浅草・アサヒアートスクエア。
▼鈴木生子(b.cl.) リール・クレスヴェル:春の祭典
Lyell Cresswell: Le Sucre du Printemps。原題をもじって『春の砂糖』というあまりイケてないタイトルのバスクラリネット×6、コントラバスクラリネット×3のための曲。そのうちバス五人分、コントラバス三人分を録音したものを流して演奏。要するにカラオケということだがそれにしてもいわゆる特殊奏法ばかりなのによく揃う。音楽はダンスよりも拍子がリジッドだとしても。曲とか演奏より、このカラオケということに強く惹かれた。人間と機械では何が違うのか、といえば、機械は決して待たないということだ。
▼『長い張り込み』('04、前田智弘監督)
渡米後のジョン・ウーをひたすら自己流で研究したみたいな学生映画風のアクション。ただもう銃を撃ちたい。
▼阿国社中´ 『亀寿神楽 冬の陣』
おくにしゃちゅうダッシュ。これはちょっと面白い。いわゆる民俗芸能マニアらしき女性二人による「創作神楽」で、子孫繁栄などを祈念する。一人が歌って、もう一人が面を着けて踊ったり客をいじったりするのだが、この屈託のなさはどこから来るのかといえば、それはおそらく自分たちや観客のためにやっているのではなく神様のためにやっているからなのではないかと思う。宗教なきところに宗教を、信仰なきところに信仰を捏造すること。あたかもそれがあるかのように振舞うだけで、何となく本当にあるかのような気がしてくる。
▼木原アルミ 『霊感パントマイム』
心霊現象をパントマイムでやる、という発想がまず素晴らしいと思う。なぜなら一般的にパントマイムとは実際にそこにないものをあるかのように演じるものであり、ところがここで扱われる対象は霊だの何だの、そもそも目に見えないものばかりなのだ。これほどまでに苛烈な批評性をパントマイムに持ち込んでいるというだけで彼女の表現者としての知性と野心は高く評価されるべきと思う。実際には何をやっているのか全くわからなかったのだが。結果は差し当たり問題ではない。
▼ポポル・ヴフ 『裏声』
前から見たいと思っていた関西のダンスカンパニー。構成・演出/徳毛洋子、振付/ポポル・ヴフ、出演/原和代、下津浦瑞希。サックスの演奏(舩橋陽)が付く。動かないポージングと、ゆっくりした動きの連なりというコントラストを見せたり、一方の動きを他方が追いかけてなぞったり、ズレたり、ということをしっかりした空間構成の中で展開していく。柔らかい音楽と、淡い色合いのワンピース、それと動きの質感などが調和して空間がトータルに立ち上がっている。動きは、キメキメなものではないが何度も反復されたり変奏されたりすることできちんと印象に残る。ダンサーたちそれぞれが「私は何でこう動いて次はここへ移動するのか」と考えずして結果的にそうなっていくような自然さ。寝ぼけているけど通い慣れた通学路なので道に迷うことのない子供のような。
▼鈴木生子(b.cl.) リール・クレスヴェル:春の祭典
Lyell Cresswell: Le Sucre du Printemps。原題をもじって『春の砂糖』というあまりイケてないタイトルのバスクラリネット×6、コントラバスクラリネット×3のための曲。そのうちバス五人分、コントラバス三人分を録音したものを流して演奏。要するにカラオケということだがそれにしてもいわゆる特殊奏法ばかりなのによく揃う。音楽はダンスよりも拍子がリジッドだとしても。曲とか演奏より、このカラオケということに強く惹かれた。人間と機械では何が違うのか、といえば、機械は決して待たないということだ。
▼『長い張り込み』('04、前田智弘監督)
渡米後のジョン・ウーをひたすら自己流で研究したみたいな学生映画風のアクション。ただもう銃を撃ちたい。
▼阿国社中´ 『亀寿神楽 冬の陣』
おくにしゃちゅうダッシュ。これはちょっと面白い。いわゆる民俗芸能マニアらしき女性二人による「創作神楽」で、子孫繁栄などを祈念する。一人が歌って、もう一人が面を着けて踊ったり客をいじったりするのだが、この屈託のなさはどこから来るのかといえば、それはおそらく自分たちや観客のためにやっているのではなく神様のためにやっているからなのではないかと思う。宗教なきところに宗教を、信仰なきところに信仰を捏造すること。あたかもそれがあるかのように振舞うだけで、何となく本当にあるかのような気がしてくる。
▼木原アルミ 『霊感パントマイム』
心霊現象をパントマイムでやる、という発想がまず素晴らしいと思う。なぜなら一般的にパントマイムとは実際にそこにないものをあるかのように演じるものであり、ところがここで扱われる対象は霊だの何だの、そもそも目に見えないものばかりなのだ。これほどまでに苛烈な批評性をパントマイムに持ち込んでいるというだけで彼女の表現者としての知性と野心は高く評価されるべきと思う。実際には何をやっているのか全くわからなかったのだが。結果は差し当たり問題ではない。
▼ポポル・ヴフ 『裏声』
前から見たいと思っていた関西のダンスカンパニー。構成・演出/徳毛洋子、振付/ポポル・ヴフ、出演/原和代、下津浦瑞希。サックスの演奏(舩橋陽)が付く。動かないポージングと、ゆっくりした動きの連なりというコントラストを見せたり、一方の動きを他方が追いかけてなぞったり、ズレたり、ということをしっかりした空間構成の中で展開していく。柔らかい音楽と、淡い色合いのワンピース、それと動きの質感などが調和して空間がトータルに立ち上がっている。動きは、キメキメなものではないが何度も反復されたり変奏されたりすることできちんと印象に残る。ダンサーたちそれぞれが「私は何でこう動いて次はここへ移動するのか」と考えずして結果的にそうなっていくような自然さ。寝ぼけているけど通い慣れた通学路なので道に迷うことのない子供のような。