徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

舌下免疫療法が“効きにくい”人がわかる検査の登場

2022年04月11日 06時29分14秒 | 小児科診療
2022年4月11日現在、
関東地方ではスギ花粉に代わってヒノキ花粉が飛散中です。
今月いっぱい〜GWまでは悩まされそうです。

現在の治療法は抗アレルギー薬内服+局所療法(点眼・点鼻)ですが、
体質を改善する舌下免疫療法も選択肢に入ります。

杉エキスを固めた錠剤を舌の下に含め、
1分間待ってから飲み込むだけ、
それを毎日数年間続ける治療法です。

当院でも数十人のお子さんが行い、恩恵を被っています。

その有効率は約8割で、
約2割が著効(薬が要らなくなる)、
約6割が有効(症状が軽くなり薬を減らせる)、
と説明しています。

残念ながら、残りの約2割は“無効”です。
数年間の努力が報われないのです。

しかし、効くか効かないかはやってみなければわかりません。
なので最初に「2割の方には効きませんよ」と念を押しておきます。

さて先日、
「舌下免疫療法が無効の人を鑑別できる」
というニュースが耳に入りました。

スギ花粉症「舌下免疫療法」の効果、遺伝子型で予測可能に 福井大など
福井大と筑波大などでつくる研究グループは五日、スギ花粉症の治療法「舌下免疫療法」の効果を患者ごとに判別できる遺伝子型を特定したと発表した。数千円程度の比較的安価な検査方法も確立し、臨床検査としての実用化を目指している。実現すれば、治療前に患者の血液や唾液から遺伝子型を調べることで、治療効果の出やすさを医師が説明できるようになる。 
・・・
研究グループは、免疫反応に関わるHLA遺伝子に着目。遺伝子型に個人差があるため、三重県の耳鼻咽喉科で舌下免疫療法を二年以上受けているスギ花粉症患者二百三人について、この遺伝子型と治療効果の関連性を調べた。その結果、スギによる花粉症で、舌下免疫療法が効きやすい患者と効きにくい患者を判別できる遺伝子型を発見した。
さらに、血液や唾液からDNAの特異的な塩基配列を調べることで、舌下免疫療法が効きにくい遺伝子型の有無を判別できる検査方法も確立。HLAの遺伝子型を調べるのに比べ、十分の一ほどの費用で済むという。

これは画期的です。
早く実用化してもらえると助かります。

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病院・医院の“待ち時間”再考

2022年04月09日 07時54分39秒 | 小児科診療
先日、当院の google map に、
「予約システムを利用しても待ち時間が長い」
という投書がありました。

病院・医院の待ち時間について、再考してみたいと思います。

実は私は総合病院の専門外来に通院する患者でもあります。
まずは患者側(待たせられる側)の視点から。

長年通院していますので、
主治医が何回か替わっています。

最初の主治医は中堅の専門医でした。
毎回、待ち時間は1時間程度。
まあ、こんなものと思っていました。

次の主治医は研修期間が終了したばかりの若手。
待ち時間は2-3時間と一番長かった・・・。
まあ、読書の時間と割り切って過ごしていました。

その理由は、単純に予約数がキャパを超えて多いこと。
なぜ多くなるかを察すると、
担当した入院患者が退院すると、
そのフォローでどんどん患者さんがたまっていきます。
赴任当初は少なかった予約数も、
1年経てばパンクしてしまう・・・
と私自身の勤務医経験から想像されます。

午前中最後の予約でも、順番がきて診察室に入るのは午後2時頃、
そこには疲れた表情の若手医師が座っています。
聞くと、
「このあとすぐに検査が入っていて昼食を取る時間もない」
とのこと。
なんだかかわいそうになり、
気を遣って早々と診察室をあとにする私。

あれ、身の上話は聞いたけど、診察してもらったっけ?

最後(現行)の主治医は肩書きのあるベテラン医師。
予約数を完璧にコントロールしているので、
待ち時間がほぼゼロ!
長年通院しているけど、こんなこと初めてです。

以上、病院専門外来の待ち時間の長さは、
その医師が抱えている患者数と予約枠との相対関係で左右される、
と感じています。


次に医師側(待たせる側)の視点から。
病院の専門外来と異なることは、
いろんな相談内容の患者さんが入り交じることです。

昨今の小児科開業医は大抵、予約システムを導入しています。
このシステムは大きく分けて2種類があります。
①時間予約
②順番予約

①は病院で普及している「午前あるいは午後何時何分頃」を決めるタイプ。
②は銀行窓口によくある順番の紙をもらって待つタイプ。

開業する際、どちらを採用するか迷いに迷いました。
結論として、私が選んだのは②の順番予約。
銀行と異なるのは、
・直接出向かなくてもスマホで順番が取れること、
・スマホで進行状況を確認できること
で、自分の順番が近くなったら医院に向かうイメージです。

その選択理由は・・・

・医師側・患者側双方が納得できる医療を目指したいので、混んでいるからといって端折ったり、短く切り上げることができない。
・アレルギー科を標榜しているので、その相談に来た患者さんは風邪の診療時間(5-10分)より長く(数十分)かかることが多い。

・・・のため、一人一人の診療時間が様々で一定せず、
①の時間予約ではクレームがたくさん来ることが予想されたからです。

一方②の順番予約は、順番だけ決めて「何時何分に診察します」という約束はありません。
こちらの方が自分の診療スタイルに合っていると判断しました。

ただ、「あと何分後くらい」という目安の時間は表示されますので、
それを見てのクレームは時々聞こえてきますが。

もし、待ち時間の長さを調節してクレームを減らすことを優先すると、
「今日は混んでいるので、その話はまた次回」
という診療になってしまいます。
すると、患者さん側に不満足感が生まれ、それがまたクレームになります。

「予約しているのに待ち時間が長い」と当院に投書した方は、
「今日は混んでいるので、その話はまた次回」を受け入れるでしょうか?
・・・おそらく受け入れられず、そちらを投書のネタにするのがオチでしょう。

そして、医師側の私にも
「ああ、今日のあの患者さん、あの説明をしなかったなあ」
と不満足感が残り、これもイヤなんです。

診療はスーパーのレジのようには捌けません。

一人一人、相談内容が異なりますし、
現在のコロナ禍では感染対策上、順番が前後することもあります。

医療行為は人間がやっている作業なので、
どうあがいても計算通りにはいきません。

開業して17年が経ちました。

予約システムについては、
時間にタイトに生活している方は①時間予約が向いており、
時間に余裕があり診療内容を重視したい方は②順番予約が向いている、
と感じています。

というわけで当院には、
「何時何分に見てもらわないと困る」
という患者さんは向いていません。
もし待ち時間が長くなっても待っていただける方には、
精一杯診療させていただきます。

昨日も、最後に診療した風邪患者さんは午後7時。
待ち時間が長くなり申し訳ありませんでした<(_ _)>。


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2022年春、新型コロナ感染の主役は小児へ

2022年04月03日 08時56分31秒 | 新型コロナ
テレビのニュースで繰り返し報道されていますが、
第6波はピークアウトしたものの減少曲線の傾きが鈍く、
感染の主役は小児に移行してきたことが明らかです。

この世代の特徴は「ワクチン未接種」であること。
そして「感染しても重症化しにくい」こと。

感染しても重症化しにくいため、
ワクチンを接種するモチベーションが高まらず、
子どもを持つ親は接種すべきか悩みに悩んでいます。

ウイルスがその結論が出るまで待ってくれるはずはなく、
感染拡大は止まりません。
現状のままでは、
3回目接種率がなかなか上がらないこと、
オミクロン株のBA1→ BA2への置き換わりも影響し、
GW頃には第7波の襲来が予測されています。

オミクロン株と小児に関する最近の記事から;

新型コロナ 新規感染者 半数が10代と20代 3回目接種率低い傾向
2022年4月2日:NHKより一部抜粋;
先月29日までの1週間に、新型コロナウイルスに新たに感染した人を年代別にみると、10代と20代の若者が全体のおよそ半数を占めていることが、厚生労働省のまとめで分かりました。一方、この世代の3回目ワクチンの接種率はほかの世代より低い傾向が続いていて、専門家は「若者は活動範囲が広く感染しやすい状況なので、入学や就職などに伴う新生活で感染リスクを点検するとともに、ワクチン接種も進めてほしい」と指摘しています。
・・・
増加した人数を年代別にみると、20代が全体の26%にあたる1万1578人で最も多く、次いで10代が23%の9938人と、10代と20代の若者で全体の半数近い49%を占めています。
これに対し、3回目ワクチンの接種率は政府が1日公表した集計では、全人口の41.5%となっています。
接種率を年代別に公表している東京都のデータでは、3月31日の時点で70代や80代以上は80%を超えていますが、20代は23.8%、12歳から19歳は5.8%などと若い年代の接種率が低い傾向が続いています。
・・・
3回目のワクチン接種については「若い世代の接種率は低いが、若者は飲食の機会が多かったり活動範囲が広かったりして特に感染しやすい状況にあるので、接種を進めてほしい」と話しています。

接種率の低さの理由として、
・危機意識が低い(小児・若者は重症化しない)
・強い副反応への不安
などが垣間見えます。

要は、他人のことはさておいて自分中心に考えるか、
身内や周囲の人々、ひいては社会全体のことに思いが及ぶか、
の違いなのでしょう。

では、小児はオミクロン株でも重症化しないのでしょうか。
アメリカでは小児の入院数云々の話が聞こえてきますが・・・
日本小児科学会が公表しているデータを紹介した記事を読むと、
全体として小児の重症化率に変化はなく低いままです。

小児におけるオミクロン株の特徴として、
・発熱率が高くなった。
・それに伴い熱性けいれん合併率も上昇した。
・症状で増えたのは咽頭痛、嘔気/嘔吐。
・重症化の代表である肺炎合併率は低いまま。
・味覚・嗅覚障害の合併はより少なくなった。
などを挙げています。


小児コロナ症例、重症化傾向に変化はあるのか
2022/03/22:日経メディカルより一部抜粋;
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の日本国内の小児例において、臨床症状と重症度の変遷が明らかになった。2020年2月から2021年7月の流行初期に40%ほどに認めた発熱は、オミクロン株流行期に入って80%に増加。また、肺炎の合併頻度は成人に比べて低率で推移し、デルタ株やオミクロン株の流行期でも大きな変動は認められなかった。日本小児科学会が実施しているレジストリ調査の結果で、2022年3月7日に中間報告・第3報として公開された。
・・・
 今回公表された中間報告・第3報は、臨床症状と重症度の変化に焦点を当てて解析している。調査対象は、2020年2月1日から2022年2月20日の間に、レジストリに登録された0~15歳の5129例。
 解析は、国内における主要な流行株をもとに、
(1)流行初期(2020年2月~2021年7月)
(2)デルタ株流行期 (2021年8月~12月)
(3)オミクロン流行期(2022年1月〜2月20日)
の3期に分類して行った。それぞれの症例数は、流行初期が1830例(55.2%)、デルタ流行期が1241例(24.2%)、オミクロン株流行期が1058例(20.6%)だった。
・・・
 オミクロン株流行期に入ってからの特徴は、発熱が倍増し、痙攣が熱性痙攣の好発年齢である1~4歳だけでなく、5~11歳の年長児においても増加している点だ。また、咽頭痛を訴える症例が増え、悪心・嘔吐も特に5~11歳において割合が増えていた。このうち、悪心・嘔吐のために「一部の患者においては補液や入院管理が必要となっていた」ことは懸念される。一方で、味覚・嗅覚障害はほとんど見られておらず、コロナに特徴的な症状が薄れていることには留意すべきだろう。
小児患者の重症化傾向は確認されなかった
 また、重症度では以下の4点が明らかになった。

(1)入院の割合は、流行初期 79.4%、デルタ株流行期53.4%、オミクロン株流行期28.6%と経時的に減少傾向を認めた。しかし、流行初期は隔離目的、経過観察目的などによる入院が含まれていた可能性が高いことから、「入院率で各流行期における重症度を評価することは困難」と結論している。なお、PICU入院率は、各流行時期で大きな変化を認めていない。
(2)酸素需要、呼吸・循環管理、抗ウイルス薬、抗体療法、ステロイド全身投与などの治療の実施は、デルタ株やオミクロン株などが流行した後も大きな変動は認めなかった。
(3)小児例における肺炎の合併は、流行初期に1.1%、デルタ株流行期に1.6%、オミクロン株流行期に1.3%だった。肺炎の合併は、成人と比較し低率であり、デルタ株やオミクロン株などの変異株流行においても変化は認めなかった。その他の合併症に関しても、デルタ株やオミクロン株などが流行した後も、それぞれの頻度に大きな変動は認めなかった。
(4)合併頻度は高くないものの、重篤な合併症である心筋炎・心外膜炎が、流行初期に0.2%、デルタ株流行期に0.1%に認めた。オミクロン株流行期には、今のところ認めていない。
 今回の報告は、対象症例の62.6%が入院例だった。また、レジストリに登録されているのは国内小児コロナ症例の0.5%に過ぎないことから、調査結果をまとめた日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会は「国内においてはレジストリに登録されていない軽症外来患者が多数存在する」と推定。「レジストリには比較的重症度が高い症例が登録されている可能性が想定される」としている。
 その上で同委員会は、比較的重症度が高い症例が登録されているレジストリにもかかわらず、「オミクロン株を含む変異株の流行による小児患者の重症化傾向は確認されなかった」と結論付けている。

アメリカからの情報もひとつあげておきます。
オミクロン株になってから小児の入院数が急増し、
小児科医の間で話題になっている「クループ症候群」の合併が問題視されています。

クループ症候群とは;
のどの奥の声帯がある辺りの炎症が強く、
赤く腫れ上がると声帯を変形させて声がかすれ、
犬が吠えるような(犬吠様)、オットセイのような、
のどの奥深くから出てくるような咳になる病態。
炎症によるむくみがひどければ呼吸困難に陥りますが、
ふつうの風邪では滅多にそこまで悪化しません。
春と秋にパラインフルエンザ・ウイルスによる発症が有名です。

ところがオミクロン株で5歳未満のワクチン未接種世代で発症すると、
重症化しやすく入院率が他のウイルスが原因の場合より高いと報告されています。
声帯より奥の下気道である肺炎の合併率は低いけど、
上気道が狙われているのですね。
その重症化率の高さを見ると、
やはり新型コロナウイルスはただ者ではないことがわかります。


乳幼児のオミクロン株感染、「クループ症候群」重症化の要因か 米研究
2022/03/26:Forbes JAPANより一部抜粋;
これまで子どもたちの大半は、新型コロナウイルス(SARS-CoV2)に感染しても軽症で済むとされてきた。だが、変異株のオミクロン株が流行の主流になったことにより、ここ数カ月は子どもの入院者数が急増しているという。
米疾病対策センター(CDC)のデータによると、米国ではオミクロン株の前に優勢となっていたデルタ株が中心だったころと比べ、新型コロナウイルス感染症(Covid-19)で入院する0~4歳の子どもの数が、およそ5倍にのぼっている。
そうしたなか、ボストン小児病院の研究者らが新たに発表した論文から、Covid-19にかかった子どもたちには、「クループ症候群」と診断される例が多くなっていたことが明らかになった。
クループ症候群は乳幼児に多い疾患で、犬の鳴き声のような咳(犬吠様咳嗽)と高音の雑音が混じる呼吸(吸気性喘鳴)が特徴だ。原因は呼吸器系ウイルスへの感染で、咽頭や気管、そして肺につながる気管支の周囲に腫れが生じる。
一般的には、クループ症候群は軽症で済むことが多く、Covid-19のパンデミック発生前には、入院が必要となる小児の患者は5%未満とされていた。
だが、新たに発表された研究結果によれば、Covid-19にかかった後にクループ症候群を発症した乳幼児の場合は、12%に入院治療が必要となっていた。さらに、その半数近くには集中治療室(ICU)での治療が必要だった。これらの子どもたちは全員が5歳未満で、SARS-CoV2のワクチン接種は受けていなかった。
研究チームがこの調査の対象期間としたのは、2020年3月~2022年1月だが、クループ症候群の患者のうち8割が、オミクロン株が主流になって以降に確認されていた。
・・・
SARS-CoV2に感染し、その後クループ症候群を発症した子どもたちは、ほぼ全員がステロイド系抗炎症薬「デキサメタゾン」による治療を受けていた。
また、クループ症候群の治療にはパンデミック発生前から、デキサメタゾンが一般的に使用されていた。Covid-19にかかり、その後クループ症候群を発症した子どもにはさらにエピネフリンも投与され、治療後は全員が回復し、退院している。

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