何はともあれやってみよう!
ラプラス変換を使ってLCR回路の過渡特性を求める Part1
図の回路において、L=5mH、C=1000μF、R=2Ωとし、スイッチが10Vから0Vに切り換わった以後の電流i(t)の時間変化を求める。
ただしe(0)=0 i(0)=0 q(0)=10C
まず、この回路の方程式をたてる。
Rの両端電圧=R i(t)
Cの両端電圧=q(t)/C
Lの両端電圧=L d i(t)/dt
これらの合計がe(t)であるから
L d i(t)/dt + R i(t) + q(t)/C=e(t) ----- ① である。
と、方程式はできたものの、この式からスイッチが切換わった後のi(t)の流れる様子を見ようとしても、まずまったく見えてこない。最も大きな邪魔ものはL d i(t)/dt 、つまり式に微分が含まれているからだ(このような式を微分方程式という)。それで、この微分を取っ払って、分かりやすい式に書き換えるために「ラプラス変換」というツールを使おうじゃないかって話だ。耳慣れない「ラプラス変換」とは何者ぞ、と身構えなくともよろしい。まあとにかく気楽にやってみよう。式①をラプラス変換すると次のようになる。
LsI + RI + Q/C – Li(0)=E
LsI + RI + Q/C=E + Li(0) -----②
はい出来上がり。さて、何をしたのか?
つまり、定数のLCRはそのままにして、d/dt をsに置き換え、tの関数であるi q eを大文字に書き換えただけのことだ。しかし、いきなり現れた項がある。– Li(0) は一体何だ? 実は、これはラプラス変換の定義により現れたものだけど、今は考えなくてもよろしい。
とにかく、微分関数df(t)/dtをラプラス変換したら-f(0)が付いてくる、つまりはsF-f(0) に置換わると機械的に覚え処理するべし。
さて②式 LsI + RI + Q/C=E + Li(0) に関して、電荷q(t)と電流i(t)の関係を考える。
dq(t)/dt=i(t) 両辺をラプラス変換する。
sQ-q(0)=I
Q=(I+q(0) )/s これを式②に代入する。
Q/CにQ=(I+q(0) )/s を代入すると
(I+q(0) )/Cs → I/Cs + q(0)/Cs よって②式は
LsI + RI + I/Cs = E + Li(0)-q(0)/Cs -----③となる。
(左辺にIの項を集めている)
右辺を計算する。
条件より i(0)=0 q(0)=10C
時刻t=0 以後はスイッチ切り換えにより e(t)=0
よってE=0
よって③式は
(Ls + R + 1/Cs)I = 0 + 0-10C/Cs
(Ls + R + 1/Cs)I = -10/s -----④ となる。
変形して
〔(Ls^2 + Rs + 1/C)/s〕I = -10/s
両辺にsをかけて
(Ls^2 + Rs + 1/C)I = -10
I=-10 /(Ls^2 + Rs + 1/C)
I=-10 / L(s^2 + sR/L + 1/LC)-----⑤
I=-10 / L(s^2 + sR/L + 1/LC) 分母分子をLで割って
I=(-10 / L) / (s^2 + sR/L + 1/LC)-----⑥
この⑥式にLCRの数値を入れる
L=5mH、C=1000μF、R=2Ω であるから
I=(-10 /5m ) / (s^2 + s2/5m + 1/5μ)
-10 / 5m =-2k 、2/5mm=400 、1/5μ=200k
I=-2k / (s^2+ 400s + 200k)-----⑦
I=-2k /〔(s+200)^2 + 200k-40k〕 -----⑦-1
I=-2k /〔(s+200)^2 + 160k〕 -----⑦-2
I=-2k /〔(s+200)^2 + (√160k)^2〕 -----⑦-3
I=-2k / (s+200)^2 + 400) -----⑦-4
実は、この無意味にも見える式⑦-1~4の変形がミソなのである。つまり、変換したものは元に戻せるから変換なわけで、式②~式⑦まではすべてラプラス変換後の演算であり、式⑦-1~4では、逆変換して元の式に戻す準備をしていたのだ。
実際にはラプラス変換をツールとして使うために、変換表なるものが用意されている。基本的な変換式は覚えておくと何かと便利であるが、ともかくこの変換表の中に、次のような変換式がある。
e^-□t sin△t →(ラプラス変換)→ △ /〔(s + □^2 + △^2〕
〔 e(イプシロン)は自然対数の底で、約2.718の定数 〕
式⑦-4は、まさにこの変換式に当てはまりそうじゃないか、というわけだ。
△として400 を使いたいのでさらに変形して
I=(-2k / 400) 400 /〔(s+200)^2 + 400^2 〕 -----⑧
さて、ではこの変換式に当てはめて式⑧を逆ラプラス変換してみよう。
まず、-2k / 400= -5
ここで、えいっ!と逆ラプラス変換すれば
i(t)=-5・e^-200t sin 400t -----⑨
となり、ようやく求めたかったi(t)の関数式を得ることができたわけだ。
これは、ω=400(rad/sec) 、つまりf=400 / 2π =63.7Hzのサイン波であり、e^-200 tがかかっているので、i(t)は時間とともに減衰することがわかる。
しかし、L d i(t)/dt + R i(t) + q(t)/C=e(t) の定数(LCR)に数値を入れた式
5m d i(t)/dt + 2 i(t) + q(t)/1000μ=e(t) が
i(t)=-5・e^-200t sin 400t と同じものであり、ラプラス変換・逆変換することでこのように書き換えることができるのだから、面倒くさいけど、やっぱりラプラス変換はすごい。[そもそもラプラス変換は微分を含む式(微分方程式)を微分の無い式に書き換える(微分方程式を解くという)ためのツールである]
関連記事:
微分法則 2009-05-13
部分積分(LCR回路)2009-08-04
運動方程式への応用①ラプラス 2009-11-18
ラプラス変換を使ってLCR回路の過渡特性を求める Part1
図の回路において、L=5mH、C=1000μF、R=2Ωとし、スイッチが10Vから0Vに切り換わった以後の電流i(t)の時間変化を求める。
ただしe(0)=0 i(0)=0 q(0)=10C
まず、この回路の方程式をたてる。
Rの両端電圧=R i(t)
Cの両端電圧=q(t)/C
Lの両端電圧=L d i(t)/dt
これらの合計がe(t)であるから
L d i(t)/dt + R i(t) + q(t)/C=e(t) ----- ① である。
と、方程式はできたものの、この式からスイッチが切換わった後のi(t)の流れる様子を見ようとしても、まずまったく見えてこない。最も大きな邪魔ものはL d i(t)/dt 、つまり式に微分が含まれているからだ(このような式を微分方程式という)。それで、この微分を取っ払って、分かりやすい式に書き換えるために「ラプラス変換」というツールを使おうじゃないかって話だ。耳慣れない「ラプラス変換」とは何者ぞ、と身構えなくともよろしい。まあとにかく気楽にやってみよう。式①をラプラス変換すると次のようになる。
LsI + RI + Q/C – Li(0)=E
LsI + RI + Q/C=E + Li(0) -----②
はい出来上がり。さて、何をしたのか?
つまり、定数のLCRはそのままにして、d/dt をsに置き換え、tの関数であるi q eを大文字に書き換えただけのことだ。しかし、いきなり現れた項がある。– Li(0) は一体何だ? 実は、これはラプラス変換の定義により現れたものだけど、今は考えなくてもよろしい。
とにかく、微分関数df(t)/dtをラプラス変換したら-f(0)が付いてくる、つまりはsF-f(0) に置換わると機械的に覚え処理するべし。
さて②式 LsI + RI + Q/C=E + Li(0) に関して、電荷q(t)と電流i(t)の関係を考える。
dq(t)/dt=i(t) 両辺をラプラス変換する。
sQ-q(0)=I
Q=(I+q(0) )/s これを式②に代入する。
Q/CにQ=(I+q(0) )/s を代入すると
(I+q(0) )/Cs → I/Cs + q(0)/Cs よって②式は
LsI + RI + I/Cs = E + Li(0)-q(0)/Cs -----③となる。
(左辺にIの項を集めている)
右辺を計算する。
条件より i(0)=0 q(0)=10C
時刻t=0 以後はスイッチ切り換えにより e(t)=0
よってE=0
よって③式は
(Ls + R + 1/Cs)I = 0 + 0-10C/Cs
(Ls + R + 1/Cs)I = -10/s -----④ となる。
変形して
〔(Ls^2 + Rs + 1/C)/s〕I = -10/s
両辺にsをかけて
(Ls^2 + Rs + 1/C)I = -10
I=-10 /(Ls^2 + Rs + 1/C)
I=-10 / L(s^2 + sR/L + 1/LC)-----⑤
I=-10 / L(s^2 + sR/L + 1/LC) 分母分子をLで割って
I=(-10 / L) / (s^2 + sR/L + 1/LC)-----⑥
この⑥式にLCRの数値を入れる
L=5mH、C=1000μF、R=2Ω であるから
I=(-10 /5m ) / (s^2 + s2/5m + 1/5μ)
-10 / 5m =-2k 、2/5mm=400 、1/5μ=200k
I=-2k / (s^2+ 400s + 200k)-----⑦
I=-2k /〔(s+200)^2 + 200k-40k〕 -----⑦-1
I=-2k /〔(s+200)^2 + 160k〕 -----⑦-2
I=-2k /〔(s+200)^2 + (√160k)^2〕 -----⑦-3
I=-2k / (s+200)^2 + 400) -----⑦-4
実は、この無意味にも見える式⑦-1~4の変形がミソなのである。つまり、変換したものは元に戻せるから変換なわけで、式②~式⑦まではすべてラプラス変換後の演算であり、式⑦-1~4では、逆変換して元の式に戻す準備をしていたのだ。
実際にはラプラス変換をツールとして使うために、変換表なるものが用意されている。基本的な変換式は覚えておくと何かと便利であるが、ともかくこの変換表の中に、次のような変換式がある。
e^-□t sin△t →(ラプラス変換)→ △ /〔(s + □^2 + △^2〕
〔 e(イプシロン)は自然対数の底で、約2.718の定数 〕
式⑦-4は、まさにこの変換式に当てはまりそうじゃないか、というわけだ。
△として400 を使いたいのでさらに変形して
I=(-2k / 400) 400 /〔(s+200)^2 + 400^2 〕 -----⑧
さて、ではこの変換式に当てはめて式⑧を逆ラプラス変換してみよう。
まず、-2k / 400= -5
ここで、えいっ!と逆ラプラス変換すれば
i(t)=-5・e^-200t sin 400t -----⑨
となり、ようやく求めたかったi(t)の関数式を得ることができたわけだ。
これは、ω=400(rad/sec) 、つまりf=400 / 2π =63.7Hzのサイン波であり、e^-200 tがかかっているので、i(t)は時間とともに減衰することがわかる。
しかし、L d i(t)/dt + R i(t) + q(t)/C=e(t) の定数(LCR)に数値を入れた式
5m d i(t)/dt + 2 i(t) + q(t)/1000μ=e(t) が
i(t)=-5・e^-200t sin 400t と同じものであり、ラプラス変換・逆変換することでこのように書き換えることができるのだから、面倒くさいけど、やっぱりラプラス変換はすごい。[そもそもラプラス変換は微分を含む式(微分方程式)を微分の無い式に書き換える(微分方程式を解くという)ためのツールである]
関連記事:
微分法則 2009-05-13
部分積分(LCR回路)2009-08-04
運動方程式への応用①ラプラス 2009-11-18