新型インフルエンザの流行とともに「新型インフルエンザ、パンデミック対策に」「お部屋の空気まるごと除菌」「ポンとおくだけ 空間に浮遊するウイルス・菌・ニオイを除去!」等として二酸化塩素による部屋等の除菌をうたった商品が市場で見受けられるようになった。
PIO-NET(全国消費生活情報ネットワーク・システム)には、二酸化塩素による部屋等の除菌をうたった商品に関する相談が、2005年4月から2010年3月末までに20件寄せられており、特に2009年度に多くなっていた。
そこで、二酸化塩素による部屋等の除菌をうたった商品について、使用中にどのくらいの二酸化塩素が放散されているのか等を調べ、消費者に情報提供することとした。
テスト対象銘柄は、部屋等に置いて使用するタイプとし、販売時からゲル状のもの(ゲルタイプ)5銘柄、使用開始時に液体に粉末剤を入れてゲルを生成させるもの(ゲル生成タイプ)3銘柄、使用開始時に容器に錠剤と水道水を入れるもの(錠剤タイプ)1銘柄の計9銘柄とした。
主なテスト結果
塩素系ガスの放散速度の経時変化
塩素系ガスの放散速度は、1日後までに最大となったが、ゲルタイプの放散速度は小さく、その後も横ばい状態であった。
二酸化塩素及び塩素の放散速度
二酸化塩素の放散は9銘柄中6銘柄でわずかであった。一方で、使用開始当初に放散速度が大きくなる銘柄もあり、銘柄間の差が大きかった。
においの強さと容認性
塩素系ガスの放散速度の大きい銘柄では、臭気強度が大きくなるとともに部屋に長時間いたくないと回答した人も増えた。
表示等
- (1)においに関する表示
- 臭気強度が大きかった銘柄は、換気するなど注意が必要であった。
- (2)安全性に関する表示・広告
- 二酸化塩素が食品添加物として認められていること等から安全であるとうたっている商品があり、消費者に誤認させるおそれがあった。
- (3)有効性に関する表示・広告
- インフルエンザ等への予防効果をうたった広告があり、薬事法に抵触するおそれがあると考えられた。
事業者へのアンケート調査
- (1)商品設計及び有効成分
- 居住空間における効果の程度を確認している事業者は少なかった。また、有効成分として二酸化塩素以外の成分もあげている銘柄があった。
- (2)使用場所
- 回答のあった7銘柄全てでリビング、キッチン、トイレ等、家庭内のほとんどの場所で使えるとしていたが、乳幼児、金属製品、電気製品の近くでの使用は避けるべきとの回答もあった。
- (3)吸入の身体的影響に関するデータと健康被害
- ほとんどの事業者が実際に使用した際の安全性を確認していなかった。また、塩素系ガスの放散が比較的多かった銘柄では、使用者からの健康被害等の報告を受けているところがあった。
消費者へのアドバイス
- 二酸化塩素による部屋等の除菌をうたった商品は、さまざまな状況が考えられる生活空間で、どの程度の除菌効果があるのかは現状では分からない。
- 二酸化塩素による部屋等の除菌をうたった商品は、二酸化塩素の放散がほとんど確認できないものがあった一方で使用開始当初に放散速度が大きくなるものもあり、使用に際しては注意が必要である。
- 二酸化塩素が食品添加物であること等を根拠に安全であるとうたっている銘柄があるが、必ずしも商品自体の安全性ではない。
事業者への要望
- 二酸化塩素の放散がほとんど確認できなかった銘柄や使用開始当初に放散速度が大きくなるものもあった。日常生活の中で消費者が適切に使用できるよう、商品の安全性と有効性について十分に検証をするよう要望する。
- 安全性に関する表示・広告が、一部の成分のものか商品自体のものかが不明確な銘柄があった。商品としての安全性を表記するよう要望する。
- 商品の表示や広告に特定の感染症についての予防効果等、薬事法に抵触するおそれがある表現がみられたため、改善を要望する。
行政への要望
- 日常生活の中で、二酸化塩素による部屋等の除菌をうたった商品が適切に使用されるよう、商品の安全性と有効性について十分に検証をする等、事業者への指導を要望する。
- 安全性に関する表示・広告が、一部の成分のものか商品自体のものかが不明確な銘柄があった。商品としての安全性を表示、広告するよう事業者への指導を要望する。
- 商品の表示や広告に特定の感染症の予防効果をうたったものが見られた。薬事法に抵触するおそれがあると考えられるため、監視・指導の徹底を要望する。
要望先
- 消費者庁 政策調整課
情報提供先
- 厚生労働省 医薬食品局 審査管理課 化学物質安全対策室
- 厚生労働省 医薬食品局 監視指導・麻薬対策課
- 農林水産省 消費・安全局 畜水産安全管理課
- 経済産業省 商務情報政策局 商務流通グループ 製品安全課