[東京 30日 ロイター] 2011年度終盤になって日本株が息を吹き返したのは金融株の急回復が見逃せない要因だ。指数は金融相場が鮮明となった年明け以降に騰勢が強まり、過熱感を持ちながらも東日本大震災前の水準に接近。1―3月の3カ月間で約20%上昇した勢いから新年度に入っても強気な相場が続くとの期待感が膨らむ。
今後、中国や欧州の景気減速や原油価格の上昇などリスク要因が指摘されており、相場を押し上げてきた海外勢の買いが一服するなか、国内機関投資家などによる新規資金の流れが注目される。
<夏場の急落局面では年金が買い支え、年度末終盤は海外勢が相場をけん引>
3月11日に発生した東日本大震災の影響は大きく、2011年度の東京株式市場は不安定な値動きが続いた。夏にかけてやや回復に向けた動きもみられたが、米債務上限問題や格下げ、秋には欧州財政危機への懸念が再燃、再び株価を安値圏に叩き落とした。だが、欧州問題が一服すると、日米欧の異例ともいえる金融緩和と流動性供給が急激に効き始め、過剰流動性がリスク資産に流れ込んだ。2月14日には日銀が予想外の追加緩和に踏み切ったことでさらに強まった金融相場を背景に円安/株高の流れが続いた。1―3月の3カ月間で日経平均は8000円前半から1万円前半と20%程度上昇した。
TOPIXは昨年3月31日の終値を下回ったが、日経平均は上回った。セクター別の指数では3月末時点の指数が1―3月に挽回したことを示している。東証1部33業種のうち、12月30日時点では28業種が2011年3月31日終値を下回っていたが、3月末時点では18業種に減少。10業種はマイナスからプラスに転じた。昨年12月末時点では内需株を選好する傾向が鮮明だったが、足元3カ月で金融や不動産などが上昇するなどトレンドが変わったといえそうだ。
セクター別では、昨年12月末と今年3月末の指数を昨年3月末と比べると、証券がマイナス42%からマイナス13%と30ポイント程度改善。また、銀行はマイナス13%からプラス3%、不動産もマイナス16%からプラス12%にそれぞれ大きく改善した。金融株は欧州債務問題による世界的な信用不安で大きく売られていたことから、金融相場の恩恵を最も受けたセクターとなった。
また、円安を背景に輸送用機器はマイナス20%からプラス4%に、精密がマイナス18%から0%へとそれぞれ回復した。震災による復興需要を背景に建設はマイナス7%からプラス7%に上昇した。ただ、電力・ガスはマイナス25%からマイナス18%と回復が鈍い。福島原発事故を受け東京電力が震災前の10分の1程度に落ち込んだ影響が大きい。一方、損失隠しで上場問題が材料視されたオリンパスの株価がそれまでの半値となるなどガバナンスも日本株売りの遠因とみられている。
<金融と電気・ガスの売りで安値圏に下落、金融緩和で騰勢強めた不動産>
需給面では、年金筋が日本株を買い支えた構図となった。東証の投資主体別売買動向(3市場)では、2011年4月─2012年3月第3週の合計で、信託銀行が1兆0990億円と大幅に買い越した(前期は3884億円の買い越し)。特に11年8月から6カ月連続で買い越しており、日経平均8000円割れを回避したとみられている。コスモ証券・投資情報部副部長の清水三津雄氏は「米国債格下げを嫌気した局面では、値を下げるたびに機械的に買いが入るなど年金筋によるオペレーションのような機械的な動きがみられた」と指摘する。
半面、売り主体は生損保で合計6571億円の売り越し(前期は7265億円の売り越し)。ソルベンシー・マージン比率の見直しに伴う株式ウエートの引き下げが影響した。次いで個人投資家は5834億円の売り越し(前期は1兆3787億円の売り越し)だった。一方、国内株式市場の6割のウエートを占める海外投資家は、合計で216億円の買い越し(前期は3兆3921億円の買い越し)と小幅にとどまった。11年8月、9月の2カ月間で1兆8182億円の売り越しとなっており、日本株の急落を先導したとみられている。
今年に入ると海外勢のスタンスが一変し、1月から3月第3週までで合計1兆1051億円の買い越し。邦銀系のトレーダ―は最近の取引について、米系年金筋による買いと観測する。また「マクロ系ヘッジファンドによる短期資金流入が一段落し、足元では欧州系のロングマネーが入り始めている」(米系証券トレーダー)という。3月第3週(3月19日―3月23日)は海外投資家が13週ぶりに売り越しとなったが、国内機関投資家による新規資金への期待感もある。
<米国株の反転が日本株復活のきっかけ、インドネシアが上昇率トップ>
世界の株価指数でみると、米主要株価3指数が世界の主要株価指数の騰落(2011年3月31日─12年3月29日)上位を占めた。ナスダック総合.IXICが11%、ダウ工業株30種.DJIが6%、S&P総合500種.SPX が5%で、米株指数が2―4位を占めている。
トップは11.59%上昇したインドネシアのジャカルタ総合.JKSE。内需主導型のインドネシア経済は、堅調な消費と投資に支えられ、2011年10─12月期の実質GDP(国内総生産)が前年同期比6.5%上昇と好調に推移しており、株高につながった。
新年度に向けては、依然として強気な声が聞かれる。岡三証券・日本株情報グループ長の石黒英之氏は、5月ごろにかけての調整一巡後は年後半にかけてじり高基調となり、日経平均1万2500円程度までの上昇が期待されるとみている。マネックス証券チーフ・ストラテジストの広木隆氏は「新年度のV字回復業績を織り込み、4─6月期に震災前の高値をクリアする1万1000円程度を付けるのではないか」との見方を示している。一方、みずほ総研シニアエコノミストの武内浩二氏は米原油先物の一段高が国内企業の収益にも影響が出てくるとし、来年度末までのレンジは9000―1万1000円と慎重だ。
(ロイターニュース 杉山容俊、吉池威 編集:伊賀大記)