古楽の小路

30余年住んだ杜の都から東京へ。両親の介護も終了、気が付けば高齢者に。介護される身になるまで音楽生活を楽しみたいものです

「バンクス花譜集」 展

2014-12-31 10:35:30 | 展覧会
今年最後の「古楽の楽しみ」は F.クープランの[諸国の人々]から
『ピエモンテの人』が放送された。他の諸国がフランス、スペイン
神聖ローマ帝国なのに第4曲はピエモンテという一地方がとりあげられて
いつも不思議な気がする。L.クープランのクラヴサン組曲にも「ピエモンテ」
と題された一風変った面白い曲がある。2人のクープランにはピエモンテに
何か特別の想いがあるのだろうか?

その前に放送されたのはマラン・マレのトリオ組曲のハ短調。
マレとクープランは楽譜出版の際の、共通する優秀な彫版師がいて
お互いに発注を譲り合うという微笑ましいエピソードがある。

エングレービングというとどうしても彫版による楽譜のことが
頭に浮かんでしまう私だが、世の中にはこの方法で生み出された絵画
はじめ、様々なものがある。

Bunkamuraで開催されているキャプテンクック探検航海と「バンクス花譜集」展
Bunks'Florilegium では英国のキャプテン・クックの第1回の太平洋航海
(1768~1771年)に同行し植物採集をしたジョセフ・バンクスに
よる花の銅版画がたくさん観られる。
もっとも彫版師が誰だかはわからない。図録を買えばわかったかも
しれないが・・・。
バンクスという人はお金持ちの植物学者でこの航海のスポンサーでも
あったということで、同行した画家に下絵を描かせ、3年間の航海後
イギリスで銅版画を出版しようとしたらしいが、画家が亡くなったり、
資金繰りが難しくなったとかで出版を諦めざるをえなくなり、ずっと
お蔵入りになっていたらしい。日の目を見たのが200年後の1980年代
とは驚きだ。


バンクスという名前はオーストラリアの植物の分類上の名前に残されて
いるという。なかでも「バンクシア・セラータ」という植物は山火事の時に
実が爆ぜ子孫を残すようになっているという。
この頃は花屋さんにも南方の珍しい花を見かけるがどきつく馴染めない感じが
していたが、展示された花の絵はどれも抑えた色調で細密な描写や精妙な彫
版からは自然への愛情と摂理を理解しようとする熱意が感じられて圧倒された。


チラシは2種類あり、版画らしい手作り感もあって素敵だ。
アンサンブル・フロリギウムという古楽器グループがあるがFlorilegiumフロリギウムと
はラテン語で「花を集めた」という意味とのことだ。アンサンブル・花譜集か。
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2つのコンサート

2014-12-24 09:40:00 | ルネッサンス・バロック音楽
今年のコンサート行きの〆になるコンサートが続けて2つあった。

一つはアンサンブル・コントラポントのクリスマス・コンサート
「ああ、大いなる神秘」
パレストリーナ、シャルパンティエの定番曲から、ギョーム・ブジニャックという
未知の作曲家のモテット、初期バロックのリコーダー曲、そして珍しい楽器
セルパンなど興味をひく曲がたくさんあった。

合唱団はとてもはつらつとした若い声でそれだけでも魅力的であったが
ソリストとしても将来期待されるような人が多くて応援したくなった。

セルパンは奇妙な形の吹奏楽器で(フランス語で蛇の意味だそう)低音を
受け持っていた。オルガンの足鍵盤みたいなボワッとした音で人の声とも
調和していた。今度は旋律的な曲も聴いてみたいと思った。

合唱曲にもリコーダーが入り、その上、リッチオやチーマのリコーダー曲も
あったのでリコーダーが大活躍。歌とリコーダー、そしてリコーダーと
オルガンとの相性もよく、リコーダーの更なる魅力も感じさせてくれた。

もう一つのコンサートは昨日の「フランス・ブリュッヘンを偲んで」
という追悼公演。出演は:有田正弘、一噌幸弘、高本一郎の皆さん。
会場が矢来能楽堂ということもあり、とても楽しみにしていたのだったが・・・。

プログラムはバロック曲はオトテール、テレマン、ヘンデル、バッハ、
三人の奏者それぞれの作曲、とブリュッヘンについての会談が
一部と二部にあるという構成。
笛はトラベルソはじめルネッサンスフルート、モダンフルート、
噌能管、篠笛、田楽笛、数種のリコーダーとまさに「縦横無尽」。

2番目のオトテールでは楽章ごとに笛を取り替えるという慌しさで
なかなか耳がついていかなかったけれど座興の一種かと思い我慢した。

お二人がソロで吹かれるときはいいのだが、一緒になると違和感だらけで
消化不良に陥ってしまった。ヘンデルソナタのトラヴェルソの美しい音で
コンサートが終わればよかったのだが、その後にバッハのトリオソナタが
あった。演奏前に篠笛で吹く難しさを言い訳のように話されたが、
途中で落ちてやり直しをされるという有ってはならないことが起こった。
厳しい指導らしいブリュッヘンはなんと思っただろうか?

これで今年のコンサート行きが終わりだと思うとちょっと残念な気持ちに
なってしまった。
コメント (2)
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Pezの田園コンチェルト

2014-12-19 20:49:50 | ルネッサンス・バロック音楽
今朝の「古楽の楽しみ」では珍しくJ.C.Pezのリコーダーコンチェルト
が放送された。アナウンサーはペッツでなくペーツと言っていたが
どうやら両方の表記があってどちらが正しいのかわからない。

それにリコーダーと指揮はジョバンニ・アントニー二と言って
いたが、このコンチェルトのソロリコーダーは二人なので
もう一人いるはず。

今日の曲揃えはクリスマスがらみのようでこのリコーダーコンチェルトも
「パストラーレコンチェルト」と言われている曲だ。
以前買った(バロックコンチェルトスタディ)にはパート譜しか載って
いなかったが無料楽譜サイトimslp にはスコアが載っている。

http://blog.goo.ne.jp/euterpeparnassus/m/201211


楽章が6つもあり長大な曲なのだが5番目のパッサカリア(シャコンヌ)
は中でも長くて12ページもある。この種の曲では最長なのでは?。
ヴァイオリン2とヴィオラも必要だがとりあえず通低とトリオで
あわせてみたくなった。終わりまで息切れしないで吹けるか・・・。





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蕾に励まされ・・

2014-12-18 16:53:50 | 庭の植物
寒さも本格的になってきたが、庭の沈丁花には早くも蕾がたくさん
ついている。挿し木した方にも同じように蕾がある。


更地化の前に挿し木や移植をしたが今のところ金柑をのぞき
どうにか移植成功したようなので嬉しい。
躑躅、馬酔木、カルミア、アジサイ、雪柳、南天などが
取りあえず移しました、というように敷地の端に並んでいる。

大き目の木となるともう私の手には負えない。以前整地の見積もり
をとった業者に植木を廃棄処分しない方法はないかと聞いたときは
素気無い返事だっが、最近何人かの友人からもったいないから
どうにか生きながらえる方法を考えたら、といわれ、ダメもとで
植木屋さんにきいてみた。

植木屋さんは親身になって相談にのってくれたが、木々はいずれも
非常に古いので移植に耐えられないだろうし、移植する場合は
1~2年前から根のまわりを切り新根を出して準備する必要があると
いわれた、いわゆる『根回し』だ。
全くもっともな話。仮に更地化が決まった今年5月に根回しを始めた
としても時間が足りないということでもうこれは諦めるしかないと
悟った。ともかく少しでも移せたので沈丁花の蕾を見ながら
これで十分と思った。


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今年もまた

2014-12-08 21:40:40 | 展覧会


シクラメンの鉢が花屋さんにあふれている。
昨年の今頃、母のいた介護ホームの最寄駅前の花屋さんで濃いピンクの
シクラメンを買った。いい物に当たったとみえ晩春まで咲き続け、
あとは土におろしておいたら無事に夏越しし、葉っぱは貧弱ながら、
蕾がいくつもついていて嬉しかった。急に大事にしはじめ、先日室内に取り込んだ。
牧野富太郎がつけたという「篝火花」という名前のごとく赤い花は定番
だが白やピンクも、最近は紫色まである。

季節感を感じるものの多いこの頃だが、また今年も雑誌「日経おとなのOFF」
の特集『2015年絶対に見逃せない美術展』を買った。
雑誌の附録としてハンドブックの他にカレンダー、クリアファイル(A5サイズ)
までついている。いつもより大分お得感あり。

2015年私の必見美術展 ★会場はこの他にも

①『バンクス花譜集』展 Bunkamura 2014.12.23~2015.3.1

    キャプテンクックの航海に同行し植物採集したバンクスの銅版画

②『幻想絶佳:アール・デコと古典主義』東京都庭園美術館 1・17~4.7

    アールデコ様式の庭園美術館で

③『ルーヴル美術館展』 国立新美術館 2.21~6.1

    フェルメール「天文学者」初来日

④『グエルチーノ展』 国立西洋美術館 3・3~5.31

    17世紀イタリアバロック絵画 同時に古楽コンサートがあれば・・。

⑤『マグリット展』国立新美術館 3.25~6.29

13年ぶりの大回顧展

⑥『ユトリロとヴァラドン』損保ジャパン  4.18~6.28

    ユトリロより母ヴァランドンの作品40点が観たい

⑦『珠玉の水墨画』千葉市美術館 5.19~6.28

    海外コレクションの里帰り展

⑧『画鬼・暁斎』三菱一号館美術館 6.27~9.6

    奇才を知るチャンス

⑨『春信一番!写楽二番!』三井記念美術館6.20~8.16

    これも海外浮世絵コレクションの里帰り

⑩『プラド美術館展』三菱一号館美術館 10.10~2016.1.31 

    ベラスケス・ゴヤ・グレコにボスも
 

  この他 ボッティチェリとルネッサンス、
  未知のフィンランドの女性画家『ヘレン・シャルフベック展』
  ワシントン・ナショナル・ギャラリー展、大英博物館展、若冲と蕪村など
  も 興味深い。
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裂帛の気合

2014-12-05 18:35:35 | 展覧会


杉並区立郷土博物館へ行った。
生涯の多くを杉並区で過ごしたという作家:有吉佐和子の回顧展
『有吉佐和子没後30年記念特別展』をみるためだ。
自転車で行ったみようかとふと思ったが、地理に自信なく、結局
交通の激しいバス道路を行くことになるので電車とバスにした。
場所は大宮八幡の近く、和田堀公園の奥にあった。

先月末、横浜の「海の見える公園」内の「神奈川近代文学館」での
『須賀敦子の世界展』をみたとき、展示のなかに有吉佐和子の
写真があった。お二人はカトリック学生連盟時代から長い交流が
あったという事を知り意外な感じもした。

今回も会場を探しながら公園内を歩き、あの時の期待感も思い返し
ながら会場に向かった。

さて博物館の建物の横には移設された古民家があり、機織機や
糸くり機なども展示され杉並でも養蚕が行われていたということだった。
このあたりは遺跡も発掘され歴史ある土地のようだ。

郷土博物館の中のこじんまりとした一室が今回の展覧会場。
写真、著作、自筆原稿・・・須賀敦子さんの筆跡と似ていてびっくり。
特に町春草装丁の本は手にとってみたいような美しさだった。

愛用した品々、着物、洋服に、珍しい立派なお雛様などもあり、
見に来ていた高年女性たちの話声が一段と大きくなっていた。
展示品の中の橋本治の手編みセーターの出来は失礼ながらちょっと失望。

文芸春秋のかつての恒例文士劇での花魁姿や三島由紀夫等文士との楽しそうな
語らい風景などの貴重な録画も観られた。

有吉佐和子の小説を最近は全く読んでいなかったのだが、没後30年と
いうことで復刊されている本も多くみかける。社会問題への先見の明が
あったということも再評価されている。
展覧会の前に「江口の里」「青い壺」を読んだら面白くて次々に
読みたくなった。小説のテーマも多岐に及んでいるので
著作を読むことでさらに違う世界への興味も広がりそうだ。

53年の短い生涯で今も色あせない60作を生み出したバイタリティの
もとは「裂帛の気合」だそうだ。少しは見習わないと。


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最後の紅葉

2014-12-01 16:20:30 | 庭の植物
いよいよ師走、という言葉がよく聞かれた今日。
今年も喪中の葉書が届き始め、こちらも一昨年に続き喪中葉書を出した。
私の親の世代なら順番ということでやむを得ない気がするが同世代の方
だったりすることもあってショックだ。
私だっていわゆる健康年齢寿命といわれるまでは10年もない!のだ。

昨日「バロックの花束コンサート」が済んで、これから先はあまり時間が
ないからよく吟味して選曲をしなければとつくづく思った。
名曲、知られざる曲を問わずともかくこれは、と思う曲を並べてみよう。
数をこなすより曲の真髄をつかみたい。
コンサートで知り合った方々ともアンサンブルを楽しみたい。そのためには
はやく落ち着きたいのだが、リフォーム着工は来年早々になりそうだ。

でもリフォーム着工遅れのため、今年も庭のもみじの紅葉を観ることが出来た。
「紅枝垂れ」という楓で居間からちょうど見えて亡き母が格別気に
入っていた樹の一つ。近いうちに伐採されてしまうので本当にもったいない。
気のせいか庭の更地化が決まってからというもの物言わぬ木々は抵抗するか
のように勢いづいて最後の美しさを見せ付けている。小さいものは移植したり
したが大きいものはどうしようもない。伐採の現場に立ち会う勇気がない。


さてお知らせです。
12月6-7日に山形と仙台で日本チェンバロ協会によるイベントが
あります。お近くのかた是非ご参加ください。詳細はホームページで↓

http://japanharpsichordsociety.jimdo.com/2014/10/04/日本チェンバロ協会-第11回-山形-仙台例会/
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