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徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

卵アレルギーとインフルエンザワクチン、再確認

2014年09月30日 15時17分43秒 | 小児科診療
 よく話題になる「卵アレルギー患者にインフルエンザワクチンは接種可能か?」という疑問。
 結論から言うと「卵を食べたときにアナフィラキシーの危険がなければ可」となります。

 インフルエンザワクチンは鶏卵を使用して作られます。その後の製造過程で精製され、卵由来たんぱく成分はほとんど除去されますがゼロにはなりません。
 一方、重症の卵アレルギー患者では微量の卵成分が体に入ってもアナフィラキシー(前項参照)を起こすことがあります。
 実際に卵由来たんぱくを測定すると日本のインフルエンザワクチンでは数ng/mL以下、一方、アナフィラキシーを起こす量は600ng/接種量以上とされています。
 つまり、日本のワクチンは理論的には安全であり、注意喚起しているのは「念のため」あるいは「石橋を叩いて渡る」というわけです。

※ ちなみにアメリカのワクチンでは数百ng/mLと日本より含有量が多いそうです。アメリカでのルールは「ワクチン中の卵白アルブミン濃度が0.7μg/0.5mL以下を許容値としているが、アナフィラキシーを生じない安全な値は不明である。卵アレルギーの方ワクチン液によるプリックテストを実施し、分割接種する方法もあるが、プリックテストは精度が低い」とのこと。

 悩ましいのが「検査で卵アレルギーと診断され完全除去しているため、食べたときにどんな症状が出るかわからない」乳幼児。
 離乳食開始前の乳児期にアトピー性皮膚炎と診断され、食物アレルギーをチェックしたところ血液検査で卵陽性、ではしばらくの間除去しましょう、というパターンですね。
 おそらく食べても強いアレルギー反応は起こらないことがほとんどと思われますが、なにぶん食べたことがないので何が起こるか予測不能。「想定外」の現象まで考慮すると、安全とは言えません。

 このような例に対して、私は以下のように対応しています;
 1歳過ぎ→ 卵除去を解除するよう指導しています(ただしアナフィラキシー経験例は除く)。食べてもじんましんなどの皮膚症状だけの場合は、ふつうに接種しています。
 1歳前→ 除去解除にはまだ早いため、アナフィラキシーが起きても対応可能な病院レベルでの接種をお勧めし、紹介状を書いています。
 以前は皮膚テストを行っていましたが、この検査は偽陽性あるいは偽陰性反応を呈することが多く信頼性に欠けるため、やめてしまいました。

 なお、食物アレルギーとしての卵アレルギーのない漠然としたアレルギー体質(気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、じんましんなど)は接種不適当者にはなりません。
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