goo blog サービス終了のお知らせ 
明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



5月の個展に間に合いそうもないが、寒山拾得を制作するとしたら虎に乗った豊干も登場させてみたい。エドガー・アラン・ポーの世界初の推理小説『モルグ街の殺人』は絵画、映画で随分と描かれて来たのに、不思議なことに犯人としてオランウータンが使われた物を見たことがない。せいぜいゴリラかチンパンジーである。ビアズリーの挿絵も尻尾の長いニホンザル調である。よって多摩動物園で撮影して使った。『蛸と画狂老人北斎』では瀬戸内海産蛸を使用。よって虎は上野動物園か。だがしかし。 日本絵画ではモチーフとして虎がよく描かれてきた。しかし当時の日本人は実物の虎を見たことがなく、中国絵画を参考にしたり、または伝聞であろう。実にユニークである。リアリズムの北斎の娘お栄でさえ妙な模様の虎を描いている。多くの虎を描いた円山応挙は中国渡来だかの虎の敷物を写生しているから模様は正確である。日本人は実際は在りもしない麒麟やヌエを描くくらいだから何の問題もなかったろう。何しろ見る側だって虎を観たことがないのだからかまうことはない。 想像してみると、説話上の人物が上野動物園の虎に乗っているのがどうもそぐわない。幼稚園児の頃から動物園に行き、キップリングの『ジャングルブック』に猛獣が人間の目を怖がる描写があり、虎とにらめっこで対戦までしている私が当時の味を出すには、猫を虎に変えるしかないのではないか?そこで夏目漱石がはべらせている猫を撮らせてていただいた近所の方に、再び“虎ならぬトラ”を撮らせてもらった。ちょこまかしないようマタタビもご用意いただいた。 当ブログには、不首尾に終わったことには二度と触れないという厳格なルールがある。その場合、その後虎はどうした、などの不粋な質問は一切受け付けません。


銀座青木画廊「ピクトリアリズム展Ⅲ』5月12日(土)〜5月25日(金)20日(日休)

2016年『深川の人形作家 石塚公昭の世界』 youtubeより

『タウン誌深川』“明日できること今日はせず”連載7回「“画狂老人葛飾北斎”」

HP

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )