デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

ジョン・ミーガンのジャズ理論

2011-01-09 08:13:08 | Weblog
 「音とリズムの原則」、「ジャズのリズムとインプロヴァイズライン」、「スウィングと初期のプログレッシヴ・ピアノスタイル」、「現代のピアノスタイル」、並んだタイトルから今年はジャズ理論の講義でも開くのかい?と問われそうな仰々しいものだが、これは「ジャズ・インプロビゼイション」全4巻のサブタイトルだ。プロのジャズプレイヤーを志す人、特にピアニストなら一度は手に取り学んだことがあるかもしれない。

 著者はジョン・ミーガンで、ピアニストよりもジュリアード音楽院やイェール大学の音楽教師としてその名は知られている。ケニー・ドーハムと共演した「Casual Affair」やサヴォイ盤数枚しか残されていないこともありピアニストとしての知名度は著しく低い。サヴォイに残した55年の「リフレクションズ」は、ソロ5曲とデュオ5曲という構成でデュオの相手は驚くことにケニー・クラークだ。ピアノ・デュオで考えられる楽器はベースで、そのリズムはピアノのメロディラインを壊さないで、且つハーモニーを際立たせる相乗効果があるが、ビートを強調するドラムではピアノの左手のリズムに控え目に合わせるか、或いはドラムが歌うかである。

 そこは名手クラーク、ピアノの左手に同調するとともにメロディを膨らます繊細なドラミングで、曲にアクセントを付け、変則的なデュオでも怯むことはない。ミーガンのソロは理論が先走りした感じで「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」や「ナイト・アンド・デイ」というスタンダードでもクラシックの演奏タッチだが、ドラムが入ると、まるでクラークがかけたジャズマジックに掛かったように俄然とスウィングする。圧巻は「ザ・ソング・イズ・ユー」で、パウエルを彷彿させる起伏に富んだアドリブと、ミーガンが助手として仕事をしたテディ・ウィルソンのように歌い、理論を越え歌物が持つロマンとドラマを表現したといえるだろう。

 ジャズ理論だけではジャズを演奏できなければ、ジャズ理論なくしてもジャズは演奏できない。独学でピアノを学んだミーガンは、ニューヨークというジャズが生きているその場所でそれを肌で感じ取ったのだろう。現役で活躍しているジャズプレイヤーは現在たくさんいるが、次に担うプレイヤーが育っているだろうか。ミーガンがピアニストよりも教師の道を選んだのはジャズの次の世代を育てるためであったろう。ミーガンを師とするプレイヤーは多い。

コメント (23)
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