エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

「スマートグリッド革命」(シリーズ;韓国の「グリーン成長」国家戦略)

2011-01-16 00:00:57 | Weblog
韓国のスマートグリッドの基礎にあるのが「グリーン成長」国家戦略です。09年7月、イタリアで開かれたG8拡大首脳会議で、韓国はスマートグリッド分野の先導国(リーディングカントリー)に選ばれました。韓国はグリーン成長プロジェクトに全力をあげており、首脳会議直前には「グリーン成長国家戦力および5カ年計画」を発表し、その後国会で「グリーン成長基本法」が成立しました。
 韓国政府の5カ年計画によると、GDPの2%にあたる額を毎年投入し、5年間で総額107兆ウォンの予算を投入する予定です。経済効果は182兆ウォンから206兆ウォン、156万から181万人の新規雇用を創出すると見込んでいます。投資先は主に、再生可能エネルギー、発光ダイオード(LED)、スマートグリッド、ハイブリッドカーなどのグリーンビジネスです。
 また、投資計画の一環として、政府が現代自動車起亜自動車などの自動車メーカーに対し、12年以降、平均燃費を1リットル当たり17キロメートル以上に引き上げるか、1キロメートル当たりの温室効果ガス排出量を140グラム以下に引き下げるかどちらかの措置を講じるよう求めるとしています。
 韓国は「グリーン成長」という国家戦略を通じて、一方で気候変動による環境リスクと資源枯渇という危機に備えつつ、他方で、低成長に悩む韓国経済に新しい成長動力を与え、経済成長のパラダイムシフトを起こすことを狙っています。1970~80年代にかけて年間8%台の高度成長を遂げ、「アジアの4つの龍の中でも最高」と呼ばれた韓国経済の潜在成長率は3%台に低下していますが、グリーン成長プロジェクトが経済の潜在成長率を高め、韓国は20年には世界7位、50年には世界5位の「環境大国」になることを目標としています。
 このため韓国政府は、政府部内にグリーン成長プロジェクトを推進する機関を10カ所以上設置しました。大統領直属のグリーン成長委員会をはじめ、知識経済部、企画財政部、国土海洋部、環境部、農林水産食品部、金融委員会など、各省庁に推進部署が置かれています。
また、IT産業をグリーン成長の根幹と位置づけ、「グリーンIT国家戦略」も策定しています。Green of ITとGreen by ITの2本立てで、このうちGreen by ITにおいて、スマートグリッドにより国全体のエネルギー消費を30年までに6%削減するとともに、世界の市場の確保を目指すとしています。その他、ITによるオフィス環境の低炭素化(遠隔作業、テレワークなどによりCO2を315万トン削減。エネルギーマネージメント・システムの普及により13年までにエネルギー使用量を20%削減)、ITによる生活の対炭素化(遠隔教育による教育費用の10%削減、遠隔医療による医療機関訪問回数を20年までに30%削減。生ゴミ20%減量。新築住宅のエネルギー効率を13年までに20%向上)、ITによる製造部門の低炭素化(13年までにエネルギー効率を8%向上、CO2を172万トン削減)、スマートグリーン交通・物流体系への転換(交通渋滞を最小限にすることによりCO2を107万トン、物流の効率化によりCO2を172万トン削減)などが注目されます。


「スマートグリッド革命」(シリーズ;中国電気自動車メーカーの雄、BYD)

2011-01-14 07:09:49 | Weblog
中国の電気自動車メーカー“Small Hundreds”の雄は、08年末世界に先駆けて、量産型プラグインハイブリッドカーを販売し話題になった比亜迪(BYD)です。BYDは、95年に20人の従業員でスタートし、その後、電池生産や携帯電話機生産を経て自動車生産に乗り出し、現在はグループ全体で13万人の従業員を抱える巨大企業に成長しています。
 BYDは広東省深センに本社を置くメーカーで、香港証券取引所に上場しています。事業内容は充電池、携帯電話、自動車の製造販売で、リチウムイオン電池生産では世界第2位、中でも携帯電話機用電池生産では世界最大の生産量を誇ります。また、携帯電話機やノートパソコンなどIT製品の部品生産と組み立ても行い、ノキアやモトローラの携帯電話機器のOEMも手掛けています。
 最近では自動車部門の成長が著しく、同社の売り上げの55%を占めるまでになっています。同グループが自動車生産に乗り出したのは03年で、陜西省の西安秦川汽車の倒産時に同社を買収して子会社BYDオートを設立しました。
 BYDオートの販売台数は、広東省に本社を置く主要自動車メーカーの中では、東風日産に次いで第2位。同社の車の販売は低価格車の投入で急増しており、F3という1500ccクラスのセダンを5万7,000元(約75万円)で販売し、月間販売台数が3万台前後という空前の売れ行きをみせています。
 また、得意とする充電式二次電池技術を駆使して、08年末には世界初の量産型プラグインハイブリッド車F3DMを販売し、話題になりました。ただ、F3DMは、官庁や企業向けに少量出荷されただけで、むしろBYDは純粋な電気自動車の開発に注力しています。自社開発した鉄電池(リチウムフェライト電池)を搭載した電気自動車「e6」の販売を09年末に開始しました。BYDの電池技術の開発では、夜間の安価な電気を使って充電し、昼間はこの電池を電源に使用して工場やオフィスを稼働させる実験を進めてきました。鉄電池による充電ロスは7%で、高効率で充電でき、廃棄時の環境負荷が小さく、製造コストも安価な点を強調しています。
 BYDは10年3月、ドイツの自動車王手ダイムラーとエコカーの共同開発に関して協議していくと発表しました。両社は、ダイムラー車をベースに独自ブランドで販売を目指します。合弁会社の設立も検討しており、投資総額は1億ユーロを超える規模です。さらに、高精度の金型製造能力を有する日本の金型大手メーカー、オギハラの館林工場を10年4月に買収するなど、グローバルビジネス展開も活発化させています。
アメリカの著名投資家のウォーレン・バフェットによる投資や創業者の王伝福氏が保有資産で中国一の富豪となるなど、BYDはマスコミにも常に話題を提供しています。今後とも目が離せない存在です。

「スマートグリッド革命」(シリーズ;活発な動き見せる米インテルとオラクル)

2011-01-13 00:07:42 | Weblog
インテルはハイテク企業の中では最も再生可能エネルギーの購入が多い企業として知られていますが、そのスマートグリッド戦略は、電力ネットワークをよりスマートにすることにより、自社のプロセッサの販路を拡大しようという「インテル・オープン・エネジー・イニシアティブ」が基本です。
この一環でIEEEの活動を支援するなどスマートグリッドの標準化にも取り組んでいます。また、アメリカの電力の76%は建物が消費し、CO2の43%は建物から発生していることから(データセンターが典型例)、スマートグリッドの鍵はスマートビルディングであるとして、スマート化されていない住宅と小規模な商用ビルにスマート化に注力しています。
このうち住宅に関しては、Tendrillと提携して、HEMSを消費者に提供しています。ディスプレイ装置としては、専用の家庭内ディスプレイとともに、インターネットTVを活用する方式を提案しています。10年1月インテルは、ホーム・エネルギーマネージメント・システムおよびダッシュボードを発表しました。Zigbee通信方式を採用し、サーモスタットによる室内の温度や湿度の表示、家電などのエネルギーの使用状況の表示や操作にとどまらず、ネットに接続し情報端末として機能して、家庭の電気料金が30%低減することを目標としています。また、商用ビルに関しては、傘下のIntel Capitalが出資しているArch Rock(超低消費電力のIPベースのセンサを開発)が商用ビルのスマート化を進めるためのAR Energy Optimizerを提供しています。
 これに続くのはオラクルです。
09年5月、オラクルは電力会社向けにスマートグリッド関連のエンド・トゥ・エンドのスマート・グリッド・ソフトウェア群を市場投入することを発表しました。これには、スマート・メーター・データ管理をはじめ、課金・顧客関係、負荷分析、規制遵守、労働力・資産管理を含む業務分野を広範に網羅しています。停電箇所を特定したり、配電自動システムに障害が生じたときにシステムを正常に戻す機能を有するソフトウェアMDMもあります。
 このためオラクルは、06年に電力会社の収入・事業管理を行うソフトウェアメーカーであるSPLワークグループを、07年にMDMの開発メーカーであるロードスター・コーポレーションを買収しています。この分野でオラクルは、IBM、SAPなどの大企業やe-Meter、エコロジック・アナリティックなどのスタートアップ企業と競争しています。

マイケル・サンデルの「正義」から「美へのイノベーション」へ

2011-01-11 00:14:37 | Weblog
マイケル・サンデルの「正義」から「美へのイノベーション」へ
~一般社団法人スマートプロジェクトの今後の活動方針・哲学~

2011年1月11日
一般社団法人スマートプロジェクト
代表 加 藤 敏 春

<マイケル・サンデルの「正義」の意義>
2011年が明けて10日が経ちました。本日ちょうど、NHK「ハーバード白熱教室」で大きな反響を得たマイケル・サンデルの「正義」についての第一次的な考察を終えましたので、『マイケル・サンデルの「正義」から「美へのイノベーション」へ』と題して、マイケル・サンデルの著作、NHKテレビでの報道、千葉大学の小林正弥教授の解説などに触発されたここ数カ月にわたる私の哲学的考察をとりまとめ、一般社団法人スマートプロジェクトの今後の活動方針・哲学をとともに、ご披露させていただきたいと思います。
そもそも、哲学的観点から「何か正義か」を判断する基準としては、「真」、「善」、「美」の3つがありますが、私は、今後近代文明からポスト近代文明へと転換するに当たり、その判断基準が「真」→「善」へ、さらには「善」→「美」へと進化していると考えています。近代文明は、人間像として「他の人ではなく、自分の合理的な利益を考える」を想定し、科学技術の発達を工学的技術に置き換えて「真」を追求し、自由と平等のいずれかに重点を置く価値観の確立を目指すことにより成り立ってきました。前者に価値の重点を置くのが功利主義(「正義」とは、福利の最大化にあるとする考え方)、自由主義(「正義」とは、自由の最大尊重にあるとする考え方。欧州的リベラリズム、リバタリアニズム)、後者に価値の重点を置くのが米国的リベラリズムや社会民主主義です。マイケル・サンデルの「正義」の意義は、この「真」を追求する思潮から「善」を追求する思潮への転換を提唱していることです。正義の判断基準が「真」→「善」へと進化することを提唱していることは、ポスト近代文明のあり方を構想していると捉えることもできると思います。
近代文明は、「情報革命」(グーテンベルクの印刷技術による社会システムの変革)、「エネルギー革命」(化石燃料を大量に使う産業革命社会システムの変革)、「精神革命」(ルターの宗教改革以来の精神面からする社会システムの変革)の3つの革命の組合せにより実現されました。21世紀を迎えて10年経過した今、私たちは、「情報革命」(インターネットによる社会システムの変革)と「エネルギー革命」(脱化石燃料を目指したスマートグリッドの構築などによる社会システムの変革=私が唱える「スマートグリッド革命」)の2つの革命を経験しつつありますが、3番目の「精神革命」をまだ迎えてはいません。しかし、マイケル・サンデルの「正義」は、アリストテレスなどの古代の政治哲学あるいは東洋的な儒教哲学の世界を新たな形で復活させようという思潮であり、私たちを新たな3番目の「精神革命」の入り口に立たせるくらいのインパクトのある思潮だと思います。それは、単に、ブッシュ政権や小泉政権に代表されるネオ・リベラリズムに対するオルタナティブ、オバマ政権を支える理念的支柱の一つであるだけではなく、近代文明が最終的に行き着いたマネーによる「グローバル資本主義」のあり方を根底から問い直し、ポスト近代文明のあり方を示唆しています。

 <政治の世界における「真」→「善」への進化>
政治の世界においては、マイケル・サンデルの「正義」は、功利主義や功利主義を批判したロールズのリベラリズム(「無知のヴェール」、「原初状態」などの“虚構”を仮定することにより、無関係な人々の間の合意の成立可能性により一定の福祉政策や所得再分配政策を正当化する立場)を乗り越え、「真」ではなく「善」を追求する思潮にステップ・アップする動きと捉えることができます。功利主義によって道徳の科学を創出できると考え、「最大幸福原理」に基づいて法制や政治を改革しようとしたジェレミー・ベンサムの政治思潮に象徴されるように、「真」を判断基準と政治思潮によっては、「私たちはどう生きるべき」、「政治経済はどうあるべきか」といった問いに建設的な答えを見いだせないという基本的認識に立っています。マイケル・サンデルは、「救命ボート」の実例(四人が乗ったボートが難破し食糧難に陥った。いよいよ飢餓状態が始まり、ついに船長は、一番衰弱していた一人を殺して残り三人の食料にするという決断をした)、キリスト教徒をライオンに食べさせて格闘技を楽しむローマ人、9・11後のテロリストに対する拷問の例などをあげ、人間の尊厳の観点から功利主義の問題をえぐり出しています(なお、小林教授は、「救命ボート」の実例と同様の小説『ひかりごけ』で紹介された実例、米国による広島と長崎における原子爆弾の投下の例をあげています)。
戦後日本は、ロールズのリベラリズムなどを基礎に繁栄を追い求めてきました。社会は、個々人の「善き生き方」には関与せず、基本的な自由を保障すること、機会を均等に開くこと、不遇な人々に配慮することに努めてきました。カントの言う「自律」した個人からなる豊かな社会の実現を目指してきたのです。しかし半世紀を過ぎた今、私たちは厳しい現実を目の当たりにしています。経済は停滞し、格差と貧困が広がり、政治は混乱し、社会は無縁化しつつあります。「誰でもよかったんだ」と言って無差別殺人に走るような事件が多発するにつけ、やはり社会のどこかがおかしくなっているという感を持たざるをえません。マイケル・サンデルは、私たちに対して、「そもそも善き生き方を個人の選択にゆだねたことに問題があるのではないか。これからは社会全体で公民的美徳(シビック・ヴァーチュー)の話をする必要があるのではないか」と呼び掛けているように思います。裁判員制度の導入に関しては、死刑判決にまで民間人を関与させることについての是非に関してはいまだに議論があるところですが、司法の民主化という目的とともに、公民的美徳(シビック・ヴァーチュー)の陶冶という目的もあることは、改めて注目されてよいのではないかと思います。
マイケル・サンデルの「正義」は、功利主義や功利主義を批判したロールズのリベラリズムの「正義」(人間の合意に基づくものであり、司法や法律において正しいと判断される「法義」と定義されうるもの)に倫理性と共通性(共=コモン=対話に基づく共和)を回復しようとする新しく、壮大な思潮です。社会やそれぞれの目的から考えて、通常コミュニティタリアニズムと称されますが、従来型の特定の共同体の伝統や慣行に基づくコミュニティタリアニズムや柄谷行人など日本の論者がよく主張する「自発的結社」(association)を超えたもので、共=コモン=対話に基づく共和政治において、参加者が最終目的を共有するような協力の枠組み=「共通善」による政治を構築し、参加者の公民的美徳(シビック・ヴァーチュー)を陶冶し、「善き生き方」を実現しようとするものです。西欧ではアレクシス・トクヴィルの『アメリカの民主政治』やハンナ・アーレントの活動・仕事・労働の考え方、東洋では儒教的な伝統の考え方にも通ずる「真」→「善」への進化と言えます。


<経済の世界における「真」→「善」への進化>
経済の世界においては、長らく功利主義に基づく経済思潮が主流でした。経済学もこの考え方で構築されています。それは、喜びないし快楽を効用ととらえ、その最大化が「正義」とする考えで、GDPを至上視する見方です。功利主義に基づく経済学では、人々の幸福は計測でき、かつ、合計できると考えるため、人々の幸福には共通の基準が成り立つと考え、それを共通価値尺度としての貨幣価値で表します。経済成長のため財政政策により有効需要の喚起や完全雇用の実現というケインズ主義的な考え方、ミルトン・フリードマンに代表されるマネタリズムや最近における金融政策・マネーサプライ重視の考え方は、良く対極にある考え方として対比されますが、いずれも経済問題の解決から「善」による判断基準を排除し、経済成長により経済問題は解決できるとする立場です。「善なき経済学」とも総括・形容できます。マイケル・サンデルは、こうした「善なき経済学」がもたらす弊害として、フォード社の費用対効果分析の例を一例として挙げています。フォード社の費用対効果分析では、車の欠陥のために事故で死ぬ人間の命や負傷する人のけがを貨幣価値に換算してこれを便益の中に加えたが、欠陥の改良にかかる費用の方が便益より大きかったので、人名は犠牲になっても欠陥の改良はしない方がよいとしました。
そして、この経済の世界における功利主義を原理主義にまで高めたのがロバート・ノージックのリバタリアニズムでした。リバタリアニズムは、政治的な自由だけではなく経済的自由も重視し、肉体から財産までを含めて「自己所有」するということを重視し、市場において財産の移転が行われている限り現在保有する財産は「正義」にかなっていると主張する市場原理主義の立場です。リバタリアニズムによると、福祉のために財産に課税するのは不正義だということになります。リバタリアニズムは、英米のサッチャー政権やレーガン政権以来世界を席巻した思潮であり、日本の中曽根内閣の民営化や小泉内閣の構造改革路線にも典型的な形で現れました。
リバタリアニズムは、政治の世界ではロールズのリベラリズムにとって代わられた感があったものの、経済の世界においては隆盛をきわめ、マネーによる「グローバル資本主義」にまで到達しました。その行き詰まり・破たんを露呈したのが2008年のリーマンショックであり、09年のドバイショックから10年のギリシャ、アイルランドなどの欧州危機を経て、現在も継続しています。マネーによる「グローバル資本主義」は効率化、経済の活性化(ただし、その裏腹のバブル)をもたらしましたが、マネーの力を全開させ、経済の不安定化、所得格差の拡大、地球環境の破壊、エネルギー・食糧危機という人類的危機をもたらしました。また、前述の「善なき経済学」がもたらす弊害は、功利主義と同様リバタリアニズムでも解決されることなく、むしろ増幅されました。功利主義からは、人命の犠牲の放置や正当化などのように道徳的に許されない結論を導いてしまうことがあるのですが、「グローバル資本主義」においては、こうした「人間の生命について貨幣換算してよいのか」という問題のみならず、価値の単一化、拝金主義の横行を招くマネーの力の全開により、「人間の幸福を単一の共通尺度で測ってもよいのか」という問題をより鮮明な形で提起することになりました。こうして、今や、マネーによる「グローバル資本主義」の下では、このままマネーによる「グローバル資本主義」を放置しておくことは人類の滅亡につながることが明らかになりました。
マイケル・サンデルは、経済の世界におけるリバタリアニズム的政策の失敗を構造的なものとして捉え、社会の連帯、同胞愛などを高める共和主義的政治経済を構築するという新しい方向性を提示しています。そこでは、福祉政策や所得再分配政策を単に最低収入の確保や現金給付に限定することなく、目指すべき目的や「共通善」の形成に基づき、規制、課税や補助金などを使って経済的価値を道徳的価値に転換していくという「道徳的対価」の考え方が示されています。マイケル・サンデルの「正義」は、人間の才能や努力に基づく配分を「道徳的対価」に基づいて再配分するという積極主義に立つ点において、ロールズのリベラリズムと決定的に異なります。環境政策においても、環境保全に対して有意義な商品に対しては、税や補助金などにおいて優遇する政策は、このような観点から正当化されます。戦前日本の賀川豊彦(大正・昭和のキリスト教社会運動家。「生産(者)組合」と「消費(者)組合」による競争と協調の調和を説き、ノーベル文学賞候補に2回、ノーベル平和賞候補に3回名を連ねた人物)の協同組合運動や「友愛経済学」(Brotherhood Economics)の考え方などをほうふつとさせる動きですが、経済の世界においては政治の世界より一段階遅れて、これから「真」→「善」へと進化する段階にあると言えます。

<次なる「善」→「美」への進化>
マイケル・サンデルの「正義」、すなわち「真」→「善」への進化という思潮は、生命論(人間は「天賦の生命を善く生きる」ことを目的とする存在であり、遺伝子工学などにより人体を改造したり、増強したりすることは認めるべきではない。また、インドで商業的な代理出産が合法化されたことや精子や臓器の市場での取引を肯定する新たしい優生学の考え方に対しては、本来市場化すべきではないところを市場化していると批判)、環境論(自然科学的な根拠に基づく環境保全のみならず環境倫理を重視する立場から自然を搾取すべきではないというディープ・エコロジーに通ずる考え方)にまで発展していますが、今回私が、マイケル・サンデルの「正義」を考察して最も強く、かつ、深く考えたことは、マイケル・サンデルが政治の世界および経済の世界で提唱している「真」→「善」の進化をさらにもう一段階進めて、「善」→「美」へと「正義」の判断基準を進化させなければならないのではないか、マイケル・サンデルの「正義」から「美へのイノベーション」を起こす必要があるのではないかということです。
というのは、「グローバル資本主義」による文明は、マネーの幾何級数的増加により地球環境を破壊しつくし、エネルギー・食糧危機をもたらす「力の文明」といえますが、今、「力の文明」から「美の文明」への歴史的転換が起ころうとしているからです。その基底にあるのは、地球環境問題、エネルギー・食糧問題、生物多様性の問題の地球的課題に全世界の人類あげて取り組もうとしているように、人間社会の価値の力点が「真」→「善」→「美」と移ってきているということです。現在、「生物・無生物を含む地球を汚してはならない」という声が高まっています。「生物・無生物を含む地球を汚してはならない」というのは、価値としては「美」に立脚しています。 地球と結びつく価値は、「真」でも「善」でもなく、「美」にあります。「真」や「善」は人間が作り上げた神あるいは人間と人間との合意にかかわる価値であり、生物・無生物を含む地球という存在に対しては意味を成しません。地球文明にかかわる価値は「美」ではないでしょうか。
近代哲学の祖カントは、「真」・「善」・「美」という価値の問題をこの順で論じました。それぞれ「人は何を知りうるか」(『純粋理性批判』1781年)、「人は何をすべきか」(『実践理性批判』1788年)、「人は何を願いうるか」(『判断力批判』1790年)という命題に対応しています。カントは、「真」や「善」は理性のうちに働くのに対して、感性の領域の存在が立ち現れてくることを予見して、最後には「美」を崇高と論じました。また、私たち日本人は「真」や「善」にもまして、「美」を大切にしてきた民族です。善行に対しえてはやり方が「きれい」といい、悪行に対してはやり方が「きたない」というように、善悪を論じる場合でも、そこには日本人特有の美意識が働いています。また、悪を絶対悪として裁かないところに日本の特色があります。親鸞の「善人なおもて往生す、いわんや悪人をや」 という『歎異抄』の一節、 つまり善人でさえ往生できるのだから、 悪人はいうまでもないという「悪人正機説」はその典型です。しかも、日本人の美意識には物質的基礎があります。「みずみずしい」「水も滴る」「水際立った」「水茎のあと」など、水を持って表現する独自の審美眼を養ってきたことは、その典型です。
       岩ばしる 垂水の上の さわらびの 萌え出づる 春になりにけるかも  (万葉集の志貴の皇子の歌)
 <渓谷をかけぬける冷たい雪解けの水、その清冽な流れの落ち込む垂水に黄緑色の生命が萌えている。透き通った水に春の陽光がさしこみ、生命が芽吹いている。「ああ春が来たのだ!」>

<「美へのイノベーション」とエコポイント>
私が唱える「スマートグリッド革命」は、ポスト近代文明創造に向けた「情報革命」(インターネットによる社会システムの変革)に次ぐ「エネルギー革命」と捉えることができます。その下では、「You Tubeのエネルギー版」と言える「You Energy」へのパラダイムシフトが起こり、究極的には、電力会社が集中型の大規模発電所で発電する電力とエンドユーザが生む出す電力を「エネルギー・ウェブ」を介して集めた「ヴァーチャル発電所」の電力とが併存するようになるでしょう。そうなれば、「情報革命」により出現したデジタル経済のように、電力の生産と流通に革命が起こり、電力の消費のみならず生産販売を行う真の「プロシューマー」(生産消費者)が出現します。
科学の真理を工学的技術に置き換えて技術とイデオロギーだけを振りかざした近代の「力の文明」は、クォンツが高度化させた金融工学を駆使してマネーの幾何級数的な増殖を生み出しました。そして、マネーによる「グロ-バル資本主義」はクライマックスを迎え、2008年のリーマンショック以降の世界的金融危機の中で断末魔の叫び声をあげています。こうした「力の文明」が道を譲るのは「美の文明」であり、新しい文明がよってたつべき価値は、「真」や「善」にも増して「美」です。そこで必要となるのがエコポイント<美の価値>、スマートグリッド<美のネットワーク>、スマートコミュニティ<美のフィールド>よりなる「美へのイノベーション」です。ここで私が「美へのイノベーション」と言っているのは、ジョセフ・シュンペーターが提唱したプロダクトイノベーション、プロセスイノベーション、新しいマーケティング、新しいサプライチェーン・マネージメント、新しい組織(ビジネスモデル)という5つのタイプの「イノベーション」を活用しながら、「スマートグリッド革命」により「力の文明」から「美の文明」への転換を実現しようという方法論のことです。「美へのイノベーション」の主体は、真の「プロシューマー」です。

「美へのイノベーション」の方法論やプロシューマーの役割の詳細については、一般社団法人スマートプロジェクトのホームページおよび拙著『スマートグリッド革命;エネルギー・ウェブの時代』を参照いただきたいのですが、いずれにおいても強調しているエコポイントは、マネーの幾何級数的膨張を矯正し、美の価値を流通させる「エコマネー2.0」の魁(さきがけ)です。エコポイントは「エコマネー2.0」へと進化します。「エコマネー2.0」がマネーと異なる大きな特徴の一つは、貨幣経済と非貨幣経済の2つの経済にまたがって流通する貨幣であるということです。前述のように、功利主義やリバタリアニズムに基づく経済学は共通価値尺度としての貨幣価値で表しますが、このことは多様な価値を貨幣価値による単一化してしまうという副作用をもたらします。かつて、ジョン・スチュアート・ミルは、ジェレミー・ベンサムの功利主義を引き継ぎながらもその弊害を矯正するため、高級な喜びと低級な喜びの区別を試みました。しかし、その区別の基準として使った「高級な喜びと低級な喜びの双方を経験すれば、大部分の人々が選ぶものの方が望ましい喜びである」という考え方は、成功しているとは言えません。
エコポイントやその進化形である「エコマネー2.0」は、非貨幣経済における価値が貨幣経済における価値とは独立して存立することを認め、貨幣経済と非貨幣経済の2つの経済にまたがって流通する貨幣として機能します。「第3の波」の考え方を提唱したアルビン・トフラーは、『富の未来』において、貨幣経済と非貨幣経済の2つのシステムが相互に影響しあいながら新たな富を作り出し、「プロシューマー」への報酬として「代替貨幣」が流通するという世界観を提示しています。「You Energy」のパラダイムの下では、このトフラーの世界観が現実化します。そこでは、既存のビジネスモデルは苦戦を強いられ、ラディカルなビジネスモデルが創造され、貨幣経済と非貨幣経済の2つの経済にまたがって流通するエコポイントやその進化形である「エコマネー2.0」が取引の媒体となると考えられます。

<真の「プロシューマー」による「精神革命」へ>
広がりつつある分散型電源は、複雑なソフトウェアや高度なデジタル技術、インターネットなどによって相互に接続し、「エネルギー・ウェブ」を形づくります。次世代高機能ケータイであるスマートフォンやタブレット端末がその端末となるでしょう。さらに、「エネルギー・ウェブ」を活用すれば、省エネによる発電(ネガネワット)と太陽光発電による創エネ(ポジワット)を、トータルとして個人・法人による発電ととらえることができます。この発電をエネルギーマネージメント・サービスにつなげ、発電収入やCO2削減分に対応したエコの価値をエコポイントや「エコマネー2.0」により取引できるようにすれば、「You Energy ! 誰もがエネルギーを作れる」から「誰もが新ビジネスを創造できる」というパラダイムが生まれ、おびただしいイノベーションの創造が「経済成長&雇用創出」につながるというパラダイムへと発展します。
それはビジネス革命にとどまらず、私たちのライフスタイルをも変革する生活革命へと発展するでしょう。課題解決に向けて人々が新しいライフスタイルを自ら創り、その結果産業と雇用が生み出され、経済成長につながるという、いままでとは逆向きのイノベーション・プロセスです。そこで強みを発揮するのは一人ひとりのゼロからの創造力です。その創造力を基盤に、「ムーアの法則」(半導体の性能対価格比が18カ月ごとに半減するという現象が長期にわたって継続するという経験則)と「メトカ―フの法則」(ネットワークから得られる便益がネットワークに加わるユーザの数の2乗に比例して相乗効果で増加するという経験則)が情報革命時をはるかにしのぐ規模で作用し、破壊と創造が繰り返され、新たなポスト近代文明が創造されます。創造の主体は市民で、その場は地域です。今日本の課題となっている「地域主権」社会の構築や「新しい公共」の創造にもつながります。
冒頭で述べたように、私たちはまだ、ポスト近代文明創造に向けた3番目の「精神革命」を迎えてはいません。しかしながら、マイケル・サンデルの「正義」による「真」→「善」への進化のプロセスが「美へのイノベーション」と結合して次なる「善」→「美」への進化のプロセスを創造したとき、そこに起こるのは真の「プロシューマー」による「精神革命」です。この段階でポスト近代文明の扉を開く「情報革命」、「エネルギー革命」、「精神革命」の3つの革命の組合せの条件がそろうことになるでしょう。

一般社団法人スマートプロジェクトとしては、科学の真理を踏まえつつ、”坂の上の雲”である「美へのイノベーション」と真の「プロシューマー」の出現を目指して、エコポイント、スマートグリッド、スマートコミュニティの三味一体の活動を展開していきたいと考えております。今後ともご指導、ご鞭撻、ご協力をよろしくお願いいたします。
                                
2010年1月11日   加 藤 敏 春

「スマートグリッド革命」(シリーズ;太陽光発電に注力するインド)

2011-01-09 08:31:54 | Weblog
インドの09年12月末時点で再生可能エネルギー源による累積発電量は1万6,052.87メガワット(MW)になっており、インド政府は09年度の再生可能エネルギー源が全発電量に占めるシェアは3.3~3.5%に達すると見込んでいます。
インド政府は10年1月、太陽電池市場・太陽光発電業界の発展に向けた長期計画「ジャワハルラール・ネルー・国家太陽光ミッション」を開始しました。この計画は、インドを太陽エネルギー産業で世界のリーダーとして位置付けることを主要目的とし、2022年までに電力ネットワークに接続される太陽光発電施設の容量を、現在の200メガワット(MW)から2万メガワット(MW)〔20ギガワット(GW)〕、電力ネットワークに接続せずに独立した施設の発電容量を2,000メガワット(MW)とすることを目標としています。
計画の第1フェーズである10~13年には、電力ネットワークに接続される太陽光発電容量を最低1,000メガワット(MW)まで増大させるほか、200メガワット(MW)の独立型発電も整備する目標を掲げています。インド政府は既に、第1フェーズに対して433億7,000万ルピー(1ルピー=約2円)の融資を承認しています。また、第2フェーズは13~17年とし、電力ネットワークに接続される太陽光発電容量を最低4,000メガワット(MW)まで拡大します。
インド政府は今後5年間で、在来型エネルギー総需要の少なくとも10%を省エネ対策の実施や再生可能エネルギーで賄う構想を掲げており、その一環として国内の34ヵ所を「ソーラーシティ」として開発する計画も立てています。

「スマートグリッド革命」(シリーズ;中国電気自動車メーカーの雄、BYD)

2011-01-08 15:09:23 | Weblog
中国の電気自動車メーカー“Small Hundreds”の雄は、08年末世界に先駆けて、量産型プラグインハイブリッドカーを販売し話題になった比亜迪(BYD)です。BYDは、95年に20人の従業員でスタートし、その後、電池生産や携帯電話機生産を経て自動車生産に乗り出し、現在はグループ全体で13万人の従業員を抱える巨大企業に成長しています。
 BYDは広東省深センに本社を置くメーカーで、香港証券取引所に上場しています。事業内容は充電池、携帯電話、自動車の製造販売で、リチウムイオン電池生産では世界第2位、中でも携帯電話機用電池生産では世界最大の生産量を誇ります。また、携帯電話機やノートパソコンなどIT製品の部品生産と組み立ても行い、ノキアやモトローラの携帯電話機器のOEMも手掛けています。
 最近では自動車部門の成長が著しく、同社の売り上げの55%を占めるまでになっています。同グループが自動車生産に乗り出したのは03年で、陜西省の西安秦川汽車の倒産時に同社を買収して子会社BYDオートを設立しました。
 BYDオートの販売台数は、広東省に本社を置く主要自動車メーカーの中では、東風日産に次いで第2位。同社の車の販売は低価格車の投入で急増しており、F3という1500ccクラスのセダンを5万7,000元(約75万円)で販売し、月間販売台数が3万台前後という空前の売れ行きをみせています。
 また、得意とする充電式二次電池技術を駆使して、08年末には世界初の量産型プラグインハイブリッド車F3DMを販売し、話題になりました。ただ、F3DMは、官庁や企業向けに少量出荷されただけで、むしろBYDは純粋な電気自動車の開発に注力しています。自社開発した鉄電池(リチウムフェライト電池)を搭載した電気自動車「e6」の販売を09年末に開始しました。BYDの電池技術の開発では、夜間の安価な電気を使って充電し、昼間はこの電池を電源に使用して工場やオフィスを稼働させる実験を進めてきました。鉄電池による充電ロスは7%で、高効率で充電でき、廃棄時の環境負荷が小さく、製造コストも安価な点を強調しています。
 BYDは10年3月、ドイツの自動車王手ダイムラーとエコカーの共同開発に関して協議していくと発表しました。両社は、ダイムラー車をベースに独自ブランドで販売を目指します。合弁会社の設立も検討しており、投資総額は1億ユーロを超える規模です。さらに、高精度の金型製造能力を有する日本の金型大手メーカー、オギハラの館林工場を10年4月に買収するなど、グローバルビジネス展開も活発化させています。
アメリカの著名投資家のウォーレン・バフェットによる投資や創業者の王伝福氏が保有資産で中国一の富豪となるなど、BYDはマスコミにも常に話題を提供しています。今後とも目が離せない存在です。

「スマートグリッド革命」(シリーズ;注目されるヒートポンプとLEDの動き)

2011-01-06 06:38:00 | Weblog
HEMS・BEMSに関しては、エコキュート(空気熱ヒートポンプ給湯器)が急速に普及していることにも注目することが必要です。エコキュートは、ヒートポンプ技術で消費電力以上の熱エネルギーが利用できるもので、オール電化住宅向けなどで出荷量を伸ばしてきています。09年10月末、家庭用の給湯システムであるエコキュートの累計出荷台数が202万7千台となり、01年の発売開始以来8年間で200万台を突破しました。価格が1台当たり数十万円で済むということも大きな要因です。
200万台超によるCO2削減効果は、ガス瞬間式、石油瞬間式、電気温水器など従来型の給湯器を使用する場合に比べて、年間約140万トンになると試算されています。また、スマートグリッドでは、需給調整を需要側にある機器によっても行いますが、その機器の候補としては、プラグインハイブリッド車や電気自動車のほか、エコキュートがあります。エコキュートの利点は、電気を熱(お湯)の形態で貯蔵できることですが、現在は、深夜電力でお湯を沸かすために使われているにすぎません。
今後は、太陽光パネルで発電した電気が余った昼間にエコキュートを動かして熱(お湯)で貯めれば、別の時間帯には電気を使わずに済みます。電気事業連合会は、20年に1000万台のエコキュートを導入することを目標としていますので、エコキュート1台当たりの調整能力が1キロワットだとすると、1000万キロワット分の調整が可能になります。
ただし、エネルギーとはいえヒートポンプですから、発電はできないため冷暖房と給湯に限ります。今後は、ビル、工場、商店、病院などの冷暖房・給湯にもヒートポンプ技術を活用した高効率熱供給システムの商品開発を行っていく方向です。東京ガスと日立アプライアンスは、都市ガスを使った吸収ヒートポンプシステムの採用によって、冷房時に捨てていた廃熱を暖房に有効利用するシステムを開発しています。冷房と暖房を同時に実施するデータセンターや商業施設向けに販売します。冷房と暖房を同時にするデータセンターや商業施設では、これまでは冷房廃熱を冷却塔で捨てていましたが、吸収ヒートポンプによって廃熱を回収し、暖房用の温水をつくるのに活用することとしたものです。通年使用でCO2排出量削減率は34%、冷暖房同時実施時は66%との効果を発揮します。
次に注目される動きはLED(発光ダイオード)です。1879年にトーマス・エジソンが発明した白熱電球は、130年間にわたって人類の照明を支えてきましたが、この照明という分野においても、白色LEDという新たな半導体によって革新が起ころうとしています。LEDは自ら光る半導体であり、赤色、緑色はかなり早い時期に実用化され、今は南カリフォルニア大学の中村修二教授が青色LEDを開発したことにより原色がそろい、はじめて白色LEDの量産が可能となりました。LEDは電球に比べて15倍以上の価格ですが、寿命は白熱電球の40倍です。したがって、10年以上は取り換えなくてもよく、消費電力は2分の1から3分の1に減ります。LED照明のメリットとしては、蛍光灯に含まれる水銀を含まないということもあります。
 海外メーカーではフィリップスが積極的なビジネス戦略を展開していますが、国内では、シャープがLED照明事業に本格参入しており、同社は、LEDを液晶、太陽電池に次ぐ第3の主力事業に育成する方針です。三菱化学、日立電線、同和鉱業などのほか、国内半導体大手の東芝やNEC、日本の照明最大手のパナソニック電工なども参入しています。

「まことに小さな組織が開花期を迎えようとしている!」

2011-01-01 00:53:37 | Weblog
明けましておめでとうございます。一般社団法人スマートプロジェクト代表の加藤(元内閣審議官・東京大学大学院客員教授)です。新春のご挨拶に代えて、一般社団法人「スマートプロジェクト」の2011年の抱負を申し述べたいと思います。

「まことに小さな組織が開花期を迎えようとしている」
一般社団法人「スマートプロジェクト」は、エコポイントを有効に活用しながらボトムアップ・自己組織化のスマートムーブメント運動=「スマートグリッド革命」を展開する組織です。その理念は、動画配信の「You Tube」に匹敵する「You Energy」=誰もがエネルギーを作れる時代という世界に象徴され、温暖化の炭素制約の下でもグリーンイノベーションを創造する真の活動を展開しております。

ほぼ2年の活動を経て旧年中は大きな進展があり、ようやく司馬遼太郎の『坂の上の雲』の書き出しである「まことに小さな国が開花期を迎えようとしている」と同じような状況が生まれました。今後とも、国やスマートグリッドの官民協議会である「スマートコミュニティ・アライアンス」(事務局NEDO)等と連携しながら活動を展開していきたいと考えています。
市民・NPO界、労働界、産業界、大学・アカデミア、地方自治体、国の関係省庁の代表者からなる「緑の社会対話」(Green Social Dialogue;温暖化対策基本法案第33条<政策形成過程への民意の反映>に根拠があります)を推進する活動にも関与していきます。

「本日天気晴朗ナレドモ波高シ」
 「本日天気晴朗ナレドモ波高シ」。これは、1905年5月27日未明、日露戦争時の連合艦隊の旗艦である三笠から発せられた電文の一節です。東郷平八郎司令長官が、軍令部あてに全艦出撃命令の打電を命じたとき、作戦主任参謀の秋山真之は、部下が起草したその原文に「本日天気晴朗ナレドモ波高シ」と、有名な一節を加えました。
日本を取り巻くリアリズムを冷徹に観察しつつも、大事に臨む決意と「アニマルスピリット」をそこに込めたように感じます。「You Energy」を実現するため私が目指したい心境です。
スマートプロジェクトの活動については動画もアップしておりますので、ご覧いただければ幸いです。関連の皆様方のご協力、ご指導、ご鞭撻をよろしくお願いする次第です。

2011年正月 元旦
一般社団法人「スマートプロジェクト」
代表 加 藤 敏 春