明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



制作する作家の選択には容姿も重要である。作りたくなる顔というものがある。しかしその容姿のおかげで役柄が制限されることも出てくる。例えば江戸川乱歩には、名探偵明智小五郎を演じてもらいたいのは山々であったが、元紅顔の美少年であった乱歩も、早々に頭髪を失い、もじゃもじゃ頭の明智役は無理であった。そんなことはどうでも良いだろう、と思われる向きもあろうが、私には私なりの虚実の配合法がある。 小説の登場人物には、主役脇役はともかく、必ず作者のキャラクターが反映しているものである。そこに作者を作中の世界に登場させる私には、やりようがある。そう考えるとエドガー・ポーの作品には、ユーモラスな作品や冒険小説調の作品など幅は広いが、なんといってもポーをポーたらしめているのは、登場人物がジワジワと狂気におちいっていく恐ろしさが描かれている作品であろう。伝記を読むと、それは生活苦や神経衰弱、それから逃れるための飲酒習慣に由来する悪夢を作品化しているように思える。つまり作中に入ってもらいやすい作家といえよう。 また作品世界に入ってもらうこととは別に、ポーの最後として、死の直前、過度な飲酒(無理やり飲まされた可能性が高い)によりほとんど人事不省の状態で肘掛け椅子に座っているところを発見された場面。これは手がけてみたい。『明日のジョー』におけるあの“名場面”が頭をよぎるのであった。

※世田谷文学館にて展示中。

過去の雑記

HOME



コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


« 新たに届いた... 面と向かって... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。