明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



見れば判るような作品には不要だが、先日伺った椎根和さんの写真展に所々説明があって良かった。そこで蛸に絡まれた北斎や、質屋前の樋口一葉、軍医の礼服姿の鷗外など、なぜこの人物はこんなことをしているのか、という説明を2、3行程度で何点か貼ってっておくことにした。ただ蛸に絡まれた『蛸と女』や勝どき橋横の百メートル以上ある巨大な女など、まさか元々ヌードを撮らせてもらった彼女達を笑わそうとして作ったとはいえない。 2年前の『深川の人形作家石塚公昭の世界』では、写る所しか作っていない作品を修整したり、できるだけ多くの人形を出品しよう、という試みであったが、その時感じたのは、一度出来てしまうと急激に醒めてしまって、頭は次のことを考えてしまうので作り飛ばして来たな、と。あくまで頭の中のイメージを取り出して、やっぱり在った、と確認したいがための制作である。であるから昨日書いたように、自分で作った古今亭志ん生観ながら落語を聞いて一杯やったらさぞかし、なんて考えていたのに、出来てしまったらまったくやる気が起きなかった。この時の展示が、実在した人物を新たに作るのはもう止めようという遠因になったかもしれない。 前言撤回常習者の私は、そういいながら葛飾北斎を作ってしまったが、写真を参考に制作するのと違い、頭部が1週間でできてしまった。想像で作る余地があるので面白いし速い。架空のジャズマンを作っていた頃、多用したのがこめかみの血管である。緊迫感が出る。タコに教われる老人に、数十年ぶりに用いた。これは写真が残されているような人物には使えない。 なんだか肖像画だけしかないような人物なら今後も作るかもしれない。といっているような。行き当たりばったりの風船野郎である。

『タウン誌深川』“明日できること今日はせず”連載8回『昭和残侠伝“唐獅子牡丹”三島由紀夫』

深川江戸資料館 特別展『目で見る落語の世界』4月21日(土)〜5月6日(日)4月23日(休)三遊亭円朝、古今亭志ん生像出品

銀座青木画廊「ピクトリアリズム展Ⅲ』5月12日(土)〜5月25日(金)20日(日休)4月23日(休)

2016年『深川の人形作家 石塚公昭の世界』 youtubeより

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