四角社長は、前任の南の海社長の急死によって就任した為、求心力に欠けていた。
しかもセールスマン時代の販売実績が物を言うこの会社では、四角社長のトップセールス時代はあまりに短かった。
南の海社長は、実績でも自分に匹敵する高根の花専務を、後継者と評価していたがその死によって白紙になってしまった。
四角社長と高嶺の花専務とは、仲がいいはずがなかった。そこに今回の事件。
この会社の営業現場での行き過ぎた指導は、しばしば問題になっていた。
高根の花専務は、この機会に自分の立場を挽回しようと秘策に出た。
警察に届けた以降、沈黙を貫くことにした。裁判に持ち込む為だ。一方、四角社長たち他の役員たちは、うろたえた。
この程度の暴力は、日常茶飯事のこの会社では、警察の取り調べはあってはならない事だ。会社の中で解決したかった。
加えて、外国社員のもめ事は、表にすると国際問題に発展しかねない。
まずい事に、高根の花専務には、国民的人気がある。マスコミは一斉に、専務擁護、会社批判に動いた。
暴力反対、外国人差別反対、独占企業は問題だとキャンペーンを張った。しかし、問題はそのような簡単な問題ではなかった。
高根の花専務と、モンゴルセールスマンとの確執が絡んできたのだ。
続く