アチャコちゃんの京都日誌

あちゃこが巡る京都の古刹巡礼

㉕ アチャコのアキレス腱断絶日誌  株屋の独白

2017-04-17 08:40:14 | 日記

㉕ アキレス腱切った

 

・ダマテンのツワモノ

 

当日の朝は、沐浴潔斎してそのお客への訪問に備えた。担当者である部下は相変わらずマイペース。彼には十分に秘策について説明してあるが、まずは真剣に、お詫びから始め出来れば許しを請う事にしていた。

 

・しかし訪問した瞬間にその安易な考えは吹っ飛んだ。

 

機械工具の卸を営んでいるお客は、我々を小さな作業部屋に通した。窓もなく扉も硬く閉ざされ裸電球一つの小部屋は、我々の声が反響して不気味なムードを醸し出した。まさに独房に通された感じだ。お客の手元には、鉄製のバール、トンカチ、その他鋭利な刃物のついた工具類が散乱していた。その一つを手に取ったお客は、「さあ、話聞こうか。今日は何の話だ?」「んん?」すでに、お客はすべてを理解していたのだ、なんとその上で当該取引も含めて全取引の損失の補てんの要求をして来たのだ。

・絶対絶命だ。

交渉の冒頭、お客が手に持ったバールで机の上を全力で叩いて来た。狭い部屋に反響したその音は、我々を恐怖のどん底におとしめるには十分だった。無断売買の弱みがある当方に全損失の補てんを押し付ける。実に巧妙でうまいやり方だ。しかも状況は、死の恐怖すら襲う。お客の顔が、たった一つの裸電球に対して逆光で、まさに阿修羅の形相に見えた。

・一かバチかの手を使うか。

思う間もなく第2撃が眼前の机の上に叩き落とされた。すでに反響音も耳に届かないくらい緊張していた。・・・・。沈黙数分の後、勇気をもって打ち合わせ通り、吾輩は自らの拳を高々と打ち上げた・・・・・・・。「もはやアキレス腱どころではない。」