スパニッシュ・オデッセイ

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マレー人の名前(5)アブドラ(アブドゥラー)

2014-10-27 08:32:25 | シンガポール
  父親の名前が分からないマレー人の子供の場合、子どものフルネームをどうするか。あるマレー人に聞いてみたところ、“Abdullah”(「アブドラ」または「アブドゥッラー」)という、きわめてありふれた名前を“bin”(女性の場合は“binti”)のあとに、書いておくそうである。筆者の年代だと、「アブドラ」というと、プロレスラーの“Abdullah the Butcher”を思い出すのではないだろうか。
 それはともかく、「アブドラ」の息子ということにしておくと、事情を知らない人に「あいつは父無し子だ」と言われる恐れはなさそうである。
 ところで、イスラムの開祖ムハンマドのフル・ネームは「ムハンマド・イブン=アブドゥッラーフ・イブン=アブドゥルムッタリブ」というそうである(ウィキペディア)。
 「イブン」は「誰それの息子の」という意味で、マレー語の“bin”と同じである。で、「ムハンマド」は「アブドゥッラーフ」の息子ということになる。ウィキペディアでは「アブドゥッラーフ」とカタカナ表記されているが、ローマ字表記では“Abd Allāh”となる。語末の h を「フ」と表記しているわけだが、この音は聞こえるような、聞こえないような音だそうなので、むしろ、この音は表記しない方が原音に近いのではなかろうか。そうすると、「アブドゥッラー」となる。
 もともとは“Abd Allāh”だったのが、“Abdullah”に変化したことになる。
 “Abd Allāh”には“Allāh”が入っていて、「アラーのしもべ」という意味の、ありがたい名前のようである。
 ちなみに、スペイン語にも「アラー」が入っているといわれている単語がある。それは、願望を表す“ojalá”(発音は「オハラ」。「~だったらいいのに」の意)という語である。スペイン語にはアラビア語由来の語も多いので、これもその一つらしい(手元の辞書にはアラーの関連語ということになっている)。カトリックの多いスペイン語話者は語源を知ると、この語が使えなくなるのではないかと心配になるのだが。
 コスタリカでは、父親が不明または事情により父の姓を名乗れない場合、どうするか。どこかで述べたかと思うが、ここで復習しておこう。
 スペイン語圏の人名は「個人名(2つ以上あるのが普通)+父親の父方の姓+母親の父方の姓」という構成である。父親が不明の場合、真ん中の「父親の父方の姓」が書けないのである。公式文書にはこれも必要なので、何らかの対策をしなければならない。答えは「母親の父方の姓を2つ続ける」である。“Rodríguez Rodríguez”というようにするわけである。同じ姓が2つ続くと私生児かと思われるかもしれないが、地方によっては、日本と同様に同姓だらけの集落もある。この集落内で結婚すると、当然、子どもは同じ姓が2つ続くわけである。個人的にもそのようなコスタリカ人を知っている。
 父親に認知されたら、晴れて「父親の父方の姓」を名乗ることができる。認知されて、父親の父方の姓を得意げに近所に触れ回っていた子供も個人的に知っている。

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