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ダンスとか。

イデビアン・クルー 『政治的』

2007-09-16 | ダンスとか
吉祥寺シアター、昼。
舞台が左右に割れてて、それぞれがオフィス風に蛍光灯で照らされ、ダンサーも会社員の格好で、社内の人間関係とかがモチーフ。これ一本だけ見たら、「政治的」っていってもこんなスケールの話かよと思ってしまうが、フレキシビリティ=純粋な非物質的労働力としての「芸能人」を扱った『補欠』の後ということを考えれば、むしろこれは労働と遊戯の境目がないような生政治的状況を映し出したヘヴィーな作品に思える。毎日会社に行き、ストレスをやり過ごしながら、ダンスをする。労働はもはやダンスみたいなものであり、ダンスは労働みたいなものである。だから最後の方で、舞台奥が開いて控え室みたいな空間が見えてしまう時、それは明らかにオフィスじゃなく、あくまでも「舞台裏」になっているのだろう。振付の量がとにかく多く、ただでさえ見るのが疲れるのに、奥行きのない狭い空間にぎっしりダンサーが詰め込まれ(クローズアップで見ることを要求される→視界は狭まる→舞台の面積は広く感じられる)、しかも左右バラバラに進行するため、全部が明瞭に現れていながら目はそれを捉え切れない、という単純な事態に動揺させられる。超細かいフレージングの一々が、音楽的な噛み応えのある動きになっていて、しかもそれをダンサーたちが思い思いに(あるいはそれぞれの水準で)踊っているため余計に目は急き立てられる。どんどん食え、ひたすら食え、とでも言わんばかりに投げつけられるこの過剰な「情報量」、いったい何なんだろう。床の斜面(左側は奥から手前に向かって低く、右側はその逆)はあまり機能しているように見えなかったが、それはそれでまた、あまりの情報量で筋覚(味)のディテールが飛んでしまったということかも。
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