スパニッシュ・オデッセイ

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元読売ジャイアンツのサンチェ選手(2)父の父姓 Escobar

2018-02-22 14:13:01 | 名前
元読売ジャイアンツのサンチェ選手。フルネームは Luis Mercedes Escobar Sánchez。 姓を1つだけ名乗るときは、父の父姓を名乗るのが一般的だが、サンチェ選手は母の父姓を名乗っている。メジャーリーグでもプレーしていたので、念のために調べてみたが、やはり Escobar ではなく、Sánchez で登録されていた。
 母の父姓を日常的に使うのにはいくつか理由がある。その一つは父の父姓がありふれているが、母の父姓が珍しくてインパクトがある場合である。代表例がピカソである。長い名前で有名だが、父の父姓は Ruiz で、スペインでのランキングは12位。それに対して Picasso は29898位である。ピカソは当初、簡単に Pablo Ruiz Picasso と名乗っていたが、ある時期から Picasso だけになったそうである(ウィキペディア「パブロ・ピカソ」)。
 もう一つは、父母が離婚か何かの理由で、子供が母親に育てられた場合である。正式には父の父姓と母の父姓の両方が登録されるのだが、父親にはなじみがないので、日常的には母の父姓を使用する。実際、このような例を個人的に知っている。
 サンチェ選手の場合は後者に当たるのだろう。父の父姓の Escobar(エスコバール) はスペインでのランキングは195位で、珍しいものではない。
  父の父姓と母の父姓の2つとも名乗る場合もある。有名なのはマンボの王様、ペレス・プラード(Pérez Prado)やノーベル賞作家のバルガス・リョサ(Vargas Llosa)、詩人のガルシア・ロルカ(García Lorca)などである。Pérez Prado はどちらもありふれた姓で、どちらか1つだけではもの足りないのだろう。スペイン語を知る前は Pérez が個人名で、Prado が姓だと思っていたものである。ちなみに、Pérez Prado の個人名は Dámaso である。
 さて、今回は父の父姓である Escobar について述べる。スペインでのランキングは195位で、特に多くはなくても珍しくはない。世界的な分布を見ると、絶対数で多いのはコロンビア、人口比ではエルサルバドルに多い。
 
 【エニシダ】
 スペイン語には escobar という語は2つある。1つは名詞で、「エニシダ林」の意。もう1つは動詞で「ほうきで掃く」という意味である。Escobar 姓は「エニシダ林」から来ているのだろう。
 「ほうきで掃く」escobar の元になる名詞「ほうき」は escoba という。「ほうき」の意味の他に、「植物の枝の束、エニシダ、やせた女性、トランプ遊びの一種」という意味もある。
 defensa escoba はサッカー用語で、「スイーパー」という意味になる。
 
 サンチェ選手はメジャーリーグのエンジェルスでもプレーしていた。MLBの公式サイトで調べてみると、何と Escobar ではなく Escoba となっていた。誤植(?)か、それともニックネームが Escoba(ほうき)だったのかはわからない。
 同一カード全勝の場合、「スイープする(sweep)」というが、これにあやかって、「ほうき」の escoba がニックネームになったのかもしれない。  



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