立体は作ってしまえば、どんな角度からも撮れる。この利点を生かすため残された写真、絵画とは違う角度から撮って来た。大覚禅師こと蘭渓道隆は、生前描かれた唯一の肖像画は、向かって右斜め45度を向いている。敬意を表し、一カットは右を向かせた。仮に左を向いてる正岡子規を右にむかせたら、子規は右を向かないとでもいうのか、顔が違う、という人が必ずいる。そうしたものである。1カットは下から見上げ、1カットは失礼ながらというべきなのか、上から見下ろし撮った。流れからいえば正面が欲しい。陰影を描かない手法では面壁坐禅図を一度完成させた。しかし今となっては、坐禅窟には灯りを持ち込んではならない、という決まりでもなければ、次に制作するとしたら岩窟内、陰影しかないような真正面の坐禅図だろう。