明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



江戸川乱歩に関しては、最初に気球にぶら下げてしまったし、屋根裏の散歩者や盲獣にもなってもらった。そこで作者を作品の中で、といった趣向ではなく、乱歩本人のポートレイトという風に撮ってみたい。乱歩像でも、未だ写真作品としてちゃんと撮影していない作品が数体ある。寝転がって煙草をふかしながら良からぬことに思いを馳せる乱歩。これは神奈川近代文学館の『大乱歩展』など展示は何回かしているが、写真としては、朗読ライブの『屋根裏の散歩者』でスライド用に撮影しただけである。 乱歩は寝床で執筆したそうだし、寝転がって空想に耽っているところを作ろう、と思いついた時に私がしていたポーズそのままである。和綴じの本を開いている所を(と書いた今、広げて眺めている物について、もっとインパクトのあるものを思いついた)。 確か何かの広告で、乱歩は暗い土蔵の中で蠟燭一本で執筆しているようなことを書かれ、迷惑していた、ようなことを書きながら、そのイメージを案外利用していたのではなかったか。円朝でせっかく入手した和蠟燭は、炎を筆の手描きにしたおかげで減ることもなく。なんならここで使っても良い。眼鏡のレンズに映る炎。あれだけ乱歩は実際は常識人だったので、盲獣をやってもらってもグロテスクにならぬように気を使った、などといっておいて、ここで作られたイメージに乗っかるのか? そこまでで画としては充分。と思うのであるが、例によって余計なことと思いながら、例えば乱歩が今何を妄想しているのか、中空にその画を浮かべてみたくなったりして。かつて『人間椅子』において女流作家佳子の座る椅子の中身を透かせて見せたことがある。何しろ『怪獣解剖図鑑』の大伴昌司の影響を思い切り受けた世代である。

※『拝啓つげ義春様』
 (後期)21017年10月21日(土)~11月5日(日)『ゲンセンカン主人』展示
ビリケンギャラリー
 住所:〒107-0062 東京都港区南青山5-17-6-101
 TEL:03-3400-2214
 営業時間:12:00 ~19:00(月曜休)
 ホームページ:http://www.billiken-shokai.co.jp/

※『タウン誌深川』“明日できること今日はせず”連載5回「芭蕉の実像」
HP

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