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思索 電子回路 論評等 byホロン commux@mail.goo.ne.jp

可飽和リアクトル(マグアンプ、磁気増幅器)によるPWM

2010-10-26 22:11:06 | 電子回路
スイッチング電源の出力電圧を安定(定電圧)化する方法はいろいろ考えられますが、その方法の一つとして、可飽和リアクトルを使った安定化回路を紹介します。

一般的には、2次側の出力電圧を絶縁フィードバックして、1次側のスイッチングをPWM制御することによって、出力電圧を安定化する方法がよく用いられますが、ここでは1次側のディユーティ比を50%に固定して、2次側単独で安定化することを考えます。
(効率等はとりあえず無視)

上の回路を見てください。トランスで降圧した後、2次側の出力を整流、平滑して、その後にPWM制御によるステップダウンチョッパ(降圧コンバータ)を構成しています。実際にこんな回路はあまり見かけませんが、これでも安定化できるはずです。

さて、下の回路が本稿のテーマの、可飽和リアクトルを用いた安定化回路です。2次側をPWM制御するという点で、上のステップダウンチョッパとほぼ同じと考えていいでしょう。両回路とも同じように動作するなら、可飽和リアクトル式(マグアンプ式)の方が、部品点数も少なく、ずっとシンプルにできます。ステップダウンチョッパの方は、太線のブロック図に、さりげなくPWMと記入していますが、実際にはコントロールデバイス(TL494等)と周辺に幾つかの部品が必要であり、結構複雑になります。

では可飽和リアクトル式が動作するメカニズムを、順を追って見ていきましょう。
コアを有するコイル(リアクトル)はコイル電流に比例して磁界(H)が大きくなり、コア内部の磁束密度(B)が増加しますが、可飽和リアクトルは、図のBH曲線に見るように磁束密度が急峻に立上り、すぐに磁気飽和に至るように作られています。コイル電流を「入力」、磁束密度を「出力」とすると、少しの電流増加により大きな磁束密度が得られることになり、これが、可飽和リアクトルがマグアンプ、磁気増幅器と呼ばれる所以なのでしょう。磁束密度が垂直に立ち上がれば増幅度が∞となり理想的です。理想オペアンプのゲインが∞とされるのと同じですね。

さて、トランスの2次側には降圧されたデューティ比50%の矩形波が出力され、ONパルスの期間に電流が可飽和リアクトルを流れるのですが、磁気飽和するまではインダクタンスが非常に大きく、飽和すると急に小さくなる(空芯コイルと同じ)ので、可飽和リアクトルは、飽和-非飽和によってON-OFFするスイッチと捉えることができます。よってONパルスの電圧印可に対して、磁気飽和するまでの時間分遅れて導通しOFFパルスまで電流が流れます。

ということは、磁束が飽和するまでの時間(期間)を調整できれば、可飽和リアクトルのON-OFF期間が調整できる、つまりPWM制御ができそうです。

回路図を見てください。もし、RFとRIによる分圧値がRefよりも大きくなれば、トランジスタ:Q2が動作し、トランスの2次側がOFFパルスの時に、点線で示す電流(Reset Current)が流れ(増加し)、過飽和リアクトルの磁束は極性が反転して大きくなります。すると、次にONパルスに切り替わった時には、逆極性の磁束を押し戻してから磁気飽和に至るため、可飽和リアクトルのOFF期間が長くなります。ということはON期間(導通期間)が短くなり、出力電圧が低下して、結果的に、RFとRIの分圧値がRefと一致するように制御されるのです。これは正にPWMですね。実に巧妙なやり方だと思います。

RFとRIによる分圧値がRefよりも小さくなれば?
さて、考えてみましょう。(^^)

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コメント (3)
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