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弁護士NOBIのぶろぐ

マチ弁が暇なときに,情報提供等行います。(兵庫県川西市の弁護士井上伸のブログです。)

今は回収の時代2

2010年12月20日 | ⑤法律問題について
この年末,回収をどうしようかと思っていた事件2件がうまく回収できて,無事終わりました。

1つは,今駆け込み的被害が多いとされている,CFD取引(投資被害の一つ。今年12月までは法規制がほとんどなく,悪徳業者が多数跋扈にしていました。)です。
はっきりは言えませんが,うまく相手の泣き所をつけて,弁護士費用相当の10%も加えて,110%回収ができました。

もう一つは,出会い系サイト詐欺。ある程度,どこに財産があるか目星付けていて,訴訟前に仮差押えをしようと考えていましたが,仮差押えのことを黙ったまま交渉したのに,交渉の結果,サイト会社から被害のほとんど全部を返すと折れてきました。

うまく回収できたのは,運もありますが,非常にうれしいし,自分は間違っていなかったという自信になりました。

ただ,やっぱり運の要素があるだけに,実際にやってみないと分からない部分は多いです。だから,相談者・依頼者にはある程度自信があっても,やってみないと分かりませんとしか言えません。
逆に,安易に「絶対取り返せます」「大丈夫です」「任せてください」とは言えません。
多くの依頼者はこの言葉を待っていると思います。
しかし,過度な期待をさせてしまうし,もしうまくいかなかった場合はほぼ確実に依頼者と揉めますからね。
こういう言葉を言って,早く安心させてあげたい気持ちもあるのですが,実際はなかなか難しいんです。
それに,うまくいかなかったら,同じことを言って被害者を騙した悪徳業者と50歩100歩になってしまうので(本人を騙すために言うか,本人のためにいうかという違いもあるが,言っていることや失敗した時の被害者の気持ちはあまり変わらないでしょうね),消費者弁護士としてはなおさら言えません。

現在,回収奮闘中の悪徳業者5社についても,ガツンと取って,いい結果を出したいですね~

もっと勝てて,もっと取れる弁護士になれるよう,来年も頑張ります。


今は回収の時代

2010年10月21日 | ⑤法律問題について
武富士の会社更生の申立てでわかるように,過払金回収の世界も実際の回収が困難な時代がやってきそうです。

そもそも,この不景気で多くの会社や人が,無資力になり,裁判で勝っても回収できないという問題が多くなってきています。
過払回収の世界でも,中小の業者はグレーゾーン金利廃止ころに,そのような状態になり,準大手も経営破たんしたり,2,3割しか和解を認めないという酷い状態になってきていました。
大手は,銀行系のアコム,プロミス,レイクは前よりゴネることは増えましたが,訴訟すれば簡単に支払ってくる状態でした。それに対し,銀行系でない武富士,アイフルはなかなか厳しい状況になりつつありました(アイフルはこの間の私的整理で少し持ち直したように感じます。)。

そこで,破たんしていない会社に対する過払金は,いかに回収をするかが問われる時代になってきています。

何もこれは過払金だけではなく,それ以外のほとんどの訴訟でもそうです。
今の弁護士の力量は,「いかに勝つか」から「いかに回収するか」で,問われる機会が多くなったように感じます(もちろん「いかに勝つか」が難しい事件は相当ありますし,これがなくなることはありませんが)。

私も,最近,いろいろ知恵を絞って,効率的な回収をいろいろ試行錯誤しながら工夫するようになりました。

その努力の甲斐もあって,
この前,難しいと思われた過払金の回収が非常にうまく行きました。

ある貸金業者で,系列会社を増やすなど順調に会社を拡張している会社があるのですが,そこは系列会社ともども,過払金はほとんど任意で払おうとせず,和解しても2,3割しか払わないという方針を取りながら,逆に,残債務がある顧客にに対しては,弁護士介入後の支払日までの遅延損害金(年26.28%)まで一切まけずにさらに一括払いでしか和解しないという酷いことをしています。
しかも,判決を取ってもなかなか支払わないという噂もありました。
この会社には,前に残債務ある依頼者の件で苦汁をなめさせられていたので,いつかギャフンといわせてやろうと思っていました。
この前念願の判決を取ったので,やっとギャフンと言わせられると思い,温めていた方法で強制執行をしたら(詳しい情報は企業秘密です),その会社はかなり困ったのか素直にほぼ全額支払ってきました。
(控訴までしていて,控訴の第1回口頭弁論期日まで決まっていて,それまで散々無視していたのに,強制執行の命令が発令された直後に突如和解の話を持ってきて,驚くべきスピードで和解をし,和解金を支払ってきました。やる気になればできるじゃん!!。もうすぐ強制執行取り下げてあげないといけないなあ。)。

おかげさまで,とてもスカッとしました。
当初依頼者には回収は難しいと説明していたので,何とか喜んでもらえそうです。
(ただ,武富士の過払金が判決後,強制執行申立て中に,会社更生申立てをさせて,飛んでしまったので,気持ち的にはトントン以下ですが・・・あと,1か月,いや2週間でも申立てが遅ければ回収できたのに~)。

ともかく,私の専門分野の,先物取引被害事件や金融商品まがい事件(ロコロンドン貴金属取引まがい,CFD取引まがい,海外先物取引まがい,海外先物オプション取引まがい,未公開株,未公開社債など)は,まさにいかに回収をするかという時代です。
いかに黒幕を探し,個人責任を追及し,その者から回収するかが問われます。
こういう事件を多くしていると,かなり調査能力や強制執行の実務が鍛えられますね。

なにか回収屋っぽい感じで少し品がない話のように聞こえるかもしれませんが,弁護士のスキルを駆使して,いかに適法に,調査し,強制執行をするかという,知的な作業です。

でも,やっぱり弁護士なら,訴訟で勝つ方に力を注ぎたいなあと思う今日この頃です。


あと,折角判決で勝っても,露骨な執行妨害により強制執行が困難になっている事案が多くなってきました。
執行できない給付判決の判決書は単なる紙切れみたいなものです。
現在の執行制度には限界があり,このままでは裁判所の権威にもかかわる重大な問題です。
裁判所も強制執行においては,今までの基準で緩められるところはできるだけ緩めて運用すべきでしょうね。
それか法改正するしかないか。
法務省は,先物被害事件の全国的な若きエースで強制執行の名人でもある荒井哲朗弁護士など実務家の意見を聞いて,画期的で効率のよい新しい執行制度を早く作るべきではないかと思います(荒井先生,それほど親しくないのに,勝手に名前使ってすみません。)。



刑事事件について思うこと

2010年03月14日 | ⑤法律問題について
私は,基本的には,刑事事件は国選弁護人と当番弁護士しかしてません。

なぜかというと,刑事弁護があまり好きではないからです。

なぜ刑事弁護が好きではないかと考えてみると,私は,悪いヤツ(私にとっては,「弱い者いじめをするヤツ」「人を傷つけることに罪悪感を感じないヤツ」「平気で人の努力を踏みにじるヤツ」等の意味かな)が大嫌いだからです。

といっても,実際には,犯罪を犯す人が全員そんなヤツばかりではなく,結構いいヤツもたくさんいます。ただ,そういう人も,精神的に幼く,人の痛みについて想像力が欠如している人が多いです。

でも,悪いヤツが嫌いなせいか,食わず嫌いでつい「刑事事件嫌い」とおもってしまうわけです。

もちろん,私もプロですから,一度受けた以上は一生懸命やります。決して手は抜いているつもりはありません。

例外的に私選の刑事事件でやるとしたら,冤罪の可能性の高い否認事件(無罪を争う事件),知り合いか知り合いからの紹介事件,その人の家族の生活等のためやらないと特にかわいそうな事件くらいでしょうか。

私選の刑事事件は,着手金が20万円~50万円,報酬もそれとほぼ同額,起訴前(捜査段階)と起訴後とそれぞれで着手金がもらえ,保釈等すると,また,着手金と報酬(各10万円~30万円)と,フルコースで行くと,手数料としてもらうお金がすぐに100万円超えたりします。
しかも,否認事件や裁判員裁判でなければ,ほとんどが2,3か月で事件が終わります。
やることは,国選の弁護人とほとんど一緒(違うのは,被疑者・被告人が「お客さん」になってしまうので,接見の回数が増えることくらいでしょうか。国選の場合,安いから手を抜く弁護士が多いという噂がありますが
,私の場合は全く一緒ですね。)
だから,私選の刑事弁護って,実は,弁護士にとって過払事件と同様「おいしい事件」と言えなくもないんです。

「そんなに刑事事件が嫌いなら,国選弁護人も当番弁護士もやらなければいいじゃん。」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし,刑事弁護は,他の業務と異なり,他の士業ではできない「ザ・弁護士」の業務なのです。
私は,国選弁護人も当番弁護士も,弁護士の使命と思っています。
私の弁護士魂からすれば,全く国選も当番もしないというわけにはいかないわけです。少なくともしばらくの間は。

それに,私は実は,兵庫県の司法修習委員として,修習生の刑事弁護の講義を受け持っているので,その意味でもやめられません。


ちなみに,今までの講義で使っていた「はじめての刑事弁護」(司法研修所刑事弁護教官室監修)というDVDの最後は,主人公の女性弁護士が「私は,刑事弁護が好きだ!!」とおいうセリフで終わるのですが,私は,そのDVDの解説講義の冒頭で,つい「私は刑事弁護は嫌いだ」と言ってしまいます(笑)。もちろん,冗談としてですが。


私のほかに,「刑事弁護をやめた,もうやりたくない。」と言っている弁護士の話をよく聞くことがあります。
話を聞いてみると「刑事事件に失望したから」という話が多いです。

確かに,自白事件でも懲りない面々を見ていると嫌になってくるし,否認事件でも,無罪の推定原則の形骸化というか刑事事実認定技術の限界を感じ,嫌になる場合もしばしばあります。


後者の話について特に述べておくと,検察官が信用できるとして法廷に出してきた証人(被告人との利害関係がその事件以外ない人)の話は,矛盾点,不合理な点,供述内容に変遷が多少あろうが,ほとんどの裁判官は信じてしまう傾向が強いです。
ほとんどの場合,見間違えがないかどうかのチェックのみで,それで見間違いさえなさそうならば,その被告人は有罪にされてしまうわけです。
その証人に実は隠れた被告人との利害関係があるとか,証人が偽証してまで被告人を無実の罪に陥れる動機を弁護側で立証しないと(単なる主張だけではダメ),なかなか,その証人は信用性がないとされて,無罪になるということはありません。
もちろん,被告人の主張する,真実のストーリーを立証できれば,その証人が信用できないとまで言えなくても,無罪にすることはできますが,真犯人や他の目撃証人が出てこないとなかなか立証できません(実際出てくることは少ないです。)。

その根底には,「被告人は刑務所に行きたくないから必死に嘘をつく。」「偽証罪や虚偽告訴罪の危険をわざわざ負ってまで,人を罪に陥れる人は普通いない。」という経験則(経験から帰納された事物に関する知識や法則のこと。裁判の事実認定は経験則を用いて行われる。)があるからだと思います。

裁判官の中には,「無実の者を処罰してはならない」という発想よりも「無罪判決はむやみに出してはいけない。そんなことをすると裁判所内の評価に響く。」という官僚的な発想の方が強い人が,(意識的か無意識的かを問わなければ)少なからずいるような気がします。
(映画「それでも僕はやっていない」にはこのことが少し触れられています。これが真実かどうかはっきりはわかりませんが,刑事事件を近くで見ている弁護士としては,「この裁判官はそういう発想なんじゃないか?」と疑うことが少なくないです。現に,司法修習の刑事裁判の判決起案で完全な無罪判決を書かせたということは,私が知る限り歴史上ありません。)

しかし,実際には,嘘をつくはずがないと思われた人が何らかの理由で嘘をついたり,ありえない勘違いをして間違った記憶を持ち,その記憶をそのまま証言することだってあるわけです。

その事実認定技術上の限界によるリスクは,被告人が負ってしまうケースがほとんどです。
その理由は,弁護人が警察・検察のような強制捜査権もないなど証拠収集能力が相対的に乏しく,事実上自説の立証が極めて困難だからです(ここにも制度的限界があるわけです。)。

その点,最高裁判所第三法廷が,平成21年4月14日に出した判決*が,「被告人が満員電車内で女性Aに対して痴漢行為をしたとされる強制わいせつ被告事件について,被告人が一貫して犯行を否認しており,Aの供述以外にこれを基礎付ける証拠がなく,被告人にこの種の犯行を行う性向もうかがわれないという事情の下では,Aの供述の信用性判断は特に慎重に行う必要がある。」旨判示したことは,事実認定の方法論について,冤罪を減らすという方向において一定の指針を示したものであり,とても評価ができます。

下級審の裁判官には,痴漢事件だけではなく,広く,証拠が供述証拠しかない事件一般においても,供述証拠の信用性判断を特に慎重に行うという運用をお願いしたいと思います。

あと,「この種の犯行を行う性向もうかがわれないという事情の下」だけではなく,「動機がはっきりしない場合」においても同様にしてほしいです(「性向」や「動機」は,証人や被告人の供述内容の信用性に関する重要な状況証拠であるから,従来の事実認定論からしても当然のことと言えば当然のことではないかと思いますが)。

また,検察官にも,冤罪は決して起訴しないという信念を持って,被害者等の証人の供述しか証拠のない事件については,安易に被害者等の証人を信じすぎず,物的証拠や事件の筋を冷静に見つめて,できる限り被疑者の「動機」等の状況証拠をも詰めてから,起訴してほしいと思います。


最後に,前述した「はじめての刑事弁護」というDVDは,教材としてだけでなく,ドラマとしてもなかなかいい出来だと思いますので,一般にも公開したらいいのになと思います。
前述の事実認定技術上の問題点を提起する素材としても使えると思います。
まあ,私は,このDVDをもう10回以上見ているので,正直もうあまりみたくないですが。



弁護士の事件処理についてのご相談について

2010年02月13日 | ⑤法律問題について
よくこのブログのコメント欄や私のgooメールにご自分が委任している弁護士の事件処理(その弁護士がおかしいんじゃないかなど)についての質問や相談があります(いわゆる弁護士の「セカンドオピニオン」です。)


その際,いつもお答えしているのが,

「まずは,ご自分の弁護士にきちんとした説明を求めて下さい。」

ということです。


説明の際には,できるだけ弁護士に書面を出してもらうことが肝心です。
書面とは,弁護士が独自に入手した資料,裁判所や相手方等とのやり取りの書面です。
また,本来は,弁護士に渡した原本等も本当はコピーを取って控えてしてもらっておくべきです。

弁護士が説明のために報告書や表などを出していれば,望ましいことですが,それがない場合は,きちんと弁護士が言ったことメモしておくべきでしょう。

それだけの資料があれば,別の弁護士にセカンドオピニオンに行って,十分な説明を聞くことができる可能性が高いです。


私としましては,知っている範囲で,一般論をお教えすることはできますが,弁護士と依頼者がもめるのは例外的なことですし,いろんな事情もあるので,少しお話を聞いただけでは,一概にその弁護士に問題があるとは断定することはできません。

そして,上述のとおり,担当弁護士に説明を求めた上,不満や不信等がある場合には,セカンドオピニオンに行ってくださいと申し上げるほかありません。

最近この手の相談が多いので,概括的な回答として,この記事を書いた次第です。


セカンドオピニオンについては,最寄りの弁護士か,あまりに不信感が強い場合は,弁護士会の苦情窓口等にご相談ください。
弁護士には,守秘義務がありますので,口止め際きちんとしておけば,依頼している弁護士に伝わる可能性はありません。セカンドオピニオン弁護士に,「この話は先生にしか,お話したことがありません。」と言っておけば,本人に伝わった自分が言ったことになることは確実ですので,その弁護士は守秘義務違反を恐れて漏らすことはないでしょう。



過払金と弁護士と司法書士

2009年11月02日 | ⑤法律問題について
あらかじめ述べておきますが,
以下に述べることは,現時点では一弁護士である私の見解でしかありません。
もし反論がある方は,正々堂々,感情論ではない,正当な反論をしてください。
もし私が間違っていたと思えば,謝罪ないし撤回します。



サラ金に対する過払金に対する訴訟は,弁護士と司法書士がやっています。

数年来,弁護士・司法書士の間であった過払バブルも終わりを告げ,現在,サラ金の過払事件で,弁護士・司法書士による過当競争が行われている感じがします。

関西,特に大阪では,電車の広告やTVCMなど司法書士の過払金返還の宣伝をよく見ます。

弁護士の過払事件にも色々問題があるようですが,今回は特に司法書士の過払事件についての問題点について言及したいと思います。


現在,司法書士は簡裁の過払金訴訟(過払金が140万円以下のもの)は代理人として法廷に立っています。
司法書士は,代理権のある簡裁の事件だけではなく,地裁の訴訟(過払金が140万円を超えるもの)は依頼者本人を法廷に立たせ,自らは傍聴席で依頼者に指示を送っているのをよく見ます。

某裁判所では,過払訴訟をやっているのは,弁護士より司法書士の方が多いのじゃないかと思われる状況です。

私は,司法書士が簡裁事件で法廷に立つのは,司法書士法3条6項が認めているので問題はないと思いますが,地裁事件,つまり140万円を超える過払金事件をやるのは問題があると思っています。

司法書士は,司法書士法3条4項で,裁判所に提出する書類を認められており,形式的には,これに基づき,140万円超の過払訴訟をやっているのだと思います。

私は,もし司法書士が形式どおり,本当に書面作成の報酬だけをもらっているだけなら問題がないと思います。
しかし,実際に,訴訟や示談交渉の結果,獲得した140万円超の過払金から弁護士と同じように一定割合の報酬を取っていたら,大問題だと思います。

なぜなら,形式上,書面作成しただけなのに,訴訟や司法書士の示談・和解交渉の結果について,140万円超の過払金についての報酬を取っているということは,実質的には,司法書士法が認めている以上の業務についての報酬を取っていることになるからです。

要するに,140万円超の過払金に対する報酬を取った時点で,法律上許されない弁護士しかできない業務をやっていることにほかならないことにからです。
弁護士法72条は,法律が認める例外以外,弁護士でない者が弁護士の業務を行うことを禁じ,同法77条は刑事罰さえかけています。

私は,百歩譲っても,1件あたりの書面作成料(任意整理の着手金に比べてそんなに高くならないはず)と140万円までの報酬(だいたい2割程度か)は取るのは仕方ないとしても,それ以上を取るのは,大問題だと思います。


この件に関連して(この論点ずばりではないですが),最近,司法書士の債務整理についての140万円の上限の解釈について争っている裁判がありました。

その事件は,司法書士が弁護士と同様の債務整理などの裁判外代理権を認められた「訴額140万円以内」の解釈をめぐり争っている事件で,弁護士側は「整理の対象になる全債務額」と主張し,これに対し,司法書士会は「整理によって圧縮される債権額」としていたそうです。

平成20年11月の1審神戸地裁判決は,司法書士がわざと圧縮額を140万円以内に収める危険性があると指摘して,弁護士会の解釈が妥当としたようです。

これに対し,本年10月16日の控訴審大阪高裁判決は,「公権的解釈も確立していない状況では、いずれかの見解に立つことはできない」として判断を回避したようです。


以上は,参考として紹介しましたが,

いずれにせよ,140万円超の過払金の請求について,司法書士が報酬をもらってやるのは,違法だと思います。
この点について,私が見たかなり限りある広告,HPなどでは,そのような140万円で報酬基準を分けて書いてあったり,その点の説明を十分やっている事務所はありませんでした(どこかにはあるかもしれません。その人はすみません。)。

そもそも,過払訴訟で,本人を法廷にいつも出頭させておいて,本人を出頭させる必要なく全部自分でやる弁護士と同様の報酬を取るのは,違法かどうかを置いておいても,常識的におかしいです。
そもそもサラ金の被害者の依頼者を毎回公開法廷に立たせるのもかわいそうです。

あと,過払金訴訟は,今は法的な争点が増えたり,サラ金業者の経営悪化から回収可能性が悪くなったりして,いろいろ難しくなっていますが,基本的には,成り立ての弁護士でもできる簡単な訴訟です。
また,依頼者が,債務さえなくなれば満足だという人がいまだに多く,そんなにたくさんとらなくてもすぐ満足してしまい,手を抜こうと思えばいくらでも抜ける事件なのです(ちなみに,私は,ガンガンに攻めたいのですが,いろいろなリスクをきちんと説明してしまうと,依頼者はすぐに和解を希望することが多いです。なので,私の希望とは異なり,なかなかガンガンやらせてもらえません。)。

もちろん,田舎で,弁護士が少ないところなら,司法書士がやる需要があります。この場合,ある程度は仕方がないと思いますが,やはり弁護士法・司法書士法は守るべきだと思います。
法律を違反してまで,人助けというのは,公的な資格を持ったプロがやることではないと思います。

上述の私の百歩譲った報酬でやらないのなら,司法書士は140万円超の過払金訴訟から直ちに撤退すべきだと私は思っています。

そして,そのようにやるなら,きちんと広告やHPや契約の際など,事前に依頼者きちんとその点を説明すべきです。
また,140万円を超える訴訟になると依頼者本人が裁判所に出頭しなければならないこと,弁護士に頼んだ場合には本人が出頭する必要がなくなることについても,事前にきちんと説明するべきです。


今後,もしからすると,取りすぎた報酬を返せという訴訟が起きて来るかもしれませんね。(取りすぎた報酬とは,140万円超の報酬。たとえば,報酬が20%として,取った過払金が300万円の場合,司法書士が,300万円×20%=60万円の報酬を取っていたら,300万円-140万円=160万円の20%,つまり,32万円については報酬契約が弁護士法72条違反で無効であり,司法書士に対する過払いとして返せということ。)

過払司法書士に対する過払訴訟・・・なんか皮肉な感じですね。

こういう訴訟が実際に起きるかどうもわからないし,結果も実際やってみないとわからない部分は当然あります。

このような訴訟は実際にはやるのは正直勇気いります。上述の裁判みたいに,弁護士vs司法書士の大きな戦争になるかもしれませんし。


久々に過激なことを書きていまいました。

このブログが炎上しないことだけを祈るだけです。

(興味のある方はコメント欄も見て下さい。補足的なことがかいてあります。)
(当初投稿したものから,若干文章を直したり,加筆しています。)


離婚弁護士

2008年11月25日 | ⑤法律問題について
私はマチ弁をやっているだけに,離婚事件をよくやります。
2年でたくさんの夫婦を離婚させました(悪いことしているように聞こえますが,不幸な結婚生活を強いられるより早く別れた方がいい場合が結構あります。)。

離婚事件は嫌だという弁護士が結構いますが(でも多くの人は嫌な顔一つせず粛々やっておられますが),私は結構苦手意識なく,どちらかといえば好きです。
現在自称「離婚弁護士」です。


以下,離婚について簡単に説明していきます。

離婚には,大きく「協議離婚」「調停離婚」「裁判離婚」の3つがあります(ごくまれに「審判離婚」というものがあるようですが,ここでは省きます。)。

「協議離婚」は,夫婦が離婚届を2人で書き,市町村役場に出す,いわゆる普通の離婚です。

「調停離婚」は,夫婦が自分たちだけの話し合いがつかないとき,夫婦の一方が家庭裁判所に調停を申立て,調停委員が間に入って話し合いをし,その話し合いが成立したときに離婚する場合です。

「裁判離婚」は,上の調停でも話し合いがつかない場合に,家庭裁判所に起こす訴訟によって離婚する場合です。
これは相手が離婚を嫌がっていても下記の離婚原因さえあれば強制的に離婚できる制度ですが,上記の調停をしないと訴訟を提起することができません(調停前置主義)。


どの離婚でも,法的な効果は基本的に同じですが,違いは①離婚成立がいつになるか(いつ夫婦でなくなるか)と,②離婚原因が必要かどうか,③離婚届の書き方でしょうか。

①離婚成立時については,
協議離婚は,離婚届を提出したとき。
調停離婚は,調停が成立したとき。
裁判離婚は,判決が確定したとき(訴訟上の和解をしたときは和解成立時)。

②離婚原因(民法770条1項)は,
一  配偶者に不貞な行為があったとき。
二  配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三  配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四  配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五  その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
です。
協議離婚・調停離婚では必要ないですが(夫婦双方が離婚に同意しているから),
裁判離婚では必要になります。
但し,裁判離婚でも,有責配偶者(離婚原因を一方的に作った者。例えば不倫した夫からの離婚請求)からの離婚請求は,実務上,今のところ認められないことが多いです。

③離婚届の書き方ですが,
協議離婚は夫婦両方の署名捺印が必要です。
調停離婚・裁判離婚は,調停調書・判決等があれば,他方の署名捺印がなくても,離婚の届け出ができます。


離婚の条件で決めることは(いずれの離婚も共通),
(1)慰謝料
(2)財産分与
(3)年金分割
(4)(未成年の子どもがいるときは)親権者
(5)(未成年の子どもがいるときは)養育費
です。
ただし,(4)以外は,必ず離婚のときに決めなければならないものではなく,(1)は離婚後3年間の時効成立まで,(2)(3)は離婚後2年間まで,(5)については子どもが成人するまでならいつでも申立てられます。


(1)についてですが,相手が不倫したときなど,不倫してから3年の時効ではないかと思われがちですが,慰謝料は不倫に対する精神的損害ではなく,離婚を余儀なくされたことに対する慰謝料と構成すれば,離婚時から3年ということになります(ただし,不倫相手に対する慰謝料は別です。お早めに。)。
相場は,本来あってなきがごときで,いくらでもいいと思いますが,あまり高いと贈与とみなされる可能性があります。
ただ,裁判で慰謝料額を決めるときは一応の相場があります。特に近時相場をはっきり決めようという傾向があるようです。
だいたいは,不貞行為なら200~300万円(具体的金額は回数や態様による。不倫相手に対する請求の相場は150~200万円くらいのようです。)。特に酷いケースで500万円。
500万円を超えるには,DV等で後遺症が残らないとなかなか難しいようです。
昔の「妻は夫のすることを我慢するのが美徳」「夫が浮気するのは妻も悪い。」「浮気は男の甲斐性」などと言った考え方ならいざ知らず,離婚は人の人生をめちゃくちゃにするもので,それを一方的に壊しといてたった300万円はあまりに安すぎますよね。
裁判所の相場感覚は市民感覚に合っていないですよね。

(2)の財産分与は,夫婦で作った財産を折半することです。
別居時(別居していないときは離婚時)にいくら財産あるかで額が大きく変わります。
株や不動産等価値が変わるものは,裁判の終結時の時価で判断されます。
夫婦のためにした負債は当然差し引かれますので,負債が多いときに離婚すると,財産がたくさんあってもあまりもらえません(ただし,ギャンブル等夫婦の一方が自分だけの事情で作った借金は考慮されるべきではないでしょう)。

ちなみにテレビなどで芸能人の慰謝料が1億円とか言っているのは,おそらく慰謝料だけでなく,財産分与も含んでいると思われます。

弁護士をいつ付けたらいいかというのはケースバイケースです(調停を起こす前の示談交渉時点,調停の時点,訴訟の時点と様々です。)。
弁護士をつける必要性があるのは,離婚そのものや上記(1)~(5)等に争いがある場合です。
ただ,示談交渉,調停,訴訟と全部弁護士を付けると弁護士費用が莫大にかかりますので,どこで相手と話がつきそうかを見極めながら弁護士をつけた方がいいです。
相手が話せばわかる人の場合,条件の食い違いの差が大きくない場合なら,示談交渉や調停の段階で弁護士を付けるのもいいですが,全くお話し合いにならないのならないような場合は,自分で調停をして,さっさと調停を終わらせてから,弁護士を訴訟の段階から付けた方が時間的にも資金的にもお得かと思います。


相手が離婚を反対しているが,一刻も早く離婚したい場合は,速やかに子どもを連れて別居し,離婚調停を申し立てるのと同時に,婚姻費用分担請求の調停を申し立てると有効な場合が多いです。

別居後婚姻費用分担調停を申し立てた場合,相手は,別居して家のこともしてくれない配偶者のために,生活費を支払わないといけなくなるという耐え難い負担を負うことになるので,これをやると早期に離婚調停が成立する可能性が高くなります。
ただし,相手方が収入が少ない場合や職を転々とする人等の場合はあまり負担にならず効果がないことがあります。
また,婚姻費用分担請求は,収入の多い方が収入の少ない方に対し,その生活費と子どもの生活費を支払うというものです。収入の多い方が請求はできませんので,その場合にも有効な手段とはいえません。

別居の際の注意事項ですが,
子どもがいる場合は,子どもを連れて出ないと親権を相手にとられることが高くなりますので注意が必要です。
また,下手な別居の仕方をすると,「悪意の遺棄」にあたり,慰謝料請求の対象になる場合があるので「捨てた」という形にならないようご注意下さい。
例えば,生活費の面倒を見てる方(特に男性)は,生活費を別居後もある程度払い続ける必要があるでしょう。
また,別居の際,自分の別居先と相手の住んでいるところがあまりに遠くになると(例えば,遠くの実家に帰る),調停をする裁判所は,相手の住所地の家庭裁判所になり,調停をするのに裁判所に行くのがとても大変になりますので,調停・裁判が予想される方はご注意下さい。

以上,だいたいのことを書きましたが,細かく実際にどうしたらいいか悩んだ場合は,まず最寄りの弁護士に相談に行かれることをおすすめします。


国選弁護人と私選弁護人の費用について

2007年11月24日 | ⑤法律問題について
私選弁護人の弁護士費用は今のところ高いですね。
ただ,弁護士の労力と被疑者が得る利益を考えると,そんなもんかなと思います。

国選弁護人の報酬は,起訴後国選は非常に安く,1回で終わる被告人が認めている軽微な事件で,簡裁事件(簡裁に起訴された軽微な事件)で6万円~,地裁事件で7万円~です。
これに,出廷回数,被害者の示談の成立,一部又は全部が無罪になったかどうか等で,コツコツとプラスアルファーされて行きます。

被疑者国選(起訴前)については,私はまだ一度も受任していないので,よくわかりませんが,値段的には起訴後国選とほとんど同じようなものです。

国選弁護人の費用は,原則は,最終的に国が負担することになっていますが,被疑者・被告人に資力がある場合には,被疑者・被告人負担になります。
また,本人に資力があるかないか微妙なときでも,被害者に全額弁償をした場合で,執行猶予付きの判決が出た場合には,被告人負担になることがあるようです。

といっても,十数万円くらいの負担なので,40~60万円くらいはかかる私選弁護人(あくまで目安それ以下それ以上の場合もあり)に比べると,相当安いです。

しかし,よく留置場では,国選弁護人はやる気がなく,いい加減な弁護をするという噂が流れているようです。
そのため,私選の弁護士費用を払うから私選弁護人になってくれと言われることがたまにあります。
我々弁護士の職務基本規定(このブログに全文掲載しています。)には,国選弁護人は被告人に私選に切り替えるよう要求してはいけないという決まりがあって,後で弁護士の方から私選にするよう勧めたと言われても困るので,私は,このような申出は断るようにしています。
どうしても私選がいいなら他の弁護士を探して下さいというようにしています。

私選だろうが国選だろうが,善管注意義務(善良なる管理者としての義務)を負いますので,多くの弁護士は,入れる力は変えないでしょう。
ただ,やはり国選だと手を抜く人もいるという噂を聞きます。
また,弁護人と被告人の弁護方針で意見が合わないときなどは,国選の場合は,弁護人は説得して自分の意見を通しやすいですが,私選だと自分が正しいと思っても,つい被告人の意見を尊重してしまいがちになる人もいるようです。

この前も,民事の依頼者から,「息子が捕まって起訴されたが,国選弁護人が何もしてくれない。先生が私選でついてくれないか。」と言って来られました。
しかし,話をよく聞くと,軽微な事件で,初犯で,公訴事実(訴えられた犯罪事実)に争いはなく,被害者もいない犯罪でした。
こういう犯罪では,事実を争うための主張・立証をする必要もなく,被害者との示談の必要もないので,弁護人がやることと言ったら,情状証人(親など監督する人)の尋問と被告人質問だけ。
できれば本人の反省を促すため,何回も接見しに行くべきかもしれませんが,懲りない面々ってな感じで(この表現は古い?安部譲二です。),親が何度言っても聞かないそうで,弁護士が多少説得しても,反省しそうもない感じです(本人がもう少し時間をかけて大人になるべき)。
私選弁護人自体も本人が親につけてくれと言っているくらいですからね(新しい弁護士付けろという前にまず反省しろ!!)。

こういう事件では,やること少ないし,判決の結果はあまり変わらないですしね。
余り私選弁護人をつけるメリットは少ないです。
私選弁護人をつけるより,毎日親が反省を促しに拘留場に通うべきですね。

もちろん私が国選弁護人となった場合は,一生懸命反省を促しますが,何度言っても全く変化がなく,口だけで反省していますというだけの人だと,事件が終わったあと,「もう刑事事件なんてごめんだ。」と思ってしまいます。
こういう事件はいくらお金をもらってもやりがいがないので,私選では絶対に受けたくないですね。

なんか,最後は,刑事事件の愚痴っぽくなってしまいましたが,少しは,刑事弁護人や,私選と国選の違いがわかって頂ける材料になったのではないでしょうか。


架空請求に対する対処法の一案(やすさんの質問に対する回答)

2007年11月13日 | ⑤法律問題について
【やすさんの相談内容】

今日、知らない番号から携帯にかかってきました。
でてみると、全くつかったことないサイトからの請求でした。
なんでもアダルトサイトらしいです。
今年の初めに登録があったとのことです。
入金がないから連絡しましたといわれました。
ワンクリックじゃないんですか?と、聞いたところ、違うといわれました。
いくらなのかも言ってきませんでした。
身に覚えがないと言ったら、
では、自社の顧問の請求会社に連絡するといわれました。
自分の名前もメールアドレスも携帯の番号も知られてます、どうやったのかわかりませんが・・・
親や会社に迷惑かけたくないです、どうしたらいいでしょうか。


【NOBIの回答】

弁護士としては,後腐れや周辺に迷惑がかかるからと言って,お金を払えとは,とてもいえません。

犯罪者お金を払うことは言語道断のことです。
こういう詐欺師にお金を払うと,次の詐欺の元手になることにもなり,犯罪を助長し,他に多くの被害者を作ることになります。

まず,あなたは一切悪くないのですし,そもそもあなた自身まったく身に覚えのないことですので,親や会社にこういう不当請求を受けたと言っても,何ら恥じることや攻められることはないはずです。
オレオレ詐欺から電話がかかってきて,断ったら逆恨みされて嫌がらせを受けたのと同じです。

犯罪者は,親や会社などに迷惑をかけたいないという心理を利用して,楽してお金を稼ぐのです。
相手の思う壺になってはいけません。

周囲の理解と協力を求めて,毅然とした態度で,何をされても決して払わないという態度を示しましょう。

恐いかもしれませんが,一度引っかかると,相手はあなたの個人情報をしっているので,「カモ」リストに入り,たくさん犯罪者から似たような電話がかかってくるようになり,余計酷いことになる可能性があります。
ここはとにかく我慢です。

相手に携帯番号,メールアドレス,名前等の個人情報を知られているのは,確かに問題があります。

住所や職場とか他の個人情報は知られていないのでしょうか?
これらは巧みに聞かれても,絶対に答えてはダメです。なんと言われても,「言う必要ない」で通しましょう。

他の個人情報が知られていないなら,携帯電話,メルアドは,無視するか,最悪変えれば済むので,問題ないでしょう。
名前も著名人でない限り,調べようがないので,おそらく大丈夫でしょう。

仮に,住所や職場等逃げようのない個人情報を握られていたとしても,これこそ逃げずに,毅然とした態度「支払う必要はない。もう電話かけてこないでください。」と言って,すぐに電話を切りましょう。
何度も電話をかけても,同じことを繰り返す。
しつこいようなら,「少し考えて書面で返事をしたいので,「住所,氏名,FAX番号」を全部教えて下さい。それでないと,どこのだれともわからない人間にお金なんて払うことなど絶対にできない。」と言いましょう。おそらく,警察に通報されることをおそれて,教えてくれないと思います。

それを繰り返していると,すぐにあきらめる可能性が高いと思います。

このような犯罪者は,楽にリスクが少なくよりたくさんのお金を稼ごうと思っているので,めんどくさい人は基本的には後回しです。

仮に相手が本職さんとしても,自分の名前や所属組織名を言わなければ,メンツの問題も出てこないし,引き際を知っている人が多いので,素人よりややこしくないことが多いです。
こんなせこい詐欺に,自分の名前(本名,通り名)や所属組織名は出すことはまずないと思いますし(組織名出すと,恐喝罪や暴対法の問題も出てきますし)。

そんな感じで,しばらく耐えて,もし本当にしんどくなったり,危なくなったら,弁護士や警察に相談しましょう。
できれば,その前に電話の内容を録音してあると,相談に乗りやすいと思います。

以上は,私が最善と考える一つの案ですが,他にもっといいやり方はあるかもしれません。
あと,これはあくまで一般論なので,ケースバイケースで臨機応変に対応することが肝心です。
そのためには,周りにすぐに相談できる人を何人もおいておくことが大事です(家族,友人,職場,弁護士,警察等種類を分けた方がよいと思います。ただ,プロへの相談はある程度煮詰まらないと,自分でやってみては,とか,無視しておけば大丈夫です,とか相手にされないことが多いので,注意。)。


もし逮捕されたら(当番弁護士と被疑者国選弁護の制度)

2007年11月10日 | ⑤法律問題について
もし自分自身や家族や友人が警察や検察等に逮捕・勾留されたら,どうしますか?

私は,弁護士なって,多くの人が「当番弁護士」の存在を知らないことを知って,びっくりしているのですが,とにかく,逮捕されたときは,まず「当番弁護士」の出動要請か知っている弁護士を呼びましょう。

当番弁護士は,弁護士会がボランティアでやっている制度で,最寄りの弁護士が当番で来ることになっていて,初回無料で呼ぶことができます。

弁護士が来たら,まず自分が逮捕されたことについての悩みを相談しましょう。
自分は無実であるとか,家族や仕事をどうしたらいいか,いつ出られるとか,いろいろ悩みはあると思います。
そして,弁護士をつける必要があると思えば,弁護人をつければいいと思います。

弁護人は,捕まっている人の依頼にしたがって,無実を証明したり,被害者と示談したり,罪を軽くしたり,起訴猶予にしたり,早く出られるように動いたりします。
もちろん弁護士も神様ではないので,黒を白にしたりすることはできませんし,短い間に思うような成果を上げられるとは限りませんが,その点は,見通しを聞いて,弁護人をつける意味があるかどうかを考えたらいいです。

弁護人を選任したいが,お金がなくて弁護人を選任できない人はどうするか。
被疑者国選弁護人をつけるか,法律扶助で弁護人をつけるしかありません。

被疑者国選弁護人は,現在では,死刑,無期懲役・禁固,短期1年以上の懲役・禁固の罪(比較的重い犯罪だけ)でないとつけられません。
※短期1年とは,刑罰法規で,例えば「●年以上■年以下の懲役」とある場合の「●年以上」の最低刑の方です。単に「■年以下の懲役」とある場合は,最低刑は1ヶ月以下と言うことになります。

ただし,平成21年4月からは,被疑者国選弁護人制度は,死刑,無期懲役・禁固,長期1年以上の懲役・禁固の罪まで広げられ,ほとんどの事件で可能になります。
※「長期」とは,上の例の「■年以下」の最高刑の方です。

法律扶助は,刑事の被疑者段階でやっているかどうかは,弁護士会によって違うと思うので,弁護士に聞いてみましょう。ただ,弁護士は法律扶助で事件を受ける義務がないので,当番弁護士で来た弁護士がそれで事件を受けてくれるとは限りませんので,ご注意を。

とりあえず平成21年4年までは,短期1年以上の重い犯罪を疑われている人か,お金がある人か(親族や友人や職場が出してくれる場合も),法律扶助でやってくれる弁護人を見つけられた人でないと,被疑者段階で弁護人をつけることができません。
結局は,どの事件でも同じですが,弁護士をつけるメリットが弁護士費用を払っても得たいものかどうかで弁護士をつけるかどうか決めるほかないです。

まあとにかく逮捕されることをしないように犯罪を犯さないよう,また,犯罪を犯したと疑われないよう気をつけていただきたいと思います(特に,痴漢事件。なるべく,乗り物で女性と接触しないよう,痴漢と疑われない位置に手を置くように。)。

あと,当番弁護士を呼んで,弁護士をつける必要があるときでも,ないときでも,そして,私選弁護人を頼むつもりはなくても,とりあえず意味がわからなくても「私選弁護人選任申出」をしておいた方がいいです(大概は当番弁護士の方から,「私選弁護人選任申出をするように言われます。」)。

「私選弁護人選任申出」をすると,弁護士と報酬等の条件さえがあえば,弁護士をそのままつけることになりますが,条件が合わなくても(最初から私選で弁護人を選任する意思がなくても),この申出さえしておけば起訴前の重大事件(平成21年3月まで)については,被疑者国選弁護人がつきますし,そうでなくても,将来起訴されたときの,国選弁護人の選任手続がスムーズに進みます。

この記事をまとめますと,よくわからなければ,とりあえず,①「当番弁護士」警察や弁護士会にを呼ぶこと,そして,②私選弁護人選任申出をすることが大事です。
私選弁護人選任申出の後も,別にその弁護士に高い弁護士費用で私選で依頼しなければならない義務はないですので,安心して「私選弁護人選任申出」をしたらいいと思います。


ワンクリック詐欺の最終報告

2007年07月21日 | ⑤法律問題について
私が引っかかったワンクリック詐欺ですが,結局その後何のアクションもなくなりました。
現時点において,ワンクリック詐欺に引っかかっても,あわてず騒がず,無視をしていれば,大したことはないということがわかりました。

結局,不当請求に対する対応手段とは以下のとおりまとめられると思います。

①原則無視する。但し,裁判所からの特別送達(書留)があったときは無視をしてはいけない。
②裁判所からの特別送達があっても,あわてず相手にすぐに連絡はせず,市役所や弁護士会等の法律相談に行ってから,連絡するかどうか決める。
③間違って,連絡してしまって,相手から金銭要求を受けても,無視する。
④無視した結果,相手から執拗に請求されたり,嫌がらせや,脅迫じみたことを言われたときは,警察や弁護士に相談する。

という感じでしょうか。

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ワンクリック詐欺の中間報告

2007年06月20日 | ⑤法律問題について
以前,ブログで書きましたワンクリック詐欺(不当請求)について,これまでの経過をご報告します。

私のIPアドレス等の情報付きの不当な番組料金99450円の請求は,毎日2~4通来ました(11日間で30通)。

最初は無視していたのですが,あまりにもうっとうしいので,請求開始から11日目に受信拒否にしてしまいました。

その後,ワンクリックしてから30日(不当請求が来だしてから15日)経つと,正規の料金と延滞料の請求が来て,請求内容が変わることを思い出し,その変化はやはり見届けないとダメと思い直し,受信拒否を解除しました。
しかし,その後一切のメールが来なくなりました。

ちょっと!ちょっとちょっと!!諦め早すぎますよ!!!
ブログを見たのですか?
諦めてくれなくてもどうせ支払いませんけど,全く何もなくなるのは少し寂しすぎますよ。

ただ,
まだ受信拒否してから5日くらしか経ってませんし,まだワンクリックしてから30日も経ってないので,30日経過すればもしかすると新しい請求をしてくれるのではないかと,しようもない無意味な期待をしています。

あれだけ不当請求メールをうっとうしがっていたのに,人間ってゲンキンなものですね。

まだ一件落着かどうかわかりませんが,また,30日目を経過してしばらくしたら,最終報告をしようと思います(思わぬ宣戦布告があってまた途中報告になってしまったら,みなさん笑って下さい。)。

結局,噂どおり,不当請求者は,ワンクリックした人のメルアドやIPアドレスしかしらず,びびってその他の個人情報(氏名,住所,電話番号等)を教えさえしなければ,請求メールや脅迫メールを送る以外何もできないのでしょうかね。
ちなみに,私の所には脅迫メールは来てなかったです(でも普通の人が読むと脅迫と感じるかも知れませんけど)。

少しはワンクリック詐欺に困っている方にとって参考になったでしょうか。

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ワンクリック詐欺?!(架空請求,不当請求)について

2007年06月05日 | ⑤法律問題について
よく私のメルアド(deppa@mail.goo.ne.jp)に迷惑メールが来ます。

大概は無視して開きもせずすぐ消去するのですが,この前なんとなくメールを開いてしまいました。内容はアダルトサイトの案内。特に,有料であるとの記載もなかったので,なんとなく興味がわいて見てやろうと思って,サイトを立ち上げました。
立ち上がったサイトに「入り口」というところがあったので,それもクリックすると,なにやら怪しい感じのものがダウンロードでされ,あわててサイトの中を見ると,クリックにより入会済みであること,入会金はキャンペーン中のサービス価格9万円強を支払え,支払わないと正規の値段と延滞料を請求すること,それでも支払わないと支払督促の手続を取るということが書かれていました。
あわてて,「入り口」のあったページに戻ってよく見てみると,スクロールした下の方に,入会すると入会金が発生すること,入会はそれを同意した上でクリックすることで行われることが書いてありました。

あちゃーと思っていたのですが,これはよく巷で言われているワンクリック詐欺かと思い,「架空請求・不当請求対策のプロの弁護士に架空請求できるもんならやってみろ,ええ度胸やないかい!」と思い直しました。
私は,当然入会もした意思もなくクリックしただけなので,そもそも入会の意思表示もしてませんし,仮にしていたと言っても錯誤(民法95条*)ですし,私の重大な過失もないので(普通クリックしただけで9万円払わないといけないと思わない。),私の入会自体は法律上無効なわけです。
(なお,重大な過失があったのではご心配な方も,電子消費者契約及び電子承諾通知に関する民法の特例に関する法律(いわゆる「電子消費者契約法」)第3条*でほとんどの場合無効主張できますので,ご安心下さい。)

といってもわざわざそんな詐欺のために「無効ですよ。」というメールをするのもバカらしいし,寝た子を起こすようなことをすると面倒なので,当然のように無視を決め込みました。

無視して15日たったところで,相手さんから早速9万円強を支払えというメールが来ました。
弁護士に不当請求とはいい度胸だと思い,冷やかしに電話してやろうと思いましたが,これをするとやはり寝た子を起こすことになるし,事務所に迷惑かかるかなと思い,やはりやめました。
どうせ引っかかっている人は,世の中五万といるし,15日たったら機械的にメールが送られるようになっているだけだろうし,どうせびびって電話してきた人だけ脅そうという腹なんでしょうね。

今後これがどうなることか,相手の出方が楽しみです。追い込みかけてきたら,事務所には多少迷惑をかけるかもしれませんが,返り討ちにしてやろうと思っています。

相手のメールには30日たったら,正規の入会金と延滞料の支払請求すると書いてあったので,おそらく次に相手からメール来るのは15日後くらいでしょうかね。
どんなメールが来るか楽しみです。

また,ブログで経過を報告したいと思います。
(まさか相手さん,このブログ見てないよな。もしご覧になっておられましたら,私はどんなに脅しても迷惑行為をしても絶対に支払いませんので,どうか諦めて下さい。時間の無駄ですし,やぶ蛇になるリスクもあると思います。お互いのために諦めた方がいいですよ。)

皆さんも,興味本位で迷惑メールを開くのはやめましょう。
あと,不当な請求が来ても,あまり慌てふためかず無視しましょう。相手に連絡すると,そこで始めてターゲットにされるだけです。
仮に間違ってターゲットにされても,相手には殺されても絶対に支払わないという固い決意をしめしましょう。まさか数十万円のために相手も人は殺しません。相手は楽して金儲けしたいのでやっているだけです。楽でないことと,儲からないということを早めに教えてあげましょう。その上で弁護士に相談する。
無視を続ける場合の注意点は,裁判所から訴状と支払督促が来たときだけは,無視してはダメです。ただ,そのときもすぐに相手に直接連絡をしてはダメです。偽物の訴状や支払督促の可能性がありますので。まず弁護士等に相談に行って,本物かどうか聞くべきです。
このくらいの弁護士への相談は,最寄りの市町村*弁護士会*法テラス*の法律相談で簡単にできます。
とにかく皆さん気をつけましょう。

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自分でできる少額訴訟

2007年05月20日 | ⑤法律問題について
雇主が給料を払ってくれない。
貸したお金を返してくれない。
怪我をさせられたが,病院代や慰謝料等損害賠償金を払ってくれない。
物を売ったが,売買代金を払ってくれない。
借家を退去したが,家主が敷金をほとんど返してくれない。
などなど,金銭トラブルは世の中にたくさんあります。

しかし,その回収を弁護士に依頼したくても,請求額が60万円以下の場合,
弁護士費用が高くついて弁護士を雇うのがもったいないとか,
逆に,弁護士の方が安すぎを理由に依頼を受けてくれないとか,
どうしたらいいかわからないときがあります。

そういうときに比較的簡単に最寄り簡易裁判所に「少額訴訟」というものがおこせます。
裁判所の解説1*裁判所の解説2*をご参照下さい。


この裁判のいいところは,まず,
裁判が1回で終わることです。
裁判所は平日の日中にしか原則裁判しないので,何回も裁判所に行くのは正直しんどいです。
しかし,この訴訟は,原則として1回の期日で審理を終え判決が出ます(民事訴訟法370条1項,374条1項)。
このメリットは訴える側としては大きいです。


その他の少額訴訟のいいところは(これは簡易裁判所の手続全部に共通ですが),
自分の請求の具体的な理由である「請求の原因」という欄に書くことが,「紛争の要点」で足りるということです(民事訴訟法272条)。
つまり,弁護士という専門家に頼らなくても,訴状が簡単に書けるということです。
「請求の原因」を正確に書くには,法律についての専門的な知識が必要になりますが,簡易裁判所の訴訟手続では,そのような専門知識は必要なく,紛争の要点,つまり,なんで自分が相手に対してそういう請求をするのかを簡単に書けばいいのです。
所定の欄だけきちんと埋めれば,あとは気軽な気持ちで書きましょう。足りないところは裁判所が補充してくれます。

訴状は,以下のサイトで自分の請求内容にあったものをダウンロードしてプリントアウトして入手して下さい。
訴状記載例&ダウンロード*

訴訟の書き方は,
1枚目の「原告(申立人)」という欄に,自分の住所氏名その他連絡先を書き,自分の判子を押し(認め印でOK,シャチハタはダメ。副本を作るためコピーするので捺印はコピー取った後でしましょう。),
1枚目の「被告(相手方)」という欄に,相手の住所氏名その他連絡先を書き,
2枚目の「請求の趣旨」という欄に請求する金額を書き,「(□及び仮執行の宣言)」というところの□にチェックを入れ,
2枚目の「紛争の要点(請求の原因)」という欄に,書くよう指定された各事項を埋め,
2枚目の「添付書類」という欄に持っている証拠書類や必要な書類の書類を書き(例えば,借用書,陳述書,領収書,「●●」と題する書面etc),
1枚目の一番上の「□少額訴訟による審理及び判決を求めます。本年,この裁判所に少額訴訟による審理及び裁判を求める回数は    回目です。」というところの□のところにチェックを入れ,少額訴訟をする回数を入れ,その下の「簡易裁判所」というところの前に,訴状を出す裁判所の名前を書き,その次に訴状を出す日の年月日を書けば,
簡単にできあがりです。


少額訴訟の注意点は,以下のとおりです。
・相手方が少額訴訟が嫌だと異議が出れば,通常の簡易裁判所の手続に移行し,原則1回で終わるというルールがなくなったりします(ただし,相手の負担もそれだけ増えるので,特に1回で終わらせたくない事情がないと異議は出されないでしょう。)。
・1回で終わるので,裁判の日までに,証拠書類や証拠物や証人を用意しないといけません。
・少額訴訟は,同じ裁判所に年間10回までです。


訴状を提出するのに必要なものは,
・訴状の副本(訴状をコピーをしたものに,「原告(申立人)」欄の所定の場所に判子を押して作成します。)を相手の人数分
・相手方が法人の場合は,その法人の商業登記簿謄本(法務局で入手します。)
・証拠書類があればその証拠書類
・収入印紙(請求額による。請求額の10万円未満を切り上げて,10万円毎に1000円分かかる。例えば,請求額が50万1000円なら,60万円に切り上げて6000円分の収入印紙が必要。)
・郵便切手を数千円分(裁判所によっても額が違いますし,相手方の人数によっても額が変わってきますので,最寄りの裁判所に電話して,相手方の人数を言って,必要な郵便切手の内訳を問い合わせましょう。)
です。

訴状の書き方等わからないときは,市役所や法テラスの無料相談で弁護士に相談し,訴状提出の書類がわからないときは,最寄の簡易裁判所の書記官に聞くなどして,頑張ってみてください。

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離婚等の際の年金分割制度がもうすぐ始まります

2007年03月17日 | ⑤法律問題について
この4月から離婚等の際の年金分割制度がスタートします。
世の男性,特に定年退職を迎える,団塊の多くの企業戦士だった方(奥さんより収入の多い人)は,恐怖のどん底に叩き落とされることでしょう。
そんな多くの男性方々の恐怖は置いておいて,この制度について説明しようと思います。


まず,これは,平成19年以後に離婚(婚姻の取消や内縁関係の解消をする場合も含む。)する場合のみに適用されます。
そして,分割の対象となるのは,厚生年金や共済年金のみ(いわゆる2階部分といわれるところ。以下「厚生年金等」といいます。)で,国民年金(基礎年金)(いわゆる1階部分),国民年金基金や厚生年金基金や企業年金などの3階部分は対象になりません。
つまり,夫婦の一方又は双方が厚生年金や共済年金加入者(いわゆる第2号被保険者)でないと全く関係ない話になります(厚生年金に加入している企業に働いているか,公務員等)。
また,内縁関係(入籍はしていないが,事実上夫婦生活をしている場合。同棲とは異なる。)の場合は,内縁の配偶者が,第3号被保険者(社保において被扶養者となっている場合)に限られます。


ここが一番誤解が多いところかと思いますが,分割されるのは,年金を受ける権利ではなく,夫婦双方の婚姻期間中の保険料納付記録です。

保険料納付記録とは,厚生年金保険料の算定の基礎となった標準報酬(標準報酬月額と標準賞与額)のことを言います。
わかりやすくいうと(正確な表現とはいえませんが),婚姻期間中夫婦双方で支払ってきたどれだけ厚生年金支払ってきたかということです(厚生年金受給額の算定の基礎になるもの)。
これを分割するということになります。
したがって,当然に,相手方もらっている年金又は将来もらえる年金の半分がもらえるようになるわけではありません。

したがって,相手が既に年金を受けていても,自分が年金をもらえる年になってなければ年金はもらえませんし,厚生年金等の受給資格には影響ありません(厚生年金等がもらえるだけの年数の計算には関係なく,もらえる総額が増えるだけ。)。

また,内縁関係の場合は,配偶者が第3号被保険者(扶養)になっている期間の記録しか分割されません。

内縁関係の後,入籍した場合は,入籍後の全期間が年金分割の対象になることはもちろんですが,内縁関係の間に扶養に入っていた期間も分割の対象になります。

逆に,戸籍上夫婦になっていた後,戸籍上離婚して,内縁関係になった場合には,戸籍上の離婚の際に,一度きちんと年金分割しないと,内縁関係を解消した際,戸籍上の婚姻関係の際の年金分割はできなくなるので,注意が必要です。


年金分割の手続については,まず,①分割の割合(「按分割合」)をいくらにするかを決める手続をして,その後,②最寄りの社会保険事務所に,実際に年金分割請求手続をしないといけないという,2段階の手続が必要です。

①の按分割合は,夫婦間の協議で決めることもできますし(その場合は公証役場に行って,公正証書を作成しないといけません。),それができないなら,裁判手続(年金分割調停・年金分割審判・離婚訴訟)で決めることになります。
裁判手続は,離婚の調停・訴訟と同時にもできますし,離婚後に離婚とは別個に調停・審判ですることができます。

②については,原則,離婚(内縁関係の解消,婚姻の取消も含む)成立した日の翌月から2年以内にしないといけません(つまり,平成19年4月1日に離婚が成立したときは,平成21年4月1日までは社会保険事務所に年金分割請求ができます。)。
但し,裁判手続により按分割合を決めたときは,離婚から2年が経過していても,その調停・和解が成立した日又は,審判・判決が確定した日の翌日から1ヶ月が経過するまでは,年金分割請求ができます(つまり,平成20年1月1日に調停がが成立したときは,平成20年2月1日までOK。ちなみに,平成21年1月29日から31日の間に調停が成立したときは,平成21年2月28日までしか請求できません。)。

だから,年金分割の按分割合が決まったからと言って安心して,社会保険事務所に実際に分割請求をしないとすべてが徒労に終わるので注意する必要があります。

また,①,②の前提として,必要な情報(分割の対象となる期間,分割の対象となる期間に係る離婚当事者それぞれの保険料納付記録,按分割合の範囲等)の提供を社会保険庁に請求することができます(既にこの制度は昨年10月より開始してます。)


詳しくは,社会保険庁のHPである程度わかりやすく解説してますので,これをご参照頂くか(解説*Q&A*),最寄りの社会保険事務所*,弁護士(弁護士会*),弁護士検索*),社会保険労務士(社労士)(全国社会保険労務士会連合会HP*)に問い合わせるといいと思います。

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サラクレ無料相談

2007年03月04日 | ⑤法律問題について
私の所属している弁護士会で今年の1月から,いわゆるサラクレ事件,個人でサラ金(今は消費者金融と言っているらしい)とクレジットの支払に困っている人ための無料相談を始めました。

司法書士等が同じようなことをやっていて,依頼者を食われるからいうのが本音らしいです。
まあ依頼者を取られるお金の問題だけではなく,司法書士の申立事件でいい加減な事件が比較的たくさんあって,破産管財人が苦労するのも困るというのもあるらしいですが。
とはいえ,うちの弁護士会の中では比較的司法書士の先生方が頑張っておられるらしく,簡単な案件は司法書士のほうがいいかもしれませんが,やはりややこしい案件は弁護士に頼まないとしんどいというのはあるんでしょうね。

先日,私はこのサラクレ無料相談に行ってきたのですが,相談者のひとりがおっしゃるにはTVコマーシャルを見て来たとか。
本当がどうかはよくわかりませんが,とうとう弁護士会もTVコマーシャルをするようになったのですね。
せっかく作ったいい制度を広く世間に知ってもらいたいというのはいい感じと思いますが,もっと知ってもらった方がいいこといっぱいあるやろと思うのですが,組織というのはお金の問題から動くのでしょうかね。

このサラクレ無料相談は,弁護士もボランティアで行くので,同じ弁護士会所属の弁護士には人気はなく,約月イチで順番が回ってきます。

私は,このようなボランティアも弁護士の仕事の一部かなと思いつつ行ったのですが,TVコマーシャルのせいか,弁護士にとってはいい事件ばかりでびっくりしました。
サラクレ事件で弁護士にとっていい事件と言ったら,少し前にこのブログで紹介しました「過払金返還請求事件」です。
これは弁護士や司法書士がやるとほぼ100%勝てて,依頼者にお金が返って来るというものです。
依頼者の方には,借金がなくなるだけでなく,お金まで返ってくるというので,とても感謝されますし,弁護士も楽に勝て,弁護士費用自体も過払金で十分すぎるほどまかなえるので,とてもありがたい事件です。

ちなみに,相談者のおひとりから聞くには,相談者が個人で貸金業者に請求しても業者はなかなか受け付けてくれないそうです。
その相談者は一人で取り返せず弁護士費用を取られることを非常に悔しがっていて,結局弁護士費用をかなり値切られました。
この方が自分で取引の履歴を取ってきており,こちらが貸金業者から取る手間が省けたので,私は特別に少し値切りに応じました。

過払金は,25%以上で貸しているところで,だいたい平成8年か9年ころから借りてほとんど遅れずに返している人に発生することが多いです。

私が行ったサラクレ無料相談では,6件中5件が過払金が少なくとも一部は発生している事件で,その5件すべて受任して帰りました。
しかも,そのうち1件は,昭和の時代から借り続けていて,取引履歴を計算し直すと,なんと過払金が1000万円超えちゃいました(ここまで多額になることはとても珍しいですが)。
おいおいどんな借り方と返し方してたんや。
ほとんどこの20年間,サラ金のために生きていたということやないかい。
ほんま可哀想なことでしたが,弁護士を依頼してその努力が少しは返ってくることになりますね。
まだ依頼者には報告していないけど,報告したらきっと大喜びされるのではないでしょうか。
早く依頼者の喜ぶ顔が見たい!!

うちの地域ではほとんどこういう事件は解決済みだと思っていたのですが,意外に埋もれているものですね。
TVコマーシャルのおかげで,こういう事件がたくさん埋もれていることがよくわかりました。

過疎地ではこういう事件がたくさん埋もれているらしいです。
田舎の人はサラ金から借金していることが人に知れると恥だと思っている人が多く,人知れず苦労して払い続けているそうです。
これはサラクレ相談だけでなく,他の事件でもたくさんの人が泣き寝入りして我慢し続けているということを示しています。

法テラスやひまわり公設事務所が全国津々浦々まで浸透し,弁護士過疎が本当の意味でなくなったこういう泣き寝入りする人が少なくなるのでしょうかね。

逆にいうと,現在就職で困っている修習生は,弁護士過疎地にはいくらでも事件が埋もれている可能性が大なので,是非積極的に弁護士過疎地に行かれてはいかがでしょうか。
当初は,こういう過払事件ばかりに負われるかもしれませんが,それはそれでいいかせぎになるので今後の貯蓄になるでしょうし,その他一般事件についてもたくさんあるでしょうから,きちんと勉強さえし続ければ,都市に戻ってきても弁護士として十分通用するはずです。

私は結婚していたので,地元を離れることはできなくて,過疎地には行けませんでしたが,若い人なら数年行って戻ってくることもできるはずです。

是非これから法曹を目指す若い人たちには,企業法務や渉外だけでなく,過疎地や本当に困っている人のために働ける仕事にも目を向けて行ってほしいものです。

中途半端な町の弁護士をやっている私には,数年過疎地に行くのはとても魅力的な感じがします。

また,10年以上高い利息を払い続けている人は,是非法律事務所(弁護士の事務所)の門をたたいてほしいと思います。
借金苦から逃れられるだけでなく,運がよければお金が返ってくる可能性がありますので(10年以上借入れしてない人も弁護士に依頼すれば借金を大幅に減らすことができる可能性が高いです。)。

ちなみに私個人もサラクレ相談は無料でやっておりますので,10年以上とはいわずお困りの方は,気軽に相談下さい。
しかるべきアドバイスまたは事件処理をさせて頂きます。
くわしくは,deppa@mail.goo.ne.jp までメール下さい。

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