古楽の小路

30余年住んだ杜の都から東京へ。両親の介護も終了、気が付けば高齢者に。介護される身になるまで音楽生活を楽しみたいものです

トラヴェルソの魅力

2014-06-29 08:59:00 | ルネッサンス・バロック音楽
古楽の世界に惹かれる要素はいろいろあると思うが、
フラウト・トラヴェルソの場合は楽器の特性として
出にくい音があり、それが音楽に独特の翳りを添える。
楽器のつくり、ピッチの違いなどもトラヴェルソオタク
と呼ばれる方々の話題に事欠かない。

日本の古楽器界第2世代実力派の前田りり子先生は
私の仙台在住時代の出張レッスンでそのパワフルぶりは
よく知っていたのだが、先日の「フルートの肖像」
第10回のコンチェルトコンサートでは更にパワー全開。
一晩でコンチェルト6曲というコンサートは今まできいたことがない。
プログラム中のブランデンブルグコンチェルト5番はむしろ
チェンバロコンチェルトだが。

私はフルートコンチェルトに詳しくないので知らない曲も
あったが超絶技巧を披露する速い楽章、心を揺さぶる
緩徐楽章、活き活きしたリズムの舞曲と非常にわかりやすい
構成の曲ばかりであったので名人芸ぶりをただただ堪能し
心地よい時間を過ごすことができた。ブラヴェ、クヴァンツ
では拍手は怒涛の嵐のようだった。

アンコールに管弦楽組曲から「ポロネーズ」、「バディネリ」と
さらに大盤振る舞いをして下さったのであった。「バディネリ」
は極限の速さではなかったろうか!

帰り道今夜の6曲の「選択にもれた曲は何かしら?」と友人
にたずねたら「ペルゴレージ・・」とつぶやいた。大昔フルートと
ピアノで合わせて結構好きだったのを急に思い出した。







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超絶技巧

2014-06-26 17:18:00 | 展覧会
家の取り壊しとリフォームのことで頭がいっぱい。限られた土地
少ない予算にしばられ、なれない設計図を書き、電卓片手に計算ばかりして
疲れる毎日。その上、処分しなくてはならないものばかりで精神状態
がますますおかしくなりそう・・というわけで昨日は気分転換に展覧会に。
何も考えないで感動でき、かつ笑えるものがないかな・・と思ったら
あった、「超絶技巧!明治工芸の粋」である。

この展覧会を今年の「私の必見美術展」の中にも入れたのは 安藤緑山の
象牙製の野菜果物たちを観たいからであった。案の定、「竹の子と梅」の
展示ケースの周囲は人だかりがして驚嘆の声が。本物そっくりという
月並みな言葉以外ないような出来具合。作者のことはあまりわかって
いないそうだが、1955年没ということで私が幼少のころは生きていた人だ。

野菜果物シリーズはいずれも象牙製で蕪、パセリ、茄子、きのこ、独活、
絹さや、みかん、仏手柑、パイナップル、バナナ、玉蜀黍、石榴、柿、、
まだあったかも・・。
手にとってみたくなった。剥きかけみかんなどユーモラス。

その他刺繍絵画や七宝、金工、蒔絵、漆、京薩摩焼、印籠コレクション・・
いずれも非常に細かい根気作業のものばかり。
なかでも金工による、海老、蛇、魚が自在に動かせるようにできていて
面白かった。明治の職人技恐るべし!

みな何のために作ったのだろう?と思うものばかりだがこういう精緻な
工芸が海外輸出用として好まれた時期があり、海外に散逸していたのを
有る工芸愛好家が買い戻したとのこと。その村田コレクションの名品が
7月13日まで三井記念美術館で観られる。心の奥深くしみこむような
感動はないけれど、観たもの誰もがここまで徹底して微細にこだわる
日本人たちがいた、ということを感動を持って知ることだって十分価値の
あることに思われた。

 
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リコーダー発表会

2014-06-23 20:32:00 | ルネッサンス・バロック音楽
昨日は丸一日本村レッスン発表会を聴いた。
本村先生お薦めの「古今オランダの農民歌と踊り」を演奏する方が
はやめに出演されるというので最初から腰を据えて聴いた。
7時間あまり(休憩を挟んだとはいえ)こんなに長くリコーダー演奏を
きいたことはなかったが全然飽きなかった。
「古今オランダ農民の歌と踊り」は旋律のみでオランダ語のタイトル
だけついているので「笛の楽園」を思い出す。
この旋律に低音部の1声を先生がつけデュオ曲とし、今回初演された
というわけだ。何しろ900曲以上もあるというからよさそうな曲の
発掘作業も大変だ。笛の楽園風にmodo1modo2のような変奏曲を作っても
面白そうだだ、さらに大変な作業。
近江楽堂の良い響きに助けられてどなたの音も伸びやかに高らかに聴こえた
大人の発表会だとものすごくあがってしまう人がよくいるのに皆さん
堂々としてらしてびっくりした。

バロック作曲家でダッラーバコという作曲家を初めて聴き、他の曲を
探したくなった。唯一の現代曲シュテープスの「7つの笛の踊り」は
不協和音の美しさに惹かれた。トリオやカルテットもあったので
チェンバロやガンバの他、弦楽器管楽器も入る賑やかなアンサンブルも
あった。リコーダー2本のトリオソナタはありそうでなかった。

最後の合奏講座有志のセルミジの「花咲く日々のある限り」のみ
出場した。前日の特訓のせいか(でも半数しか参加しなかった
のにかかわらず)難なくまとまってよかった。先生の入魂の指揮の
おかげかもしれない。
ずっと日の目をみなかったテナーリコーダーの記念すべき出番にもなった。
安い楽器なのだが思ったより悪くなさそうなのでこれからはもっと
出番を増やしてあげたい。


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よこはま古楽まつり

2014-06-16 16:17:00 | ルネッサンス・バロック音楽
長浜ホールは遠かった。
品川で間違えて京浜急行に乗りそうになり、やっと能見台で
降りたらなんの標識もなく、駅前の親切なドラッグ店主に
教えられて徒歩15分の後やっと野口(英世)記念公園らしきところに
白と緑の木造の建物を2棟発見し、ほっとした。
小さい方の建物は 旧細菌研究室で若き日の野口英世が勤務して
いたところだそうだ。まだ細菌がひっそりと生き続けているかも
しれないという妄想にとらわれそうな場所であったが、
コンサート前の楽しい気分が悪くならないよう、あまり考えない
ことにした。


15日は昼からずっとここで「第6回よこはま古楽まつり」が
開催されており、一日ゆっくりしようと思っていたのだが、雑用
多く、結局6時からのコンサートのみになってしまった。
知人も出演されていて顔見知りの方もチラホラ。
昼からの熱気が未だ残っているような会場でCPEバッハのトリオ曲
から始まった。こういう編成が続くのかと思ったら、バッハの
ヴァイオリンソナタを除くとバロックダンスを交えたフレンチ
バロックや中世~ルネッサンスの物語劇のような聴くだけでなく
観て楽しいものが多かった。

以前から一度行きたいと思っていたらもう今年で6回目ということ。
一年に一度開催するというペースもすっかり定着したようだ。
企画のかたがたのご苦労がしのばれるし、その実行力を見習いたいものだ。
このお祭りはよく父の日に重なり、「父の日」をお祝いすることも
なくなった今行けるようになったとは・・。同様母の日もプレゼントに
頭を悩ませることもなくなったのは寂しいことだ。




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大泉バロック

2014-06-13 07:53:00 | ルネッサンス・バロック音楽
練馬区大泉学園界隈は卒業した高校もあり特別の思いがある。いつごろだったか
駅付近ががらりと変わり、『ゆめりあホール』のあるビルやバスターミナルが出来た。

この『ゆめりあホール』に行く機会がやっと昨日訪れた。
家からバスで20分もかからないので武蔵野文化会館に次ぐ近さ。
段差のある小ホールで古楽器にはちょうどいい規模だ。響きは特に良くないが悪くもない。
大泉界隈にお住まいの古楽演奏家5人が中心となったその名も「大泉バロック」による
夏の名曲コンサート ーヴェネツィア編

ソプラノ 櫻田智子
テナー  櫻田亮
リコーダー向江昭雅
オーボエ 三宮正満
チェンバロ水永牧子
&オルガン
<ゲスト>
ヴァイオリン長岡聡季
ファゴット 鈴木禎
  の皆さん

メールラのチャッコーナで始まったが、イル・ジャルディーノのノリノリ
演奏が耳に馴染んでいるせいか、ちょっと真面目な感じでみたいでもう少し
ライヴ感があってもいいような気がした。それにしても耳につくバス進行!
ヴェネチア編というだけあってプログラム半分近くをヴィヴァルデイが
占めた。ヴィヴァルデイのコンチェルトは皆似ていてこれだけ聴くとこんがら
かってくる。5種の楽器が織り成すコンチェルトの間には声楽の名曲が
挟まれ心憎い演出。プログラム進行も上手でリラックスして聴けた。

プログラム中ではカステッロの「ソナタ」が面白かった。ソロではなく
リコーダー、ヴァイオリン、オーボエ、ファゴットとオルガンで演奏され
て最後のいわゆる「遠吠え」部分は特に迫力があった。

最後のモンテヴェルディの名曲『黄金色の髪』これはソプラノデュオ曲で
しか知らなかったがソプラノテナーのデュオそしてバックは器楽奏者
全員という豪華版の編成でこれに、続くアンコールも心躍るような曲で
まだ行ったったことのないヴェネツィアに行きたい!という気持ちに
させられた。鬱陶しい梅雨の合間の爽やかなコンサートだった。
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ヴァイオリンの魔性・ヴァイオリニストの魔力

2014-06-08 09:52:00 | ルネッサンス・バロック音楽
本屋で見かけ、即買いしたポール・アダム「ヴァイオリン職人の
探求と推理」(原題はザ・ライナルディ・カルテット、このままで
いいと思うのだが・・。訳はとても読みやすい)の推理小説が
面白くてすっかりヴァイオリンモードになっていたところに、
昨日、エンリコ・オノフリのコンサートがあった。

共演:第2Vn杉田せつ子氏、Cem&org桑形亜樹子氏

オノフリ氏、生で聴くのは初めて。痩身体になられてから大分経つが
YouTubeには昔の姿が残っていてちょっと懐かしい。
体型と演奏に相関関係はあるのか興味のあるところだ。

さてプログラムは非常に盛りだくさんで内容も充実していた。
F・クープランの新しいコンセール14番の開始曲から優雅に始まり、
さまざまな曲(ヴィヴァルデイ、テレマン、コレッリ、ビーバー
バッハ、ルクレール、)、編成(トリオ、デュオ、ソロ)を経て
最後はドラマチックなCPEバッハのトリオで終わり万雷の拍手だった。
オノフリのヴァイオリンから出る音は比類なく、特にピアニシモは
息をのむほど美しかった。腕も然る事ながら最高の弾き手を得た
ヴァイオリンは幸せ・・。

コレッリの2つのソナタはリコーダーでもよく演奏される作品5-10と7
であった。作品5-7のサラバンドがあまりにも良くてこれだけでも
聴きに行った甲斐があったと思ったほどだった。マンゼのCDで満足
していたのだが、オノフリのCDも欲しくなった。ヴィオローネ&チェンバロ
通低というのも聴いてみたい。


バッハの超有名曲「トッカータとフーガ(オノフリ編曲)」ではフーガの中
ほどで断弦というハプニングもあり、フーガが繰り返された。「シャコンヌ」
より超絶技巧なのではないかと思うほどだった。原曲はオルガンでなく
ヴァイオリンという説もあるとか、びっくりだ。
2台のヴァイオリン曲(テレマンの珍曲、ルクレール)は音質音量の違いは
気になったがデュオの親密な世界が繰り広げられた。
チェンバロ・ソロでも他の曲と釣り合う面白い曲が選ばれてさらに
内容が濃いプログラムとなった。

最後のCPEバッハのトリオ「陽気と憂鬱」はテンポがめまぐるしく変わり、
ミュートが「濫用」され、3人の奏者が火花を散らしたり、和んだり、
痛快だった。CPEバッハ作品番号にはWq 番号のほかにH(ヘルム)番号と
いうものがあることを遅ればせながら知った。

F.クープランの新しいコンセール集は普通「趣味の融合または
新しいコンセール」と訳されているが、今回「融合」でなく「混淆」
とされてあった。「融けあう」のと「混ざる」のは少し違うと思うのだが
原語のニュアンスがわからないのでなんともいえない。

推理小説の方はあと少しで読み終わる。訳者あとがきによればこの本と同じ
ヴァイオリン職人探偵が活躍する続編「パガニーニの幽霊」が刊行予定とか、
こちらも期待できそうだ。





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ハラッハ様様

2014-06-04 09:35:00 | ルネッサンス・バロック音楽
リコーダーの本村睦幸先生のリサイタルシリーズ、9回目は「ナポリからドイツへ」
昨年11月「第1回杜の都リコーダーフェスティバル」で聴いたプロと殆ど同じなのだが、
間際になってやはり聴きにいくことにした。というのもあの時初めて聴いた、
マイナー2曲:ハッセとピアー二をまた聴いてみたくなったからだ。全く知らなかった曲を
一度きいて覚えてしまう才能もないし楽譜もないし・・・。
それと前回は通奏低音がチェンバロだけだったが、今回はバロックチェロも
あり、曲の印象も違ってくるのではないかという期待も。

すべて期待を裏切らない演奏というか非常に質の高いコンサートだった。
近江楽堂の音響効果の素晴らしさも改めて実感した。
プログラムのマイナー2曲はいずれもオーストリア貴族のハラッハコレクションの
中で見つかったそうだ。この貴族もオランダのワセナール伯爵のように自らリコーダー
を吹く殿様だったそうだ。
ピアー二のソナタはG管リコーダーの、明るめの音で情感たっぷりでも嫌味なくホ短調が
吹かれ、楽器によく合っていた。

ハッセは以前仙台で受けていた「NHKバロック講座」のドレスデン宮廷の巻の
時、オペラやレクイエムを聴いたことがあった。生ではM.シュナイダー来日の際、
リコーダーソナタ Bflat majorを初めて聴き、時代はモーツアルトの時代に近づいて
いるのを感じた。今回演奏されたのはソナタではなく、「リコーダーのためのカンタータ」
というとても珍しい曲種。歌を意識したのかオペラチックなところも多く楽しめた。
アンコールは仙台と同じ、ファルコ二エリの小品が聴けもの悲しい旋律が心にしみた。

通低のチェロ(エマニュエル・ジラール氏)は深い音としっかりしたリズムで支え、
流れるようなチェンバロ(村上暁美氏)は儚い美しさを際立たせていた。

ハラッハコレクションにはまだリコーダー曲が埋もれているそうなので近い将来
また他の曲を聴けるかもしれない。Wiki にハラッハ伯爵の肖像画が載っていた。
伯爵の右手元にある棒状のものは残念ながらリコーダーではなさそうだが、
楽譜らしきものがみえる。





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夏は来たりぬ

2014-06-01 17:00:25 | ルネッサンス・バロック音楽
6月1日なのに8月1日と書いてしまいそうになった。
電車に乗るともう冷房ガンガンかけてあり寒いので薄い
スカーフを丸めてバッグに入れておくようになった。
帽子か日傘に飲み物も必携。

先日運よく地元で練習している混声合唱団に入ることができた。
ルネッサンス専門の合唱団を探すのは大変かと思っていたが
難なくみつかった。練習を見せていただき、よさそうなので、
即入団。決意の速さに自分でもびっくり。
これで東京でもチェンバロ、リコーダー、に続き、自分の
居場所を見つけられた。本当にラッキーだと思う。

ここ数年殆ど聴かなくなっていた手持ちの合唱CDを眺めながら
ヒリヤード・アンサンブルやタリス・スコラーズ、シックス
ティーンをまた聴いてみようと思った矢先、

武蔵野文化事業団から送ってきた、コンサート案内に
「ヒリアードアンサンブルの最後の来日公演」
をみつけ、ため息。解散することを遅ればせながら知った。
これは行かなくては・・・。昨日のL.P.Bには若いメンバー
もかなりいたがクイケン兄弟引退後はどうなるのか
厳しそうだ。

さてヒリヤードアンサンブルで持っているCDの第1号は
「夏は来たりぬ」だった。中世のイギリスの歌が収められて
英語も現代とは全く違って全くわからないので聴くだけだ。
同じ頃85年前後のメンバーでのイギリス・マドリガル集は
よく聴いて所属した合唱団の選曲の参考にしたものだった。

9月のさよならコンサートではいろいろな思いが交錯する
聴衆でいっぱいになることだろう。現在のメンバーには
2人昔のメンバーが残っているようだ。男声4人のグループは
オルランドコンソート以来聴いていない。それももう
いつのことだか定かでない。


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