3月31日に生放送されたグランドフィナーレを最後に、「笑っていいとも!」は32年間の放送を終えました。
このグランドフィナーレについて、あるいは「いいとも」という番組そのものの歴史や意義について、放送後10日たってもなお多くの人々が語り続けている。それほどインパクトの大きなテレビ的「祭り」であったということでしょう。
視聴者にもっとも大きな驚きをもってうけとめられたのは、やはりダウンタウンととんねるずの“禁断の共演”でした。
もっとも、わたし個人としては、そのいわば壮大な前フリともなった(なんて言うと叱られるかもしれないけど)さんまさんとタモリさんの「日本一の最低男」復活が、あまりにもなつかしく面白かった。また、ダウンタウンとウッチャンナンチャンの「夢であえたら」チームひさびさの4ショット(嗚呼ここに清水ミチコ&野沢直子コンビもいてくれたら!)も感涙ものだった。
とんねるず(&爆笑問題)の乱入は、いわばふつふつと胎動していたマグマが、一挙に噴火したようなものでした。噴火した瞬間に、つまり、同じテレビの画面のなかに、2組(あるいは3組)のコンビがならんだ瞬間に祭りは終わった・・・そんな感覚でした。
もちろん、その一瞬の「祭り」は、ここ数年テレビで体験することができなかったほど、大きなインパクトをもっていた。しかも、生放送だった。低迷ひさしいフジテレビが、ひさしぶりにぶちあげることのできた、真にテレビ的な一瞬だったわけです。
ただ、それが、ややほろ苦い思いをもってわたしの目に映ったのには、いくつかの理由があります。ひとつには、わたしが、ダウンタウンvsとんねるずというライバルの図式に、さほど興味がなかった、ということがある。
ワンフーでありながら、世間でとんねるずとダウンタウンが“ライバル視”されているということを、わたしは長い間しりませんでした。ダウンタウンの番組も普通に見てたし、好きだったし。とんねるずに対して熱狂したほどには、ダウンタウンにハマることも、高い評価をすることも、結局はなかったけれども。
だいたいの場合において、芸能界やスポーツ界のライバル関係というのは、マスコミがおもしろおかしく書き立て、あおることで作られていきます。近年の例でいえば、フィギュアスケートの浅田真央vsキム・ヨナのライバル関係。
ソチ五輪後のインタビューで真央ちゃんは「かつては普通に仲良しだったが、周りから騒がれるうちに意識するようになった」と答えていました。キム・ヨナさんも、SPでの真央ちゃんの演技を見ていて涙が出た、と言っていた。彼女たちのライバルの構図は、完全に、周りの大人たちの狂躁曲であったと、わたしは思う。
ただ、最大のライバルがいるということが、彼女たちの演技の張りになっていたのも、また事実で。ライバルがいたからこそ、より高みに到達できたのであろうし、ライバル同士だけが共有した微妙な心理の機微は、周りで見ていただけのわれわれには、到底わかるものではありません。
ダウンタウンととんねるずは、ほんとうにライバルだったのか?
1993年の「なるほど!ザ・春の祭典」以来、たしかに2組は一度もテレビで共演してこなかった。でも、べつに本人たちにとっては、お互いのコンビに番組で言及することは「タブー」というわけではなかった。
ラジオ「放送室」で、松本さんがとんねるずを語った回もあるし、「ガキの使いやあらへんで」でとんねるずに言及したこともありました。とんねるずの方も、たけし&所両氏が食わず嫌いに出たときに「ダウンタウンとは同期なの?」なんて話も出ていたし。
しかし、それでもやはり、ここまで共演がないと、世間で不仲説が流れるのも無理はない。世間というものは、仲良しこよしよりも、仲の悪さをおもしろがる傾向があるのは、昔も今も変わらないでしょう。ちょっとうがった見方をするなら、ライバル視されることで注目をあつめることにもなるわけで、スター自身にとっても、それは決してメリットのないことではないわけです。
グランドフィナーレ放送後に、松ちゃんが良い事を言ってました。彼らが若かったころは「やるかやられるか」の「真剣を持ってやる」ような時代だったと。
ダウンタウンがデビューするかしないかのころに、とんねるずが超メガブレイク。それこそ、大御所先輩けちらかし、お笑い界の下克上を成し遂げたのが、とんねるずでした。ダウンタウンだけじゃなく、とんねるずの同世代のコンビたちが、とんねるずを意識しないほうが、むずかしかっただろう。お笑いの天下統一の野心に燃えるコンビであれば、なおさら・・・
「とんねるずが出るとネットが荒れる」の松ちゃんの一言で、タカさんが「殴り込み行くぞ」となった---というのは、グランドフィナーレ放送終了後、爆笑問題太田さんが明らかにしたところです。その時のタカさんの目は、かつての「夕ニャン」のころのようにギラギラしてたとも、語っている。
とんねるずがステージに乱入して、初めてダウンタウンと目を合わせてツッコミ合った瞬間は、まさしく「さぶイボ」が出るほどにゾクゾクした、たいへんなシーンだったと思います。
しかし、その後の流れは、さらに興味深いものでした。ダウンタウン、特に松ちゃんが、最後までイニシアチブをとりつづけていたのとは対照的に、とんねるずは、というかタカさんは、早い段階で一歩引いてました。
そこからはむしろ、ノリさんの方が流れをつくっていた。ノリさんがなんの脈絡もなくステージにあげるサンコンさんや、橋田壽賀子先生のボケ(?)を、いちいち松ちゃんが活用し、ひろっていたのが、何だかまたゾクゾクさせられた・・・お笑い界を代表するふたりの自由なアーティストが、無言でパスを出し合っているような感じがあって。
とんねるず乱入後の、2組のコンビの動き方には、やはりそれぞれのコンビの本質みたいなものが出てたのかもしれません。あるいは、西と東のちがいが。
推測でしかないけれども、とんねるずには、この祭りが乱入の瞬間にすでにピークを迎え、終わっていたことが、感覚的にわかってたんじゃないか。東の笑いというのは、そんなふうにドライで、引き際のきれいな、あっさりしたところがあると思う。最後の最後まで演じ切り、先輩のさんまさんをいちいち処理し、前に出続けることを良しとするのが西の笑いの良さだとすれば、やはりダウンタウンは、西の人、なのでしょうか。
そして、とんねるず、ダウンタウン双方にとって、いわば“最後の切り札”であったライバル共演を、ついに実現したことは、これからの彼らにとって、いったいどんな意味をもっていくのでしょうか・・・
さて、ここからは、とんねるずワンフーとしての感慨になります。
それにしても、ここ2か月のとんねるずの「いいともレギュラー」、そしてグランドフィナーレへの出演・・・これは結局、何だったんでしょうか?少々困惑している、というのが、わたしの正直なきもちです。
はじめは、とんねるずなりのタモリさんへの仁義であろうと思っていました。しかし、実質的に「いいとも」とはほぼ無縁のところにいつづけたとんねるずが、最後の最後になって、あえて「いいともレギュラー」の“既成事実”を作った、ということには、何らかの意図があったんでしょうか?
出演者からタモリさんへお礼の言葉を述べていくところで、とんねるずは、ステージ上のレギュラー陣席の最前列に、どっかと腰をおろしていました。そのすがたに、違和感をまったく感じなかったと言えば、嘘になってしまうのです。本来のとんねるずであれば、ラストわずか2か月で、準レギュラーでしかなかったということを、もうすこし謙虚に表現してもよかったんじゃないか、と・・・
故横澤彪プロデューサーが「いいともにはひょうきん族メンバーは使わない」という方針だったことを、グランドフィナーレでさんまさんが話していました。とんねるずがいいともと接点がなかったのも、フジテレビ局内の派閥争いが理由であったと聞いたことがあります。そのへんのことは、一体全体どうなったワケ?
・・・な~んてことまでつい心配してしまうのも、とんねるずがワンフーにほどこしたメディア・リテラシーの功罪なわけで。ただ素直に楽しんでりゃいいものを、ねえ(笑)
裏事情がどうあれ、とんねるず、ウンナン、ダウンタウン、爆笑問題が生放送で共演したあの瞬間は・・・すごかった。やっぱり、すごかったとしか言いようがない。
と同時に、あれほどすごいものは、おそらく今後テレビで見ることは二度とできないだろう、という、苦い現実をもつきつけられました。
「笑っていいとも」グランドフィナーレとは、古き良き日本のテレビバラエティが、完全に終わりをつげた、最後の生放送でもあったのです。
この共演は私も本当に鳥肌が立ちました。
夢逢えの共演は同じ画面ではありませんが、清水ミチコさんが大竹しのぶさんのモノマネしてる時にDTとUNが乱入してきたので全員は一瞬揃いましたね。
私はダウンタウン・ウッチャンナンチャン両方共心の底から尊敬してやまないコンビが揃って(さらに仲良さそうに)やってきたのも感動しましたし、さらにとんねるず・爆笑問題の乱入まで起こって 久しぶりに生まれてきて良かったと思いました!
進行していこうとする貴さんの男気には感動しました、大暴れする太田さん(私は子供の頃の影響で未だにピカリと呼んでしまいますがw)は批判がありますが じっとしているよりもいつも通り暴れていて良かったです。後ろで一歩下がって観てるウンナンもらしくて素敵でした。
お笑い怪獣大戦争が起こってるなか 仕切ったSMAPの中居くんの司会魂にも感激しました!
Twitterなどで知ったのですが、いいをさんはバスターキートンなどのコメディ映画を解説してらっしゃるのですね!
私も丁度バスターキートン等のビジュアル・コメディーに興味が湧いている時なので また関西で解説などされるのなら 観に行きたいなと思いました!
私は本当にこの番組をゆっくり観ることのない人生を強いられてきめしたが、やはりタモリさんという偉大な人格者が日本にいることを誇りに思いますね。
好き嫌いあるかもしれませんが村上春樹さんと並ぶ私の中での偉人です。
同じフィールドと思いきや、異種格闘技というか。
お笑い、バラエティの作り方も色々ありますよね~
タモリさん自身、昔のネタはありますが、いいともでの32年間はそういうものを披露した番組ではなかったし。
さんまさんみたく常にボケ、突っ込みを連発するのもお笑い。
ダウンタウン・・・即興性、気質が伝統的な関西芸人の面白さ。最近こういう芸人は少ないんじゃないですかね?
爆笑・・・今でも漫才が一番だと思いますが、漫才する人達特有の頭の回転の速さも売りじゃないかな。
99・・・めちゃイケでの面白さは企画力あってこそだと思います!
ウンナン・・・緻密なコントはこの中で一番だと思います。
とんねるず・・・企画の中で遊び、それがスケールアウトする面白さもある。
どれが悪いっていう訳でもありません。
ウンナンなんかはこういう場では必ずおとなしいと思うんですが、
芸人全てが喋るという訳でもないですしね。
とんねるずの印象もそうです。
暴れるとかいうのは、自分達のメインの出番などでやってきた事であって、
こういう複数の場では「俺が俺が、 前に前に」という人達では無いですよね。
そういう意味では今回、とんねるずはかなり前に出て意外でした。
タモリさんを前に出して、ニコニコしているパターンだろうなって思ってましたから。
誤算で面白かったですけどね。
まあ今回はダウンタウンとのやり取りの場にという事も考えていたとは思います。
下降気味のテレビを面白くしたいというのを各々考えているでしょうから。。。
この記事を読んで、とんねるずとダウンタウンの関係を意識したのはいつからだったか考えました。
90年代前半、好きな番組といえば「みなさん」「生ダラ」「ごっつ」で、小学生の僕にとってのとんねるずとダウンタウンは、カズとイチローのような別々のヒーローでした。
ライバルとして見るようになったのは、90年代後半、高額納税者番付の1~4位を二組で独占するようになってからだと思います。その後、ネットを通じて様々なウワサと接し、いつしかお笑い界最大のタブーのような関係性が沁みついていました。
だから3月31日は朝から浮き足立ち、父親が定年退職を迎えることもすっかり忘れ、グランドフィナーレの放送時間が近づくたびにトイレが近くなりました。
とんねるず乱入からの数分間は茫然自失となり、CMに入って初めて自分がガタガタ震えながら見ていたことに気付きました。
あんな危険でハラハラするテレビは初めてです。
強いて言えば、野猿が白塗りで紅白に出たときが似た感覚だったかもしれません(とんねるずの紅白出場はリアルタイムで見ていないので・・・)。
「夕ニャンの頃の目になっていた」ということは、当時は毎週ハラハラできたんでしょうね。
あと、ご指摘のあったスピーチの場面、特にワンフー以外の方は違和感が強かったかもしれません。でも後列にいられても気になるので・・・結局はなぜレギュラーになったのかという話になりますね。。
でもあまり考えても仕方ないですし、野猿がテレフォンに出たときは「火、水だけ俺にやらせろよ、タモリ!」とタカさんも言っていたので、面白おかしく番組を盛り上げたいというのが一番だったんじゃないでしょうか。
ちなみに、いいとものラスト一週間はとんねるずが出ませんでしたよね。この間は、各曜日のレギュラーとタモリさんのお別れ会という様相だったので、ここで身を引く二人は謙虚だと思いました。
とんねるずにとっては、ダウンタウンは後輩の内の一組ってだけかもしれませんね。
ただ、ダウンタウン以降ダウンタウンの影響をモロ受けた芸人さんがかなり増えた。関西芸人が全国区の人気者になっていくことに石橋貴明は東京だって負けてねえよ!って意識がかなり強くなっていったように感じます。
関西人嫌いそうだし、たかさん(笑)
ダウンタウンがどうこうってより、関西芸人に負けられないって意識が高く、そのトップがダウンタウンだったって感じなんじゃないかな?
ダウンタウンにとっては常に人気で先行かれてる目の上のたんこぶ。
ダウンタウンってそれまでも圭修であったり、ウンナンであったり、人気面で先行され、実力で抜き返すって事が多かった。その最後の相手がとんねるずだったように思います。
ダウンタウンは、とんねるずよりも自分らがおもろい・・・いや、とんねるずだけじゃなく、誰よりも自分らがおもろいっていう過剰なほどの自信で上がっていったコンビです。
しかもダウンタウンが人気のピークにあった頃、とんねるずはすでにコントしてなかった。
それなのに人気は相変わらず。
ダウンタウンからしたら納得いかない部分もあったのでは?
それが松本の言う「真剣持って戦っていた」って事じゃないかな、と。
オラはずっと競演を夢見てた人間で、今回20年ぶりの絡みをずっと観ていたかった。
で、オラ今回のを観て二度とないとは思わなかったです。逆に、これでまた競演あるんじゃないか?って希望が持てましたよ!
食わず嫌いやDTDXに出たって意外とハマるんじゃないかって気になりました。
ここで終わらせちゃもったいないでしょう!
ってか、「ワンフー」というフレーズが懐かしく、
とんねるずファンだな!とあらためて思いました!!
ひとつの画面にあの共演はまさに衝撃でした
夕ニャンのころのあぶなかっしさがありまた
ノリさんの声で
「あぶなーいっ!」って入ればよかったのに(笑)
とんねるずってやっぱり生放送の芸なんじゃないでしょうか。
オールナイトフジや夕ニャンでは、画面の中にありつつ、視聴者はまさにその時に起こるハプニングみたいなものを期待していたような・・・
そういった意味ではとんねるずは「プロレス」なんだと思います。
いま非常にバタバタしておりまして・・・
>清水ミチコさんが大竹しのぶさんのモノマネしてる時にDTとUNが乱入してきたので全員は一瞬揃いましたね
あ、そうだったのですね。そこを見落としていました。
DTとUNの友情は、ほんとに見ていて微笑ましいものがありますよね。
「夢あえ」のおもしろさは、もっと再評価されるべきだと思います。
いま見てもまったく色褪せないですからね。
>お笑い怪獣大戦争
いい表現だあ!(笑)まったくそんな様相でした!
>私も丁度バスターキートン等のビジュアル・コメディーに興味が湧いている時なので
おお!そうなのですか!
わたしはキートン狂でして、それがもとで
サイレント~クラシック期の欧米の喜劇を研究するようになりました。
新長田の神戸映画資料館というところで、2、3か月に一回くらい
「コメディ学入門」というイベントをやらせてもらってます。
ぜひ次回遊びに来て下さい!!
いつもたくさんの方に来ていただいて、わいわいやっております^^
オトメさんのブログも、ちょこちょこ拝見してます。
いろいろライブをごらんになってて、勉強になります。
清水ミチコさんのライブとか、行ってみたいなあ~
いま非常にバタバタしておりまして・・・
リンクをありがとうございます。
わたしも最近はいいともを見ていませんでしたが、
日本のTV界で大きな位置を占めていたことが、終わるとなってやっと実感できました。
とんねるずファンとしては、タモリさんと赤塚さんには頭が上がらないくらいです。
村上春樹と同等!いろんな意味でこの比較はすばらしいと思います!
いま非常にバタバタしておりまして・・・
>私はそのようには感じませんでした。貴さんも松本さんと絡んでいたし。
そうですね、たしかに彼らが同じステージにいたあの時間すべてが「ピーク」だったかもしれません。
わたしの感覚としては、ピークというか、インパクトの頂点は「乱入」の瞬間だったかなと。
絡み自体もとてもおもしろかったのですが、
たとえば今後とんねるずとダウンタウンが別の番組で共演するとか、
そういうことはちょっと考えにくいかなあという気もします。
いいともの共演、というのが、またひとつの伝説になったわけですからね。
とか言ってて、すぐ何かで共演するかもしれないですけどね(笑)