普段のんびりしているくせに作ることになると急にせっかっちになってしまう。私が写真の暗室作業がまったく向いていなかったのもこのせいではなかったろうか。暗闇の中で落ち着いていられなかった。小説を読んでいる間中、映像が浮かび続ける私は暗闇では雑念が浮かび続けてやかましい。 私の制作は、頭に浮かんだイメージを取り出し、ほんとに在ったな、と確認したい、というところから始まっている。頭部が完成していれば、もうそこまで来ているので、よけい気がせいてしまうのである。とうわけで、明日中に九代目團十郎は乾燥に入れるだろう。 ずっと“荒事の成田屋”のイメージに引っ張られていたが高村光太郎のエッセイ『團十郎の首』を熟読することにより冷静になれた。そして坪内逍遥が、本当の團十郎は写っていない、といった残された写真が、“舞台上の”九代目が写っていないだけで、実際の九代目はちゃんと写っていたと判断した。よって私の九代目は、普段着のただ立っているだけの人物となるだろう。
HP
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