エコポイント&スマートグリッド

省エネ家電買い替え促進で有名となったエコポイントとスマートグリッドの動向を追跡し、低炭素社会の将来を展望します。

日本の原発の出力増強は相当遅れている!

2010-08-07 01:07:44 | Weblog
エネルギー需要への対応や温暖化対策と原子力発電に関して、既存の原子炉を最大限に活用する方策としてよく話題とされるのは設備利用率の向上ですが、もう一つの方途として出力向上(パワーアップレート)があります。
特に注目されるのは、世界第1位の103基の原子炉を持つアメリカです。アメリカでは、1970年代以降新規の原子力発電所の建設は最近までありませんでした。この間アメリカは、既存の原子力発電の設備利用率向上を図ってきました。スリーマイルアイランド原子力発電所事故後の1990年には、66%の設備利用率でしたが、2004年には90.5%と大幅に向上しています。その背景として、定期検査期間の短縮、計画外停止の減少、長期サイクル運転の導入などが挙げられます。これにより、発電電力量は2004年には過去最高の7886億キロワットアワーと、90年(110基)に比べ3割以上も増加しました。
 これとともにアメリカが行ったのが、出力増強です。原子炉の熱出力測定精度の向上などにより原子炉の出力がアップし、より多くの電気を取り出すことが可能になります。アメリカでは、最大20%までの定格出力の上昇が認められており、2004年末には、大型発電所4基分に相当する423万キロワットが増強されました。スペインでは約49万キロワットが増強され、スウェーデンでも一昨年9月の政権交代により脱原子力政策を転換し、既設発電所の出力向上を進めることにしています。
 出力向上は、日本の発電所でも取り組まれています。その方法には、必要に応じてタービンや発電機などを容量の大きなものに取り替える拡張型とストレッチ型というプラント性能の活用を行なうものがあります。
現在東海第二発電所が採用しているのはストレッチ型で、もともとの設備能力や設備更新などの性能の向上により、大幅な設備改善を伴わず効率を上げるというものです。これにより5%の出力向上を目指しています。
アメリカの最大20%の出力増強に対して、日本のそれはわずか5%です。原子力安全に携わる人々をはじめ関係者の一層の努力が求められるところです。