徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

抗インフルエンザ薬について、再確認

2016年02月04日 07時21分48秒 | 小児科診療
 当地ではインフルエンザ流行中(A型>B型)。
 抗インフルエンザ薬について最新情報を交えてお復習いしておきましょう。

 現在、使用可能な抗インフルエンザ薬は以下の通り(日経メディカル「抗インフルエンザ薬の使い分けと留意点」より);

<各ノイラミニターゼ阻害薬の概要 >



 小児科では・・・

 1歳から9歳まではタミフル®(幼児はドライシロップで、体重37.5kg以上ではカプセルも)。
 5歳以降は吸入剤(リレンザ®、イナビル®)を選択可能ですが、吸入力が弱いと効果が期待できないため、当院では小学生以上に処方しています。
 
 実際の処方は、
・幼児期はタミフル®ドライシロップ
・小学生以上はリレンザ®とイナビル®がタミフル®より多い
 といったところ。
 イナビル®は1回勝負なので、過去に吸入薬を使用した経験がない子どもにはリレンザ®を勧め、経験のある子どもにはイナビル®もOK、と説明しています。
 なお、1歳未満に使用が許可されている薬はありません。

 さて、その効果には差があるのでしょうか?

<迅速診断キットA型およびB型における解熱時間(2014/15シーズン)>


 
 A型よりもB型の方が解熱時間はやや長いが、A・B型ともに薬剤間での有効性の差は比較的小さい、という結果ですね。

 一方、ウイルス消失率と家庭内感染抑止力には微妙に差があるようです(日経メディカル「抗インフル薬選択に家族内感染防止という視点も」)。

 2013/14~2014/15シーズンにおける4~12歳の123例を対象に、ワクチン接種の有無、年齢を調整し4種類の抗インフルエンザ薬(オセルタミビル、ザナミビル、ペラミビル、ラニナミビル)に無作為に割付けた。診断はインフルエンザ迅速法で行い、患者から経時的に鼻汁を採取し、ウイルス力価(50%感染価:TCID50)を測定した。患者ごとに投与開始からウイルス消失までの時間を調べ、ウイルス消失の患者数の推移を4剤で比較検討した。

 ウイルス力価の推移を確認できた102例で、ウイルス消失までの時間を解析した結果、ペラミビル群では投薬開始の翌々日にウイルス消失の患者が80%を超えていた。同時点で、他の3剤ではウイルス消失の患者が40~60%に留まっていた

 一方、廣津氏は、生活を共にする家族内での感染者発生率についても研究している。上記の患者と年齢、罹患ウイルスなどの患者背景が同じ2014/15シーズンの4~12歳の感染者を対象とした家族内感染者の発生率を見たところ、全体では患者本人から感染する可能性のある1261人のうち122人に感染が確認された。

 これを抗インフルエンザ薬別に見たところ、ペラミビル群とザナミビル群の家族内感染率が7~8%だったのに対し、オセルタミビル群とラニナミビル群は12%程度と、前者の2剤の方が家族内の感染率が低下していた


 この報告によると、
・ウイルス消失率は、ペラミビル(ラピアクタ®)は他の3剤より高い。
・家族内感染率は、ペラミビル(ラピアクタ®)とザナミビル(リレンザ®)がオセルタミビル(タミフル®)とラニナミビル(イナビル®)より低い。

 となりますね。
 ただ、タミフル®ドライシロップを使用するのは主に幼児ですから、家族内の接触が濃厚であり、感染しやすい環境にあることを考慮すると・・・あまり差がないのかなあ。ラピアクタ®は点滴なので多用は無用(当院では受験生用と考えています)。あえて言えば、リレンザ®がベターでしょうか。
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