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思索 電子回路 論評等 byホロン commux@mail.goo.ne.jp

スピーカーのインピーダンスを考える②

2011-07-29 19:32:41 | 電子回路
「 FOSTEX フルレンジユニット FE83En 」の紹介がてら、スピーカーのインピーダンスについてもう少し考えてみます。周波数特性の図を見ると、150Hz辺りに急峻な山の頂点があります。これはコーン紙とボイスコイルが一体になった物体の質量(M)とエッジのダイヤフラムのバネ定数(k)によって構成される共振現象であり、この時の周波数を一般に共振周波数:f0と表します。[ω0=√(k/M) f0= 1/2π × √(k/M)]

このf0においてインピーダンスが急増しています。何故でしょう。実は共振による振動は理屈上、外部からのエネルギーを必要としないのです。実際にはメカロスや空気抵抗などによって永久に振動し続けることはありませんが、ごく僅かなエネルギーを供給するだけで振動を継続させることができます。つまりf0においては、ボイスコイルが発生させた磁気エネルギーは、磁石の静磁界によってほとんど相殺されない(力に変換されない)ということです。よってボイスコイルは、ほぼ単独のインダクタンスとして働きインピーダンス(誘導性リアクタンス)を増加させているわけです。もし、ボイスコイルを機械的に固着させてインピーダンス特性を測れば、20Hz~1kHzまで直線となり、ぴったり8Ωを示すでしょう。

次に、1kHz以上において、じわじわとインピーダンスが増加しています。これはボイスコイルではなく、ボイスコイルを作っている電線(ポリウレタン線)のインダクタンス成分が効いてきているのです。ボイスコイルを解いて一本の電線に延ばしたと考えてください。電線のインダクタンスは長さに比例して大きくなります。そして、この電線のインダクタンスによって生じる磁束は、磁石の静磁界の方向と直交しているためにまったく打ち消されないのです。逆に言えば、電線が生じる磁束により力を発生することはありません。

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コメント (10)
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