徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

2018年冬から、タミフルが10歳代にも使用できるようになりました。

2018年09月09日 14時42分39秒 | 小児科診療
 抗インフルエンザ薬服用後の異常行動が社会問題化し、タミフルが10歳代への投与禁忌とされたのが2007年。
 その後の調査で、タミフル以外の抗インフルエンザ薬使用患者にも見られ、さらには抗インフルエンザ薬未使用患者にも起こりえることが判明し、「果たして薬の副作用なんだろうか?」と議論されてきました。

 そして今回、検討の結果「処方の有無、種類にかかわらず、インフルエンザ罹患時には異常行動を発現する可能性があることが示唆された」として「リスクはゼロではないが、禁忌とするほど危険ではない」と判断し、添付文書上「警告」から「重要な基本的注意」レベルに変更されることになりました。


□ 厚労省 抗インフルエンザ薬タミフルの10代への投与認める 他の薬剤でも異常行動注意を
ミクスOnline2018年8月23日
 厚労省医薬・生活衛生局は8月21日、抗インフルエンザ薬タミフルについて、異常行動が現れることがあるため10代の患者への使用を差し控えるとする添付文書の記述を警告欄から削除するなどの添付文書の改訂を、日本製薬団体連合会に通知で指示した。この中ではタミフルほか他の抗インフルエンザ剤について、発熱から2日間は異常行動が起きうるため転落等の事故に対する防止対策を講じるよう家族らに説明することも盛り込む。タミフルの10代への原則投与禁止は2007年から続けられてきたが、今回、投与を認めることになった。
 同省はタミフルだけで異常行動が起こるとはいえないと判断した。しかし、これまでの研究報告や集計から他の抗インフルエンザウイルス薬を含め「処方の有無、種類にかかわらず、インフルエンザ罹患時には異常行動を発現する可能性があることが示唆された」として、他の抗インフルエンザ薬も異常行動を「重大な副作用」と位置付けるとともに、「重要な基本的注意」の項で、薬剤の服用の有無にかかわらず異常行動が現れることがあり、特に就学以降の小児・未成年者の男性で報告が多く、発熱から2日間以内の発現が多いことを明記し、患者・保護者に対策を講ずることを含めて説明することを求めた。
 薬食審・医薬品等安全対策部会安全対策調査会の報告書によると、ナショナルデータベース(NDB)を用いた2009年~16年までの処方患者100万人あたりの報告例数は、10代においては服用なしで8.0に対し、薬剤服用ありで4.4。その中でタミフルは6.5、リレンザ4.8、ラピアクタ36.5、イナビル3.7と、タミフルだけで異常行動が起こっているとはいえず、服用していない患者でも起きていた。

 改訂指示のあった製品は次のとおり(カッコ内は成分名、先発製造販売企業名)

・タミフルカプセル、ドライシロップ(オセルタミビルリン酸塩、中外製薬)他
・シンメトレル錠、細粒(アマンタジン塩酸塩、サンファーマ)他
・リレンザ(吸入薬)(ザナミビル水和物、グラクソ・スミスクライン)
・イナビル吸入粉末剤(ラニナミビルオクタン酸エステル水和物、第一三共)
・ゾフルーザ錠(バロキサビルマルボキシル、塩野義製薬)
・アビガン錠(ファビピラビル、富山化学)
・ラビアクタ点滴静注液(ペラミビル水和物、塩野義製薬)



 まあ、もともとインフルエンザは「高熱でうなされせん妄状態になる感染症」と認識されてきましたから、“抗インフルエンザ薬の副作用による異常行動”とマスコミが騒ぎはじめた当初、私を含めて医療者は薬のせいなのかどうか、決めつけるのはいかがなものか、と感じていました。
 しかし一旦“薬害”として有名になるとその勢いは止まらないのが日本の世論。
 そのほとぼりが冷めて、冷静に対処できるようになるまで10年以上かかりました。
 
 記事内の薬剤一覧を見て、ちょっと違和感を覚えました。
 「抗インフルエンザ薬」と一口に言っても、作用機序が異なるものが複数含まれています。

<ノイラミニダーゼ阻害薬>
 タミフル®、リレンザ®、イナビル®、ラピアクタ®
<M2蛋白阻害薬>
 シンメトレル®
<RNAポリメラーゼ阻害薬>
 アビガン®(まだ季節性インフルエンザには使えません)
<キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬>
 ゾフルーザ®

 これってヘンですよね。
 まだ臨床使用されていない・されて間もないゾフルーザ®とアビガン®はいい迷惑。

 まるで、2種類のHPVワクチンが内容も添加物も違うのに、一律危険と非難されているのと同じ空気を感じます。

<追記:2018.10.24>
朝日新聞にも同内容の記事が掲載されました。

■ インフル薬のタミフル、10代にも使ってOK なぜ?
2018年10月17日:朝日新聞デジタル

 アウルさん インフルエンザ治療薬(ちりょうやく)のタミフルって問題になっていたよね?

 A タミフルをのんだ中学生が建物から転落死するなどの異常行動が相次いだため、2007年から厚生労働省は10代への使用を原則、禁止してきたんだ。でも、その後、タミフルと異常行動との因果関係は明確ではないと判断した。今年8月、タミフルに添付(てんぷ)される文書の警告欄(らん)から「10歳(さい)以上の未成年の患者(かんじゃ)に、原則として使用を差し控(ひか)えること」が削除(さくじょ)されたよ。

 ア 異常行動はタミフルが原因じゃないんだね。

 A 厚労省研究班の分析(ぶんせき)では、09~16年の100万処方当たりの10代の異常行動の報告数は、タミフルを使った患者が6・5件だった。別のインフル治療薬でも同様に起きている。薬を使わない患者でも8・0件あったんだ。

 ア 薬と関係ないの?

 A 研究班の岡部信彦(おかべのぶひこ)代表は「インフルそのものでも異常行動は起こる可能性がある。特に小学生から中学生の男児に異常行動が出やすい」というよ。厚労省の専門家会議も「インフル治療薬の服用の有無や種類に関わらず、異常行動は発生する」としている。



 ア 薬は使ったほうがいいのかな?

 A インフル治療薬はウイルスの増殖(ぞうしょく)を防ぐけど、使わなくても自然に治ることが多いんだ。ただし、高熱が出る期間の短縮や重症(じゅうしょう)化の予防になるとして、幼児らに使うことが推奨(すいしょう)されている。今年3月からは1回のむだけでよい薬「ゾフルーザ」が販売(はんばい)され、注目されているけど、注意が必要なのは同じだよ。

 ア どう注意するの?

 A 特に小学1年から19歳までがかかった時、少なくとも2日間は家の外に飛び出さないよう玄関(げんかん)や窓のかぎをかけたり、ベランダに面していない部屋で寝(ね)かせたりするよう厚労省は呼びかけている。

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