愛のゼフィルス(PART 1)
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新盆で実家に
投稿日時: 2008/8/15 8:36 (ロンドン時間)
日本時間: 8月15日 午後4時36分
バンクーバー時間: 8月15日 午前0時36分
はい デンマンさん アツイよー
ここは タイ か バンコクか!
新盆で叔母さんが来るというので、実家にいったまま
結局 泊まってしまいました。
ん。。。?新盆?
聞いたことはあるけれど、意味が良く分からないなぁ~
“新しい盆”って、どういうこと?
辞書を引けば分かるよね。
調べてみますゥ。
雷の後 とても 気持ちの良い風が入ってきて、
そう 私が使っていた 2階の部屋はとても
風通しがいいのです。
何だか 帰るのが おっくうになり うたた寝 してしまい、
南の方で花火の音がしていたような、どこだろう?
朝方 下の台所で音が聞こえたけど だれもイナイ。
まだ 父と母が暮らしていて 私たちの為に おにぎりでも
作ってくれてる 錯覚をします。
うん、うん、うん。。。
実家は懐かしいでしょうね。
小さい頃の思い出が一杯詰まっているからね。。。
小百合さんは、優しかった“ばー(おばあさん)”の事も
思い出すのでしょう?
今夜から また 軽井沢にいきます。
明日は矢ケ崎公園の花火です。
時間をつくりCAFE にいってみるね。
そこから、できたら返信します。
では また。。。
小百合より
『さまざまな愛』より
(2008年8月20日)
デンマンさん。。。 古いメールを持ち出してきましたわねぇ~。。。
いけませんか?
だってぇ~、4年以上も前ですわ。 ネットで4年と言えば一昔ですわァ。
一昔前のメールを持ち出してきたのには訳があるのですよ。
どのような。。。?
あのねぇ~、バンクーバー図書館から手塚治虫の『昆虫つれづれ草』を借りて読んだのですよ。
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赤枠で囲んである本ですか?
そうです。
その本がどうだと言うのですか?
手塚さんが昔を懐かしみながら画いた漫画が載ってるのです。
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この上の漫画ですか?
そうです。
この漫画が「愛のゼフィルス」なのですか?
いや。。。「愛のゼフィルス」というのは僕がこの記事に付けたタイトルで上の漫画のタイトルは、ただの「ゼフィルス(Zephyrus)」です。 もともと、昭和46年5月23日号の『週刊少年サンデー』に掲載された漫画なのですよ。
その漫画が『昆虫つれづれ草』に転載されているのですか?
そうです。 この『昆虫つれづれ草』という本は、手塚さんが中学生の時に作った本なのです。
中学生の時に手塚少年が自分で作った本なのですか?
そうです。 1942(昭和17)年、旧制北野中学校の2年生の時から本を作り始めたのです。
昭和17年と言えば太平洋戦争中ですわね。
その通りですよ。 本文と挿絵を手書きして、装填、製本まですべて自力で本を作り出したのですよ。 昆虫の精密写生などはプロのものかと見間違うほど素晴らしいできです。 初めの本は『動物の世界』という本だった。 次が『昆虫の世界』、そして3年生から4年生になる直前、3月のわずか1ヶ月間で『昆虫つれづれ草』を作った。 更に、そのあとで『研究雑話 春の蝶類』を完成させたのです。 でも、その後パッタリと本作りをやめてしまう。
どうしてですか?
他の手書きの本と合わせて復刻された、僕が借りた『昆虫つれづれ草』の中で、中学時代のクラスメイトの林久雄さんが次のように語ってます。
(昭和20年、終戦となり中学を卒業して進級してゆくのですが)
私は三高に、手塚くんは阪大の医専に進級します。
(略)手塚くんの進級先を聞いてビックリしたのを覚えています。
てっきり昆虫学者になるものと思いましたから。
私は結局その後、農学部に進むんですが、理科への興味を目覚めさせてくれたのは、今思うとやっぱり手塚くんです。
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高等学校に進んでからも何度か会いましたが、そのころの手塚くんは演劇に凝っていました。
「昆虫採集は?」と聞くと
「もうやめたよ」といっていました。
その後は、みなさんもご存じの漫画ですよね。
仲のよかった友達が有名になっていくのは、私の自慢でしたが、寂しい気持ちもありました。
生命の尊大さに気がついて生物を殺せなくなったのだと後年語っていましたが、その生命の尊大さに気がついたのは、戦争の中で多くの人が死んでいった状況を目の当たりにしたのも大きいでしょう。
でも、虫という小さな生命に触れたことも、彼の感受性を育てる大きな役割を果たしたのではないかと思います。
(デンマン注:読み易いように改行を加えました。
赤字はデンマンが強調。
イラストはデンマン・ライブラリーより)
235ページ 『昆虫つれづれ草』
著者: 手塚治虫
1997年4月20日 初版第4刷発行
発行所: 株式会社 小学館
ところで「ゼフィルス」って何ですか?
手塚さんが漫画の中で次のように書いてますよ。
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(zephyr2.jpg)
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(tezuka2.jpg)
。。。で、中学生時代のどんな思い出を画いているのですか?
ゼフィルスの中でいちばん知られているのはミドリシジミという蝶なのです。
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手塚さんが求めているのはミドリシジミの中でも更に珍しいウラジロミドリシジミだった。 その蝶を求めて野山を駆け巡った。 時には農家のオヤジさんに叱られる。
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。。。で、叱られて諦めてしまったのですか?
もちろん、諦めません。 そのうちウラジロミドリシジミを探して野山を駆け巡っていると奇妙な大人と出会う。
誰ですか?
後で判明するのだけれど、それは特高警察の刑事だった。
つまり、地下にもぐっている共産主義者などの思想犯を探している刑事ですわね。
そうです。
でも、人里から離れた野山に、どうして特高警察の刑事が居るのですか?
だから、手塚少年も不思議に思ったのですよ。 そのうち手塚少年は無口で病弱そうに見える少年と出会う。
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その無口で病弱な少年と言うのは誰なのですか?
実は病気で寝たきりのお姉さんと最近山の中に住むようになった。
二人きりですか?
そう。。。 隠れるように住んでいるから戸籍がなく、配給米ももらえないので、少年は近くの畑で芋を盗んだ。 そのために手塚少年は濡れ衣を着せられた。 それで、絶対に見つけてやると夜中に畑を見張っていて捕まえたのが、その少年だと言うわけですよ。
手塚少年は刑事に話さなかったのですか?
話さなかった。 その少年と寝たきりの姉さんが可哀想になって刑事に話すことができなかった。
それで、どうなったの?
やがて手塚少年は刑事と親しく口をきくようになった。 刑事は、丸1年間、このあたりで脱走兵を追っていることを打ち明けた。
脱走兵。。。? もしかして、その病弱の少年と寝たきりのお姉さんが関係しているのじゃない?
そうなんですよ。 実は、その寝たきりの姉さんと言うのは脱走兵の少尉で、「寝たきりの姉さん」に扮装していたのです。 その病弱の少年と言うのは男に化けた女だった。 つまり、その少尉の恋人だったのですよ。 「女恋しさに脱走するとは軍人精神も腐り果てた野郎だ!」と侮辱しながら刑事は少尉を逮捕する。
それで、その恋人の女性は。。。?
その女性も一緒に軍法会議に出廷させるために、連れ出されることになった。 やがて空襲が激しくなって、手塚少年が住んでいたあたりにも爆弾が投下された。 そして、そのときから30年が経って、手塚さんはかつての村に帰ってきたのですよ。。。
(すぐ下のページへ続く)