スパニッシュ・オデッセイ

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vos と vosotros

2014-12-15 11:45:04 | スペイン語
 vos は vosotros に形が似ている。それもそのはずで、実は vosotros という語は vos がもとになってできた言葉である。
 本来 vos はフランス語の vous と同様、2人称の敬称として、単数にも複数にも使われていたそうだ(手元の西和中辞典による)。そうすると、単数か、複数かちょっと紛らわしい。
 そこで、複数を表すために vos のあとに otros (「他の人たち」、英語の others、フランス語の autres に相当)をつけて、vosotros という言葉ができたとのこと(『スペイン語史』、寺崎英樹、大学書林、2011, p. 152)。そして、vos は単数専用となった。
 コスタリカでは tú はきつく感じられるので、一般的には使われない、その代わりに vos が使われる、と以前紹介したが、vos がそもそも敬称であったことを考えると、その理由は納得できる。ただ、現在では、敬称ではなく親称になっている。日本語の「貴様」や「お前」がたどった歴史をほうふつさせる。
  tú について言えば、スペイン語の古典期までは親称と敬称の区別はなかったとのこと(手元の辞書)で、2人称単数の代名詞はもともと tú 一本だったようだ。
 ちなみに、「私たち」を表す nosotros という語も、vosotros からの影響でできたらしい。本来は単に nos と言っていたようだ(現在のスペイン語では nos は nosotros の目的格)。  

 vos が vosotros に取って代わられたのは15世紀のことだが、15世紀末にもまだ、vos, nos の形が使用されていたとのこと。
 スペインから征服者たちが新大陸に向かうのは16世紀の初めからだが、征服者たちは依然として vosotros ではなく、vos の形を使用していたのだろう。 
 こう考えると、なぜラテンアメリカで vosotros が使われないのか、また、一般にはスペインでは使われない(どこかでまだ使われているのだろうか) vos が使われているのか、説明がつく。

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