亡くなってしまった吉田秀和翁の声が聴きたくなり、先週の土曜日に
本当に久しぶりにNHKラジオ「名曲のたのしみ、吉田秀和」をつけた。
テーマはラフマニノフの何回目かで 放送されたのはピアノコンチェルト4番。
演奏は2通りでアンセネスとべネディエッティ・ミケランジェリ。
2・3番のコンチェルトに比べ聴く機会の少ない曲なのだが、隅々まで
覚えていた。何故かと思ったらこの曲とラヴェルのピアノコンチェルトの
入ったLPを持っていて昔よく聴いていたのだった。一時期ラヴェルのコンチェルト
にのめりこんでピアノコンチェルトのベスト・ワンだわ、と1人で思っていた。
昨秋の引っ越しでLPはあらかた捨ててしまったのでこのLPは手元には無い。
確か映像があったと思い、ヴィデオテープの山を探したら、あった。
持っていたLPとは指揮者とオケが違っていて、テープの方は
指揮:チェリビダッケでオケ:ロンドン交響楽団。ライブ録音。
何年のころかわからなかったので調べてみたらYouTubeにあり、
1982年らしいということがわかった。LPはかなり前だろうけど
演奏スタイルが大幅に変っているとは思えなかった。
ミケランジェリの特徴ある手の動き、チェリビダッケの恍惚の表情に
見入ってしまった。お気に入りの2楽章は磨かれたピアノの音と受け継ぐ
フルートやコールアングレの響きとが呼応してなんとも美しい。
ミケランジェリの実演は一度だけ聴いたことがあった。
この時のプログラムが何だったか、「シューマンの謝肉祭」くらいしか
思いだせない。その後コンサート会場まで行ってキャンセルという目にもあった。
生きていて活動中の演奏家ならば演奏は変化していくのでその演奏家の
若い時の演奏をあまり聴こうとも思わないのだが、亡くなってみると
若い時から全部丸ごと知りたくなる演奏家がいてミケランジェリも
そういう1人だった。
レアCDが2枚ある。
1941~2年録音の方は音質は悪いのだが、21~2歳の青年の
演奏とはとても思えない老成した演奏なので驚く。
このCDは未公開の録音を探して何でも寄せ集めました、というしろもので
ベートーベンのコンチェルトなどは僅か数分だけで消えてなくなる!
珍しいところではヴィヴァルデイのコンチェルトなるものも抜粋で
入っている。勿論編曲だ。原曲がなにか突き止めてないけど、
こちらは大昔のバロック演奏を彷彿とさせられる。
もう一つは1957年の未公開ライブ録音。こちらもモノラル。
往年のイタリア映画俳優みたいな面立ちのミケランジェリ氏。
シューマンの「ウイーンの謝肉祭の道化」や、ドビュッシーの「映像」からの
4曲などが入っている。おまけとしてリハーサル風景も入っていて、調律に
厳しかったということを物語っている。
両方ともミケランジェリ生存中だったら発売許可されなかったCDでは
ないかと思う。