東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科の高柳広教授らのグループは、骨の形成と破壊をコントロールして丈夫な骨を作るのに必要なたんぱく質を特定することに成功した。
このたんぱく質を骨粗しょう症のマウスに投与したところ、骨の減少を食い止めて再生を促すのを確認した。骨粗しょう症や関節リウマチなど、骨量が減少する病気の新たな治療薬開発に結びつくと期待される。英科学誌ネイチャー電子版に19日掲載される。
このたんぱく質は「セマフォリン3A」と呼ばれ、神経細胞や免疫系の制御に関与していることが知られていたが、骨との関連は不明だった。
骨は新たな骨を形成する「骨芽細胞」と古くなった骨を吸収する「破骨細胞」が、バランスを取ることで正常な骨密度を維持している。どちらかの細胞が減りすぎたり増えすぎたりすると、骨折しやすくなる。
愛媛大学の山口修平講師らの研究グループは、ファインケミカルの原料になる「2シクロヘキセン1オール」という化合物を安価に合成できる触媒を開発した。
従来の有機溶媒を使った合成と異なり、水を溶媒にして合成できるため環境負荷を低減できる。実用化に向け、共同研究先の企業を募っている。大きさ10ナノメートル(ナノは10億分の1)程度のゼオライトの隙間の中に、鉄系の錯体を取り込んだ新たな触媒を開発した。
この触媒を使って水を溶媒にして、シクロヘキセンを原料として酸化反応を行うと、2シクロヘキセン1オールを合成できる。触媒は固体であるため、合成反応に使った後に、分離や回収ができ再利用を可能にした。有機溶媒の処理コストも削減できる。
従来法では有機化合物を溶媒にする必要があり、触媒を有機溶媒に溶かして使っているため、触媒の回収ができない。有機溶媒の処理コストもかさむ。
慶応大学理工学部の栄長(えいなが)泰明教授らの研究グループは、環境負荷の少ない有機合成法「有機電解反応」で、レアメタルを使わずに有用な化合物を高効率で合成することに成功した。電解の電極に一般的なレアメタルではなく、ダイヤモンドを使う。医薬品の開発につながる可能性があるという。
有機電解反応の電極としてレアメタルの代わりに、ホウ素を含んだ導電性のダイヤモンドを使った。「イソオイゲノール」という化合物をメタノール溶媒に溶かして電解反応を進めたところ、抗炎症活性を持つ「リカリンA」を合成することができた。白金を電極にした場合と比べ、効率は2倍だった。
ダイヤモンド電極が、従来の電極にはない反応性を示すことが明らかになった。アルツハイマー治療薬や生活習慣病改善につながる、新たな医薬品の開発に役立つ可能性があるという。
太陽の極域は,表面の爆発などの活動の原因となっている重要な場所だという。だが,実際に極域で何がおきているのか,よくわかっていなかった。このたび太陽観測衛星「ひので」は,極域のようすをくわしくとらえることに成功した。そして意外なことに,北極と南極の両方が,磁石でいうところのN極になりつつあることが明らかになった。
■ 謎につつまれていた「太陽の極域」
太陽表面にあらわれる黒いしみのようにみえる部分のことを「黒点」という。黒点の多い時期は,太陽の活動が活発になる。黒点の数が減ると,太陽の活動はおだやかになる。黒点が最も多くあらわれる活動的な時期を「極大期」,黒点が最も少なくなる時期を「極小期」という。
実は,黒点は強力な磁石そのものだという。そして,太陽の極域には,黒点の種となる南北をつらぬく磁場がある。そのため,太陽の極域は,太陽の活動や磁場の起源を理解する上でも重要な場だ。これまで,地上の太陽望遠鏡や太陽観測衛星によって,太陽の極域が観測されてきたが,極域の磁場のようすを把握するのは困難だった。
■ 北極での磁場の反転を「ひので」がとらえた
太陽観測衛星「ひので」は,JAXA(宇宙航空研究開発機構)と国立天文台などによって,2006年9月に打ち上げられた。「ひので」に搭載された可視光・磁場望遠鏡により,太陽の磁場の構造をこれまでにない解像度で観測ができるようになった。国立天文台の常田佐久教授,下条圭美助教,理化学研究所の塩田大幸研究員らは「ひので」で両極域の観測を継続し,極域の磁場の全容を知ることができるマップを得ることに成功した。
常田教授らは,太陽の活動が低下しつつある時期(2007年9月)と活発化しつつある時期(2012年1月)の極域の磁場の観測結果を比較した。2007年は,北極がS極,南極がN極となっていた。そして2013年なかばごろに予想される太陽活動の極大期には両極域の磁場が同時に反転すると予想されていた。ところが2012年の観測結果から,北極域のみS極からN極への反転が進行していることを発見した。
■ 現在の太陽は「棒磁石が二つ連なった状態」
常田教授は次のように話す。「今,太陽の基本的な対称性がくずれていると考えられます。本来は両極域とも次の極大期にほぼ同時に極性が反転すると考えられていました。しかし,北極域は本来の約11年周期で極性が反転しつつあり,南極域は約12.6 年で反転する可能性があります」。
2007年の太陽は,磁力線が南極側のN極からでて,北極側のS極に入るふつうの構造(2重極)だった。それが,2012年1月では,南北の両極域にN極ができ,太陽の中心付近にS極ができるという構造になっている。つまり,棒磁石が二つ連なった構造(4重極)になっていると想定できるという。
■ これからの太陽活動はどうなる?
太陽の極域の観測は,将来の太陽の活動を予測する上できわめて重要だ。2012年10月ごろに予定されている,「ひので」による北極域の集中観測によって,北極域の極性がN極に完全に反転しているかどうかを確認できるという。
マウンダー極小期(1645年~1715年)など,黒点がほとんどなかった時期は過去にもあった。これが原因となって,地球の平均気温が低下し,寒冷化をもたらしたといわれている。これらの極小期の直前は,太陽の周期が13年や14年と長いという特徴があった。今回,直前の太陽の周期は12.6年だった。もしかすると,地球を寒冷化させる太陽の極小期にふたたび突入する可能性もあるかもしれないという。
常田教授によると,あと10年は極域の調査をしないと,今後の太陽の活動予測はできないという。今後の観測結果を待ちたい
日米両政府は19日、外務省で在日米軍再編計画見直しの審議官級協議を行い、焦点の在沖縄米海兵隊のグアム移転費の日本側負担について、現行の移転協定で定めた上限28億ドルに据え置くことで合意した。合意の文言を詰めた上、25日に中間報告として共同発表する。
現行のグアム移転協定は、28億ドルについて、米国の2008年度の物価水準に基づく金額と定めており、実際には拠出時の物価に合わせて変動する。現在の物価に換算すると約31億ドルになることから、日本に負担増を求めてきた米側も妥協したとみられる。現行協定の日本側負担部分の規定そのものを見直すわけではないため、負担額は明記しない方向だ。
米国の増額要求と日本側の減額要求を打ち消して、当初の通りと妥協で米国の思う壷。またもや交渉の失敗。
経過
日米両政府は二〇〇六年、グアム移転費用百二億七千万ドルのうち日本側が六十億九千万ドル、米側が約四十二億ドルを負担することで合意。日本側は司令部庁舎や学校などの建設費として二十八億ドルを国庫から財政支出し、残りは融資や民間事業主体への出資で対応することになっていた
米サンフランシスコで三月二十三日に開かれた日米両政府の外務・防衛当局による審議官級協議で議題に取り上げられ、日本側はグアムへ移転する海兵隊員が当初計画の八千人の半分程度に縮小することを指摘、むしろ日本側負担の減額を検討すべきだとして難色を示した。