エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

環境省のロードマップを「単なる絵」に終わらせないために

2010-08-20 07:04:38 | Weblog
環境省の中期目標90年比25%削減)を実現するためのロードマップなどの作業が進められていますが、「どうも、しっくりこない」という感が否めません。そのロードマップが出来上がっても、その瞬間から実行可能なブループリントとはなりえないのではないかという危惧が大いにあるからです。それは、これらが今の社会システムを前提としたものであり、かつ、財源論の裏付けのないまま、(言葉はきついですが)「単なる絵」を描こうとしていることに根本的な原因があるのではないかと思います。
 では、いかにすれば「単なる絵」ではない実行可能なブループリントを作成することができるか。そのための原則を考えてみました。まず、環境省の中期目標90年比25%削減は、今の経済社会システムを前提として目標を達成するための必要条件だけを明らかにしようというアプローチに終始していますが(「ジェット機で月に行こうとする発想」)、必要なのは、目指すべき経済社会の目標を確定して、バックキャスティングの発想の下に市場経済と法制度のあり方を構想し(「ロケットで実際に月に行く発想」)、そのための必要条件のみならず十分条件を明らかにするというアプローチを採るべきです。
 たとえば、スマ―トグリッドでは、太陽電池による発電、家庭用燃料電池、プラグインハイブリッド車や電気自動車などを組み合わせることによって、家庭が供給単位となることができるものです。そこでは、ドイツ、スペインやデンマークで取られている再生可能エネルギーの優先供給や優先接続、系統運用のルールの見直しにとどまらない送電網の強化(再生可能エネルギーの導入に積極的な欧州の送電網はメッシュ型であるのに対して、日本の送電網は各電力会社の送電網を串刺しにした串刺し型になっており、各社の送電網をつなぐ連携線の容量は極めて限られています)などの短期的な課題の解決とともに、発送電の分離、10電力体制の見直しなど中期的な課題も検討の射程範囲に入ってきてしかるべきですが、現在経産省が構想するスマートグリッドは、現行の電力網の延長線上にあるものにすぎません(例えば、「次世代送配電ネットワーク研究会」報告書(こちらをご覧ください)など)。これでは、スマートグリッドと言っても、迫力のないものとなるでしょう。
 財源論に関して言えば、予算単年度主義の影響からか、30年あるいは20年までの基本計画あるいはロードマップの作成に関しては、今は財源の裏付けは議論しなくても良いという姿勢が見えます。これでは、自ら基本計画あるいはロードマップを「単なる絵」であると認めているようなものです。「国家百年の計」という中長期的な視点に立ってあるべき制度と市場経済の活用のあり方を構想し、そのためにできるだけ国の財政負担を増大させないスキーム上の知恵を絞るべきです。関係者の奮起に期待したいと思います。