スパニッシュ・オデッセイ

スペイン語のトリビア
コスタリカ、メキシコ、ペルーのエピソード
パプア・ニューギニア、シンガポールのエピソード等

メリー・クリスマス Feliz Navidad

2013-12-25 10:10:36 | スペイン語
 
【コスタリカ、リモン州グアピレス近辺の親戚宅にて】
 「メリー・クリスマス」はスペイン語では“Feliz Navidad(フェリス・ナビダッ)”という。これはアメリカ人でもよく知っているフレーズである。1970年にホセ・フェリシアーノがヒットさせた曲のタイトルである。“Feliz Navidad”だけがスペイン語で、あとは英語の歌詞が続く。
feliz は「幸せ」という意味の形容詞である。決して「フェリーズ」と発音してはいけない。大リーグには Feliz という姓の選手もいるが、NHKでは「フェリーズ」と発音している。アメリカ人アナウンサーの英語式の発音に倣ったものだろう。feliz のもとになったラテン語は felix で、こちらはファーストネームにも使われている。というわけで、Felix Feliz という姓名の人物が理論的には存在する。「末広八郎」のような感じだろうか。
  Navidad は natividad(誕生)の縮約形である。英語の native との関連がうかがわれる語である。
 イタリア語では「メリー・クリスマス」は“Buon Natale”で、natale がスペイン語の natividad に相当する。ヨーロッパではクリスマスに生まれた女児に Natalia (Natalie)という名前を付けるのが一般的だったそうだ。「ナタリア」はロシア語の愛称では「ナターシャ」になる。ロシア人の女子名というとすぐ「ナターシャ」を思い浮かべる。まさかクリスマスにロシア人女性の誕生が集中しているわけではないだろうが。
 さて、クリスマスというとサンタクロース(Santa Claus)がつきものである。
 アメリカの地名でも少し触れたと思うが、Santa がつく地名には次のようなのがある。
 Santa Fe(聖なる信仰)
 Santa Mónica(聖モニカ)
 Santa Ana(聖アナ、縮約形は Santana、あのラテンロックの「サンタナ」である) 
 地名以外では
 Santa Lucia(聖ルシア、イタリアではかの有名な「サンタ・ルチア」である)
 Santa Marta (聖マルタ、コーヒーの名前にもなっている)
 Santa Bárbara(聖バルバラ、またはバーバラ)
 そうそう、Santaがつく超大物を忘れていた。
 Santa María(聖マリア、コロンブスが乗っていた船の名前にもなっている)
 こうしてみると「信仰」以外はすぺて女子名であることがわかる。Santa は San (Santo)の女性形なのである。ところが、サンタクロースはどう見てもじいさんにしか見えない。サンタクロースは4世紀ごろ現在のトルコあたりにいた聖ニコラオス(ニコラウス)という司教がモデルになっているようである。スペイン語ではサンタクロースは、San Nicolás(サン・ニコラス)という。ただし、近年、メキシコではアメリカの影響で英語そのままの Santa Clausを使っているようだ。
 「聖(セント)ニコラオス」がオランダ語では「シンタクラース」と言われ、そこから「サンタクロース」になったらしい。また、英語では男性形も女性形も今では一部の単語を除いて、あまり区別がなくなったので、無頓着になったのだろう。
 英語には Saint Nick という、ニコラウス由来の、サンタの別名もあり、ビーチ・ボーイズのクリスマスアルバムには“Little Saint Nick”という曲がある。

 ところで、英語のクリスマスカードには“Merry Christmas and a Happy New Year!"のように「よいお年を」とセットになっているものもある。
 スペイン語では“Feliz Navidad y Próspero Año Nuevo”となる。 Próspero は英語の prosperous(繁栄する)に相当。Añoが「年」、Nuevoが「新しい」である。
 スペイン語に特有のアルファベット ñ(「ニャ」行を表す) は英語にはないので、n と書かれることもある。アメリカのモンタナ(Montana)州はもとは Montaña(モンターニャ、スペイン語で「山」の意)である。 ñ (「エニェ」と呼ぶ)の上にある波形はもとは小さい n である。n の上にもう一つ n が載っているという説もある。これは「太」の字の中の点が、もとは「大」の字を小さく書いたものであるのに似ている。
 ポルトガル語はスペイン語によく似ているが、año に対応するポルトガル語は ano である。ところが、ano はスペイン語では「年」とは似ても似つかない意味になっているのである。ちょっと日本語で書くのははばかられるので、英語で anus に相当するとだけ申し上げておこう。決して“Feliz Ano Nuevo”とは書かないでください。
 さて、このブログは今年はこれまで。1月6日ごろまで、クリスマス休暇に入ります。
 ¡ Feliz Navidad y Próspero Año Nuevo!  

ポチッとクリックすると、何かが起きる(かも)。
↓↓↓
スペイン語 ブログランキングへ

スペイン語とともに考える英語のラテン語彙の世界 (開拓社言語・文化選書)



   
コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする