徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

小児のCOVID-19後遺症(2023年2月)

2023年02月23日 09時39分26秒 | 小児科診療
新型コロナ後遺症は、
「long-covid」と呼ばれることがありますが、
正式名称ではないようです。
ここでは「罹患後症状」と表記します。

小児科医院の現状では、
後遺症と思われる患者さんを数名経験しました。
・咽頭痛と倦怠感、食欲不振が半年続いた小学生
・咳が2か月続いた幼児
などが記憶に残っています。

こちらの動画「小児におけるコロナ後遺症の実際」(森内浩幸Dr.)を参考に紹介します。

シンプルにイメージすると、
新型コロナ乾癬の急性期が過ぎても症状が残ること、
となりますが、
言葉で定義しようとすると結構やっかいです。

▢ 海外における定義;
以下のような症状を子どもまたは若年者(17歳以下)が有する状態;
(少なくとも一つは身体的症状)
・COVID-19であることが検査によって確定診断された後に、
 継続して、または新たに出現した
・身体的、精神的、または社会的な健康に影響を与える
・日常生活に何らかの形で支障を来す
(例えば、学校、仕事、過程、人間関係など)
・COVID-19の診断が付いてから最低12週間持続する
(その間、症状の変動があっても良い)

・・・「最低12週間(つまり3ヶ月)持続」という定義があるのですね。

▢ 小児における罹患後症状の特徴
・成人の報告と比べると少ない
・小児でも罹患後症状を有する確率は対照群と比べるとやや高く、
 特に複数の症状を有する場合が多い
・症状の内訳は、嗅覚障害を除くと、対照群との間に大きな差はない
・小児では元々機能的身体症状を呈することが多く、COVID-19に罹患したストレスによって、さまざまな症状が出現する可能性がある
・COVID-19に罹患していなくても罹患後症状と似た変調を訴える小児が増加
 ⇩
小児の罹患後症状を単一の疾患概念として捉えることは困難

・・・「対照群との間に大きな差はない」ということは、コロナの後遺症ではないということ? それにHPVワクチン後遺症でも有名になった「機能的身体症状」がここでも登場し、「罹患していなくても似た変調を訴える小児が増加」したということは、「コロナ禍」という異常事態により社会現象化しているのかもしれません。

<追記>
(2023.6.20)
同じく森内浩幸先生のレクチャーで治療にも言及しているものを見つけましたので引用・抜粋します。

小児におけるCOVID-19~罹患後症状を中心に~

Q. 小児にかける罹患後症状診療のポイントは?
A. 本人と保護者から十分に話を聞き丁寧に身体診察を行う。基本的な検査を行い、症状に応じて体系的にアプローチする。
・心理社会的因子の関与が疑われる場合
 → 本人の性格や生育・生活環境などの背景因子も捉える
・基本的な検査で異常がなくても、器質的疾患を鑑別する必要があると判断した場合
 → 高次医療施設での精査を検討する
・心理社会的ストレスの影響が強く対応困難と判断された場合
 → 患者との関係性が構築された状況下で専門医への紹介を検討する。

Q. COVID-19感染後の小児で注意すべき疾患は?
A. MIS-C、けいれん、急性脳症などです。

1. 小児多系統炎症性症候群(MIS-C/PIMS)
・頻度:日本での報告数は約30例、死亡例0(2021年7月~2022年10月)
・経過:
✓COVID-19感染後2~6週目に高熱、下痢、嘔吐、腹痛などの消化器症状
✓前後して血圧低下、ショック、心不全を呈する
✓しばしば川崎病に類似した症状を伴う
・診断の注意点
✓重症胃腸炎や敗血症に伴うショックと診断されることもある。
✓COVID-19感染そのものは無症状の場合もあるため、
 感染既往のない場合も疑いの目を持つ必要がある。

2. けいれん
・オミクロン株流行期で増加傾向
・対応;
✓Dravet症候群など、けいれんが重積する例では入院加療
✓痙攣重積型脳症のリスクを下げるため、すみやかに止痙させる。

3. 急性脳症
・インフルエンザや突発性発疹に伴う急性脳症と同じく、発熱、けいれん、意識障害、異常行動などを認めるときは急性脳症を疑い、高次医療機関へ搬送する。

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