デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

ショーティ・ロジャースのアレンジは大ヒット曲を生む

2012-04-22 08:58:42 | Weblog
 ビートルズの「愛こそはすべて」や、ナンシー・シナトラが父フランクとデュエットした「恋のひとこと」が大ヒットした1967年に、大物を上回るヒットを記録した曲にモンキーズの「デイドリーム・ビリーバー」がある。モンキーズはオーディションでメンバーを集めて結成されたバンドだが、この曲は当時のポップスとしては珍しくかなり手の込んだアレンジで、所謂「作られたグループ」の音とは思えないほど完成度が高い。

 音楽雑誌に「ジャズトランペッターで編曲者」と短く紹介されていたそのアレンジャーの名前を見つけたのは中古レコード店で、数枚あるなかから選らんだのは「ショーティ・ロジャース・コーツ・ザ・カウント」だった。ジャズを聴き始めたころで、ジャケット裏にクレジットされているショーティは疎かズート・シムズもシェリー・マンも聴いたことがなければ、「トプシー」や「ティックルトゥ」がベイシー・ナンバーだということも知らなかったが、選んだ理由は曲目に「ウォーク・ドント・ラン」があったからである。まだこの曲の作者がジョニー・スミスとも知らずベンチャーズのオリジナルだと信じていた可愛いころであった。

 早速、B面最後に収められているその曲に針を落とすものの、いつまで経ってもあのメロディが出てこない。輸入盤はラベルが逆になっているものもあるという話を聞いたことがあるので、盤を返してみたがやはり違う。ショーティのオリジナルで同名異曲であることを理解するのに時間が掛かったが、気を取り直してA面の頭から聴いてみた。今までに聴いてきたマイルスやリー・モーガンとは明らかに違う音色とフレーズだったが、これが素晴らしい。とかくウエスト・コースト・ジャズはアレンジ偏重でスウィングしないと言われるが、このアルバムはベイシー並みの迫力があるし、ショーティのロングソロも楽しめる。

 モンキーズはイギリス本国とアメリカ国内で過熱するビートルズに匹敵するスターグループを創るプロジェクトから生まれた。そのために楽曲のアレンジも一流のショーティが起用されたのだろう。猿真似だけではビートルズを超えることはできなかったが、テレビで放映された「ザ・モンキーズ・ショー」との相乗効果もあり短期間で大きな収益を上げたそうだ。ある経済学者が言っていた。手っ取り早く金を作る方法は猿から毛を抜くことだと・・・
コメント (32)
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