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明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



椿説弓張月で密告により為朝を生け捕りにさせた仇、武藤太が木槌により竹釘を打込まれる処刑は“小槌の仕置”と呼ばれる肥後の山賊に伝わる処刑方法らしい。これから三島にやってもらう予定の武藤太の役は、三島が演出した歌舞伎では、市川猿翁の弟、四代目段四郎がやっている。もしやと思ったら、たまたまサイン色紙を持っていた。私の子供時代のアルバムを前の家に忘れて来て、何でこんな物を持っているという話である。これも何かの縁であろう。 裸の処刑場面だけは三島のこだわりで筋骨隆々の大映の俳優勝村淳がやっている。勝新太郎の勝プロ所属で、勝新の座頭市などでスタンドインをやり、『悪名』や『兵隊やくざ』ではよく見かける。ブルース・リーの『ドラゴン怒りの鉄拳』ではブルース・リーに一本背負いを決めている。また勝新と三島が共演した『人斬り』に勝村も出演している。そんな縁であろう。 雪降るこのシーンで琴を弾く白縫姫は、三島歌舞伎では常連の歌右衛門ではなく、高校卒業直後で大抜擢の坂東玉三郎である。『椿説弓張月』『人斬り』いずれも三島の死の前年の作品である。人斬りで田中新兵衛役の三島は、“めんどくせぇもういいや、何でも良いから腹切りたかったんだ”といわんばかり、ほとんど唐突に腹を切るが、リハーサルから竹光を血が滲むほど程腹に当て、周囲がハラハラしたそうだが、この場面により京都撮影所で使用する一年分の血糊を使ったらしい。つまり弓張月、人斬り、翌年の“本番”に向け、それこそリハーサル充分の三島なのであった。





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