[ロンドン 27日 ロイターBreakingviews] 大手銀行の株主が、銀行の役員報酬に向ける怒りは沸点に達している。米シティグループの役員報酬案が株主総会で否決されて2週間も経たないうち、今度は、英バークレイズとクレディ・スイスの一部株主も経営陣の報酬プランに反対票を投じた。
中東の民主化運動「アラブの春」になぞらえて「株主の春」とも称されるこうした動きは、今後さらに広がっていく可能性がある。
バークレイズの役員報酬プランが株主から異議を唱えられたのは、自業自得と言える。ダイアモンド最高経営責任者(CEO)自身が、同行の2011年の株主資本利益率(ROE)は「受け入れ難い」と表現していたにもかかわらず、その後、最大340万ポンド(約4億4000万円)に上る賞与の80%を受け取る方向に進んでいたからだ。4月27日にロンドンで開催された株主総会では、ある株主からこんな批判も出た。バークレイズは株主ではなく、役員と従業員のためだけの金のなる木だと。
総会に先立ちバークレイズは、遅まきながらも、収益が回復しなければダイヤモンドCEOが賞与の半分を辞退すると表明していた。この譲歩案により、株主総会での最悪の事態は回避されたが、まだ十分な譲歩と言えないことは明らかだ。クレディ・スイスでも同じような怒りが噴出しているという事実を踏まえれば、株主はもはや、銀行役員報酬が高過ぎるという結論を出しているように見受けられる。
もしそうであるなら、株主と経営陣の力関係が変わる「新たな統治体制」の幕開けとなる可能性がある。バークレイズの株主総会では、アギウス会長が「報酬は相場並みに支払われる必要がある」という常套句を持ち出した。しかし、投資家たちが影響力を高めようとする中、怒れる株主に対する取締役会の配慮は、より強力な拮抗力として作用する可能性がある。
また、たとえ株主が収益のより公平な分配を得られると納得したとしても、銀行の高額報酬は社会の関心を集め続けるだろう。銀行が倒産すれば、そのつけは政府や納税者が払わなければならず、顧客は多大な迷惑をこうむる。政府や納税者、顧客も黙ってはいないだろう。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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