オルガン演奏者や愛好家のグループで八王子のオルガン製作家研究家の横田宗隆さんの
工房見学に行った。好天に恵まれ晩秋の趣の山道をバスに揺られて藤野地区に向かった。
工房は2ケ所にあり、まずオルガンの構造や製作の歴史の概要をスライドをみながら
伺った。数か月前ラジオの「古楽の楽しみ」の対談に出ていらしたので初めてお会い
する気がしなかった。長らくアメリカやスウェーデンでオルガン製作研究をされ帰国、
当時行われていた方法でオルガンを制作修理しておられるそうだ。
宮崎のルーテル教会のパイプオルガンがが帰国後の作品で霊南坂教会のオルガンの修理
もされたそうだ。工房には若い見習の方も数人おられ横田さんの知識や技術が
受け継がれると思うと嬉しくなった。
メムリンクの奏楽天使の絵にある、ポルタティフオルガンの実演もあった。
右手で鍵盤を弾き、左手でふいごを動かす。一人で演奏出来たら楽しそうだ。
今回の貴重な体験はパイプオルガンのパイプを作るところを見せていただいたこと
ふいごを動かしてみたことだった。
パイプは原料の鉛と錫を煮溶かして、箱に入れ、細かい砂を敷き詰めた台に
薄い板状になるよう流す。
出来た薄い板をパイプの大きさに合わせ裁断し、丸め、ベンガラで塗装
継ぎ目をハンダで接着した後、うた口を作り、足にあたる円錐管とつなげ、
「管楽器」の完成。パイプは一本も同じものはなく何千本も違った大きさのものを
作らねばならず気が遠くなるような作業だ。
もう一つの工房では新しいオルガン用(市川市)のふいごが数台置かれており
ふいご操作の体験もさせていただいた。絶え間なく風を送り込むには修練が必要で、
弾かれる曲のことも知っていでた方がよいので単純な作業ではなさそうだ。
よく見る18世紀フランスの資料ではふいご職人は足でなく手を使い風を送っている。
足の方がらくそうだが。
ポルタティーフから巨大なパイプオルガンまで、楽器のことも曲のこともまだ知らないことが
多いオルガンだが、あらためてその魅力を感じた一日だった。