室井佑月さんをテレビなどで見かけると、なぜかホッとしまう。あの話し方だけを聞くのと、話の内容を比べるととてもギャップがあります。優しい口調の中に本質的な事が含まれている。そして一般庶民の本音の部分のような気がします。分かりやすい言葉で、ポイントをきちんと押さえているところが好きですね。
以下、AERAさんより転載します。
室井佑月「2人とも倒れてしまえ」
連載「しがみつく女」
現政権を批判してきた作家の室井佑月氏。「希望の党」小池百合子代表についてはこういう。
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権力の私物化をする、国民に嘘ばかりつく、傲慢な安倍政権が嫌いだ。
トランプさんに右へ倣えの、危なっかしい外交も怖い。
この政権は、国民の財産を、海外やお友達にバラまいてきた。この政権にとって、自衛隊員の命も、アメリカさんに請われたら、簡単に差し出せる物資みたいなものである。
天皇陛下に、信じられないような意地悪するしさ。
だいたい応援団が悪いよな。政権の悪口をいうと、『売国奴』だの『反日』だの、『日本人じゃない』などと罵られる。
はあ? この国の良いところを変えてしまったのは、安倍政権じゃないのか?
安倍さんなんて、勇ましいのは口だけじゃ。モリ・カケ問題について、丁寧に説明するといっていたのに、国会の審議から逃げたじゃん。
その口だって、ほんとうに強そうなトランプさんやプーチンさんとは、きちんと対峙し交渉しようともしない。
一日も早く、安倍さんじゃない人が首相になってくれよ、と思ってた。だけど、安倍さんに取って代わる芽が出てきたのが、安倍さんみたいな人だとは思わなかった。いいや、それ以上かもしれん。
安倍さんは口だけ勇ましいかもしれないが、小池百合子さんは本気で根っから勇ましそうだ。
なにしろ、女一匹、自民党、現権力に喧嘩売るんだもんな。
ほら見てみ? 小池さんが率いる希望の党に、民進党が食われてしまった。
小池さんは党の性質を『寛容な保守』といっているが、ぜんぜん寛容じゃないでやんの。民進党の人間を全員受け入れるつもりはさらさらないんだって。リベラル派は排除だって。
ま、歴史修正主義、極右の中山夫妻がこの党に加わると知ったとき、安倍さん以上なのだこの党は、と思った。
そういうことを、テレビを観ているどれだけの国民がわかっているのか? テレビだけ観ていると、今までのオッサン政治から脱却し、この国のトップが女性になるのは、良いことのような気がしてしまう。しかし、小池百合子さんの強さは、あたしから見ると、男の強さなんだと思う。
大きな鉈のように、バッサバッサと邪魔なものを切っていく。邪魔者は情け容赦なく排除し、つねに自分が上を目指そうとする強さだ。
あたしが熱望する、トップになって欲しい女性像とは違っている。
あたしが熱望する女性のトップ像とは、この国の母となれるような人。誰とでも横繋がりで仲良く出来、包み込むみたいな温かい愛情を持った人。そして、踏まれても踏まれても、雑草みたいに強く、信念を曲げない人。
安倍さんと小池さん、派手な、凄まじい戦いになってきた。もちろん、あたしはどっちの応援もする気はない。いっそ、2人とも倒れてしまえ。
※週刊朝日 2017年10月20日号