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徒然日記

街の小児科医のつれづれ日記です。

ノロウイルスが猛威を振るっています

2025年03月02日 06時45分12秒 | 小児科診療
2025年年明けからインフルエンザ、コロナウイルスに混ざって嘔吐下痢も流行しています。
今の嘔吐下痢(=ウイルス性胃腸炎)の主役はノロウイルスのようです。
食中毒による集団発生も報告されていますね。

嘔吐物や下痢便の中に多量のウイルスが含まれ、
それを十分に感染対策を取って処理しないと容易に感染します。

小児のウイルス性胃腸炎には「隔離期間」が設定されていません。
これは「感染の危険がない」のではなく、
「ヒトに感染させる期間が長いため設定できない」という裏事情からです。

乳幼児がウイルス性胃腸炎に罹ると、
回復までにロタでは1〜2週間、ノロでは数日かかります。
「下痢が止まったから治った」と思いがちですが、
ウイルスは腸の中にしばらく居すわり、
数週間は感染力を維持し続けるのです。

ですからもし「感染力がなくなるまで隔離」というルールを作ると、
「嘔吐下痢の園児・生徒は3週間休んでください」
となってしまいます。
元気になった子どもたちが家庭で数週間過ごすのはちょっと困りますよね。

というわけで、
「元気になったら感染対策をしながら集団生活に戻しましょう」
というところに落ちついているのです。

ノロウイルスに関する記事を紹介します。

▢ ノロウイルス猛威 低温・乾燥で1か月生存も…“トイレでスマホ”も要注意
2025年2月26日:TBSテレビ「ひるおび」)より一部抜粋(下線は私が引きました);

全国でノロウイルスの患者が急増しています。
スーパーで販売された生食用のカキにより37人が食中毒を起こしたほか、高齢者施設や学生寮など、さまざまな報告がなされています。
感染力が強く、身近なものにも潜むノロウイルス。特徴と感染防止対策を日本医科大学の北村義浩教授に聞きます。

▶ ノロウイルスによる食中毒 2月がピーク
年間の食中毒患者数のうちノロウイルスが原因のものは40.6%と、非常に多くを占めています。
さらに食中毒1件あたりの患者数は、他のウイルスなどの場合8.4人ほどですが、ノロウイルスの場合37.7人と大規模な食中毒が起こりやすいという特徴があります。

▶ 感染から発症まで:24時間~48時間
主な症状:吐き気、下痢、腹痛、軽度の発熱
持病のある人や乳幼児・高齢者などは脱水症状を起こしたり、症状が重くなるケースもあります。

Medical DOGより)

ノロウイルスを病因物質とする食中毒患者数(2023年)のデータを見ると、11月頃から増え始めて2月にピークを迎え3月頃まで続いており、今の時期はまさにかかりやすいと言えます。

▶ 「わずかな数が入れば発症」強い感染力
ノロウイルスの厄介な特徴として、
 ◆ 低温と乾燥に強い
 ◆ 感染力・生存力が強い
 ◆ アルコール消毒が効きにくい

ことが挙げられます。
気温10℃以下では約1か月、気温4℃では約1~2か月生存可能です。
日本医科大学の北村教授;
ノロウイルスは低温・乾燥した環境では感染力を強める。夏場よりも、冬場の方が危ない。
他のウイルスだと100匹、1000匹が体の中に同時に入らないと病気にはならないんですけど、ノロウイルスは5匹とか4匹とか本当にわずかな数が体内に入れば発症してしまう非常に厄介なウイルスですね。

▶ 主な感染経路はー
≪食事≫
・汚染されたカキなどの二枚貝を加熱調理せずに食べる
・ウイルスに感染した人が調理したものを食べる
≪手・指≫
・感染者のおう吐物などに触れてしまって指にウイルスが付着
・感染者が触れたトイレのドアノブやタオルに触れる
≪飛沫・空気感染≫
感染者の便やおう吐物が乾燥し、それが付着したホコリが空気中に漂い、吸い込むことで感染

日本医科大学 北村義浩教授:
特に吐いたものを適切に処理しないと、床やテーブルの上に見えなくても結構残っていて、乾燥してふわっと舞い上がったときにちょうどそこにいた人が吸い込んだりすると、4匹5匹入るだけで感染が成立するので危ないですね。
コメンテーター 水谷隼:
もう防ぎようがないじゃないですか。予防接種とか、免疫力を高める方法とか、何かないのかなって。
日本医科大学 北村義浩教授:
免疫を高めるワクチンは今開発中で、コロナのときに有名になった「モデルナ」という会社がノロウイルス対策のワクチンを去年の秋から3年ぐらいかけて世界中で治験をしようとしています。ですから、効果があれば3年後には我々の手元に届くと思うんですね。しかし今はない。
日本人だと大体生ガキを食べるということがリスクのある行為です。
加熱用として売っているものはやはりリスクがありますので、書かれているように十分加熱をして食べるということです。

▶ 冷蔵庫やPCのマウスで長期間生存
ノロウイルスは生存力が強く、長期間生存します。
 ▼電話の受話器・PCのマウス⇒約1週間
 ▼気温20℃ほどの乾燥した室内⇒約2週間
 ▼冷蔵庫内の食品(ノロウイルスを持ったカキなどが入っていた場合)⇒約2週間から1か月

▶ トイレでスマホを使用し、その後食事中にスマホを触っていませんか?
自分の前に感染者がトイレを使用していた場合、感染リスクが高まるおそれがあります。
スマホの表面にウイルスが付着する可能性がありますので、トイレでのスマホ利用は控え、スマホ自体もこまめにふき取ることが大事です。
恵俊彰:
アルコール消毒は効きにくいんですよね?
北村義浩教授:
アルコールで消毒するのではなく、拭って捨てるということですね。
「トイレに入ったら手を洗う」「食事前に手を洗う」「調理前に手を洗う」、この3ポイントはぜひやっていただきたい。

▶ ノロウイルスに感染したら
ノロウイルスには、現在基本的に有効な薬やワクチンはありません。
脱水症状を起こす可能性があるので、十分な水分と栄養の補給が大切です。
ご自身でなかなか水分を摂れず脱水になってしまっている場合は、医療機関での点滴が必要になります。
恵俊彰:
病院に行っても、何か検査をするわけではないんですか?
北村義浩教授:
抗原検査のキットはありますけど、肛門に綿棒を入れて検査する方法なので、一般的には外来でもやりません。多くの人たちに調理食品を提供する人たちはやる方が多いです。
基本的にはもう水を飲んでいれば3日で治ります。
問題は自分で水を飲めないような乳幼児やお年寄りです。早めに病院に行った方がいいと思います。
おう吐や下痢の場合は水やお茶だけでは駄目で、塩分や糖分はどうしても必要なので、可能ならスポーツドリンクをガブガブ飲んでもらうと良いと思います。 
(ひるおび 2025年2月25日放送より)


週明けからスギ花粉本格飛散!

2025年02月21日 08時04分31秒 | 小児科診療
2月に入り「スギ花粉飛散開始」とニュースで流れました。
もともと過敏な重症患者さんは自覚し、薬をもらいに受診されます。

でも、思ったほど爆発的に患者数は増えてきません。
スギ花粉の飛散は始まりましたが、「少ない」レベルで推移していたのです。

そして週明けから、いよいよ本格飛散が始まります。

▢ スギ花粉 3連休明けから飛散が本格化 3月上旬から広くピークに 急増の恐れ
吉田友海:日本気象協会 本社
2025年02月20日:tenki.jp)より一部抜粋(下線は私が引きました);
 3連休明けの25日(火)頃にはようやく寒波が撤退し、厳しい寒さが和らぐでしょう。気温の上昇とともに2月末からスギ花粉が本格化しそうです。3月上旬からは広くスギ花粉のピークとなるでしょう。
・・・
▶ 3連休明けは寒波が撤退 花粉の飛散量が急増
 2/24日(月)振替休日にかけても日本列島に強烈な寒波が居座り、厳しい寒さが続くでしょう。花粉の飛散量は「少ない」見込みです。連休明け25日(火)以降は次第に寒さが和らぐでしょう。花粉の飛散量は増えそうです。25日(火)は高知や福岡で「やや多い」、26日(水)は東京や高知で「やや多い」、静岡や福岡で「多い」でしょう。花粉シーズンが本格しますので、万全な対策が必要です。


▶ スギ花粉のピーク近づく
 スギ花粉のピークの時期は、福岡では2月末からとなる見込みです。3月上旬には、高松、広島、大阪、名古屋、金沢、東京、仙台など広い範囲でピークを迎えるでしょう。ピークの期間は10日間から1か月ほど続く見込みです。
 また、ヒノキ花粉のピークは3月下旬から4月上旬で、期間は5日間から2週間ほど続くでしょう。仙台はヒノキの飛散量は少なく、はっきりしたピークは現れない見込みです。

風が強く吹く日や、急に暖かくなる日には、花粉の飛散が極めて多くなり、1cm2あたり100個以上観測される日がありそうです。花粉情報や気象情報を確認して、万全な対策を心がけましょう。
花粉飛散量予測
<例年比>">今シーズンの花粉飛散量は、例年(過去10年の平均)に比べると、九州から北海道にかけてのほとんどの地域で多く、四国・近畿地方は非常に多い所もあるでしょう。例年以上に万全な対策が必要です。
外出時の花粉対策

"外出時の花粉対策">花粉症の症状を緩和させるには、花粉を避けることが大切です。マスクやメガネをつけ、衣類も工夫しましょう。
① メガネ
メガネを使用しない場合に比べて眼に入る花粉量はおよそ40%減少し、防御カバーのついた花粉症用のメガネではおよそ65%も減少するという実験結果があります。
② マスク
感染症予防として使用している方も多いかと思いますが、花粉を吸いこむ量もおよそ3分の1から6分の1に減らすことができます。マスクは顔にフィットするものを選ぶことが大切です。また、マスクの内側にガーゼを当てること(インナーマスク)でさらに鼻に入る花粉が減少することが分かっています。
③ 衣類の工夫
一般的にウール製の衣類などは木綿や化繊に比べて花粉が付着しやすく、花粉を屋内に持ち込みやすくなります。ウールの花粉のつきやすさは、綿に比べるとおよそ10倍にもなります。外出の際は、外側にウール素材の衣服を着ることは避けて、表面がツルツルした素材の上着を選ぶようにしましょう。

なお、「花粉症なので検査をお願いします。薬もください。」と飛び込んでくる患者さんが時々います。
その場合、私はこんな風に答えます。
「初期症状は花粉症と風邪は区別できません。
 今日はお薬を処方しますから、
 2週間以上症状が続いたら花粉症の検査を考えましょう。」

なぜかというと、2週間後には治ってしまう方が少なからずいるからです。
当然、アレルギー検査ではスギ・ヒノキは陰性です。
こんなエピソードを繰り返し経験してきたため、
「まず症状で診断、症状が続くことを確認できたら検査で確認」
する方針に落ちつきました。

こちらに風邪と花粉症の症状の違いがまとめられていました。
参考にしてください。



ボツリヌス中毒のリスクは乳児だけではない

2025年02月19日 13時34分24秒 | 小児科診療
1歳未満の赤ちゃんにはハチミツを与えない、という小児科医の鉄則があります。
理由は「ボツリヌス中毒」のリスクがあるから。

しかし最近、成人のボツリヌス中毒例がニュースになりました。
「えっ、どういうこと?」
というのが私の正直な感想です。

ポイントは、「要冷蔵保存食品を常温保存していた」ためボツリヌス菌が繁殖&毒素を産生し、それを食べて中毒を発症した、ということのようです。

また、安全と思われる「瓶詰め」、自宅で作成したモノでは安全ではないという認識も必要です。

▢ ボツリヌス菌による食中毒 瓶詰や缶詰、真空パックがリスクに…呼吸筋が麻痺して死に至ることも
菊池賢:東京女子医科大学病院 感染症科教授・診療部長、感染制御部部長
2025/2/19:読売新聞)より一部抜粋(下線は私が引きました);

 新潟市で2月、ボツリヌス菌による食中毒が発生したことが判明しました。発症したのは50歳代の女性で、全身に麻痺(まひ)症状があり、人工呼吸器を装着しました。同市によると、女性は1月20日、自宅で常温保存していた要冷蔵食品を食べた後、目がチカチカしたり、ろれつが回らなくなったりしたといいます。ボツリヌス菌による食中毒とはどのようなものなのか、東京女子医科大学教授(感染症科)の菊池賢さんに聞きました。

▶ 吐き気、目に異常、脱力感
――ボツリヌス菌とは、どのようなものですか。
  土の中や河川、湖の底などにいる細菌です。A~Gと七つのタイプがあり、食中毒を引き起こすのは、主にE、A、Bです。
  ボツリヌス菌は「嫌気性菌」と言って、酸素があるところでは生きられません飢餓状態になるなどストレスがかかると、植物の種にあたる「芽胞」を出して、生き延びようとします芽胞は熱や乾燥に強く、100度で熱しても死にません。 
――ボツリヌス菌が体内に入るとどうなりますか。 
 ボツリヌス菌が出すボツリヌス毒素は、神経伝達物質の「アセチルコリン」の働きを妨げてしまいますこの毒素で汚染された食べ物を口にして8~36時間くらいたつと、多くの場合、吐き気や嘔吐(おうと)、下痢などの症状が出ます。最初は、
(1)まぶたが下がる
(2)瞳孔が開いてまぶしく感じる
(3)ものが二重に見える
―など、目に特有の症状が表れます。その後、口の渇きや口の周りにしびれを感じ、ろれつが回らなくなることもあります。症状が進むと、脱力感があったり筋肉が弛緩(しかん)したりし、呼吸筋が麻痺すると、命にかかわります。
  ボツリヌス菌が引き起こす病気は、ボツリヌス症と呼ばれています。感染症法上の「4類」に指定されていて、診断した医師による国への届け出が義務づけられています。

▶ 重症だと治療に1~2か月

――どのような食べ物に気をつければよいですか。 
 瓶詰や缶詰、真空パックの中などにはボツリヌス菌が増殖している可能性があります。これらの容器の中は、酸素が少ない状態になっています。ボツリヌス菌は酸素があると生きられないため、生き延びる環境が整っているといえます。 
――瓶詰などは日持ちする食品というイメージが強く、リスクがあるとは意外です。 
 確かに、保存食としても使われるこうした食品は安全だというイメージがあるかもしれません。市販されているものの多くは、ボツリヌス菌が死滅するよう、120度で4分以上加熱されているため、封が開いていなければ問題ありません気をつけたいのは、家庭で「保存用」に調理した瓶詰などです。加熱が不十分であることが多く、注意が必要です。 
――感染してしまったら、どのように治療しますか。 
 診断するのは難しいのですが、呼吸不全になった場合は人工呼吸器を装着して、回復を待ちます。ボツリヌス菌が体内に入った可能性があれば、中和抗体薬を投与します。重症になると治療に時間がかかり、多くの場合、回復するのに1~2か月かかります。 
――感染しないためにはどのようなことに注意が必要ですか。 
 容器の中でボツリヌス菌が増えると、「酪酸」を発生させ、独特の嫌な臭いがします。また、ガスが発生するので、ふたが盛り上がったり容器が膨らんだりします。そうした状態の時は、絶対に食べないようにしてください。 
 また、「冷蔵」「10℃以下で保存してください」といった表示がある食品は、常温保存をせず、必ず冷蔵庫に入れるようにしてほしいと思います。


子どもの花粉症、急増中!

2025年02月15日 16時14分06秒 | 小児科診療
先日、「8歳児の6割がスギ花粉症(山梨県)」という記事を書きました。
もう一つ、わかりやすい解説記事を紹介します。

子どものスギ花粉症患者さん、1998年には7%だったものが、20年後(2019年)には30%と3倍以上に増えている事実は衝撃的です。
その先に山梨県の60%があります。
日本の花粉症の急増・・・ど、どうなってしまうのでしょう?

この記事は、子どもへの点鼻・点眼の説明もされていて親切ですね。

それからスギ花粉症に対する「舌下免疫療法」にも言及しています。
この治療法、人気が出て薬(実際に手作業で集めたスギ花粉を加工して作る)が足りなくなり、
現在新規開始は制限中、つまりできない状態です。

製薬会社から「2025年10月頃再開予定」との情報提供がありました。
興味のある方は、10月頃に検索してみてください。


▢ 子どもの花粉症が増加 治療薬の正しい使い方 塗り薬も…リンゴを食べたら口や喉にかゆみや腫れが出ることも
 坂本昌彦(小児科医)
2025年2月12日:読売新聞)より一部抜粋(下線は私が引きました);
・・・
▶ もはや珍しい病気ではない
 スギ花粉の増加に伴い、子どもの花粉症も増えています。2019年に行われた「鼻アレルギーの全国疫学調査」によると、特に5~9歳では、スギ花粉症の有病率が、
1998年:7.2%
2019年:30.1%
ーと、大幅に増えています (1) 。小児科でも花粉症の子どもを診察する機会が増えており、もはや珍しい病気ではありません。
 子どもの花粉症の原因として最も多いのはスギですが、ヒノキや、カモガヤ、ブタクサといった雑草の花粉も症状を引き起こすことがあります。スギ花粉症が春に多い一方で、他の花粉症は初夏や秋にも発症するものもあるため、1年を通じて症状に悩む場合もあります (2) 。
 花粉症はアレルギー性鼻炎の一種で、遺伝の要素も関係していますが、それだけではありません。例えば、ぜんそくやアトピー性皮膚炎など他のアレルギー疾患がない子どもでも、突然、花粉症になることがあります。これは、環境の影響も大きいと考えられます。
一番つらいのは「鼻づまり」
 花粉症の症状には鼻水、くしゃみ、目のかゆみなどがありますが、子どもが一番つらいと感じるのは「鼻づまり」だというアンケート調査が報告されています (2) 。子どもの 鼻腔は大人より狭く、軽い症状でも詰まりやすいためです。花粉症の症状が続くと、集中力の低下や睡眠の質が悪くなることにもつながります。 
 さらに、体育の授業や部活動などで外に出る機会が多い子どもは、花粉に触れる頻度が増えます。これによって、運動パフォーマンスが低下し、思うように成果を出せなくなることもあります。このように、花粉症は子どもの日常生活や学業に大きな影響を与える病気なのです。

▶ 内服薬
 花粉症の治療の中心は薬です。症状の種類や強さに応じて、内服薬、点鼻薬、点眼薬などを組み合わせて使用します。それぞれの薬には特徴があり、使い方や注意点を理解しておくことが重要です。
 内服薬としては、抗ヒスタミン薬を処方することが多いです。その際には、学習面の影響も考慮し、鎮静作用が弱く、眠気や集中力低下などの副作用が少ない「第2世代抗ヒスタミン薬」を処方することが多いです。ただ、効果が出るまで少し時間がかかることがあります。そのため効きにくいと感じる方もいますが、毎日飲み続けることで症状をしっかり抑えられるようになります。
 また、花粉症の薬を「症状がよくなったら、すぐやめてもいい」と思う方もいますが、それは間違いです。薬が効くまで少し時間はかかりますが、効き始めるとしばらく効果が続くので、毎日使うことで症状が改善しやすくなります。そのため花粉が飛散する前から、早めに服用することで症状を抑え込めます。ただし、薬の効き方は人それぞれです。お子さんに合う薬、合わない薬もありますので、気になる場合には遠慮せず医師にご相談ください。

▶ 点鼻薬
 鼻に使う薬の中で、最初に選ばれるのは「ステロイド点鼻薬」です。この薬はとても効果が高いのですが、体にほぼ吸収されないため、副作用がほとんどありません。ただし、効果が出るまでに1~2日かかることがあり、毎日使い続けることでだんだん効いてきます。そのため、使い始めたばかりの時に「あまり効かない」と思って途中でやめてしまう人もいます。また、この薬には独特のにおいや味があり、それが苦手と感じる人もいます (3) 。
正しく使うためのポイントとして、以下のことが挙げられます (4) 。

〈1〉薬を使う前に、鼻をしっかりかんでおく。
〈2〉下を向き、ノズルを鼻の穴に差し込んで、左右の鼻に薬を1回ずつスプレーする。
〈3〉薬をスプレーした後は顔を少し上に向け、鼻からゆっくり息を吸って、口から吐き出す。
〈4〉スプレーした後、しばらくの間は鼻をかまない。

▶ 点眼薬(目薬)
 目のかゆみがひどいときは、抗アレルギー薬の目薬を使うことがありますが、中には目薬が苦手なお子さんもいます。
〈1〉さすコツ
 目薬をさすとき、目を開けたままではなくても大丈夫です。まず、子どもに「大丈夫だよ」と声をかけてリラックスさせ、目を閉じてもらい、下まぶたを軽く引っ張って「あかんべえ」の状態にします。その状態で、目の中に1滴、目薬を落とします。このとき、子どものまぶたは軽く閉じたままでOKです。強くまぶたを閉じてしまう子には、「痛くないよ」と優しく伝えて、不安を取り除いてあげてください。
 それでも嫌がる場合は、子どもをあおむけに寝かせて、まず目の周りを清潔にしてから行います。次に、目頭(目の内側のくぼんでいるところ)を押さえ、そのくぼみに1滴、目薬を垂らします。すると、子どもが目を開けたタイミングで薬が自然に目に広がります。
〈2〉保管方法
 目薬は、一度開けたら1か月以内に使い切ることが大切です。長く保存すると、雑菌が増えることがありますので注意してください。また、冷蔵庫で保管しても使用期限は変わりません。冷蔵庫に入れた目薬は冷たくて、さすときに刺激になることがあるので、できるだけ室温で保存するのがよいでしょう。

▶ 塗り薬も登場
 昨年から、1日1回まぶたの上に塗る「エピナスチン眼瞼クリーム」が登場しました。このクリームは、まぶたに塗ると1日効果が続き、塗ってから数時間で目全体に薬がしみ込みます。寝る前に塗れば、翌日起きた後も1日効果が続くので、目薬が苦手なお子さんにも使えます。気になる方はかかりつけ医とご相談ください。

▶ 「舌下免疫療法」の始め方と注意点
 最近、日本では、国内でスギ花粉症と診断された患者さんに対して「舌下免疫療法」が行われるようになり、保険適用となっています。これは、体をスギ花粉(アレルゲン)に慣らすことで症状を和らげ、根本的な体質改善を目指す治療です。治療薬はスギ花粉のエキスを錠剤にしたもので、1日1回舌の下に投与します。
 これを続けていくと、スギ花粉に対して体が過剰に反応しなくなります。つまり、スギ花粉を無害と認識するようになり、花粉症の症状が出なくなります。数年間にわたり(3年以上が推奨)継続して服用する必要がありますが、成人同様子どもでも十分な効果があり、くしゃみや鼻水、目のかゆみなど花粉症の症状を改善することができます。
 ただし、スギ花粉が飛んでいる時期に治療を開始すると、治療薬のスギ花粉エキスと飛散している花粉が足し合わさり、多くの花粉エキス(アレルゲン)が取り込まれることになります。そのため副反応が強く出るリスクが高くなります。治療はスギ花粉の飛散が収まってから開始します。
 なお、治療開始当初に口内炎や口の中のかゆみなどが生じることがありますが、この症状は続けるうちになくなっていきます。基本的には安全な治療法ですが、まれに強いアレルギー反応(アナフィラキシー)が起こる可能性もあるため、治療は舌下免疫療法の専門の知識を持った医師が行う必要があります。

▶ 舌下免疫療法をやる? やらない? 迷った時は?
 2018年から治療の年齢制限がなくなりましたが、実際には5歳以上のお子さんが治療を受けることが多いです (5) 。治療を3~5年ほど続けると、その後も長期間効果が続くことが分かっています。
 なお、舌下免疫療法を始める目安として「とにかく毎日、舌下免疫療法をしてでもこの症状を何とかしたいと思っているか」が判断材料の一つです。薬を毎日続けるのは大変なことですが、それでも治療したいかどうかを本人とご家族でご相談いただければと思います。わからないことは小児科で相談してください。

▶ 果物でかゆみや腫れが起こることも
 花粉症の人が特定の果物や野菜を食べた際、口や喉にかゆみや腫れなどのアレルギー症状を引き起こすことがあります。これを「花粉・食物アレルギー症候群(PFAS)」と呼びます。
 例えば、シラカバやハンノキの花粉症を持つ人が、バラ科の果物(モモやリンゴなど)を食べると症状が出る場合があります。それらの果物には、花粉症の原因となるたんぱく質と似たたんぱく質が含まれているからです。ちなみに、このたんぱく質は加熱に弱いという性質があるため、生の摂取では症状が出ても、ジャムやアップルパイなど加熱したものでは症状が出なかったりすることもよく経験します。子どもの花粉症が増えるにつれ、このアレルギー症状も増加しており、注意が必要です。・・・


〈参考文献〉
(1) 松原篤ほか.鼻アレルギーの全国疫学調査.日本耳鼻咽喉科学会会報.2020;123:485-90.
(2) 大久保公裕.インターネットを用いたアレルギー性鼻炎患者に対するアンケート調査結果.アレルギー・免疫.2004;11:100-15.
(3) 宮之原郁代.アレルギー性鼻炎治療における鼻噴霧用ステロイド薬の新たな位置づけ.日本耳鼻咽喉科学会会報.2020;123(1):30-5.
(4) 上荷裕広.【アレルギー疾患-最新治療と生活からの視点】アレルギー性鼻炎・アレルギー性結膜疾患 花粉症の薬物療法における服薬指導.小児科診療.2023;86(秋増刊):144-9.
(5) 日本アレルギー学会.SLITの施行法.アレルゲン免疫療法の手引き.2022:21-3.

「クビかけ除菌用品」は“バカ発見器”

2025年02月08日 05時22分34秒 | 小児科診療
「クビかけ除菌用品に科学的な根拠がないこと」が消費者庁から公表されました。
それを販売していた会社に罰として課徴金納付を命じた、とあります。

私は以前から「空間除菌は無効」と何度もブログを書いてきました。
■ クレベリンは効果ありませんでした、嘘ついてごめんなさい <(_ _)> by 大幸薬品(2022年05月04日)
■ ウイルスより危険な「ウイルスプロテクター」(2013.2.19)
■ 再度、「エアーマスク」の安全性と効果について(2014.2.8)
■ とうとう消費者庁にダメ出しされた「空間除菌」グッズ(2014.4.18)
■ 消毒に使われる「塩素」に関する情報2つ(2014.12.3)

正直言いまして、首から除菌用品を提げている人を「私はバカですと公言している」ように感じていました。

だってそうでしょう。
開放空間ではウイルスは拡散して感染するレベルの濃度に達しないのです。
誰もいないところでもずっとマスクをする人、いますか?
もし開放空間で感染するなら、マスクをしていないと即、感染しますよ。

クレベリンが話題になった当時、当院スタッフもそれを信じているのを聞いて、
私は呆れてガッカリしました。
いつも私の診療を介助して話を聞いているのに、何も理解していないんだな、と。

▢ 首かけ除菌用品で課徴金 科学的根拠なしと消費者庁
(25/01/31:共同通信社)
 消費者庁は30日、「首にかけるだけで空間のウイルスを除去」と宣伝し販売していた携帯用空間除菌用品について、科学的根拠が認められず景品表示法違反(優良誤認)に当たるとして、販売した東亜産業(東京都千代田区外神田2丁目)に1651万円の課徴金納付を命じた。
 消費者庁によると、同社は2020年2月、自社サイトなどで「ウイルスシャットアウト」という商品を「半径1メートルの空間除菌」「二酸化塩素でウイルスや菌を除去」と宣伝し、公式サイトなどインターネット上で販売していた。5億5千万円の売り上げがあった。
 消費者庁は同社に宣伝の根拠となる資料を提出させたが、裏付けとなる合理的な根拠を示すものとは認められなかった。

5億円を稼いで、「ウソをついたから罰金」と1600万円で済むなら、騙した者勝ちですねえ。
美味しい商売です。

はて、クレベリンはまだ売っているのかな・・・売ってました!
“クビかけ型”を“ペン型”に形を変えて、amazonで堂々と。
消費者庁さん、こちらは野放しですか?

E型肝炎情報 up date 2025

2025年02月03日 06時35分42秒 | 小児科診療
以前、獣肉の生食の危険性について書きました;

馴染みのある食肉では豚肉、
ジビエ系ではイノシシ、鹿、熊の肉にリスクがあるため、
「生肉は避けることが基本」でした。

今回、E型肝炎に関する記事が目に留まりましたので紹介します。
生肉ではなく、加熱調理が甘い場合の感染リスクについて言及しています。

基本的に「豚やイノシシ、シカの肉や内臓を食べた後で肝炎を発症した場合はHEVの感染を疑い、特に急性肝炎の発症や流行地から帰国後の発症、感染履歴の確認などでは抗体検査をする」としています。

また、獣肉を食べていなくてもヒト-ヒト感染する可能性が最近明らかになりました。
報告は臓器移植や輸血例で、日常生活レベルでの感染例ではありません。
日本赤十字社はその後、献血を検査してHEVを含む血液を排除できる体制を整えた」そうです。

加熱調理の条件については、近年の研究データ報告から推奨内容が変更され、
従来の「70度以上で5分以上、75度以上で1分間以上加熱」が、
肉や内臓は95度、10分以上の加熱」へ。

・・・なんだが、肉が固くなりすぎて食べにくそう。
 加熱しても柔らかさが残るのは鶏肉だけと聞いたことがあります。


▢ E型肝炎、拡大に要警戒 研究班が推奨治療を提言 肉や内臓、十分加熱を 「医療新世紀」
(25/01/21:共同通信社)より一部抜粋(下線は私が引きました);
・・・専門家でつくる日本医療研究開発機構(AMED)の研究班は、これまでに明らかになった病態や推奨される最新の治療をまとめた声明・提言を公表して警戒を呼びかけるとともに、主な感染源である豚やイノシシ、シカなどの肉や内臓を調理する際には十分に火を通すなど、感染防止の徹底を勧めている。
▽人獣共通感染症
 研究班で代表を務めている新潟大の神田達郎(かんだ・たつお)特任教授(消化器内科)によると、E型肝炎は1983年にその存在が明らかになり、90年にE型肝炎ウイルス(HEV)の遺伝子が見つかった。当初はA型肝炎と同様に衛生環境の悪い発展途上国での病気と考えられていたが、今では人獣共通感染症として先進国でも警戒するべき感染症となっている。
 これまでに少なくとも1~4型の4タイプが見つかり、日本では2001年にその存在が明らかになった3型の発生が多い。北海道北部など一部で4型もみられる。抗体検査が11年に保険適用されて以降、診断数が急増し、国立感染症研究所によると、感染症法上の届け出数は23年に初めて500人を超え、24年も500人超。A型の約140人を大きく上回った。
 欧米では肝臓移植を受けた患者で発症が見つかって人から人への感染が知られるようになったが、日本でも15年に肝臓移植に伴う輸血で2人が慢性肝炎を発症したことが判明。日本赤十字社はその後、献血を検査してHEVを含む血液を排除できる体制を整えた
▽重症化や慢性化
 研究班の声明・提言では、豚やイノシシ、シカの肉や内臓を食べた後で肝炎を発症した場合はHEVの感染を疑い、特に急性肝炎の発症や流行地から帰国後の発症、感染履歴の確認などでは抗体検査をするよう求めた。
 重症度の推定や感染経路の調査、偽陽性や偽陰性の除外などの場合には、HEVの遺伝子自体を検出するPCR検査も推奨している。
 神田さんは「高齢者や免疫抑制剤を使っている臓器移植患者、免疫不全の患者、免疫が弱っている人では重症化、慢性化することがあり、注意が必要だ」と話す。
 E型肝炎に限った薬は欧米では承認されているものの日本にはなく、治療では一般的な対症療法が主になる。広く感染症に使われる薬「リバビリン」の使用が推奨され、慢性化した場合も約8割は有効だ。海外では予防ワクチンが開発されているが、現在日本で使用できるものはない。・・・
▽95度で10分以上
 厚労省のウェブサイトでは、流行地域へ旅行する際は生水や氷入り飲料、非加熱の貝類、非調理の果物や野菜の生食を取らないよう注意喚起。また、豚レバーなど内臓を食べる際には、中心まで火が通るよう十分に加熱し、調理段階でも皮膚の傷などからウイルスが体内へ入らないよう気をつけるよう求めている。
 従来の推奨では、ウイルスを不活化するためには70度以上で5分以上、75度以上で1分間以上加熱が必要だとされていたが、研究班の今回の提言では「肉や内臓は95度、10分以上の加熱でウイルスが活性を失う」と条件が厳しくなった。・・・

<参考>
飲食店向けジビエ調理講習会(ホシザキ関東株式会社)
・・・このHPではまだ75℃1分のままですね。
E型肝炎ウイルスの感染事例・E型肝炎Q&A(厚生労働省、2003年報道資料)

スギ花粉症の季節到来!〜まずは自己防衛策を〜

2025年01月31日 05時55分30秒 | 小児科診療
私自身、スギ花粉症患者です。
外で活動すると、目がしょぼしょぼしてきますので、既に花粉が飛んでいることを感じています。

一般的な治療は抗アレルギー薬の内服ですが、眠くなって困るという人が一定数います。
また、添付文書(トリセツ)に「車の運転に注意」と書かれている薬も複数あり、処方しにくいのが現実です。
その中でも「眠くなりにくく車の運転制限もない」薬には以下のものがあります:
・フェキソフェナジン(アレグラ®)
・ロラタジン(クラリチン®)
・ビラスチン(ビラノア®)
当院では漢方薬をお勧めしています。眠くなる成分が入っておらず、逆に目がさえるので受験生などには好評です。
・小青竜湯(19)
・葛根湯加川芎辛夷(2)
・越婢加朮湯(28)
など。
抗アレルギー薬では効果が期待できない「目のかゆみ」や「だるさ、頭痛、熱っぽい感じ」等にも有効な漢方薬があります。

そして抗アレルギー薬と漢方薬の併用が最強の組み合わせです。抗アレルギー薬の眠気を漢方で消して、高価2倍!
当院ではこれを実行している患者さんが多いですね。

され、この項目では薬を飲む以外で、その前に出来ることをまとめてみました。

<自己防衛策いろいろ>
1.花粉情報に注意し、花粉の飛散が多い時の外出を控える。
2.外出時にマスクやメガネを着用する。
・帽子をかぶれば3分の1ほどにまで減らせる。
3.表面が毛羽立った毛織物などのコートの着用は避け、帰宅後は玄関で衣服や髪をよく払う。
・衣服には静電気防止スプレーを。
・帰宅時のウールのコートに付着した花粉の量は、およそ3万個。その多くが前面と背面に付いている。そこを軽く3回手で払うだけで1万個以下にまで減らせる。
・髪の毛にも花粉は付着しやすいが、これも手で払うだけで半数近くにまで減らすことができる。
4.ふとんや洗濯物の外干しは避ける。
・外に干した洗濯物や布団にも花粉が付いてくる。手で払うだけで最大65パーセントまで減らすことが可能。
5.掃除をこまめに行い、特に窓際は念入りに掃除する。
・外から持ち込む花粉は、じつは家庭内の花粉の4割ほどで、6割は外から勝手に入ってくる。家の中の花粉の55パーセントは、窓を開けて換気したときに浸入し、床に落ちて溜まっている。窓を開けるときは10センチメートルほどにする。網戸やカーテンを閉める。
・窓を全開にした場合の花粉浸入率を見ると、全開時を100パーセントとすると、網戸を閉めれば約27パーセント減少し、レースのカーテンを閉めれば約50パーセント減少する。カーテンに花粉が付着することもあるので、静電気防止スプレーをしておくとよい。
6.アルコールやタバコは悪化因子なので控える。


▢ 花粉早くも飛散中!花粉症を重症化させないためにすべき5つのこと 
2025/01/27:読売新聞)より一部抜粋(下線は私が引きました);
 東京では早くも、花粉症の原因とされるスギ花粉の飛散が観測されています。都によると、飛散開始日は1月8日で、1985年の調査開始以来、最も早い飛散となりました。いまや日本人の3人に1人が悩んでいると言われる花粉症。これから2月、3月と花粉が多くなる季節に、仕事や勉強のパフォーマンスを維持するためには、どんなことに気をつけたらいいのでしょうか。専門医に聞いてみました。
 くしゃみ・鼻水・鼻づまりに加えて、目のかゆみや充血、せき、喉や皮膚のかゆみ、だるさ、頭痛、熱っぽい感じなど、花粉症ではさまざまな症状がみられます。鼻から体内に侵入してきた花粉(抗原)を異物と認識し、これを排除しようとして過剰な免疫反応(アレルギー)が起きてしまうためと考えられています。・・・

▶ 仕事・勉強への影響度をセルフチェック
 耳鼻咽喉科医で、埼玉医大東洋医学科非常勤講師の齋藤晶さんは、「花粉症は、早めの対策で重症化させないことが大切です」と話します。前年に少しでも症状が出た人は、花粉がたくさん飛散する前から治療を始めると重症化を防ぐことができます。
 日本耳鼻咽喉科 頭頸部外科学会では2024年から、「 花粉症重症化ゼロ作戦 」をスタート。ウェブサイト上に花粉症によるパフォーマンス低下度をセルフチェックできるコーナーなどを設けて、早めの受診を呼びかけています。
 くしゃみ、鼻水、鼻づまりや喉の症状が強い場合は耳鼻咽喉科を、目の症状が中心の場合は眼科を、せきがひどい場合は内科を、アトピーなど他のアレルギー症状を併発している場合はアレルギー科を受診するとよいそうです。
 花粉症と風邪は症状がよく似ていますが、花粉症は鼻水がサラサラして水っぽいことや、目の症状があることが特徴です。風邪と花粉症は同時にかかることもあります。また、風邪をひいている時は、花粉症の症状が出やすくなるので要注意です。

▶ 治療薬の主流は…
 齋藤さんは「『薬は眠くなるから飲みたくない』という方もいますが、症状のごく軽い時から薬を予防的に服用することで、症状の発現を遅らせたり、症状をより軽くしたりすることが期待できます」と話します。治療薬の主流は、眠くなりにくい「第2世代抗ヒスタミン薬」です。薬局で市販薬を選ぶ場合も、仕事中の眠気が気になる人は「第2世代抗ヒスタミン薬」を選ぶとよいといいます。
 漢方薬も選択肢の一つです。漢方薬には眠くなる成分が入っていないためです。花粉症や花粉症に伴う症状には、 小青竜湯 、 辛夷清肺湯 、 葛根湯加川芎辛夷、葛根湯などがよく用いられます。ただし、冷えの有無などその人の体質と症状に合ったものを選ぶ必要があるほか、薬の効果を十分に得るためには2週間程度かかるので、「重症化してからではなく、早めに医師に相談することが大切です」と齋藤さんは強調します。
 症状を軽減し、重症化を防ぐには、花粉とできるだけ接触しないようにすることも大切です。具体的には、〈1〉花粉情報に注意し、花粉の飛散が多い時の外出を控える
〈2〉外出時にマスクやメガネを着用する
〈3〉表面が毛羽立った毛織物などのコートの着用は避け、帰宅後は玄関で衣服や髪をよく払う
〈4〉ふとんや洗濯物の外干しは避ける
〈5〉掃除をこまめに行い、特に窓際は念入りに掃除する
――などが挙げられます。
 また、アルコールやたばこは、血管を拡張させたり鼻の粘膜を刺激したりして、鼻づまりを悪化させるので、花粉の季節は、お酒の飲み過ぎや喫煙、受動喫煙を避けること。さらには、十分に睡眠を取り、乳酸菌やビフィズス菌などを積極的に取り入れて腸内環境を整え、免疫力を高めるなど、日常生活の改善に努めたいものです。・・・

<参考サイト>
花粉症重症化ゼロ作戦(日本耳鼻咽喉科 頭頸部外科学会)  
▽ 環境省「花粉症環境保健マニュアル2022


▢ 例年より早くて多いスギ花粉 家庭での効果的な花粉対策
2025/1/29:Forbes Japan)より一部抜粋(下線は私が引きました);

 今年のスギ花粉の飛散は例年よりも早く、ピーク時の飛散量も多いそうだ。そう聞いただけで鼻がムズムズしてくる。早めに薬を飲み始めて、外出時はマスクをして花粉が付きにくい服装を心がけるなど、この時期のお約束を早くも発動する状況となったが、家の中の対策はどうだろう。
  花王は、生活に関するさまざまなお役立ち情報を提供するサイト「My Kao くらしラボ 」にて、花王の調査データをもとにした簡単にできる家庭でのスギ花粉対策を提案している。そもそも家の中に花粉が入り込む原因は、人が持ち込むものと、外から勝手に入ってくるものとに分けられる人が持ち込むのは、衣服や髪の毛、外干しの洗濯物や布団に付着したものだ。 帰宅時、玄関で髪の毛や衣服からパタパタと花粉を払い落とすのは花粉の時期の常識になっている。花王の調査では、帰宅時のウールのコートに付着した花粉の量は、およそ3万個。その多くが前面と背面に付いている。そこを軽く3回手で払うだけで1万個以下にまで減らせるとのこと。 髪の毛にも花粉は付着しやすいが、これも手で払うだけで半数近くにまで減らすことができる。髪の長い人は、髪をまとめるだけでも付着量を減らせるし、さらに帽子をかぶれば3分の1ほどにまで減らせる外に干した洗濯物や布団にも花粉が付いてくる。室内干しがもっとも安全なのだが、やっぱり、天気のいい日には外に干したい。幸い、これも手で払うだけで最大65パーセントまで減らすことが可能だ。


▶ 家の中の花粉の多くは勝手に入ってくる

 これらの外から持ち込む花粉は、じつは家庭内の花粉の4割ほどで、6割は外から勝手に入ってくるヤツだ。家の中の花粉の55パーセントは、窓を開けて換気したときに浸入し、床に落ちて溜まっている。だから、そこを歩くごとに花粉が舞い上がり、床に座れば途端にクシャミが出るというわけだ。こまめに床掃除ができればいいが、なかなか難しい。そこで花王は、花粉の時期の上手な換気方法を指南している。 まず、窓を開けるときは10センチメートルほどにすること。また、網戸やカーテンを閉めることが重要だ。窓を全開にした場合の花粉浸入率を見ると、全開時を100パーセントとすると、網戸を閉めれば約27パーセント減少し、レースのカーテンを閉めれば約50パーセント減少するカーテンに花粉が付着することもあるので、静電気防止スプレーをしておくとよいとのことだ。 花粉症は、アレルゲンが似ているほかのアレルギーを誘発することがある。だから、花粉などのアレルゲンはできるかぎり体に入れないことが重要だ。薬を飲んで症状が治まったとしても、こうした花粉を減らす対策は続けたい。





スーパーで購入できる“かぜ薬”より効く食材

2025年01月25日 08時31分24秒 | 小児科診療
「風邪薬は効かない」という情報が散見されます。
古い薬はいわゆる“エビデンス”が不十分なまま認可された経緯があるからです。
しかし、厚生労働省の許可は下りていますので使っていけないということではありません。

小児科医の中にも「風邪薬は処方しない」という意見の方がいらっしゃいます。
そこでは院外薬局の仕事がなくなり撤退したという話も耳にしたことがあります。

そんな先生方が咳止めとして処方しているのが“はちみつ”です。

食品の“はちみつ”、実は医薬品として登録されています。
効果は以下の通り;
・矯味の目的で、又は丸剤の結合剤、栄養剤として調剤に用いる。
・また、皮膚・粘膜の保護剤として用いる。
この中に咳止め効果の記載はありません。
だから“咳止め”としてハチミツを処方することはルール違反で保険診療から外れます。

ただ、彼らの主張では「咳止め効果があったという論文が存在する」とのこと。
それを扱った記事を紹介します。

私も10年以上昔に調べたことがあるのですが、
その論文の協力者にハチミツ業者が紛れ込んでいるため、
客観的な評価はされていないと判断しました。


▢ 病院でもらう咳止め薬よりも断然効果が高い…医師の間では常識「ひどい咳がラクになるスーパーで買える食材」なぜ医師はそれでも「かぜに効かない薬」を出すのか
木村 知:医師
2025.1.13:PRESIDENT Online)より一部抜粋(下線は私が引きました);
・・・
▶ 処方薬と同じ成分、用量であっても効果はほぼ同じ
・・・圧倒的に多い「かぜ」の患者さんについていえば、市販薬が効かない理由は、それが市販薬だからではない。さらに言ってしまえば、医療機関で「かぜ」の患者さんに私たち医師が処方する薬にも、「効く」といえるものはない。
 市販の総合感冒薬に含まれている成分を見てみると、解熱鎮痛剤、去痰剤、抗ヒスタミン剤、中枢性鎮咳剤などが一般的だが、これらの市販薬に含まれている成分と、医師が処方する薬の成分はほぼ同じであることが、その理由だ。
 最近では解熱鎮痛剤や去痰剤などの用量を処方薬と同じレベルに増やしたものを“売り”にしている商品もあるが、これとて効果はほとんど変わらない。そもそもこれらの成分一つひとつに、症状を緩和させるエビデンスを持つものも、ほとんどないのである。

▶ 咳止め薬を飲むならハチミツのほうが断然いい
 たとえば鎮咳薬として処方薬でもよくつかわれる「デキストロメトルファン」(メジコン)は、海外の小児の咳を対象にした研究で、プラセボ(偽薬)と比較しても改善推移、有効性はほとんど変わらないという結果がすでに20年以上前に複数出ているし、むしろハチミツのほうが「効く」とされているのは、医師の間ではよく知られている。
 市販薬にはこれよりもさらに「強い」とされるコデインが含まれているものもあるが、市販薬では効かないという患者さんの実感どおり、これとて「かぜ」の咳にはほとんど効かないと考えてよい。
 むしろ痰のからんだ咳を薬の力で強力に抑えてしまうことは、それこそ危険だ。咳は炎症によって増えた汚い痰を、体外に弾きだす「生体防御反応」だからである。この重要な咳の反射をこれらの「強い薬」で脳の中枢に働きかけて止めてしまうと、この汚い痰が気管支から体外に排出できなくなってしまうのだ。
 「かぜ」であっても、インフルエンザやコロナであっても、多くの患者さんがつらいと言う症状は、このような咳や痰がらみだ。医師としても、なんとかしてあげたいと思う気持ちはあるものの、この生体防御反応と自浄作用とを、薬という人間が作り出した人工物で抑え込むことは不可能だし、そもそも抑え込んではならないのだ。

▶ すべて知っているのに医師が薬を出す理由
 それを知りつつ「症状緩和のため」との方便で医師が処方するのが、鎮咳薬であり去痰薬なのである。そして先述したように、その成分は市販薬ともほぼ同じ。むしろ市販薬は、あらゆる症状を網羅すべく各成分が1錠に盛り込まれている「フルスペック」。医師が個別の症状に応じて処方するのを「アラカルト」とすると、市販薬はラーメンでいうところの「特製全部盛り」だ。
 つまりいかなる薬にも「かぜ」を早めに治す効果はいっさいないばかりか、症状を緩和させるという効果についても、きわめて怪しいと言えるのである。医療機関で市販薬を凌駕する「かぜ薬」など出てくるはずがないことを理解いただけただろうか。つまり、咳、痰、鼻水といった「かぜ」の諸症状は、薬ではなく時間でしか解消できないものなのである。
 医師ならこの事実を当然知っているのだが、医療機関に行けば「かぜでしょうね」との“診断”とともに「ではお薬を出しておきましょうね」と医師は言い、患者さんもその言葉に納得する、という状況が常態化している
 つまり医師は自分が処方する薬が「かぜ」に効かないこと、偽薬と同等のものであることを知りつつ処方しているのである。それはなぜか。もちろんカネ儲けのためではない。たんに患者さんに納得してもらう時間がないからだ。

▶ 「休んでください」と言われて納得する患者さんは少ない
 さて読者の皆さんは、本稿をここまで読むのにどのくらいの時間を要しただろうか。そして納得できただろうか。
これまで縷々私が書いてきた内容を、一人ひとりの患者さんにわかりやすい言葉で相手の理解度を確認しながら語り、そのうえで「かぜに効く薬はありません。市販薬も処方薬も成分はほぼ同じ。処方薬のほうが効くわけではありません。かぜの諸症状を改善させるのは薬ではなく、時間です」と説明するには、ゆうに15分はかかる。
 しかもこのような説明をされ、いっさい薬を処方せずに帰そうとする医師に納得できる患者さんは、いったいどれくらいいるだろうか。
 冒頭でも述べたが、現在発熱外来には非常に多くの患者さんが詰めかけている。患者さん一人ひとりにかけられる時間は1~2分ていど。問診も診察もそこそこに検査し、型どおりの処方をするという流れ作業で人数をさばかざるを得ず、「事実」を患者さん一人ひとりに理解してもらうために、15分もかけていられないというのが実情だろう。
 だから「かぜ」と“診断”した患者さんに効きもしない薬をつぎつぎと処方することになっているのだ。驚かれるかもしれないが、そもそも「かぜ」にたいする投薬は、医師の本来の仕事ではない。

▶ 「休むことが許されない社会」を変えるべき
 先にも述べたが、「市販薬で治らない」という人のなかには、ときに「かぜ」ではなく抗菌薬の処方が必要な人もいる。私たち医師の本来の仕事は、この一見「かぜ」のように見える患者さんのなかから「かぜ」ではなく、治すための適切な処方が必要な人を見抜くことである。
・・・
かぜ」を治すのは薬ではなく、時間。休むことこそが治療。「咳を止めないと出勤できないので、咳止めを飲まないと」という、休めない社会構造がもしもあるなら、そんな社会をまず「治す」ことから始める必要があるだろう。


・・・この記事を書いた医師は「風邪に効く薬はない」と嘆いていますが、
私は漢方薬が効くと実感しています。

風邪には数十種類の漢方薬を使い分けます。
風邪の初期・中期・後期・回復期、
風邪の症状である咳、痰、鼻水・鼻閉、咽頭痛、嘔吐、食欲不振、腹痛、下痢、
患者さんの体質である、体力充実、虚弱体質・・・
等々を考慮して使い分けるのです。
選択した漢方薬が患者さんに合うと、確実に効きます。

漢方医学の教科書は約2000年前に完成しました。
その後歴史の波にもまれて、有効な漢方薬が生き残ってきたのですから、
上手く使えば有効なのです。

年末年始にマイコプラズマ感染症が流行し、
薬を飲んでも咳が止まらない患者さんが他の医療機関から流れてきました。
漢方薬の中でも最強レベルの咳止めとされる越碑加半夏湯を処方したところ、
半分以上の患者さんに手応えがあり感謝されました。
ただ、この越碑加半夏湯も乾いた咳(乾性咳嗽)と痰絡みの咳(湿性咳嗽)で内容が異なるのです。

「漢方薬が効かない」という意見は、
漢方薬を使いこなせない医師の言い訳に聞こえてきます。


ワクチン反対派の根拠を検証

2025年01月21日 13時48分42秒 | 小児科診療
ワクチン反対派はいつの時代にも存在します。
単なる不安から反対、
非科学的な妄想にとらわれて反対、
はては金儲けのための反対・・・
いろいろなパターンが混在しています。

ワクチン反対派の主張を検証した記事が目に留まりましたので紹介します。

ワクチン反対!を唱えている人たちに記者が取材の申し込みをし、
主張の根拠を尋ねても黙殺されてばかり・・・
反対派の中には医師もいるから始末に悪いですね。

妄想にとらわれた悲しい人々の姿がそこに見え隠れします。


▢ 「コロナワクチンで50万人が死亡」「日本で人体実験している」…反ワク派の主張を専門家と徹底検証した結果
2025/1/18:President ONLINE)より一部抜粋(下線は私が引きました);

 新型コロナワクチンに関するネガティブな情報が出回っている。その中には、「日本人の超過死亡の大半がコロナワクチン関連死」「mRNAワクチンのスパイク蛋白は毒」「レプリコンワクチン接種者は周囲の人に感染させる」といった科学的根拠に乏しい情報も多い。ジャーナリストの岩澤倫彦さんが取材した――。 
・・・「コロナワクチンは危ない」という反対運動が展開され、SNSなどで拡散された。これによって、ワクチンに対する不信感や忌避感が強まり、接種率が低調になっている影響と見られている。 
 果たして、ワクチンに反対する人々の主張は、信用に値するのだろうか? 
 ワクチン問題に詳しい大阪大学免疫学フロンティア研究センター・宮坂昌之招へい教授の協力を得て、ワクチンに反対する主な主張をファクトチェックした――。 

▶ 「50万人も自国民を殺してるんだよ!」  
 「厚生労働省の職員、出てこい! 人殺し!」 「ワクチン薬害を認めろ!」
 2024年12月、厚生労働省が入る中央合同庁舎に向かって、集まった人々が激しい言葉を浴びせていた。その中には、ワクチン接種後に亡くなった人の家族もいる。 
 騒然とした雰囲気の中、「コロナワクチンが人を殺している」、とプリントされた横断幕が風になびく。ワクチンに反対する抗議活動だった。 
 「50万人も自国民を殺してるんだよ、お前ら分かってんのか、厚労省!」 
 こう叫んだのは、コロナ禍で注目されるようになった長尾和宏医師である。なぜ、「50万人を殺した」ということになるのだろうか?

▶ 超過死亡数の大半はワクチンが原因? 
 後日、長尾医師にメールで質問すると、次の返信があった。 
---------- 過去3年間の日本の「超過死亡数」は、累計40〜60万人。多くの専門家は「大半」がワクチン関連死と推定しています。私自身も「9割以上」と思います。 (※抜粋・要約) ----------
  超過死亡とは、過去のデータに基づく予測値を超えた死亡数を指す。 
 長尾医師が述べた「50万人」は、累計40〜60万人の中間をとったらしい。だが、大半がワクチンによる死亡である、という根拠は示されていなかった。再質問したが、回答はなかった。 

▶ 確かに死亡リスクはゼロではないが… 
 “50万人の超過死亡はワクチンが原因”という主張について、大阪大学免疫学フロンティア研究センター・宮坂昌之招へい教授は、論理が飛躍していると指摘する。 
 「ワクチン接種と超過死亡がよく重なったのは、7回の定期接種のうち1回のみでした。“超過死亡説”が本当なら、接種のたびに超過死亡が起きたはずです。したがって超過死亡はワクチンではなく、新型コロナ感染症によって起きた、と考えるべきでしょう。 
 中東カタールでは、約700万回のワクチン接種が行われ、138人が接種後30日以内に死亡しました。このうち112人はワクチンとの関連は無し、あるいは可能性が低いと判断されています。世界的にワクチンが原因で死亡する頻度は、100万回接種に数回でした。 
 ワクチンは決してゼロリスクではありませんが、接種のメリットとデメリットを冷静に判断する事が必要です」 
 ワクチン接種後、心筋炎が起きるケースが報告されているが、確率は100万回に10回程度で、新型コロナ感染で心筋炎が起きる確率に比べてずっと低いことが分かっている。

▶ 情報不足で評価できないケースが多い 
 2021年に行われたコロナワクチンの第1回と第2回の接種は、いずれも日本人の約8割が受けたが、3回目以降の接種率は低下の一途を辿った。7回目の接種(2023年9月20日から2024年3月31日)は、約14%にとどまった。 
 ワクチン接種後に死亡したケースが、センセーショナルに報道されるたび、恐怖感を覚えた人は多いはずだ。ただし、死亡原因がワクチンだと明確になったケースは、ごくわずかでしかない。 
 ワクチンに関連した死亡者数は2種類ある。1つは医療機関や製薬企業からの副反応疑い報告で、現時点の死亡者数は「2261人」だ(※2024年10月29日の厚労大臣記者会見)。 
 このうち「ワクチンと死亡の因果関係が否定できない」と専門家が判断したのは、わずか「2人」のみ。残りは「情報不足で評価できない」ケースが大半を占める。接種から最大28日間が報告対象なので、ワクチン接種とは関係のない死亡が含まれてしまうのだ。  もう一つが、ワクチン被害救済制度で、国が認定した死亡者数である。厚生労働省の疾病・障害認定審査会によると、2025年1月10日時点で「累計940人」。認定された人の遺族に、死亡一時金と葬祭料が支給された。  ただし、その全ての死因がワクチンと確定したわけではない。「厳密な因果関係までは必要とせず、接種後の症状が予防接種によって起こることを否定できない場合も対象」と厚労省が定めているためだ。 

▶ 接種と突然死のタイミングが重なった可能性 
 なぜ、ワクチンと死亡の厳密な因果関係を、認定条件にしていないのか。その理由について、宮坂招へい教授は次のように解説する。  
日本人は、剖検(※死因を調べる解剖)に抵抗感が強いので、接種後に亡くなった方の大半が死因を特定できません。だからといって、厳密な因果関係が分からない方を救済対象から排除すると、ワクチン接種に国民が不安を抱くことになります。 
 実はコロナ禍の前から、日本では心臓病が原因で年間約9万人、1日あたり約250人が突然死していました。コロナワクチンは短期間に国民の約8割が接種したので、たまたま突然死と重なってしまったケースが多いと考えるのが自然です」 
 断っておくが、筆者は厚労省やワクチンの製薬企業から記事の執筆などで報酬を得たことは一切ない。むしろ、問題点を厳しく追及して疎まれる存在である。

▶ mRNAワクチンのスパイク蛋白は危険? 
 コロナワクチンには、新しいmRNA(メッセンジャーRNA)の技術が使われている。通常の新薬は10年前後の臨床試験を経て承認されるが、コロナワクチンは約1年間で開発されて(※)緊急承認された。そのため、安全性の確認が不十分だという主張がある。 
 ※ mRNAワクチンは、がん治療を目的に約10年前から研究が行われていた。 
 京都大学の福島雅典名誉教授は、コロナワクチンに反対する理由として、「スパイク蛋白の毒性」を挙げた。  「mRNAワクチンのスパイク蛋白が強い毒性を持っていて、血栓を形成して血管が詰まり、ワクチン自体も強い炎症を起こします。同時にワクチンは、全身に行き渡ってスパイク蛋白をいつまで作るか分かりません。ブレーキがない自動車をハンドルなしで走らせたようなものです。スパイク蛋白が毒であることに間違いありません」 

▶ 反対派がスルーする研究論文の特異な条件  
全国有志医師の会」という団体も、権威ある医学誌『Circulation Research』に“スパイク蛋白の毒性”を示した研究論文が掲載されているとして、コロナワクチンに反対している。 
 この主張について、宮坂招へい教授は“重要な点に触れていない”と指摘した。 
 「この研究で用いたスパイク蛋白質の濃度は、ワクチン接種後に体内で検出されるスパイク蛋白質の500倍以上です。現実には起こりえない条件なので“スパイク蛋白質が体内で毒素になる”という主張には論理の飛躍があります。“血管内で炎症が起こった”という記述もこの論文に見当たりませんでした。 
 生体内のスパイク蛋白質は一定時間で消えることは、多くの実験で確認されています。“いつまでも体内に残ってスパイク蛋白が作られる”という主張は、裏付けのない仮説に過ぎません

▶ レプリコンワクチンは「人体実験」?
 現在、65歳以上や基礎疾患のある人を対象に、コロナワクチンの8回目となる定期接種が実施されている(※自治体によって終了時期は異なる)。ネガティブな情報が広まっている影響か、接種率は極めて低い。 
 今回の定期接種では、次世代型mRNAのレプリコンワクチン(商品名:コスタイベ)が、世界に先駆けて承認された。  mRNAが体内で一時的に複製される新しいタイプのワクチンで、既存のmRNAワクチンよりも強く免疫が誘導され、抗体の持続時間が長い。接種後の強い倦怠感や発熱などの副反応も、大きく改善されたという。 
 販売が日本の製薬企業(Meiji Seikaファルマ)なので、今後のパンデミックに備える意義も大きい。 
 だが、このレプリコンワクチンに対して、激しい反対運動が起きている。 
 世界に先駆けて承認されたことを“日本での人体実験”と揶揄、レプリコンワクチンを接種した人に対して、入店拒否や診療拒否の動きまで起きているのだ。 

▶ 「シェディングが起きる」というデマが拡散 
 東京都内のあるクリニックでは、レプリコンワクチン接種者の立入さえも拒んでいるが、医療機関としての適格性を疑う理由を掲げている。 
---------- ・レプリコンワクチンはmRNAの複製が際限なく続く可能性がある ・複製されたスパイク蛋白質が周囲に“シェディング(感染の意)”する ・レプリコンワクチンの接種者は「歩くバイオハザード」 (※クリニックがインターネット上に公開している資料より抜粋・要約) ----------
  “シェディング”という現象は、コロナワクチンでは確認されていない。荒唐無稽なデマだが、SNSなどで拡散された結果、“ゾンビワクチン”という俗称まで付けられた。
  懸念した日本感染症学会などが、シェディングを否定する声明を出したが、一度ついた悪いイメージを払拭するのは難しい。 
 このクリニックでは、ワクチン後遺症の治療と称して、高額な自由診療を行っている。 
 また、「細胞力復活点滴」、「脳神経返り咲き点滴」などの医療機関とは思えない治療や、“がん治療支援”と称して「高濃度ビタミンC点滴」を実施していた。いずれもエビデンスがない、エセ医療である。 
 レプリコンワクチンに反対する一方で、エビデンスのない高額な自由診療を行う姿勢には疑問が残る。クリニックに取材を申し入れたが、拒否された。

▶ 製薬会社が現役の国会議員を提訴した理由 
 コロナワクチンに反対する政治家として、存在感を発揮しているのが、立憲民主党の原口一博衆議院議員(佐賀1区)だ。レプリコンワクチンについて「生物兵器まがい」と発言して、Meiji Seikaファルマから名誉毀損で東京地裁に提訴されている。 
 2024年10月の衆院選では「ワクチンを3回以上打っている国も日本だけ(原文抜粋)」と、選挙公報に記載していた。結果的に原口氏は当選しているので、その主張を信じた人も多かったに違いない。 
 だが、厚労省の調査では、アメリカ、イギリス、ドイツなどでの欧米諸国で少なくても5回以上のワクチン接種が行われ、現在も接種が実施されている。原口氏はどのような根拠で主張したのだろうか?
 事務所に取材を申し入れたが、回答はなかった。 
 HIVを発見してノーベル医学・生理学賞を受賞した、フランスのリュック・モンタニエ博士は「新型コロナワクチンを打てば2年以内に死亡する」と警告していた。今となっては、彼の警告は虚しく響く。(高橋徳・中村篤・船瀬俊介『コロナワクチンの恐ろしさ』〈成甲書房〉より) 
 社会的に高い地位や、素晴らしい肩書きを持つ人の発言が、必ずしも信用に値するとは限らないことを、コロナの時代が教えてくれた。 

▶ 「非専門家」の意見を鵜呑みにする代償 
 厚労省は国民の死因について、毎月5カ月後に公表している。そのデータから、新型コロナ感染症で死亡した人数を2024年と2023年で比較したのが、図表1だ。 
 1月を除いて、2024年のほうが、新型コロナでの死亡が明らかに多い。ワクチンに対する忌避感が広まり、接種率が低下したことが影響している可能性が考えられる。 
 宮坂招へい教授は次のように警鐘を鳴らす。  
「新型コロナウイルスの変異によって、ワクチンの感染予防効果は当初よりも低下しました。しかし感染した場合、ワクチンを接種していない人の死亡率は、接種した人よりも数倍高いことが分かっています。  
 ワクチンに反対する医師の大半は、感染症や免疫の専門家ではありません。接種のリスクだけでなく、ベネフィット(恩恵)についても冷静に判断して下さい」


インフルエンザ脳症、再襲来!

2025年01月15日 14時59分03秒 | 小児科診療
新型コロナ禍以降、最大級のインフルエンザ流行が猛威を振るっています。
それに伴い、子どものインフルエンザ脳症発生がニュースで流れるようになりました。
紹介する記事でも、地域基幹病院の小児科医師が、
脳炎・脳症の患者がこれほど多いシーズンは経験したことがない
とコメントしています。

診療経験のある私にとって、
「アッという間に命をさらわれる」
という印象の合併症です。
発熱後、1日のうちに進行して意識障害・けいれんが出てきます。
タミフルなどの抗インフルエンザ薬は間に合わないのです。

罹ってからではもう遅い、有効なのはワクチンだけです。

以前にも書きましたが、1990年代後半に多発した頃と今の状況が似ています。
その当時、インフルエンザ脳症を発症すると、
・3割は死亡
・3割は後遺症
・3割は助かる
とされていました。

あれから四半世紀が経過して医療が進み、
現在では死亡率1割未満、後遺症3割未満と改善していますが、
やはり恐い合併症です。


▢ インフル感染原因で子供らに「急性脳症」発症相次ぐ  幼児死亡例や重い後遺症  脳炎も注意
2025/1/11:産経新聞)より一部抜粋(下線は私が引きました);

全国で猛威をふるっている季節性インフルエンザだが、医療現場では感染が原因で「インフルエンザ脳症」などを発症する子供らが相次ぐ。・・・熱が下がった後も意味不明な言動が続くなど症状が悪化するケースもあるとされ、医師らは、迷わず医療機関を受診するよう促している。 

【ひと目でわかる】インフルエンザ脳症を疑って受診する目安 

 

静岡県静岡市の県立こども病院では、インフルエンザの流行に伴い、昨年12月中旬から、発熱してけいれんや意識障害での救急搬送が増加している。小児救急輪番日では一晩で4~5人が運ばれてくるとし、インフルエンザ脳症の症状の有無を慎重に評価する。 

▶ 基礎疾患なく
 小児感染症科の荘司貴代医長によると、運ばれてくる多くは短時間でけいれんが止まる「熱性けいれん」。だが、けいれん後に意識が戻らない、もしくはけいれんが続いて呼吸状態も不安定になる場合は中枢神経合併症を疑われ、緊急で処置が始まる。先月中旬から今月6日までに乳幼児3人がインフルエンザ脳症と診断され、うち幼児1人が死亡した。 幼児は生来健康で、ワクチンは未接種での初感染だった。ウイルスから体を守ろうと、免疫が過剰反応し、脳が急激にむくみ血液循環の悪化で脳の一部が壊死する「急性壊死性脳症」だった。インフルエンザ脳症の中でも重症で死亡率が高く、後遺症が出ることが多いという。 
 国立感染症研究所のまとめによると、昨シーズン(令和5~6年)のインフルエンザ脳症の患者数は189人(昨年10月8日まで)で、少なくとも8人が死亡。元~2年は患者が258人、死亡が16人だった。 荘司氏はインフルエンザで療養中に受診する目安として、
・けいれん
・意味不明な言動
・異様に興奮している
―といった神経症状などを挙げ、「インフルエンザでは高熱でうわごとを言う熱せん妄が出やすいが、解熱剤を使っても持続する場合は迷わず受診してほしい」とする。
 
▶ 通常診療に影響
 治療の緊急度が高いインフルエンザ脳症患者が急増している影響で、小児集中治療室(PICU)で神経機能を検査する脳 波計などの検査機器が占有され、通常の予定されている診療が難しくなってきているという。
 加えて、感染症の治癒過程でウイルスに免疫が過剰に反応するなどし、中枢神経に炎症が起きて歩行障害などが出る「急性散在性脳脊髄炎」などの脳炎の患者も多く、荘司氏は「脳炎・脳症の患者がこれほど多いシーズンは経験したことがない。機器もマンパワーも足りていない」と訴える。
 さらに、総合診療科の入院患者の半数がインフルエンザによる肺炎や喘息(ぜんそく)などの症状で、家庭内感染が目立ち、ほぼ全員がワクチン未接種だという。荘司氏は「多くの患者が入院しているが、ワクチンを接種した方の重症化はまれだ。チャンスがあればワクチンを打ってほしい」と話した。