学入学を目前にしたティーンエイジャー同士で、イリノイ州の架空の町オークデールで出会い、恋に落ちる。それ以後、番組が打ち切りとなる2009年まで、彼らは同番組が生んだ多くのスーパーカップルのうちのひとつとして、そしてアメリカテレビ史上初の男性スーパーカップルとして、超人気者になります。






左がノア 右がルーク



ルークの方は、実は07年以前からのキャラクターでした。というか、ATWTはなんと50年以上も放送され続けた(!)超超長寿番組なんだそうです。なので、ルークの出生の物語とか、彼が育ったスナイダー一家の物語というのもずっとあって、それを追いかけるには、過去何十年もの放送をさかのぼって見ないといけない!!ひょえー


ソープ・オペラのこの一大叙事詩的壮大さ(とはいえドラマの展開は超チープ)にも、非常に魅力を感じつつある今日このごろです。が、ともかく今回は、ルークとノアだけに集中して紹介します。



まず、こちらの動画をごらんください。




(字幕:いいをじゅんこ 以下すべて同じ)
(@1:00のルークのセリフが抜けてます:「キャンドルライトにバラの花びらと羽根が舞う、みたいな?」)



ふたりは「初めてベッドを共にする夜」のことをあれこれ想像して語り合ってるのですが、まーなんとさわやかなこと。


・・・というか実は、この時点で彼らはつきあってすでに何ヶ月もたってます。まだベッドインしてないの!?と驚かれる向きもあるでしょう。アメリカのドラマじゃ、会ったその日にそうなっても、全然不思議じゃないですから。


なぜこんな展開になってるのかは、のちほど説明しましょう。わたしが注目したいのは、このシーンでのふたりの会話が、自然で、ウィットに富んでいて、とっても可愛いこと、そして、ここにコンビのあるべき姿さえ見出せるのではないか、ということなんです。


ふたりははじめはセックスについて語っていますが、話題は次第にカップルの生き方へと移っていきます。どんな関係でいたいのか。どんなふたりでいたいのか。そして、ふたりの目指す場所はどこなのか。


彼らは、「君と僕」と互いをわけて考えず、一貫して「僕ら」の単位で考えている。それが非常に良いです。ふたりが離れるなんて、彼ら自身とても想像ができないし、これ以上の相性の相手を望むことはできないと、わかっているからです。

そう思ってるのは周りも同じらしく、友だちが「お前らはもうふたりで1人だもんな」とさらりと言ったりするシーンもある。


ルークとノアのこの対話を見て、わたしは思ったのです。お笑いコンビだって、一度はこんな会話をしておくべきなんじゃないかと。


コンビの笑いについてはもちろん話すでしょうし、コンビとしての生き方、目標なんかも、きっと語り合う時点はあるのでしょう。しかしそれだけじゃなく、コンビは「ベッドインしたらどうなるか」をも語り合っておくべきだ!!


・・・いいを、とうとうトチ狂ったな、と、この時点で皆さんが引いて行く引き潮の音が聞こえてきそうですが・・・


メタファーではないのですよ。ほんとに本気に、もしこの相手とセックスするならどんな感じになるんだろう、と、語り合わずとも、考えてみるくらいは、してみるべきだと思う。ひょっとするとそこに、コンビの真髄みたいなものが見えてくるかもしれないではないですか?なんといっても、いったんコンビを組むからには、生涯連れ添う覚悟がないといけないのだから。


「とりあえずコンビでデビューして、ちょっと人気が出たらソロ活動に専念しよう」という考えなら、こんなこと必要ないですよ、ええ。でも、生涯連れ添うつもりでコンビを組むなら、心だけでなくフィジカルにも結びつく(少なくともその可能性を否定しない)こと---すなわち、心も体も相手に本気で恋をする---ことが必要です。


そういうところからのみ醸し出される色気、絆、相性---これこそが、大衆の心をつかむのです。とんねるずが他のコンビ芸人と決定的にちがうのはここで、いまだに多くのファンがタカ&ノリのフィジカルな接触に妙に心ときめかせるのも、そういう理由なのです。


はっきり言えば、とんねるずは、お笑い界のスーパーカップルです。絶対に別れない、他の人ではかわりになれない、誰もふたりの間に入り込む余地などない---そこまで強くファンに信じさせた“カップル”は、お笑い界では結局のところ、とんねるずしかいないわけです(一時期チュートリアルがその方向へ行こうとしてたが、頓挫してしまった)。



それなら、最近はやりのブロマンスっぽい雰囲気を作って、ベタベタイチャイチャしときゃあいいのか。いえそんなことはない。ということも、ルークとノアが教えてくれます。


ルークとノアは、アメリカのテレビの歴史に足跡を残したカップルでした。昼間の全米ネット(CBS)のドラマで、初めてキスをした男性カップルとなったからです。




ルーク&ノアの歴史的ファーストキス






ところが、彼らが2度目のキスをしたあと、いわゆるひとつの“上からの圧力”がかかる。なんと、ふたりのキスシーンを見せてはならぬというお達しが出たというのです。一部の視聴者からクレームが来たことや、子どもの視聴者に良くない影響がある、などの理由で・・・


もし日本の昼ドラで男性のゲイカップルがキスをしても、こんな騒ぎには絶対にならないでしょう。そういう意味で、アメリカ社会がいかに保守的かがよくわかる事例です。キス禁止令だなんてバカげたものを、よく出せたもんだ。



この禁止令の結果、次の動画のような事態になるわけ。
すこし長い動画ですが、最後まで見てください。






まさかの「キス寸止め」!!



唇が重なる直前にカメラがパンするなんていう大昔のドラマの手法が、21世紀のドラマでよもやふたたび使われようとは・・・ある意味おもしろいんだけども(笑)


この扱いに怒ったファンダムやゲイの公民権活動家たちが、ルークとノアの毎週の露出時間をネットで記録しつづけるなど、さまざまな抗議活動を展開したらしい。カップルなのに軽いキスさえしないというのは、アメリカ社会では不自然きわまりない。つまり、ゲイへの差別であるというわけです。


その甲斐あってか、ある時点からキスシーンが徐々に増えていった。ルークの下半身がマヒしたり、ノアがイラク人女性と偽装結婚したり、軍隊に志願したりと、わずか数ヶ月の間にありえない波瀾万丈が起きた末に、ふたりはついにベッドインを果たす(だがベッドの中にいるふたりの映像は一切なかった)。そして、カップルとしての普通のスキンシップを、視聴者が普通に見れるようになっていきます。


LGBTの権利を認める、という意味で、これはもちろん良いことでした。キス禁止令は間違っていた。


それは確かなんですが---そしてこういうことを言うとゲイの皆さんにすんごく怒られそうだけども---作劇上、キス禁止令が逆に有利にはたらいた面も、実はまったくないことはなかった。


たとえば、こんなシーン。









未公開シーンなので、例としてはまずいのですが・・・

ネット上では、ファンのお気に入り名シーンのひとつになっているようです。語り合い、ハグしあうだけなのに、見る者の胸をうつ何かがあるシーンです。


ルークとノアの場合、ただラブシーンを見たいという視聴者のヨコシマな願いがあるだけじゃない。ふたりの深い絆、互いを思いやる姿、関係性が育ち成熟してゆく過程、そんなものに、視聴者は魅了された。ふたりでいることのすばらしさを、ルークとノアが教えてくれる。それは、ゲイかヘテロかという境界をも越えてしまっているようなのです。


ちょっとした指先のふれあいとか、肩にまわした腕とか、そういうものに視聴者は感激していたのだと思う。見つめ合う目と目に、ふたりは心をこめた。俳優たちのすばらしい演技のたまものでもあります。


ちなみに、ルーク&ノアを演じた俳優のヴァン・ハンシスジェイク・シルバーマンは、私生活でも親友になったらしい。インタビュー映像など見ていても、あーほんとに仲良しなんだな~と思わせるものがある。そういうのって、やっぱりにじみでるものなんですよ。たとえ役を演じているときでも。



フィジカルだけじゃない。でも、心だけでは十分ではない。
コンビは、セックスを語るべき。


お笑いコンビのみなさん。とんねるずに続くお笑い界のスーパーカップルを、どうかめざしてください。

大衆の心をつかむもの、それはいま、スーパーカップルなのです!






ルークとノアは3年間で54回キスをした。
キス禁止令が出たせいで、彼らのキスの回数が逆に重要な意味を持つようになった。








シンディ・ローパー特別出演


























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2 コメント

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chiriraさん (ファイアー)
2013-08-16 13:05:49
chiriraさん、ごぶさたしております!
いつもありがとうございます!

海外ドラマといっても、このソープ・オペラと呼ばれるジャンルはほぼ日本に入ってくることはないのですよ。
昔「ダラス」というのをやってたくらいじゃないでしょか?

>西洋系の男同士のキスシーンに比べて、東洋系のそれが妙に生々しく見えてしまう

男女でもそうですよね~なんなんでしょうね、これは?
「お坊っチャマ」のとんねるずのキスシーンは爽やかでしたけど♪

>ホンの少し手が触れたりしただけで、自分でもビックリするくらいにドキドキしてしまう

むちゃくちゃわかります・・・
ちょっと近寄って立ってるだけでも、ね。
自分でもアホかと思うくらい(笑)でもうれしい♪
それを細かく紹介してくれるchiriraさんのブログには、ほんとに感謝です。
ずっとスーパーカップルでいてほしいですよね^^
返信する
(〃ω〃)♥ (chirira)
2013-08-15 00:14:25
ご無沙汰しております。
とても興味深い記事をありがとうございます!

海外ドラマはほとんど見ないので、なかなかハマりにくいゾーンではありますが・・・・
西洋系の男同士のキスシーンに比べて、東洋系(日本・韓国等)のそれが妙に生々しく見えてしまうのは
私だけでしょうか?(苦笑)

スーパーカップル、またまたファイアーさんに新しい言葉を教えていただきましたw

>いまだに多くのファンがタカ&ノリのフィジカルな接触に妙に心ときめかせる・・・

これ、これですよね~!
昔はね、貴さんはホントにカッコよくて憲さんはホントに可愛くて、そりゃもうあんなことやらこんなこと
やら果てしない妄想でドキドキしまくったもんですw
正直なところ、いまだにその世界から抜け出せずに、あんな腐ったブログを書いているわけですが(笑)
でも再燃してからこっち、ストレートな肉体的な繋がりよりも、ちょっとした視線の交錯とか体の接触・・・
変な話、ホンの少し手が触れたりしただけで、自分でもビックリするくらいにドキドキしてしまうという・・・
目に見えない精神的な繋がりの方に萌えてしまいます。
連れ添って30年以上、50を越えてもお互いを見る目にそこはかとない愛情を感じます(〃ω〃)
そういう視点から言うと、先週のみなさんの2人は私みたいな腐れワンフーには心満たされる1時間で
ありましたw

これからもずっと死ぬまで『スーパーカップル』であろう2人を見つめ続けたいですね。
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