376 アチャコの京都観光日誌 逆順の天皇史 63代 冷泉天皇 狂気か偽装か？

63代　冷泉天皇　狂気の天皇か？装ったか？

 

在位期間　　967年11月15日 - 969年9月27日

元号　　康保　　安和

先代　　村上天皇　　次代　円融天皇

誕生　　950年6月12日　五条邸　　　崩御　　1011年11月21日　冷泉院

陵所　　桜本陵

父親　　村上天皇　　　　母親　藤原安子

中宮　昌子内親王（朱雀天皇皇女）

女御　藤原懐子　藤原超子　藤原怤子

子女　花山天皇　三条天皇　ほか

皇居　大内裏

冷泉天皇の即位には、二つの異例を書かねばならない。

まず、先代村上天皇の第1皇子広平親王を差し置いて弟の冷泉天皇が皇太子となった事だ。（ちょっと変だが学術論文ではないのですべて原則天皇名で書く。）平広親王の母は藤原元方の娘で、藤原南家の出身であった。世はすでに北家の時代であり、立太子は生後すぐの後の冷泉天皇に対して行われた。

藤原の紋「下り藤」

孫の天皇即位だけを楽しみにしていた藤原元方は憤死に近い死に方をする。因みに、元方は身内のあいつでの不幸や、何より冷泉天皇の精神の異常などを考えると、「怨霊」になったとされている。その霊力は子の花山天皇にまで及んでいる。

怨霊

次に、冷泉天皇が精神異常と見なされた為すぐに皇太子選定の必要があった。冷泉に子はまだなく、弟の為平親王と、守平親王の二人の中で決める事になり、当たり前なら兄の為平親王だが、弟の守平親王が立太子し円融天皇となる。これは、為平親王の母は源高明の娘で、こちらも藤原北家の政敵である。翌年、密告により高明は左遷される。「安和の変」という。この頃になると藤原家の陰謀は陰湿で見え透いている。すでに世の中は冤罪でも抵抗できないほど藤原摂関家の時代になっていたのだろう。

ところで、「狂乱の君」と言われた冷泉天皇だが、世の中には狂乱を装う事で身の保全をする者もいる。しかし冷泉天皇については、花山天皇のように退位後の宗教的・文化的業績をも残すこともなく亡くなっている。残念ながら「元方の怨霊」の仕業と考えざるを得ない。その奇行とは、

『足が傷つくのも全く構わず、一日中蹴鞠を続けた。

幼い頃、父帝（村上天皇）に手紙の返事として、男性の陰茎が大きく描かれた絵を送りつけた。

意味不明

清涼殿近くの番小屋の屋根の上に座り込んだ。

病気で床に伏していた時、大声で歌を歌っていた。

退位後に住んでいた御所が火事になった折、避難するときに牛車の中で大声で歌を歌った。』

などが伝わる。いずれも悪戯程度である。精神異常とまでは言えないと筆者は考える。

因みに、諡号は崩御した場所が、冷泉院であった事からつけられた。冷泉院天皇と呼ばないのは、院号の場合、冷泉院院となるからである。従って、冷泉天皇という。後西天皇が本当は、後西院天皇であることと同じ理由である。別に良いか？