明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



同じ顔に見えた役者絵が、その役者を知らない現代人には判りにくいが、幕末の、かろうじて写真の残っている役者の写真と絵を見ているうち、実は特徴が描かれていることに気付いたのが浮世絵を見直すきっかけであった。むしろ、そんな微妙な差異を嗅ぎつけブロマイドのように買い求めた江戸庶民に感心したのだが。 中国由来の禅画、道釈画は日本の絵師達の手本になり、写され描き継がれていった。構図もほぼ一緒で描かれたりするが、ある絵師の画を見ていたら、手本から微妙に変えている部分がある。そのまま描くより、多少工夫を加えたかったんだな、ぐらいに眺めていたのだが、実はその違えた部分にこそ、先達を一歩超えよう、とする意志、工夫が表れていることに気が付いた。日本の絵師は昔から、ただコピーし、それで良しとはしていなかった。そこに注目すると、その絵師の人間観まで見える気さえする。考えてみると、この私でさえ、作家を作る際、参考にする写真はあくまで撮影者の物であり、ある特定の写真を参考にしたような作り方、撮り方はしなかった。



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